東方歌唱録   作:苦労人ーくろうにん

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腕輪のプログラム


第四十五話

最近あの夢をよく見る。

夢の中の俺はパン屋の養子で、穏やかな老夫婦から目一杯の愛情を受けて成長し、ある時、皆が寝静まる頃に目が覚めた俺は教会へ散歩に向かう。

理由もなく礼拝堂に入った俺は大きな女神の像の前で泣きながら祈り続けるシスターのような格好をした女性に出会う。

その見た目は紛れもなく翔子だ。

見間違うわけはない。

その女性は吸血鬼らしい、口元を紅く、朱く、緋く、赤く染め、涙を流しながら女神の像に赦しを請うている。

その姿を見て俺は先ず「美しい」と思った。

そして彼女に笑顔でいて欲しいと、その為なら例え何を敵に回してもいいと…………そして二人は恋に落ちる。

夢の中の俺は翔子を家へ連れ帰り親代わりの老夫婦に紹介する。

老夫婦は快く翔子を、受け入れてくれた。

翔子が血を欲しがって理性を無くすと、俺は自分を差し出す。

ある程度血を吸い、理性を取り戻した翔子は、必ず泣いた。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…………!」

 

と泣き疲れて眠るまで泣いた。

大変ではあったが幸せな時間だった…………のだろうと思う。

でもどうしてかわからないがこれよりも先は見たことがない、必ずこの辺りで目が覚める、そして恐ろしい気分になる。

これより先はおそらくロクなことが起こらないのだろう。

 

「…………ぅ」

 

体を起こす。

どの位寝たんだ?

またこの間みたいに寝すぎてなければいいが…………

 

「…………朝か…………早起きし過ぎた」

 

カーテンを開け、朝日を浴びる。

と同時に耐え難い不快感に襲われ、すぐにカーテンを閉める。

 

「…………朝日を浴びた途端消滅。

何てことにならないだけマシだが日光と流水は好かん。」

 

特に日光は最悪だ。

俺と翔子にとって、流水は身体能力の低下、日光は精神異常を引き起こす。

他の吸血鬼とは違い直ちに命を落とすことは無いがそれでもタチが悪い。

 

「紅茶でも飲むか」

 

自分の部屋から出て一階へと降りる。

 

「…………こいつは」

 

リビングには紅茶の入ったポットとティーカップが置いてあった。

 

「まだ冷めきってないな…………このティーカップ、紅零のか」

 

ティーカップを持ち上げて底を見ると、筆記体のローマ字で紅零の名前が彫られている。

 

「珍しいな、アイツが片付けもしないで…………しかもこんな早朝に…………」

 

まぁ猫舌の俺からすれば冷ます手間が省けて良いが…………紅零のカップを台所に持って行き、代わりに自分のカップを持ってきてカップに紅茶を注ぐ。

そしてさっき見た夢について思考しようとした時。

 

紅零

「うわぁ!?」

 

「紅零の部屋か⁉︎」

 

翔side out

 




次回は紅零視点からのスタートです。
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