東方歌唱録   作:苦労人ーくろうにん

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翔と翔子の記録part2


第五十九話

 

鎧甲冑の二人が腰に差していた剣を抜き放ち、構えた所で時間が止まる。

翔子が傷付けられたのを見たときは正気を失いかけたが、ふと、これは過去の記録なんだと思い出し、幾分か落ち着きを取り戻すことが出来た。

 

和磨

「ひとつ言い忘れてたんだけど

今この記録の中の翔は『まだ』人間だからね」

 

和磨の言い終わると同時に時間が動き出す。

鎧甲冑の二人はまるで意思が完全に通じ合っているかのように同時に突きを放って来る。

それは何の抵抗もなく夢の中の俺の腹に突き刺さる。

 

「ぐはぁ!」

 

突き刺ささった剣を更に深く突き刺して来る鎧甲冑達。

ついにその剣は夢の中の俺の腹を貫通し、根元まで刺さる。

夢の中の俺と鎧甲冑達の距離はほぼゼロとなっている。

 

「は…………ぁ、う…………」

 

おいおい素直に突っ込むのが悪いとは言わないがそのままやられてちゃあザマないだろう。

 

「う…………おおおおおおおおお!!!!」

 

崩れ落ちるかと思ったその時、右手と左手を二人いた鎧甲冑の首に突き出す。

 

ズドン!

と訳のわからない音がして、夢の中の俺の両手は鎧甲冑の胴当てと兜の僅かな隙間、つまり首へと突き刺さる…………人間技じゃないよな、これ…………。

 

と、ここでまた世界は動きを止め、和磨の声が響く。

 

和磨

「気付いた者もいるだろうけど恐らくこの時の翔は吸血鬼化してるんだ。

さっき翔子を見つけてからここまでの何処かのタイミングで吸血鬼化したのだろうけどどのタイミングだったかは僕にもわからないや」

 

と、ここでまた時は動き出す。

 

「退け!」

 

鎧甲冑の首からてを引き抜き、突き飛ばす。

その際に体から剣が抜けたのだが、出血はもう止まっており翔子の元へ、一歩近付く度に傷がものすごい勢いでふさがってゆく。

そして俺と翔子の距離が縮まるのに比例して禍々しい装飾の男はよろよろと翔子から離れていく。

 

「翔子…………」

 

倒れている翔子の側に屈み込む夢の中の俺。

 

翔子

「来てくれたんだ…………ありがとう、ごめんね…………?」

 

弱々しく笑いながら言葉を紡ぐ翔子。

この翔子は最初から吸血鬼だった様だしこの傷くらいなら本来は慌てる必要はないのだろう、しかし…………。

 

翔子

「多分この剣、銀で、出来てるんだと思う………傷が治らないんだ…………」

 

「もう、助からないのか…………?」

 

大粒の涙を流し、静かに尋ねた夢の中の俺の頬を翔子の手が撫でる。

 

翔子

「ダメだろうね…………。

多分この剣、封印か何かの効果もあるみたい。

だからお願い、この剣を抜いて?

このまま苦しいのが続くのは嫌だな…………。」

 

禍々しい装飾の男が何事かを喚きながら夢の中の俺と翔子に歩み寄って来る。

夢の中の俺の手が翔子に刺さってる剣を掴み、引き抜いた。

その次の瞬間。

 

「おおおおおおおおお!!!!」

 

夢の中の俺はその剣を自らの胸に突き刺した。

 

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