東方歌唱録   作:苦労人ーくろうにん

80 / 106
紅魔館のビリビリ門番part9


第七十四話

椅子から立ち上がったレミリア嬢の表情には抑えきれない悲しみが浮かんでいる。

そのまま彼女は自分の足で歩いて俺の元へとやってきた。

館の主を見下ろすなんてもってのほかなのでしゃがんで視線を合わせる。

 

レミリア

「……………」

 

レミリア嬢は何度か言葉を選ぼうとしたようで口を開けては閉じるという仕草を見せる。

レミリア嬢の容姿と相まって普段なら可愛いと素直に感じさせるであろうその仕草も今はレミリア嬢の悲しみを如実に表している。

 

翔

「レミリア嬢?」

 

 

レミリア

「…………」

 

俺が声を掛けた事で何か決心がついたのか。

悲しみで一杯だった表情が少し変わった。具体的には目に少しだけ威厳の光が帰って来ていた。

 

レミリア

「咲夜」

 

名前を呼ばれただけでレミリア嬢の心を理解したのか咲夜はレミリア嬢の傍に歩み寄り、大事そうに小さい何かをレミリア嬢の掌に乗せる。

レミリア嬢もそれを丁重にそれを受け取り、俺の前へ差し出してくる。

それは何かの種だった。

 

レミリア

「この種があの娘よ」

 

和磨

「っ!?」

 

それだけ聞いただけで和磨は息をつまらせ、うつ向いてしまう。

俺はというと正直レミリア嬢の行っている意味を理解できない。

冗談でも言っているのか?

 

咲夜

「妖精という種族は自分が生まれた自然が破壊されない限り死を迎えることはないの。

ただしほかの生物と同じくダメージが許容範囲を超えると死ぬのと似たような状態に陥るの。

そして彼女がその状態になった時に彼女が寝ていたベッドの上にあったのがこの種。

つまり予測だけどこの種から花が咲いたとき、彼女はまた現れるという事だと思う」

 

死んだわけではないのか。

それならまだ救いは……………。

 

和磨

「1つ補足すると恐らく種になる前の記憶はほとんど残らない。

なにか怖い目にあって誰かに助けてもらった。

くらいだろうね。

後は主と認めたレミリア嬢のことをぼんやり覚えているくらいだと思うよ」

 

翔

「なっ!?」

 

なんてことだ……………。

 

咲夜

「私達はこの種を育てる。

そして力を回復させて現れた彼女とまた最初から関係を始める。

でもそれでいいの。

少し我慢すればまた家族として一緒にいられるのだから」

 

翔

「そうか………………。

永遠の別れではないだけまだ良かったのかもしれないが……………あまりにも……………」

 

言葉がでなった、うつむくしかなかった。

そんな時僅かな嗚咽が耳に届いた。

 

レミリア

「せっかく、家族になったのに………沢山思い出を積み上げて来たのに…………何故あの娘だけ失わなければならないの……………?

奴らは私を退治しにきたのではないの?

何故あの娘を手に掛ける必要があったの………………?」

 

声を押し殺し、しゃくり上げながら涙をこぼすレミリア嬢に俺はかける言葉を見つけることが出来なかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。