東方歌唱録   作:苦労人ーくろうにん

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人里防衛戦


第八十二話

others side

 

 

ここは幻想郷に数ある人里の中で一番大きな里である。

そもそもはほかの里とそう違いはなかったのだろう。

ただいくつか違いがあるとしたら幻想郷の歴史を何代にも渡り記し続けている【稗田阿求(ヒエダノアキュウ)】やワーハクタクと呼ばれる半人半妖である女性【上白沢慧音(カミシラサワケイネ)】が住んでいることであろうか。

そんな里であるあるが故か、この里には様々な人間が集まって来る。

八雲紫のイタズラ、運悪く(もしくは良く)たまたま外の世界と幻想郷の境界をくぐったもの、外の世界で存在を忘れられたもの。

人口が増えすぎた人里だったが、上白沢慧音がある事を提案した。

里にいくつかあった農園を大きく拡大し、里に流れてきた外来人を職人に弟子入りさせ、技術を与える。

そうして生産された物を他の里や、友好的な妖怪に売ったり、物々交換を行ったりと商業的な事を始めたのである。その結果は人の生活の質を格段に引き上げた。

更に、大きくなった里を護る自警団を結成、妖怪から里を守るだけでなく、里の中の治安を護ったり、人手のないところに人手を送ったりとあらゆる意味で里を護る集団を作った。

 

そんな自警団に最近配属されたとある人間が今回の話の中心となる。

彼の名は神谷圭亮。

風を操る程度の能力を持つことを除けば普通の人間。

だったのだが今の彼の立ち位置は簡単に説明するなら【交友関係がカオスな人間】と言った所だろうか。

彼は友人同士で集まってバンドをしているが、そのメンバーには彼を除けば一人しか人間がいないのだ。

そんな彼がこの日、バンドメンバーのリーダー、吸血鬼の田村翔からこんな話を聞かされた。

 

圭亮

「近いうちに妖怪がここに攻めて来る?」

 

場所はちょっとした広場。

時間は早朝。

翔は木の根元に寄りかかり、いつもと変わらない調子で圭亮へと言葉を投げかける。

 

「あぁ、八雲紫から依頼を受けてな、ここを護れと来た。

もちろんそんなことなら頼まれなくてもやる。

妖怪が人を喰う事を否定するからなんて子供みたいな事は言わないが…………」

 

ひらひらと手を振りながらそこまでいうと圭亮の友人は両手をポケットに突っ込み、雰囲気ガラリと変えた。

ヘラヘラとした態度はなりを潜め、嫌悪感を隠そうともせずに田村翔は言葉を紡ぐ。

 

「わざわざこの馬鹿でかい里を襲おうとするんだ。

目的は【食事】ではない」

 

圭亮は、背中に冷たいものが走るのを感じていた。

それがどうしてなのか理解するまでにそう時間は掛からなかった。

 




久々に翔が真面目ですが今回の主人公は圭亮です
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