東方歌唱録   作:苦労人ーくろうにん

89 / 106
人里防衛戦part2


第八十三話

 

息が詰まったように体を硬直させ、言葉を発せずにいる圭亮に気付いた翔は慌てたように声音をいつものおどけたようなものに戻す。

 

「っ、とすまん圭亮。

つい力が入った、奴らの目的なんてどうでもいいさ。

とにかく俺はこの里の防衛に影から力を貸そうと思う。

攻めてきた妖怪を確実に駆逐する必要があるからおおっぴらには動けないがな」

 

そこまで言うと木の陰から出てくる翔。

まだそう強くない陽射しを浴び、不快そうに眉を曲げる。

 

 

「………やれやれ、やはり日光は好かん。

もう少しで陽射しも強くなるだろうしそろそろ戻らないと面倒になりそうだな………。」

 

気だるそうに言いながら吸血鬼の特徴とも言える蝙蝠のような形をした羽を広げ、地面から数十cm程浮き上がる翔。

彼は空中ではたと何かを思い出したような表情を浮かべ圭亮の方に顔を向ける。

 

「それとな圭亮、この情報はおおっぴらにはしない方がいい。

俺の方から信用出来そうな者に話はしてあるからお前はこの里を護ることに集中するんだ」

 

翔から注がれる強い意思を込めた視線に対し、圭亮は力強く頷く。

 

圭亮

「わかった、やれるだけやってみる!」

 

圭亮の返答は自信に欠けるものでははあったが、翔は満足気に口の端を歪めて見せる。

 

「圭亮、大丈夫だお前は強い。

慢心せず、謙遜せず、楽観せず、絶望せず。

お前はお前に出来ることをすればいい」

 

応援しているぞ。と、付け加え西に向かい飛んで行く翔を見届ける圭亮。

 

圭亮

「俺に出来ること………か。

うーん………トレーニングのメニュー見直して見るかな。

よし、折角だしランニングしながらメニューを練ろう!」

 

軽くストレッチをしてから走り出す圭亮。

三時間近くランニングをし、新しいメニューを練ったのだった。

 

 

others side out

 

 

圭亮side

 

翔が人里の危険を教えてくれてから三日たった。

この三日間の間に色々自分に出来ることを把握して、発展させる為に、体に負荷が掛かり過ぎないように気をつけながら少し自分を鍛え直してみた。

どれだけ鍛えても不安はなくなりはしない、いつ妖怪が攻めてくるのか、自分は里を護れるのか、でもそんな不安に押しつぶされているようではいけないと自分を鼓舞し、翔の言っていた『自分の出来ることをすればいい』という言葉を思い出す事が多かった。

翔の言葉と表情はなんとなくやる気というか克己心を刺激してくる気がする。

折角だし翔に戦う為の術の教えを請うてみてもいいかも知れないなんて思っていたある日状況に動きがあった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。