圭亮
「落ち着け、俺。
まずは状況の確認だ」
支給されていた携帯式の簡易望遠鏡を覗いて表門側の偵察部隊が展開しているであろう場所を確認する。
ちなみにこの簡易望遠鏡は妖怪の山に住んでいる河童が外の世界の技術を真似て作ったんだとか。
圭亮
「……………。
っ!おいおい!?」
偵察部隊の連中を見つけることはできたが状況は最悪の一歩手前の様な状況だった。
体の小さい獣が群れをなして偵察部隊の連中と交戦している。
見たところ戦力は拮抗している様でぶつかっては離れてを繰り返していた。
圭亮
「皆に知らせなきゃな………!
よーし…………おりゃあ!」
監視塔から飛び降りる。
高さは10m程。
空中に躍り出た瞬間右手に意識を集中させる。
引き伸ばされた視界とごうごうとうるさい音の中、力を込めた右手を地面に向けて突き出す。
轟音と共に落下のスピードは急激に落ち、地面と接触する瞬間にゼロとなり、ふわりと体が浮き上がる。
圭亮
「っと、上手いこといったか。
よかった………」
さて、まずは誰にこの状況を知らせるべきか。
慧音
「圭亮!」
圭亮
「慧音さん………?
たった今別れたばかりだったじゃないですか。
どうしたんですか?」
息を荒くした慧音さんはかなり慌てているらしく、息を整える前に言葉を発そうとしてむせ込み、しばらく咳き込んだあと、やっと言葉を紡ぐ。
慧音
「里に誰も居ないんだ!
誰一人として!」
圭亮
「そんなっ!?
どういうことですか!?」
そんなバカな!?
この状況で一体どこに皆が消えるっていうんだ!?
「慌てなくていいよ圭亮。
非戦闘民は僕が別の場所に逃がしといたから」
圭亮
「っ!」
頭上から聞き覚えのある声が聞こえて俺は咄嗟に声のした方を仰ぎ見る。
圭亮
「か、和磨!?」
そこにいたのは紛れもなく弘原海 和磨…………最近一緒にバンドを始めた友人だった。
和磨
「や、圭亮。
それと貴女は上白沢 慧音さんですね?
田村 翔から聞き及んでいます。
さっきも言いましたがここの戦闘能力の低い人間は一時別の場所に避難させました。
この里に残っているのは最低限自分の身を守れる者ばかりです。
貴女も含めてね?」
それは……………。
圭亮
「待ってくれ和磨。
それはどういうことなんだ?」
和磨が口を開きかけた瞬間、村の入口の両側から地響きの様な衝撃を感じた。
和磨
「……………ま、こういう事だよ」
肩をすくめながらため息をつく和磨。
和磨
「翔と紅零が頑張ってるけど数が多過ぎるみたいだね。
二人とも僕の方で目一杯フォローしながら戦うから翔と紅零が駆けつけるまでなんとか持ちこたえて。
さぁ…………来るよ!」
和磨のその言葉を皮切りに、そこかしこで戦闘の気配がし始めた。