東方歌唱録   作:苦労人ーくろうにん

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恭典の姐さん


第九十三話

「………」

 

紅茶を口に運び、ため息をつく。

この午後の気だるい時間はなかなかに乙なものだと思う。

今日は家に俺1人なのでこの寂しさと気楽さと退屈感と平和さ加減がないまぜになった様なこの不思議な気持ちを正午辺りから堪能しつつ最近の出来事に思いを馳せてみる。

里を襲った例の骸骨野郎を始末してからそろそろ一週間になる。

奴がなんだったのかは八雲紫の式である八雲藍が調べてこちらに報告してくれるらしい。

その後その情報は圭亮方にも渡してもらわなければな…………戦ったあいつにはそれを知る権利があるはずだ、奴がどんな理由で里を襲ったのか、それを知る権利が。

 

「さて、これだが……………」

 

柄にもなくシリアスな事を考えてしまった。

1度施行をリセットするために今まであえて視界に入れないようにしていた物に目を向ける。

そこには高さ、幅30cm程の大きさのケーキが鎮座している。

紅零が出かける前に

「おやつにでもするといいよ、ただし練習で作った奴だから味は保証しないけどな」

とか何とか言って置いて行った物なんだが………………。

 

「いただきます」

 

能力でフォークを取り出し、1口切り分けて口に運ぶ。

味としてはどこにでもありそうなショートケーキだ、中にフルーツが入っているものも多く見るがこれはクリームの層が所々見られるだけの所謂《万人向けのショートケーキ》といった所だろう。

ただし違うところが1つ。

 

「あっまい………」

 

そう、ただ甘い。

普通のケーキより3割増で甘い。

甘いものが苦手な者は辛いかかと思う。

ちなみに俺はまぁ普通に食べれる。

どちらかと言えば辛党な俺だがこの位なら甘いとは言いながらも普通に食べれる。

 

30分が経った。

 

「う……」

 

大きかったケーキだがなんとか半分平らげたところでいい加減限界が来た。

やはり甘いものとなるとこれだけの量はキツイか………。

 

【コンコン】

 

扉がノックされる。

 

「はいはい今出ますよっと」

 

特に急ぎもせずにノロノロと扉へと歩き、緩慢な動作で扉を開けると。

 

「おい、どーしたお前?」

 

さんざんくたびれたと言わんばかりの恭典が立っていた。

 

恭典

「ァー、腹減った…………取り敢えずなンか食うものねェかァ?」

 

さらに30分後。

 

 

「つまり、あの時姿を見せなかった大会委員……もう主催者でいいか。

その人が直々に俺に会いたいと?」

 

恭典

「そういうこったァ、前々から見てみたいとは言ってたンだがついに招待しろと言い出しやがったァ。

そンなワケでご同行願おうとやって来たってワケだ」

 

俺が残したケーキを綺麗に平らげた恭典が満足そうに事情を説明してくれた。

なるほど、恭典が姐さんと慕う鬼の女性か。

たしかに俺としてもどんな恐ろしい人なのかと興味はある。

 

「ふむ、それならお呼ばれされてみるとするか…………途中で里に寄りたいんだが構わないか?」

 

恭典

「あァ、構わねェよ」

 

他のメンツへの書き置きを机において家を出る。

さて、どんな人物か、楽しみだな………。

 

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