二〇九五年四月三日
国立魔法大学附属第一高等学校
桜の花びらが舞う中庭、その隅にある3人がけのベンチに腰掛けている司波達也は、お気に入りの書籍サイトを開いている携帯端末から顔を上げた。
近づいてくる足音が右斜め前で止まったからだ。
顔を上げた先にあったのは、新調したててであろう制服を着た新入生と思われる男だった。制服の左胸には八枚花弁のエンブレムがある。身長は達也とほぼ同じ百七十五センチかそれよりやや低いくらいだろう。
顔立ちは少し幼く、柔和な印象を抱かせる。
男子生徒は達也と目が合うと人好きのする笑顔になり、話しかけてきた。
「隣、空いていますか?」
「ああ、空いてる」
男子生徒は少し照れた表情で会釈をして、3人がけのベンチの右端に座った。
達也が周りを軽く見渡すと達也が来た時間に比べれば随分とベンチは埋まっていたが、誰も座っていないベンチもまだ充分に残っていた。疑問に思い再び目線を彼の方に向けると、彼は顔を少し赤らめもじもじとしながら、体を達也の方に向けて話しかけてきた。
「新入生ですか?」
「そうだが」
「よかった。俺は志那ヒロト、新入生同士よろしく」
「……俺は司波達也、よろしく」
──わざわざ一科生が二科生になんの用だろうか。新入生だろうと事前に一科生と二科生の確執くらい知っていそうなものだが。
そういう考えがあったせいか、達也の口調は自身で考えていたより無愛想なものになってしまった。
達也は申し訳無さを感じつつ、何気なく志那ヒロトと名乗った男子生徒の右胸の花の花弁のエンブレムの刺繍を見る。
ヒロトはその視線に気がついたのか気まずそうな顔をして弁明のような口調で早口で話してきた。
「読書中にすいません。入学式に緊張してつい早く来すぎてしまって、さっきまで校内を見て回っていたのですが、一通り回ってしまって、手持ち無沙汰になってしまったもので……」
「いや、俺もちょうど手持ち無沙汰だったんだ。一時間前に着いてしまってこれぐらいしかやることがなかったんでね。ちょうどよかったよ」
達也はそう言いながら、スクリーン型の携帯端末の存在をひらひらゆらして主張する。口調も先程感じた申し訳無さによって柔らかいものになっていた。
ヒロトは、話していて横柄な態度でいることが非常に申し訳なくなるような、どこか気弱な雰囲気を醸し出していた。
ヒロトに達也の友好的な意思が伝わったのか、顔をほころばせ、今度は話しやすい声遣いで話した。
「ああ。俺が、司波くんに話しかけたのもそれが理由なんだ」
「達也でいい。それで、理由とは?」
「ありがとう。俺もヒロトでいいよ、達也。
折角時間が余ってるんだから新入生同士で知り合いたいなって思ってたんだけど、新入生っぽい人はほとんど仮想型を使ってて」
「なるほど」
「仮想型使ってる最中の人ってなんとなく話しかけづらくてさ」
仮想型とは仮想型ディスプレイ端末の略称である。2095年現在、携帯端末は仮想型ディスプレイ端末とスクリーン型端末の2つに大きく分けられる。
魔法科高校だけでなく魔法師全体で仮想型端末は魔法力を損なうという考え方が根付いている。しかしスクリーン型は仮想型に利便性において劣るためスクリーン型の使用者は一般的には少数派である。
達也は辺りをさっと見渡して、目の届く範囲の人たちの制服の様子を確認して、上級生と新入生に分類していく。確かに上級生はほとんどがスクリーン型を使っているのに対し、新入生は仮想型をつかっているようだった。
魔法に関する専門的な教育を受けてきていない多くの新入生は仮想型を抵抗なく使うらしい。
また仮想型ディスプレイ端末の見た目は眼鏡に似たゴーグル型であり、使用中はスクリーン型よりも周りの情報から遮断されがちである。もちろん話しかけられると自動的にフェードアウトする機能など使用者に配慮された機能も多くあるものの、仮想型使用中の人に話しかけるのは心理的に抵抗があるし、なによりマナー違反であるとする人もいる。
ヒロトは波風を立てるのを嫌ったようだった。達也はそのことには共感できた。だが、だからといって二科生に話しかけるというのは理解できなかったが。
「たしかにな」
「そういえば、達也はどうしてそんなに早くに来たんだ? 入学式が始まるまであと50分近くあるし、やっぱり緊張した?」
ヒロトの口調は好奇心に満ちていた。
「いや、俺は妹の付き添いだ」
「妹?」
張り切りすぎて早く来てしまったという不名誉な認識を取り消そうと達也は説明したが、あまりに簡潔に過ぎた。
ヒロトは疑問を顔に浮かべていた。達也は、ヒロトの脳内で、妹で同級生ということは双子なのか、なぜ同級生である妹が入学式の始まる2時間前に行かねばならないのか、という疑問が生じていると推測する。双子云々に関してはよくある質問だった。
また高校生活の間ずっと付きまとうであろう、あまりに優秀な妹と落ちこぼれの兄という事実を説明するために達也が口を開く。
「ああ、妹は新入生総代でな。それと同級生だが双子じゃない。俺が4月生まれで妹が3月生まれなんだ」
「なるほど、妹、妹か……」
ヒロトは妹という部分に引っかかているようだった。
「ああ、妹は優秀でな。兄は不出来なもんで、この有様だがな」
そう達也は自嘲気味に言いながら、左胸の指差す。初対面の同級生に対してやることではないのかもしれないが、ヒロトは自然とそのようなことを言い易いオーラがあった。
「悪い。そういうつもりじゃなかったんだ。
実を言うとね、1時間ぐらい前に達也が講堂の前で同級生っぽい女子生徒と親密げに話しているのを見てたんだ。一緒に合格することのできた彼女かな、とか考えてたんだけど妹だったことに驚いてね」
「意外と注目されていたみたいだな」
達也が記憶をたどると、たしかにあの場所には疎らだったとはいえ新入生やその父兄の姿があった。そのなかにヒロトもいたらしい。
「そりゃあんなに綺麗な人だったら誰だってね。とはいえ盗み見たことは申し訳ない」
「気にしないでくれ。すると俺に話しかけたの本当の理由はそれだったのか?」
「さっき言った理由も嘘じゃないさ。
ただ入学式に彼女らしき人物を連れてる男に興味がなかったといえば嘘になるな」
ヒロトはニヤッと笑う。意外にお茶目な一面もあるらしい。
最初はわざわざ話しかけてきた一科生ということや、達也たちの事情も相まって、警戒していた達也だが気が付けば警戒はほぐれ高校生らしく会話ができていた。
──別に世の中すべてが敵って訳では無い。過剰に警戒しすぎても仕方ない、か……。
● ● ●
しばらく達也はヒロトと中庭のベンチで喋っていた。
達也は自身の言葉遣いや風貌があまり人に好印象を与えにくいことを知っていたが、ヒロトはあまりそのことに頓着した様子はなかった。
お互いに、そろそろ開場の時間だから移動しようか、と提案しようとしたときだった。頭上から女性の声が降ってきた。
「新入生ですね? 開場の時間ですよ」
達也は話しかけてきた上級生と思しき女子生徒の左腕に巻かれたCADを把握し、彼女が生徒会役員か特定の委員会に所属していると推測する。
ヒロトも同様の推測をしているのか、立ち上がって不躾にならない程度にCADを見つめていた。ヒロトが視線を彼女の顔に向けると、何かを思い出そうとしているような顔をし、すぐにハッとした表情になった。
「ありがとうございます。すぐに行きます」
達也も立ち上がって頭を下げ、礼を述べる。そして講堂に向かおうと考えるが、彼女が興味深そうに二人を見つめていた。彼女は二人より二十センチは身長が低い。自然と少し見上げるような目線となる。
「お二人は友人なんですか?」
「いえ、ついさっき知り合ったばかりです」
「早く来すぎてしまったので、これからの学友と親交を深めていたんです」
達也が簡潔に答え、ヒロトが説明をする。ヒロトは緊張しているのか、かしこまった言い方をしていた。『これからの学友と親交を深める』の言い方や言い回しがツボだったのか、彼女がクスクスと笑う。
「それはいいですね。 新入生が仲良くしているのを見るとなんだか嬉しいわね」
彼女はずいぶんと人懐っこい性格のようだった。あっという間に口調がくだけて、距離を縮めてくる。二人が距離の近さに戸惑っていると彼女が自己紹介を始めた。
「あっ、申し遅れました。私は第一高校の生徒会長を務めている、七草真由美です。ななくさ、と書いてさえぐさ、と読みます。よろしくね」
彼女、真由美はヒロト以上に初対面の人に対してフランクであった。美少女然としたルックス、均整の取れたプロポーション、蠱惑的かつ接しやすい雰囲気は、大抵の男子なら勘違いしてしまいそうな様子だった。
しかし達也は十師族、よりにもよって四葉と一番仲が悪いとされている七草と出会ってしまったことに辟易としていた。それに対して、ヒロトは若干興奮したような様子である。
「俺は志那ヒロトです。あの、七草先輩は去年と一昨年、九校戦に出てらっしゃいましたよね。拝見しました。えーと、その、素敵でした」
達也は美少女に近づかれて興奮しているのかと邪推していたが、どうやら真由美は有名人のようだった。ヒロトの緊張はそのことが原因であるらしい。
「あら、素敵だなんて。ありがとね」
真由美はその手の言葉に慣れているのか、手慣れた様子で、かつ少し照れくさそうな表情で感謝の意を伝える。ヒロトは素敵という表現が初対面の女性にいうにしては大仰過ぎたと気がついたのか、混乱した様子だった。
「でも志那くんも今年は九校戦に出れるかもしれないわよ。確か志那くんは入学試験の成績が総合二位。このままいけたら九校戦に出場できるから、頑張ってね」
そう言いながら真由美は達也の方に意味ありげな視線を送る。達也は試されているような気がして、あまりいい気持ちにはならなかったが、生徒会に入るであろう妹のためにも平然とする。
「二位だったんですか。ありがとうございます。頑張ります」
字面だけ見れば一位でないことに驚いているようにも捉えられるが、そうでないことはヒロトの表情をみれば一目瞭然だった。ヒロトは望外の結果だったようで、はじけるような笑みを浮かべていた。
──一位が深雪であることを考えれば間違えなく同年代の中でもトップクラスの実力だろうな。
すると今度は達也の番であると言わんばかりにヒロトと真由美が達也を見つめる。あまり気乗りはしないが形式的にだけでも、と達也は真由美に対して簡潔に自己紹介をする。
「自分は司波達也です」
「司波達也くん……そう、あなたが、あの司波くんね……」
真由美が心底驚いたような表情をする。達也は新入生総代、主席入学の妹と比べて兄である自分が不出来であることが噂になっているようだ、とネガティブな想像をしていた。しかし真由美は楽しそうに含み笑いをして、言葉を続ける。
「先生方の間ではあなたの話でもちきりよ。
入学試験、七教科平均、百点満点中九十六点。特に圧巻だったのは魔法理論と魔法工学。合格者平均が七十点に満たないのに、両教科とも小論文を含めて文句なしの満点。前代未聞の高得点だって」
「ペーパーテストの成績です。情報システムの中だけの話ですよ」
「そんなすごい点数、少なくとも私には真似できないわよ? 私ってこう見えて理論系は結構得意なんだけど、入学試験と同じ問題を出されても同じ点数は取れないだろうなぁ」
達也は予想外の反応に気まずくなりヒロトの方を見ると、ヒロトは愕然として固まっていた。あまりこの話を広げたくなかった達也はヒロトが再起動する前にこの場を離脱しようとする。
「そろそろ時間ですので……失礼します」
そう言うと、呆気にとられて再起動したヒロトと共に達也は講堂へと歩を進めた。
講堂に行く短い時間の間、入学試験の成績について聞きたいけれども、達也が乗り気でないことを察して聞くに聞けない様子のヒロトを達也は無言で視界の片隅に収めていた。悪い気はしなかった。
● ● ●
講堂に着くと前列と後列で明らかに分かれて座っている、一科生と二科生の姿が二人の視界に入ってきた。達也は苦笑し、ヒロトは呆れた顔をしていた。
「俺は後列のどこか空いているところに座るが……」
「流石に俺も場の空気を読んで前列に座るよ」
自分はこの場の空気に従うがヒロトはどうする?という意思を沈黙で表す。ヒロトが前列に座ると聞いて、達也は少し安心していた。ヒロトは場の空気を無視して達也についてきそうな気がしたからだ。
とはいえ、さっきまでの様子を見るに人の感情の機敏に敏いほうであったし、それは達也の先入観に過ぎなかった。
「わかった。それじゃあ」
「おう、また」
お互いに軽く手を振り、別々の席に向かっていった。
● ● ●
達也は講堂で女子生徒たちと知り合い、妹の答辞を聞き、妹の心配をしながらも入学式が恙無く終わるとその女子生徒たちとともに生徒のIDカードの交付を窓口で済ませていた。
ちなみに複数あるIDカード交付の窓口でも当然のように一科生と二科生がきれいに分かれていた。
そして達也は今、さっきの女子生徒の中で達也とクラスが同じE組だった人たちと講堂の入り口近くの隅っこの方で駄弁っている。
女子生徒たち、特に千葉エリカという女子生徒、との怒涛のような会話のせいもあってか、ヒロトのことは思考の片隅に追いやられていた。達也の最優先事項である深雪との待ち合わせのことは一時も忘れていなかったが。
ちょうど会話の区切りがついたところで背後から声がかかる。声の主は間違えようのない、達也の妹の深雪であった。
「お兄様、お待たせ致しました」
「早かったね」
達也が振り返りなが応えると、深雪の背後には幾人かの同行者が連れ立っていた。そのうちの二人は達也の知る顔であった。七草真由美と志那ヒロトだ。
「こんにちは、司波くん。また会いましたね」
真由美は衆人環視ということもあってか、さっき会ったときよりも丁寧な言葉遣いで話しかけてきた。その少し離れたところにいるヒロトは、達也と目が合うと片手を上げて会釈をするものの、微笑を浮かべながら達也とその周囲を眺めていた。
その後の深雪と達也の、傍から見れば、彼氏と彼氏の浮気を見咎める彼女のような微笑ましいやりとりの間も、ヒロトは近くから眺めていた。
暫くして女性同士の間で自己紹介が始まると、ヒロトはスッと達也のそばに近寄り、微笑みながら会釈し、しかし直ぐに真顔になって話しかけてきた。
「達也、両手に花じゃないか。羨ましいな」
「そのくだりはもうやったぞ、ヒロト」
その返答が特別可笑しかったというわけではないだろうが、ヒロトはくつくつと笑っていた。どうやら仲良くなった相手には結構陽気な性格らしい。
「そうだったのか。悪かったな」
「よく言う。最初から見ていただろう」
「そうだったかな?」
おどけるヒロトに達也は軽くため息をつき、呆れた表情を見せた。その様子をちょうど自己紹介が終わり目撃していた深雪は、しかし、表情をほとんど動かさなかった。
だが目を軽く見開き、深雪をよく知る人が見れば、深雪が非常に驚いていることがわかるだろう。その深雪をよく知る人である達也は深雪が発言する前に言葉を発する。
「深雪、生徒会の方たちの用事は終わったのか?もしまだなら、別のところで時間を潰しているぞ?」
流石に、ずっと置いてけぼりを食らっていた生徒会の面々を放置するわけにはいかなかった。真由美はずっとにこにことしていたが、もう一人の目付きの鋭い男子生徒は段々と顔が険しくなりつつあった。
「大丈夫ですよ。今日はご挨拶させていただいただけですから。深雪さん……でよろしいかしら」
「はい」
「では、深雪さん、詳しい話はまた日を改めて」
達也の質問に答えたのは真由美だった。しかしその真由美の決定にもう一人の男子生徒は不服のようだった。
「会長、それでは予定が…」
「予めお約束していたわけではありませんから。別に予定があるなら、そちらを優先すべきでしょう?」
そう言うとこれで終わりとばかりに視線を深雪の方向に戻す。
「それでは深雪さん、今日はこれで。司波くんに、志那くんもまたいずれ」
生徒会の面々はそれで去っていったが例の男子生徒は主に達也に向かって舌打ちでも聞こえてきそうな表情で去っていった。
達也の心証を悪くしてしまったことに深雪は申し訳無さを感じつつも、気になっていたことを口にする。
「お兄様、そちらの方は?てっきり生徒会の方かと思っていたのですけれど」
「こちらは同級生の志那ヒロト、深雪を見送ったあと知り合った。てっきり深雪には挨拶を済ませているものと思っていたんだが…」
ヒロトはどうやら自己紹介もせずに深雪をつきまとっていたらしい。そのことに達也が気付くとヒロトに対して責めるような目つきで軽く睨む。
しかし達也は軽く、のつもりであったがそれはまだ高校生になったばかり同級生にとって厳しすぎるものだった。その証拠に達也と一緒にいた別の女子生徒である柴田美月はヒッと声を漏らしていた。
ヒロトも怖かったのか慌てて言い訳を述べる。
「申し訳ない。司波さんに達也。
せっかくだから入学式が終わってから達也と合流しようとしたんだけど、IDカードの交付があったり、人でごった返してるのもあってなかなか見つけられなくてさ。
だから達也と合流するであろう司波さんについていったわけだけど、流石に来賓と生徒会の面々を押しのけて達也のところへ案内してもらう勇気はなくてね…」
「気にするな。こっちこそ早とちりして悪かった」
「ええ、お気になさらず」
達也は美月の反応で予想外の畏怖を集めていることに気づき、すぐさま謝罪を受け取る。また深雪も、達也と親しくなった人の達也への心証が悪くなることを恐れてフォローする。
「ありがとう。それじゃ改めて、俺は志那ヒロト。千葉さん、柴田さん、司波さん、よろしく」
「ええ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします、志那さん」
「志那くんね、よろしく」
ヒロトの自己紹介に深雪、美月、エリカの順でこたえる。美月は達也のひと睨みを結構怖がって割には、すぐに平然とした様子に戻っていた。見た目によらず神経は図太いのかもしれない。
「それにしても、不思議な偶然だな。チバ、シバタ、シバにシナ。苗字がみんな似通ってる」
そのヒロトの発言に達也とエリカと美月が顔を見合わせる。確かにその通りだが、入学式が始まる前にも達也たちで似たような会話をしたばかりだった。エリカが「チバにシバタにシバでしょ?なんか語呂合わせみたい」と言っていたのだ。三人が言いたいことを達也が代弁する。
「ヒロト、そのくだりももう済ましているぞ」
「そうだったのか」
今度はおどけるのではなく、純粋に些か呆気にとられた様子だった。
その後も同じような反応をするだけあってか、ヒロトとエリカが意気投合したり、女性陣が男性陣をおいてけぼりにして盛り上がり、達也とヒロトが顔を見合わせながら苦笑するといった場面もあった。
なんとなく場が一段落したため、達也が周りを見ると人が疎らになりつつあった。同級生は、同じクラスの友人を作りに自由参加のホームルームに向かうか、帰宅するかしているようだった。
流石にいつまでもここで駄弁っているわけにもいかない。達也が帰宅の途に着こうと提案する。
「さて、いつまでもここにいるわけにいかないし、帰ろうか」
「あの、皆さん。もしこのあと時間がお有りでしたら、せっかくですからお茶でも飲んでいきませんか?」
とは言っても、ここにいるのはついさっき知り合ったばかりの高校生。どこかでお茶でもしながら、語らい、関係を深めるのは自然な流れと言えた。
ただ、達也はそのような提案をするのは社交性の面からエリカか、もしくはヒロトかと思っていたが、意外にもその提案をしたのは美月だった。
「いいね、賛成! 美味しいケーキ屋さんがあるらしいんだ」
「俺も賛成」
エリカとヒロトが賛成の意を示す。
「お兄様、どういたしましょうか?」
「いいんじゃないか、同年代の友人はいくらいても多すぎるということはないし。なにより、これからの学友と親交を深める、のはいいことじゃないか」
達也が深雪の質問にこたえる。が、後半の『これからの学友と親交を深める』のところでヒロトの方を一瞥していた。ヒロトは苦々しい表情になったが、苦情は胸に留めたようだった。自身の達也へのいじりがブーメランのように帰ってきたことを理解していたからだろう。達也なりの意趣返しだった。
● ● ●
エリカに連れて行かれたフレンチのカフェテリアで昼食を済ませ、短くない時間お喋りに興じていた達也たちが解散したのはそこそこいい時間だった。ヒロトは家が一高から徒歩圏内だそうで店の前で別れたが、他の面子は一高の最寄り駅のホームで別々の
深雪は達也とともにキャビネットのなかで今日という出会いに溢れた日のことを考えていた。コミューターの中で二人きりの状況に今朝ぶりになったことで、耳目のある場所では見せられないほど親密に達也に話しかける。
「お兄様、深雪は嬉しいです。お兄様は中学生の頃は周囲の人達と距離をおいておられました。
ですが今日エリカや柴田さん、そしてなにより志那さんと親しげに喋られて、お兄様が普通の高校生として過ごされているのを見て、本当に深雪は嬉しゅうございます」
「ありがとう、深雪。深雪が喜んでくれているのが俺も嬉しいよ。
俺達はなかなか人のことを信頼しずらい環境にいるが、だからといって普通の人間関係を諦めなきゃいけないというわけじゃない。せっかく一高に進学したんだしね」
「はい、お兄様」
二人は兄妹というにはあまりにも睦まじい様子で、駅に着くまでのコミューターのなかで二人きりの世界を作りあげていた。
しかし、これから三年間の魔法科高校生としての生活が激動のものとなり、波瀾に満ちた高校生活を送ることになることは二人はまだ知らない。
そして紛れ込んだイレギュラーもまた、自身の存在がどのような影響を与えるのか、知らなかった。
今までの妄想を書き起こしてみようと思ってやってみました。
戦闘シーンとかかっこよさげな場面とか自分で考えた設定とかいろいろあるんだけどそれを書くためには全然関係ないシーンを書かなきゃいけないという事実に書き始めてから気がつきました。
だいたい、全体の流れとかは今までの妄想で作られているんだけど、日常パートでどういうことを書けばいいのかで悩んでいたり、そもそも文章を書いた経験がなさすぎて文字にするだけで精一杯です。
でもちょっとずつ自分の書きたい展開に近づいてると思うと意外と楽しい今日このごろ。
感想に書けない要望などは活動報告にお願いします。
では。