リアライズ・オンライン  ~バグ技が大好きなゲーム廃人は、人外の腕前でeスポーツ界を蹂躙する~   作:熊乃げん骨

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EP7 錆び武器《アンティークウェポン》

「それではさっそく次の大会……あっ」

 

 何か不穏なことを言いかけた怜奈さんは、何かに気づき声を上げる。

 彼女の視線の先、俺の背後に目を向けるとなんとそこには宝箱が一つ置かれていた。絶景に気を取られて気がつかなかった。

 

「まさか本当にお宝があるとはな! これ、開けてもいいか?」

「ええもちろん。中身も貰っちゃって下さい」

「じゃあ遠慮なく……ふひひ」

 

 気持ち悪いと自覚のある笑みを浮かべながら、宝箱を開ける。

 すると中には錆びている手甲が入っていた。

 

「およ? 外れか?」

 

 手に持ってそれの情報を見てみると『古ぼけた手甲』と表示された。説明には『古ぼけた手甲。竜の力が込められているが、長年放置されていた為その力は失われている。腕の良い鍛治士であれば治せるかもしれない』と書かれていた。

 

「『錆び武器』か。もしかしたらレア武器になるかもしれないな。本当に貰っちゃっていいのか?」

「ええ構いませんよ。ところでそれを研ぐアテはあるのですか?」

 

 錆び武器とは鍛治士が研磨することでその本当の姿を表す武器のことだ。外れの武器も多いが、中には超レア武器も出る一種のギャンブルだ。

 

 怜奈さんがなぜ心配しているのかというと『研磨』という作業が出来る鍛治士の数は少ないからだ。上位の鍛治士職を取ったプレイヤーか、数人しかいない鍛治士のNPCの予約を取らなければ研磨を行うことは出来ない。

 

 鍛治士職を取ってるプレイヤーは珍しいので滅多に会えないし、NPCは研磨待ちのプレイヤーで予約が埋まっている。なので中々研磨をすることは出来ない。

 

「もしよろしければ鍛治士のプレイヤーを紹介致しますよ?」

「大丈夫、俺にも当てはある」

 

 そう自信満々に答えると、怜奈さんは驚いたような顔をする。

 

「まさか空さんにそんな知り合いがいらしたなんて……!」

「失礼なやつだな! ……まあそいつは実在するプレイヤーじゃなくてNPCだけどな」

 

 悔しいが彼女の想像通り俺が協力を頼めるプレイヤーは少ない。頼れる奴がいないわけではないが、借りを作ってしまったら無茶なお願いをしてくるような奴らばかりだ。出来る限り関わらないのが吉だ。

 

「では鍛治士のNPCでお知り合いがいるのですか?」

 

 怜奈さんは興味津々といった感じで聞いてくる。その瞳には好奇心の炎が燃え盛っている、分かってはいたがこの人は俺と同種。リアオン大好き人間だ。

 しょうがない。あまり教えたくなかったが俺のとっておき情報を教えてやろう。

 

「忍びの里だよ。俺が『忍者』の職業《ジョブ》を取った隠れ里には腕のいい鍛治士がいるんだ」

「なんと! 噂には聞いてましたが本当に存在するのですね……!」

 

 怜奈さんのテンションがみるからに上がる。ふふん、そんなに食いつかれると俺も鼻高々になるぜ。

 

 忍びの里は忍者に認められないと入ることが許させない隠れ里。その情報はどこの掲示板にも載っていない。つまりこれは俺だけが知っているマル秘情報ってわけだ。

 自慢げにその話をしていると、怜奈さんは申し訳なさそうに尋ねてくる。

 

「あの……もしよろしければ、なんですが。その、里を見学することは。出来ないのでしょうか?」

「見学? うーん、どうだろうな。そんなこと頼んだ事ないから分かんないな」

 

 忍びの里に入るには、厳しい試験を突破し忍者の仲間にならないといけない。しかし忍者としてでなく一般人として見学に来るくらいだったら、もしかしたら許されるかもしれない。

 

「わからないから里長に聞いてみるよ。大丈夫だったら連絡する」

「……はい! ありがとうございます。約束ですよ」

 

 そう言って彼女は俺の手をぎゅっと握ってくる。

 俺だから致命傷で済んだが、クラスの男子がこれされたら死ぬぞ。自分の顔面偏差値をもっと知ってくれ。

 

「それじゃそろそろ私はログアウトしますね。空さん、今日は楽しかったです。それと助けていただき本当にありがとうございました」

「礼なんていいって。正義の味方(ヒーロー)として当然のことをしたまでだ」

 

 芝居がかった感じでそう言うと、怜奈さんはくすくすと笑ってくれる。ウケるってのは思ったより嬉しいな、鉄板ギャグにしちゃろうか。

 

「それではまた学校で」

「ああ、学校で」

 

 最後に深くお辞儀をした彼女はゲームからログアウトし、目の前から消え去ってしまう。

 誰もいない峡谷に一人ポツンと残る俺。今までは一人で活動していたというのになんだか寂しい気分だ。

 

「誰かとパーティを組んで遊ぶってのはこんな気持ちなのかね。今までは攻略目的でしか組んだことないから新鮮だったな。たまにはこういうのも悪くないかも、なんてな」

 

 しかしそちらに傾倒しすぎないようにしないとな。ヒーローとは孤独なものなのだから。

 

「さーて、そろそろ最初に倒したドラゴンは再出現《リポップ》してっかな。朝までぶっ通しでやるぞお」

 

 小太刀を強く握った俺は、経験値を稼ぐため秘境の入り口に戻るのだった。

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