リアライズ・オンライン  ~バグ技が大好きなゲーム廃人は、人外の腕前でeスポーツ界を蹂躙する~   作:熊乃げん骨

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EP6 忍の里《ヒドゥン・ヴィレッジ》

 その日の夜、俺と怜奈さんは約束通りニューメイクタウンで落ち合った。

 

 ちなみにリアオンの時間はリアルと連動しているので、今はこの世界も夜だ。俺は入ったことないが海外鯖、つまり海外サーバーもちゃんとその国の実時間に合わせてあるらしい。

 

「空さん、忍びの里はどこにあるのでしょうか? ここに集合したということはニューメイクタウンに隣接したエリアですか? それともこの街のどこかに入り口が隠されてるのでしょうか?」

 

 怜奈さんはそわそわワクワクした様子で尋ねてくる。そんなに楽しみだったとはな、案内しがいがあるってもんだ。

 

「忍びの里はここから結構離れた所にある。だから転移しなきゃいけないんだ」

「そうなんですね。転移のスクロールなら持ってますけど、これでいけるんですか?」

 

 スクロールというのは、巻物の形をしたアイテムのことだ。スクロールには魔法の力が込められており、消費することでその魔法を覚えていなくても使う事ができる。

 といっても使う魔法の性能は魔力に依存するし、きっちりMPも消費してしまうんだけどな。

 

 だから攻撃魔法に使われることはあまりなく、もっぱら転移や回復なんかに使われる。魔法で戦いたいなら魔法使いの職業《ジョブ》を取ってちゃんと育てなくちゃいけない。

 

「スクロールは使うけど、普通のやつじゃ忍びの里には行けない。ちょっと来てくれ」

 

 そう言って彼女を連れ、人気のない路地裏に連れ込む。

 ……なんだかいけない事をしそうな感じがするが、決してそんなつもりはないぞ、本当だ。

 

「悪いな、転移するとこを人に見られたくないんだ」

「大丈夫ですよ、信頼してますから」

「……あまりそういう事を言っちゃダメだからな。勘違いされるぞ」

 

 そんな純粋な目で「信じてる」など言われたら世の男共は盛大に勘違いするだろう。俺が耐えられるのは忍びの修行で培った精神力の賜物だ。

 しかし怜奈さんは俺の忠告を聞いてもピンと来てないようで、頭の上に?マークが浮かんでいる。

 

 はあ、俺はあんたの将来が不安だよ。ダメ男には引っかからないでくれよ。

 

「まあいい。とにかく忍びの里に行くにはこの特殊なスクロールがいるんだ」

 

 俺はアイテムボックスの中から、和風な巻物を一つ取り出す。これこそがプレイヤーは忍びの里に行く唯一の手段。ネットにも情報が出回ってない超超レアアイテムだ。

 

「それじゃあ使うぞ、転移《ワープ》!」

 

 巻物を開きMPを消費する。

 すると俺と怜奈さんを黄色い光が包み込み……次の瞬間には路地裏から俺たちの姿は消えるのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

 忍びの里。

 名を『火窩《かむろ》』というその里は、何十人もの忍者が住む隠れ里だ。

 

 リアルワールド・オンラインの世界観は西洋ファンタジー感は強く、石造りの家や城がほとんどだ。しかし忍びの里はそのリアオンにあって珍しく、純和風の街となっている。

 

 家は木造の平屋だし、街の中を歩くNPCはみんな和装だ。

 里にそびえ立つ一際大きな城も日本の城によく似ており、まるで時代劇の世界に迷い込んだような錯覚を覚える。

 

「ここが忍びの里なのですね……! こんな場所が隠されていたなんて、感激です」

 

 興味深そうに周りを見ながら、怜奈さんは楽しそうに言う。

 

『リアオンには忍びの里が存在するが、その場所は秘匿されている』という情報は、リアオンが正式リリースしてから直ぐに掲示板に流出したので多くの人が知っている。俺も掲示板でその情報を知った口で、忍者が大好きな俺はそれから毎日忍びの里の情報を集めまくり、奇跡的に辿り着くことが出来たのだ。

 

「転移で来ましたけど、この里はいったい大陸のどこにあるのでしょうね。空さんは知ってますか?」

「それは俺も知らない。一度里の外に出たいと言ったんだけど里長にまだ早いと言われたんだよな」

「そうなんですね……空さんで早いと言われるなら、ここは今攻略されているエリアよりも先、と言う事でしょうか」

「ま、そうなるだろうな」

 

 現在リアオンを一番進めている者たち、いわゆる『攻略組』の連中は第九エリア『花の都ロロ』を攻略している。俺も第九エリアには到達し、そこのモンスターを倒せるくらいの実力はある。

 しかしそれでもまだ足りないということは、忍びの里はもっと先のエリアにあるということだ。

 

 いったいこのゲームはどこまで先があるんだ? そもそもエンディングという概念はあるのだろうか?

 

「銀城コーポレーションはリアオン運営と業務提携しているんだろ? 内部データみたいなのは見せてもらってないのか?」

「ええ。そもそも私のマ……いえ、お母さんは社長なのですが、お母さんでもリアオンの運営とはメールのやり取りしかすることは出来ず、運営をどれだけの人数でやっているのか、サーバーがどこにあるかすらも分かっていません」

「……守秘義務が徹底しているのは知ってるが、そこまでとはな」

 

 以前リアオンの秘密を暴こうと複数人のハッカーが手を組みハッキングを試みたらしいが、彼らはあっさり撃退され、逆に個人情報をバラされてしまった。あの時はネットもお祭り騒ぎだったな。

 

 それ以来、表立ってリアオンの秘密を暴こうとする奴は出なくなった。失敗したら自分の情報がばら撒かれるなんてあまりにもリスキーだもんな。

 

「……まあそんな話は今はいいか。それより中に入ろうぜ、里長が待ってる」

 

 城に入り、里長の待つ最上階『天守閣』を目指す。ちなみに純和風なこの城だが、なぜか中にはエレベーターが備え付けてある。世界観どうなってるんだ、バグってるだろ。

 

「里長、客人を連れてきたぜ」

 

 天守閣にある一際煌びやかな襖の前でそう呼びかけると、中から「入れ」と声がする。

 少し緊張した様子の怜奈さんを連れて中に入る。するとその中には、まるで時代劇に出てくるお殿様が座るような煌びやかな場所に、里長が座って待っていた。

 

「ガッハッハ! 空坊が女を連れて来るとは珍しいこともあるもんだ! 明日は龍が降ってくるんじゃないか?」

 

 そう豪快に笑いながら、忍の里の長『猿面のフガク』は俺たちを迎え入れたのだった。

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