リアライズ・オンライン  ~バグ技が大好きなゲーム廃人は、人外の腕前でeスポーツ界を蹂躙する~   作:熊乃げん骨

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Disk4 憧れを超えろ《オーバー・ザ・ヒーロー》
EP1 楽しかった《グッドゲーム》


「ブルーマスク選手! 本当にあなたは青き疾風なのですか!?」

「女性説もありますが性別はどちらなのでしょうか!?」

「ファンに一言お願いします!!」

 

「……なんじゃこりゃ」

 

 控え室に戻ろうと廊下を歩いていたら、突然大勢の人に囲まれてしまった。

 俺を囲む謎の集団は、みな手にマイクやらカメラやら持っており何故か矢継ぎ早に質問してくる。なんだよこれ、まるで取材でも受けてるみたいじゃねえか。

 

「あのー、退いてもらえますか? 疲れてるので」

 

「では我が社の質問に答えて下さい!」

「ちょっと、うちが最初に話しかけたんですよ!」

「そんなの関係ないじゃないうちが先よ!」

「サイン下さい!」

 

 どうやら本当に取材陣だったみたいだ。

 ……しかしまずいな。決勝戦に向けて少し休みたいんだがこのままじゃここでずっと足止めをくらってしまう。どうにかして逃げ出さないと……と考えていると、前方から黒いスーツに身を包んだ集団がやってくる。

 

 なんだあの厳つい集団は。映画とかに出てくるSPみたいだな。

 

「対象発見! 直ちに保護し送り届けよ!」

「了解《ラジャー》!」

 

 そう大きな声で言った彼らは、謎の取材陣を蹴散らし、俺のことを囲む。

 人が変わっただけで状況が変わってねえ!

 

「ちょ、何なんだいったい!!」

「ご安心ください。我らはあなたを守るよう言われたのです」

「守る……?」

 

 彼らはその言葉通り取材陣から俺を守ってくれた。

 おお、なんだか要人になったみたいだ。意外と悪くない気分だ。

 

「すみません! 我が社の質問に答えてください!」

「おわっ!」

 

 ガタイの良い男たちがガッチリと壁を作ってるにもかかわらず、その隙間からマイクだけ出して質問しようとしてくる。

 これがジャーナリスト魂か、怖すぎるぜ。

 

「さ、控え室に」

「あ、ああ。ありがとう」

 

 屈強な謎の男たちに守られながら、俺は控え室に誘導される。まさかこんな体験をすることになるとはな、人生とは分からないものだ。

 

「どうぞ中に」

「すみません、ありがとうございます」

 

 無事控え室にたどり着いた俺は男達に礼を言って中に入る。

 すると控え室の中には怜奈さんがいた。

 

「……お疲れ様です空さん。無事辿り着いたようで何よりです」

「やっぱり怜奈さんが手配してくれたんだな。助かったよ」

 礼を言った俺はどかっと座敷に座る。ふう、これでようやく休めるぜ。

「あ、あの……」

 

 俺が束の間の休息に勤しんでいると、怜奈さんが申し訳なさそうに話しかけてくる。

 一体どうしたのだろうか。

 

「申し訳ありません。その、正体を明かすことになってしまって」

「あー……そのことね」

 

 どうやら俺の正体が『青き疾風』であることがバレたことに対して責任を感じているようだ。

 あれは俺の独断だというのに、優しい人だ。

 

「怜奈さんが謝ることじゃないよ。あそこでああしようとしたのは俺の判断なんだから」

「しかし私が無理やりこの大会に参加させたからこうなったのであって……」

「あーもうやめやめ! 頼むからあんまり責任を感じないでくれよ。正体を晒すと決めたのは俺だ、つまりその責任は俺だけのもの。勝手にあんたの物にしないでくれよ」

「いやしかし……」

 

 これだけ言っても怜奈さんは納得しない。

 見た目に合わず強情な人だ。

 

「……まあ聞いてくれよ。確かに最初は無理やり参加させられて困ったさ。でもryoや他の選手、そしてオタキングと戦う内、俺は段々Re-sportsが楽しくなってきたんだ」

「空さん……」

「人と戦うなんて野蛮だと正直思ってた。リアオンの中にはいくらでもモンスターがいるんだからそっちと戦えばいいじゃん……ってな。でも違った。今まで培ってきた技術をぶつけ合う楽しさってのは一人でゲームをしてるのとはまた違う楽しさがあるってことに気づけたんだ」

 

 ソロプレイとマルチプレイ。どちらが上とか下とかじゃない。

 そのどちらにも良さがあるんだ。普通の人はすぐに気がつくそのことに、俺は長年気づくことが出来なかった。

 

「さっき戦ってる時、俺は本当に楽しかったんだ。心が熱くなって、訳が分からないほど夢中になれた。今ここで勝てるなら何を捨ててもいい――――そう思えた。だからむしろ俺は礼を言いたい。ありがとう怜奈さん。俺をRe-sports(この)世界に連れてきてくれて」

「……ズルいです。そんな風に言われたらもう何も言えないじゃないですか」

 

 俺の言葉に納得してくれたのか、怜奈さんはそう言って笑ってくれる。

 ……にしても恥ずかしいことを言ってしまった。怜奈さんも顔を真っ赤にしてしまっているじゃないか。

 

「ま、とにかく今の俺は自分の意思で戦ってるってことだけ分かってくれればいい。世界大会に出るっていうのは流石に約束できないけど、この大会は優勝してみせるよ」

「はい。きっと空さんなら出来ますよ」

 

 そう言って俺たちは笑い合う。

 ……なんだかいい空気だな。ラブコメの波動を感じる。

 ま、俺に限ってそんな展開になることはあり得ないんだがな……などと悲しいことを考えていると、突然場内アナウンスが流れる。

 

『そろそろ準決勝二回戦を始めるぜ! トイレに行ってる人はすぐに戻ってきてくれよな!』

 

 俺とオタキングの試合は準決勝一回戦だったので、二回戦の勝者が俺の決勝戦の相手になる。いったいどんな奴が上がってくるのだろうか。

 

「気になるなら見に行ってみますか?」

「え、顔に出てた?」

「はい、かなり」

 

 そう言って怜奈さんはくすくすと笑う。

 

「はあ、敵わないなあんたには」

 

 観念した俺は、すっかり自然に話せるようになった彼女とともに試合会場に足を運ぶのだった。

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