リアライズ・オンライン  ~バグ技が大好きなゲーム廃人は、人外の腕前でeスポーツ界を蹂躙する~   作:熊乃げん骨

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EP7 交渉《ビジネストーク》

「おや、こんな所で会えるとは思いませんでした。お久しぶりです銀城さん」

「ええ……お久しぶりですね」

 

 やけに親しげな様子で銀城さんに話しかけるryoとかいう選手。しかし銀城さんは塩対応だ。二人がどんな関係かは知らないがいい気味だ。

 しかしそんな対応をされたにもかかわらず男にめげた様子はない。なおも懲りずに銀城さんに話しかけ続ける。

 

「わざわざこんなマイナー大会に顔を出していただいたということは、前にしたお話の件、お受けしていただけるということでよろしいですか?」

「……それは我が社とスポンサー契約を結びたいという話でしょうか。でしたら申し訳ありませんが、現状それをお受けすることはできません」

 

 こいつそんな話をしていたのか。

 確かに銀城コーポレーションがバックについたら心強いだろうな。ま、この対応じゃ望みは薄そうだが。

 

「それは残念ですね。ですがそろそろ真面目に考慮して頂いてもいいと思うんですけどね。自分で言うのもなんですが……私は人気実力共に申し分ないと思うんです」

 

 本当に自分で言うことじゃねえな。

 その自信だけは分けて欲しいもんだ。

 

「御社はまだ誰とも契約してないはず。もし契約する予定の選手がまだいないのであれば、是非とも私を起用して下さい。後悔はさせませんよ」

 

 Re-sports選手と企業が契約することは多い。企業のロゴを入れたキャラが大会で優勝すれば広告効果はかなり高いし、ルックスのいい選手はそれだけで広告塔になる。

 

 選手側も企業と契約すれば最新の機器を使わせて貰えるし何より大会で成果を出さなくても定期的な収入が貰える。スパチャなど他にも稼ぐ手段はあるが、やはり安定した収入というのは魅力的なんだろう。

 

「我が社、銀城コーポレーションは契約する選手を慎重に選考してます。様々な面から選手を分析してますが、今のところ我が社で契約したいと思える選手は現れていません」

「それは手厳しいですね。参考までにどのような選手が特に欲しいのか教えて頂いてもよろしいですか?」

「簡単です。一番欲しいのは『強い選手』です。それもただ強いのではなく、『世界に通用する、圧倒的な強さの選手』が欲しいです。時代を牽引するような、その人がいるだけでチームがまとまり士気が上がるような選手を探しています」

「時代を牽引して世界に通じる選手……ですか。それは確かに素晴らしい条件ですがいささか夢を見過ぎなんじゃないでしょうか?」

 

 ryo選手はくす、と笑う。何言ってんだこのお嬢さんはといった感じだ。

 確かに彼女の言葉は夢物語と笑われても仕方ない条件だ。ここ数年日本は世界大会の本戦にすら上がれてないはず。それなのに世界に通用する選手が欲しいと言っても簡単に見つかるわけがない。

 だが選手本人がそれを『夢を見過ぎ』って言うのはムカつくな。それはつまりこいつ自身が『世界で戦う能力が僕にはありません』と言ってるようなものだ。情けねえ。

 

 銀城さんも俺と似た感情を抱いているのか、その涼しげな表情の下に苛立ちのようなものを俺は感じ取った。

 

「ryoさん、お言葉ですが先程の言葉が夢物語だとは思いません。現に私はその候補となる人を見つけているのですから」

 お、そうなのか。

 そんな奴がいたんだなー……って、なんか嫌な予感がして来たぞ。

「……それは興味深いですね。参考までにどなたか聞いてもよろしいですか?」

 

 ……やめろ、嫌な予感がするからそれ以上話を深掘りするな。

 しかし俺のそんな願い虚しく、無常にも銀城さんはその人物を指差す。

 

「どこにも何も私たちの目の前にいるじゃないですか」

 

 彼女の指の先には青い忍者のマスクをつけた人物……俺がいた。

 おいおい、勘弁してくれよ。ryoとかいう奴だけじゃなく、他の観客たちも目を点にしてるじゃねえか。

 こ、こいつが!? という感情がありありと伝わってくる。

 ま、だが当然の反応だな。こんなことで怒りはしない、俺は寛大なんだ。

 

「じ、冗談がキツいですね銀城さん。こんな変なマスクを付けた、コ、コスプレイヤーが世界で通用する選手だと言いたいんですか!?」

 

「おい待てや今なんつったコラァ!」

 

「ひっ!」

 

 許せねえ。こいつは今、言っちゃいけねえことを言った。俺を不審に思うのは構わない、事実そうだからな。だがあのセリフだけはどうしても許せねえ。

 

「おい、誰のマスクが『変』だって? どう見ても世界一カッコいいマスクじゃねえか! 訂正しやがれ!」

 

 俺のことはいくら馬鹿にされても構わない。だが世界で一番尊敬する『シャドウブルー』のことを馬鹿にされるのだけは我慢ならない。

 

「『変』なものに『変』と言って何が悪いんですか? これは親切心で言いますけど、そのマスク似合ってないから外した方がいいですよ」

「いい度胸だ。その喧嘩買ってやるよ……!」

 

 売り言葉に買い言葉。いつもならこんな風に喧嘩を吹っかけたりしないのだが、マスクを被っているせいか、ついつい強い言葉を使ってしまう。

 しかし本当にこんなたくさんの人目がある場所で喧嘩するわけにもいかない。自慢じゃないが俺は殴り合いの喧嘩なんてやったことないし確実に弱い。

 

 何とか有耶無耶にならないものか。そう思っているとryoとかいう奴は銀城さんの方に目を移し、彼女にとんでもない提案をした。

 

「どうでしょう銀城さん。彼もやる気みたいですし。ここは一つエキシビションマッチということで私と彼でバトルするというのは。もちろんRe-sportsでね」

 

 ……は?

 ふざけんな、なんで人前でそんなことしなくちゃいけないんだよ!

 こんな提案ビシッと断ってくれよ銀城さん!

 

「それはよい提案ですね。私の権限で許可いたします」

 

 そんな気はしたぜチクショウ!

 銀城さんの許可が取れたことでryoは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「ふっ、ありがとうございます。貴女に見せてあげますよ。真に契約すべき相手は誰なのかをね」

「おいおいお前ら話を勝手に進めんなって!」

 

 なんとか試合が始まるのを止めようとするが、時すでに遅し。エキシビションマッチの件は俺を置き去りにしてトントン拍子で進んでいってしまった。

 場内にもエキシビションマッチの開始がアナウンスされ、帰り始めていた観客たちが続々と席に戻ってきてしまっていた。

 

「お、おい! 何してくれてんだよ銀城さん! 言っとくが俺はRe-sportsなんてまともにやったことがないんだぞ!?」

「おや、『青き疾風』ともあろう人が尻尾を巻いて逃げ帰るのですか?」

「ぐぬ、嫌なこと言うねあんた……」

「安心して下さい、あなたの個人情報はバレないようしておきます。あなたは突然現れた謎のRe-sports選手として暴れてきてくれればいいのですよ」

「簡単に言ってくれるぜ全く……」

 

 観念した俺はため息をつき、リングに上がる階段を登っていく。

 気は重いが、マスクの事を馬鹿にされ怒ってるのは紛れもない事実。この恨み、晴らさでおくべきか……ってな。

 

「逃げずにリングに上がってきたことは褒めてあげよう。でもかわいいファンの前だ、手加減は出来ないよ」

 

 そう言って嫌味な笑みを浮かべたryoは観客席に手を振る。すると黄色い声援がいくつも飛んで来る。いけすかねえ野郎だ。

 

「け、そのニヤケ面を二度と出来ないようボコボコにしてやるよ、覚悟しな」

 

 俺たちは睨み合いながら眼鏡型情報端末i-VIS(アイヴィス)を装着する。それはRe-sports開始の合図、観客たちはこれから始まる戦いに期待を寄せ熱い歓声を送る。きっとここにいる誰も俺の勝利なんて考えてないし願ってもいないのだろう。

 面白え。見せてやるよヒーロー業で鍛えた俺の忍者戦闘術をな。

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