剣に生きた人生をもう一度と願うのは間違っているだろうか 作:お刺身弁当
嬉しい…
追記7/24
ご指摘をいただき、主人公名コジロウ→小次郎へ変更しております。
ありがとうございます!
「ん…ここは…本拠か。」
「命、目が覚めたんですね。」
辺りを見渡せば既に日は傾き夕焼けに染まっていた。
「………千草殿、自分は負けたのですね。」
「はい、えっと…」
何か伝えたい様だが、どうも千草の様子がおかしい事に命は気がついた。
「大丈夫、負けは負けです。でも自分はいつ倒れたのでしょうか?…恥ずかしい話ですが、正直全く覚えてなくて…」
うっすら笑みを作り千草に尋ねるが
「あの…その……ないんです。」
「??…すまない、よく聞こえなかった。」
「分から…ないんです。全く見えなかったんです…気がついたら命が倒れていて…」
「えっ…………」
予想だにしない返答に言葉を失う。
(恩恵を持たない人間の動きが見えない…?そんな…馬鹿な。)
決着は一瞬だった。
開始の合図を聞き、命はこれまでの鍛錬や冒険の経験、恩恵によって昇華された肉体や神経をフル稼働させ合図とほぼ同時に飛び出した。
小次郎は動いていない。
見えていないのか、反応が遅れているのか、未だ目の前の男は竹刀をだらりと下ろしたまま。
初動でほぼ最大まで加速し小次郎の懐へ飛び込む。
油断も慢心もない。いつも通り全力で勝負する。
だがここで命の意識は途絶える。
恩恵によって昇華され、恩恵を持たない人間からすれば知覚する事もままならない速さで飛び込んだのにも関わらず、小次郎は滑る様に打ち込まれる俊速の竹刀を最低限の動きで躱し雷光の如き横薙ぎの一閃にて非公式の勝負に決着がついた。
命にも、勝負を見届けんと目を凝らしていた千草でさえも、何が起きたのか理解できず凍りつく中小次郎は…
(やはりまだまだ青いか、ちと物足りぬが果し合いではない…問題なかろう。剣を振るうのはやはり心踊る…)
一人喜びを噛み締めていた。
その後、我に返った千草が慌てて飛び込み気を失っているだけだと分かり安堵するも、同時に恩恵の無い人間でここまでの技量を持つ存在に戦慄した。
「……それで、気を失った自分を本拠まで運び今に至る、と。」
「うん。どこも悪くなさそうで安心した〜…」
「すみません、心配をおかけしました」
(…それにしても小次郎殿…何をされたのかも分からぬが、私程度には見えない程剣技においては先の道を歩いているのだな…油断してないつもりではあったが恩恵を持っていない事で彼を舐めていたのかもしれん。私もまだまだだな。だが、今以上の強さへの道は見えた。今は道だけだがいつか…必ず、勝つ。)
「…ところで千草殿、小次郎殿は、彼は今どこに…?」
先程の昏い表情は消え、何処か吹っ切れたような表情で千草の尋ねる。
「コジロウ殿だったらおそらく客間に居ると思うよ。さっきタケミカヅチ様が帰ってきたから、命との手合わせの件も含めて色々話してるみたい。」
「ゲッ…そ、そうか…(小次郎殿から挑まれたとはいえ、恩恵を持たない方と手合わせをしたのはマズい…正座2時間コースは覚悟しよう…)」
吹っ切れた表情から一変してまたどんよりとした表情に戻る命を見て、面白いものを見たと内心楽しんでいる千草であった。
その時
バァァァァァン!!!!
「「ッ!!??」」
爆発音の様な異常な音が本拠内に轟いた。
「この音は…!?稽古場の方からだ!!!」
二人は立ち上がると千草は駆け足で、命は先程のダメージが抜けきっていない為気持ち急足で稽古場へ向かう。
ちょっと短いですが、丁度良いところだったのでお許しください。
次回も早めに投稿出来る様に頑張ります。