剣に生きた人生をもう一度と願うのは間違っているだろうか 作:お刺身弁当
結んでるキャラクターはいますが、革ひも然りリボン然りダンまち世界だったらどんな名前で販売されてるんでしょうね。
私は分からない為現代の呼び名で書いていきます。
佐々木小次郎は冬木に召喚された際、現代の生活知識として知ってはいそう(まぁ生活するも何も山門から動けない訳)ですが、実際見てみなきゃ理解はできないでしょうし…ヘアゴム、ヘアカフスなんか見たら便利だと思ってくれそう。思って欲しいなぁ。(使うとは言ってない)
追記7/24
ご指摘をいただき、主人公名コジロウ→小次郎へ変更しております。
それに伴い少し会話の台詞を変えております。
ありがとうございます!
時はしばらく遡り、そろそろ日も傾き始めるであろう時間。
気を失った命を運び、千草から案内された本拠の客間で小次郎は寛いでいた。
「この世界にも茶はあったか………おっこれはなかなか。」
生前剣に生涯を捧げた世界、冬木で行われた聖杯戦争の世界、そのどちらでもない全く未知の世界に流れ着いた事を理解していた小次郎はよもや異世界で聞き馴染みのある「お茶」が出てくるとは思わず少しばかり感動していた。
客間の小さな本棚にある本を手に取ってみたものの、何語で書かれているのか全く分からなかった。
(生前も、文字の読み書きはできなかったな。まぁ読み書きなぞ出来ずとも生きていけたからな…冬木で召喚された時は、知識として言語も与えられたがこの様な言語は無かった筈。千草殿が言うには英雄譚や冒険譚らしいが…)
何故この世界の言語が分からないのに会話が成立するのか甚だ疑問だが、言葉の発音自体は前の世界と変わらないらしい。
「おっといかん、茶が冷めてしまうところであった。」
この世界においてイレギュラーである小次郎は、茶を楽しみながらこの先どうするか身の振り方を思案する。
(一先ず言語の習得は優先すべきであろう。それに銭か…人間として歩けるのは良いが、この世界の住人として生活できるまでの道のりは険しい…か。タケミカヅチ…神が本当に存在しているのか未だ信じられぬが、戻ってきた時にでも相談してみるべきか…しかし…)
そう考えていると
「ただいま戻った。」
低くそれでいて威厳のある男性的な声が玄関の方聞こえてきた。
(人の持つ気配では無いな…だとするならば、本当に神か)
コジロウは客間を出て玄関まで向かう。
「お帰りなさい、タケミカヅチ様!今日はお早いお帰りですね。」
「千草、出迎えありがとう。今日はヘスティアも一緒だったのだがお客さんが少なくてな…ヘスティアが「今日は任せろ!キミの家族達に時間を使ってやれ」と早上がりの許可を貰って帰ってきたのだ。いい神友を持ったものだ…ところで此処に千草がいると言う事は、命もコジロウ殿も此処に?」
「あ…えっとその…」
聞かれたく無い事を真っ先に聞かれどうしようかと言い淀んでいると
「其方がタケミカヅチ神か、助けてもらった事感謝する。私の名はコジロウ…今はそう名乗る事にしている。命殿の話もあるようだ、タケミカヅチ殿よ…そこから先は私が話そう。客間で少し話せるだろうか?」
いつからそこにいたのか、気がつけば小次郎は千草のすぐ後ろまで来ていた。
「小次郎殿、回復したならば安心した。命の話もと言ったな…承知した。千草よ、この荷物をリビングまで持っていってくれるか?」
そう言いながら千草に小さい紙袋と売れ残りのじゃが丸くんが入った紙袋を渡す。
「は、はい。分かりました。」
千草は荷物を受け取るとリビングまで静かに歩いていった。
「さて、小次郎殿。色々と話があるのだったな。客間だったか、では行こうか。」
柔らかな表情から真面目な表情へ変わる男神とコジロウは客間まで戻っていく。
「さて…何から聞くべきか…は考えるまでも無いか。命は無事か?」
客間に用意された座布団に腰を下ろした男神が家族の無事を問う
「その事だが先に謝罪をしたい。勝手に勝負を挑んだ事申し訳ない。だが安心して欲しい。無事だとも、気を失ってはいるが直に目も覚めよう。」
小次郎から事の経緯を聞けば、命から髪をまとめる紐を只で譲って貰うのは申し訳ないので、同じ剣の高みを目指す剣士同士であるならと紐を賭けての勝負を願い出たらしい。
結果コジロウ殿が勝利し、眷属であり自神の娘とも言える命は敗れ、自室で眠っていると。
恩恵の無い人間からの勝負を受けた未熟な娘も少々問題ではあるが、今目の前に恩恵を持たずに恩恵持ちを破ったこの青年はそれ以上に問題なのだ。
恩恵、神々の眷属の証でありレベルやステイタスの上昇により己が器を昇華させ、昇華する程に神に近づくとされている。
彼女はまだレベル1だがもうすぐレベル2にもなれるであろう経験やステイタスを持っている。
その彼女を打ち破る程の剣技を持つ男を前に、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
だが恩恵を持たぬ者が恩恵を持つ者へ勝負を挑むのは危険だと説明すると、どうやら恩恵を知らないどころか、実際私と会うまで神が存在する事も信じていなかったらしい。
到底信じられない話だが、嘘はついていない。
神々に下界の子供達の嘘は通用しない。
信じられない話だが、信じるしか無い。
だかここからそんな事も吹き飛ぶ程に信じられない話が飛び出した。
彼はこの世界の住人では無い、今は人間だが前の世界では亡霊の様な者だった。燕を斬る為、かつて一度だけ見た剣聖の絶技に近づくべく生涯を剣に捧げた農民であったと。
佐々木小次郎という彼の世界に存在したとされる、剣豪(この世界でいう英雄に限りなく近い存在らしい)の殻を被り聖杯戦争なる地獄の様な争いに召喚され、黄金の剣を持つ騎士に敗れ消滅した。
だが気がついたらタケミカヅチファミリアが所有する道場の門前に倒れていたところを、千草と命に助けられた。
なぜこの世界の住人と会話が成立しているのか分からないが、共通語の読み書きはできない。
武の神である俺ですら聞いたことのない、そして頭を抱えたくなるほどの「未知」。
言語の問題は、時間の問題であろうが他が問題すぎる。
燕を斬る為だけに剣技を高めていたら英雄の殻を被る器にまで至った…?何それ怖い。あなた農民だったんですよね…?
異世界の人間が来る事自体、見た事も聞いた事もない未知だというのに…来てしまった人間が、何故選りにも選ってこんな未知のバーゲンセールの様な男なんだ…
もう疲れちゃった…いやバイトの疲れも重なっているのだろう…胃も痛い。こんな下界の未知をごった煮にした様な男を好き勝手に歩かせるのは危険だ…何よりも私が。私の胃がもたない。
今にも競り上がってきそうな胃の悲鳴を必死に押し殺し、この世界の常識と歴史を簡単に説明した。
コジロウ自身この世界が異世界であると認識していたのと、戻る事も出来ないであろう事からこの世界の歴史、常識などは頭に入れておきたかったらしく真面目に聞きそこまで時間も必要とせずある程度の知識を得た。
善神である俺は、彼の安全(危険性)を考慮し保護(監禁)を目的としファミリアに入るか提案したところ今は考えていないらしい。
早速作戦は失敗に終わった訳だが、彼にも考えがあるらしい。
「…………ファミリアに入らない理由を聞いてもいいか?」
「この世界に私が流れ着いた事は、タケミカヅチ神が言う通り、神さえも知りえぬ未知。この世界からみれば不純物(イレギュラー)である私は災いの種になり得る。ファミリア所属の冒険者として生活する事は得策とは言えん。主神として眷属達に嘘を吐かなくてはならぬ事は忍びないであろう。」
「う、うむ…そうだが…」
「そこでタケミカヅチ神に提案…というよりは願いに近いが聞いてもらえぬだろうか」
「…聞いてみなくては判断の仕様がない。なので先ずは話だけ聞こう」
「千草殿から此処に来るまでに聞いたが、あの道場以外にももう一つあると聞いた。その道場を貸して頂きたい。」
「理由を聞いても?」
「なに、名を残せぬのならこの剣技を、小手先の技術を残そうと思ってな…それに私は英雄に成りたい訳ではない。冒険者とは常に死地に飛び込まざるを得ない職業らしい。駆け出しの腕を磨いてやれば、散る必要のない命を、命散らすその日を少しでも先延ばしにできると思っただけの事。武神であるタケミカヅチ神が後ろ盾になれば無用な詮索も無くなる筈。月謝は頂くつもりだが、それで得た一部と道場の使用料を毎月タケミカヅチファミリアに収めよう。」
貸し出すか迷っていたが、ここにありがたい条件付き貸し出しの提案が出た、実の所タケミカヅチファミリアの家計は火の車なのだ。
眷属も少ない零細ファミリアがなんで道場を2つも持っているのか疑問であろう。
いつか眷属が増え2つの道場をそれぞれ一軍、二軍と分け、又は職種で振り分け違った刺激を与え能力の向上を促す目的で所持していたのだが現実とは非情であり、残酷なのだ。
増える事のない眷属、使われるのは本拠のすぐ近くの道場のみ。
冒険者である眷属達はダンジョンに潜る事が多い為、離れている道場を使いたがる者など余程のスキモノでなければ現れないのだ。
そして誰も使わない道場は埃をかぶり、バイト休みの日眷属である子供達が出払ったタイミングで一人寂しく道場の掃除をしているのだ。
となると使ってない道場を有効活用し、且つ道場の使用料+月謝の一部をファミリアに収める。これ程の好条件…なかなか無いだろう。
それに掃除に行っていた時間も無くなる訳だし。
神々の詮索も武神であり神格も高いタケミカヅチが後ろ盾になれば、余程の阿保神でない限り手を出さない筈だ。
小次郎としては自身の修行、英雄に焦がれる小さき戦士達(子供達)を育ていつか自分と戦えるような剣士を生み出したいという考えは勿論ある。
だがそれはあくまでも建前でしかなく、ぶっちゃけると異世界の戦士達と戦ってみたいのだ。自分の知らない世界の剣技や体術に己が剣技を試したくて仕方がないというのが本音だ。
名を残す訳にはいかないと思いつつこの行動、これが思いもよらぬ…いや分かりきった事であった…トンデモ騒動を起こすのだがまだ先の話。
「これ程の好条件、願ってもない提案だ。ファミリア主神として許可を出したいところだが…」
「その道場に何かあるのか」
「いや何も無いとも、道場の貸し出しには賛成だ。ファミリアの家計事情を鑑みても反対意見など無いだろう。
ただな…未知に興味を持ってしまうのが神々の性。これに俺も入っているという事だ。
異世界の剣士よ、姓を捨てた事理解しているが、この場は敢えて佐々木小次郎殿と呼ばせてもらう。
佐々木小次郎殿、俺と一手…手合わせ願えないだろうか?
大切な眷属が世話になったのもあるが、道場を任せるならばその腕前…確かめさせていただきたい。」
目の前の男はただ優しいだけの神ではないのだ。
下界の未知を既知としたい神の一柱であり。
尚且つ、大事な眷属の一人を打ち負かした者であり、異世界のそれも英雄になり得る剣技を持つ人間など武の神であるタケミカヅチに興味を抱くなというのが無理なのである。
「ククッ…いやすまぬ。余りにも熱烈な視線だったものでな。願い出たのは私の方だ。断る理由など無い…私も己が剣がどこまで届くのか試したくてしょうがない。武神タケミカヅチ殿、その誘い是非お受けしたい。」
期待通りの返事を貰え満足気にタケミカヅチは立ち上がり、それを見た小次郎もゆったりと立ち上がる。
「日も直に沈むか、本拠内の稽古場を使うとしよう。此方だ」
そう言いながら客間を抜け小次郎と共に稽古場へ向かう。
日も本格的に傾き始め、オラリオは夕焼けに染まりはじめる。
向かう途中二人の間に会話はない。
二人にあるのは歓喜のみ。
片や武神と名高いタケミカヅチ神の武にどこまで届くのか、見る者見れば芸術にも映るであろう絶技を試せる歓喜。
片や異世界から来た未知に、それも現代の下界の子供達ですら未だ到達していない頂に到達したであろう男に対する歓喜。
二人の足取りは軽い。軽い手合わせで終わる筈が無いというのに。
稽古場に着き真ん中を陣取る。
「これを使うと良い。命から代わりを貰うまでの間は持つだろう。」
手渡されたのは新品同様の革製の紐。
「……感謝する」
小次郎は受け取ると、慣れた手付きで髪をまとめる。
誰もいない稽古場。互いに薄い笑みを浮かべて向き合い得物を抜く。
小次郎の手には150Cはある大太刀の様な長刀。
構えずただだらりと腕を下ろしたまま。
虚仮にしているのかと言いたくなる程小次郎は悠然としている。
否、あれでいいのだと剣技のみで英雄(剣豪)の器に成れた男なのだ。
(構えを不要とするまでに高めた剣か…恐ろしいな…)
武神タケミカヅチの手には業物であろう打刀を片手で握り、もう片方の手で懐から何かを取り出す。
「では小次郎殿…この鈴が床につく時が合図だ」
小次郎は静かに頷く。
タケミカヅチは、小次郎が了承したのを確認すると鈴を壁側に放る。
綺麗な放物線を描きながら落下していく合図。
武神は構える。
自身の眷属にすら見せた事のない勇猛な笑みを浮かべ、威圧的な剣気を放つ。
未だ男は構えず。威圧的な剣気を何とも無いように受けつつ、薄い笑みを浮かべ悠然と立っている。
チリンッ…戦いの鈴が鳴る。
構えない人「何か見たことある終わり方だな。2話くらい前に」
まだ気絶してる人「戦っとらんやんけ!!」
じゃが丸くんとかを運んだ人「まーた戦ってないやん」
許して…ユルシテ…