剣に生きた人生をもう一度と願うのは間違っているだろうか 作:お刺身弁当
初めて作品を書いたので、大量に誤字脱字あるかと思います。
大目に見てあげてください…(赤特:ガラスのハート)
追記7/24
ご指摘をいただき、主人公名コジロウ→小次郎へ変更しております。
チリンッ…
戦いの鈴の音が鳴った。
ほぼ同時に武神は雷を思わせる速さを以って異世界の剣士に向かう。
たとえ、第一級冒険者であろうとも知覚できぬ程の速度で襲いかかる雷轟の一撃。
武神であり雷神である男神は、その名前に恥じぬ圧倒的な一撃をもって相手を斬り伏せる。
「ハアァァッ!!!!」
普通の人間であればそれで終わっただろう。
だが目の前に立つ男は、人間であって人間では無い。
「フ…」
薄い笑みを浮かべながらその一撃を逸らす。
ただ手首を回しただけにも見えるが、それでも往なされたのだ。
下界に降りて力を制限されているとはいえ、武神の技量はそこらの人間達では到底理解できない程の技量を持つ。
驚愕する男神に驚いている暇など無いぞとばかりに男神の首に二ノ太刀が迫る。
「グッ…ガアァ!!」
辛うじてその攻撃を避け距離を取る。
「見誤っていた。」
男神は目の前に立つ剣士を下界の人間から対等な剣士と認識を改める。
純粋な剣技のみで英雄達を退けた番人の剣技は、武神をも唸らせる程であった。
だが…目の前に立っている剣士の武器は剣技だけでは無い。
目を逸らしていた訳では無い。認識を改めるべく意識を逸らしてしまったその1秒にも満たない刹那、目の前に立っていた筈の剣士は男神の首を斬り落とさんと長刀を首元まで奔らせていた。
速さだ。神速をも超え文字通り次元の違う速さがこの剣士のもう一つの武器であった。
山門の番人として召喚された時は、その地形と行動範囲から全力を出せずにいた。しかしこの異世界では、番人であった頃の様に行動範囲を制限されることもない。故にあの頃以上の速度で相手を翻弄できる。
予測を大幅に超える速さに驚きはしたが、武神である彼もまた怪物なのだ。
「ッ!!」
先程襲いかかる男神の刃を逸らした男と同一の絶技を以って剣士の一撃を逸らす。
「フフ、まさか大道芸まで出来るとは…少しばかり驚いたぞ」
「まさか…見たままの技を使ったまで」
一瞬の斬り合い、それだけで再現できてしまう異常さが男神を武神と呼ぶ理由の一つだろう。
男神の返答に満足したのか、剣士は薄い笑みを浮かべながら男神へ迫る。
思わず見惚れてしまいそうになる剣筋は、その一撃一撃が相手の首を刎ねんと美しい軌跡を描きながら男神に向かっていく。
だが男神も剣士の絶技に関心してるだけじゃない。
一瞬で距離を取った男神は、今までと違う構えを取り、剣士に向かって振るう。
人間離れした動きで剣士を打ち破らんと迫るが、相変わらず構えらしい構えを取らず薄い笑みを浮かべたまま逸らされ、すかさず首を刎ね飛ばさんと二ノ太刀が続く。
背中に嫌な汗が流れるのを自覚しつつ、危な気なく回避するもそれでも剣士の邪剣は止まらない。
二ノ太刀でも届かぬなら、参ノ太刀をそれでも届かないなら四ノ太刀を…
首を執拗に狙い、死神の大鎌を連想させる程の連撃は四ノ太刀にて止められる。
参ノ太刀を逸らし、バックステップで後退。
瞬間剣士の元へほぼ同時に襲いかかる二本の突き。
邪剣使いは四ノ太刀にて一本目を打ち落とし、そのまま長刀を回しながら二本目も逸らす。
剣士の陣羽織。その肩部に血が滲む。
それに動揺する事もなく、未だ剣士は構えを取らず。
「く、素晴らしいな武神よ……!!其方の様な武芸者と立ち合えるならば、この世界に流れ着いた甲斐がある…。」
「クク…俺も嬉しいぞ、異世界の剣士よ。この戦い…いつまでも続けていたい程に、だがそれも終わりが近い。夕食とコジロウ殿の紹介もあるしな。」
「ふ、それはお互い生きていられたらの話よ。此度の戦い無事には済まんだろう。それに其方の表情は、そんな事許さないと言っておるぞ?」
(あぁ…「私」はそんな顔をしていたか…)
今まで必死に保っていた理性は吹き飛び。
そこに立つのは、タケミカヅチファミリアの主神ではなく、天界で暴れ回る武神の顔になっていた。勇猛な笑みは更に深い邪悪な笑みに変貌した。
そこからは絶技と絶技の応酬。
武神が力と巧さで。対する剣士は速さと巧さを以って剣を交わす。
「ガァアッ…!!」
その見た目からは想像できない剛力で反撃するもその悉くを受け流し、最低限の身のこなしだけで男神に迫る剣士。
剣を交える度に、剣士の速度が上がる、上がり続ける。
弧を描く様に放たれる宛ら舞を思わせる斬撃。最短距離ではない為男神はその速度に追いつける。
(これは死の舞だ。見惚れたら確実に首を斬り落とされる。)
避ける、斬り返す、避ける、斬り返す、避ける、斬り返す、避ける、薄く斬る、避ける、逸らす、避ける、逸らす、避ける、逸らす、避ける、逸らす、逸らす、逸らす、逸らす、逸らす、逸らす、逸らす、逸らす、逸らす、逸らす、逸らし続ける。
幾百、幾千の剣戟はいつしか男神が避けられる速度を超え、逸らし続ける事しか出来ない剣の牢獄になっていた。
下界に降り神の力を制限されている男神は、剣士の才に戦慄と同時に歓喜に震えながらも、この出会い自体に酷く後悔していた。
(よもや下界の人間で、私をこれ程までに熱くさせる者と出会うとは。この未知との出会い…幸か不幸かで言えば不幸だろう。防戦一方になりつつある状況。このままではいつか捌ききれず首が刎ねられるだろう…)
だが此処で剣士は距離を取った。目測でおよそ3Mほどの距離。
剣士を見れば身体のあちこちで少なくない血を流し、男神も剣士程ではないがそれなりに傷を負っていた。
それでも構えを取らない剣士に男神が疑問を投げる。
「ッ…何故、距離を取った」
このまま続けていれば、小次郎の勝利も時間の問題だと思っていたのにも関わらず、距離を取る目の前の剣士が異様に映った。
「……速さで勝負を決めたかったが、守の巧さも一級品ときた。このままでは決着は付かないと思ってな…まさに武の境地、鉄壁と言えよう。私の生温い剣技では到底届かぬ。ならばその守り…力尽くでこじ開けるまで。」
目の前の剣士が初めて構えた。
瞬間、武神の直感が今までにない程の警鐘を打ち鳴らす。
「秘剣…」
武神の直感によって明確な死のイメージを脳内に叩き込まれ、反射的にありったけの神威を稽古場だけに解放した。
「燕g…ッ!!!」
神威の影響により絶死の一撃を放たんと構える剣士がバランスを崩す。
瞬間、武神は己の刀を投げ捨て、威力も殺し、速さのみに全神経を注ぎ込み、剣士の懐に飛び込むと同時に鳩尾に正拳突きを叩き込んだ。
威力を殺したと言っても普通の人間であれば死は免れないだろう。
踏ん張りきれず稽古場の壁に向かって吹き飛んでいく剣士。
バァァァァァン!!!!!!
爆発音の様な異常な音が本拠内に轟き、それでも威力を殺せず稽古場の壁を突き抜け廊下まで吹き飛ばされる。
吹き飛ばされ、そのままピクリとも動かない剣士。
何事かと駆け足で向かってくる複数の足音を聞きながら、武神は身体が床に縫い付けられたかの様に凍りついていた。
(アレは打たせてはいけない技だ。アレは私達をも殺せる絶技…神威が効かなかったら死んでいた。アレは下界の人間が繰り出して良い技ではない…あちらの世界の英雄とは正しく化け物か。)
武神の脳内に叩き込まれた未来予知にも等しい鮮明な死のイメージは、剣士がこれから放つであろう絶技をハッキリと「視て」しまった。
縦の斬撃、縦の逃げ道を塞ぐ円の軌跡、横方向への離脱を阻む横の一撃。これら3つの斬撃が「同時」に放たれる正しく神域の剣技。生前剣士が剣技のみで辿り着いた頂、秘剣・燕返しを。
「小次郎殿?!?!大丈夫ですか!!!!しっかりしてください!!小次郎殿!小次郎殿!!」
「命!落ち着いて!!」
爆音が響いた近くに、倒れていた小次郎を発見し狼狽する命に千草が珍しく声を荒げ、未だ動かない小次郎に対して緊急用で購入していたエリクサーを取り出して振りかける。
「ッッ…!!クッ…千草殿か、それに命殿…」
状態の良いエリクサーを使用したからか、小次郎も回復し意識を取り戻した。
「すまぬ、些かはしゃぎすぎた様だ…」
薄い笑みを浮かべながら、満足気に小次郎は再び意識を手放した。
バイト中の神友「なんかイヤーな予感…ちゃんと家族サービスしてるのかな。」
家族サービス放り投げて闘ってた阿保神「してないッスね。」