剣に生きた人生をもう一度と願うのは間違っているだろうか   作:お刺身弁当

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定期的に庭に出現する頑固な雑草くん…ありゃあ一体何なんだ…?59階層の穢れた精霊なのか…?(精霊ではない)
幻術か…また幻術なのか…⁉︎(幻術でもない)


誤字報告ありがとうございます、そしてすみません!助かります!



第8話

「……なるほど、それで門下生募集していると。」

この日小次郎は、ギルドを訪れていた。

ギルドはオラリオの都市運営だけではなく、冒険者やダンジョンの管理…更にはダンジョン内で手に入る魔石の売買もしているらしい。

「…あぁ、それでどうだろうか」

「上司と相談して見ないことには何とも…道場や訓練場など所有するファミリアは勿論あります。タケミカヅチファミリアだけではなく、ある程度規模の大きいファミリアは所有しております。が、今回小次郎様の様に一般の方が開く道場となると私も聞いたことがありませんので…」

「…どうやら、そうらしい」

「はい…ただ、訓練場を所有していない小規模のファミリア向け且つ駆け出しや冒険者を目指す子供達を対象にするのはとても素晴らしいと思います。」

まぁ、私個人の感想ですけどね。と言葉を付け加え苦笑する事業担当の職員。

聞けば最近の冒険者は、ステイタスに物を言わせる新人冒険者が多く後輩の冒険者担当職員、小規模ファミリアの主神達が肝を冷やしているという。

全員が無事に地上へ戻って来られる訳では無い。

ダンジョン内で命を落とす新人冒険者は当たり前の様に存在する。

ベテラン冒険者でも命を落とす事があるのだから、技術不足な新人は尚更だろう。

ならば新人冒険者達に力を付けさせる事よりも、純粋な技術、技量の向上を重要視する道場の門下生募集は、道場を持たない小規模ファミリアにとって有難いだろう。

「募集の件は承りました。後ほど上司と相談させていただきます。私は掲載の許可が降りると嬉しいんですけどね。現状何とも言えないので…すみませんが、また後日ギルドへお越しください」

「承知した。正直門前払いされるかと思っていたが、助かった。感謝する」

要件が済んだ小次郎は席を立ち、少しギルド内を歩くと掲示板の前で足を止める。

掲示板には、ファミリア又は個人からの依頼を簡潔にまとめた紙がそこそこの数掲示されている。

ダンジョン内の薬草採取から庭の手入れなど依頼内容は様々だ。

掲示板を一通り眺め終わるとギルド散策を続けるが、特に目を引く物も無くギルドを後にする事にした。

ギルドから立ち去り、時間もまだ昼食には少し早くどうするか考え…気がつくと、小次郎にとってお気に入りの場所になっていたいつかの広場に来ていた。

この時間冒険者達はダンジョンに潜っている為、人通りも少ない。

小次郎はベンチに腰掛けると静かに噴水を眺めていた。

暫く眺めていると遠くで、何やら言い争う男性と初老の女性、男性に怯えている少年の姿が目に入る。

 

(…興が削がれた。これ以上景色を愛でる気分にはなれん。)

その場を去ろうとしていた小次郎は思わず足を止める。

言い争う二人組に割って入ったのは女性の側で怯えていた筈の小さな少年。

初老の女性を庇う様に前に出るがその足は震えており、憤慨する男を前に立っているのがやっとであろう。

それにも構わず、今にも殴り飛ばさんと拳を握り振りかぶる。

初老の女性が少年を守る為に抱きしめその場に蹲る。

 

……が、いつまで待っても男の拳は届かない。

1分程経過したか、はたまたそれ以上か…

不思議に思った女性と少年が顔を上げると、殴ろうとしていた男性が地に倒れ伏している。気を失っているのかピクリとも動かない。

辺りを見渡すが助けてくれたであろう人物は周りに居ない。

「大丈夫ですか!」

遅れて飛び出して来たエルフと猫人の二人組。

「あんた達が助けてくれたのかい?ありがとうね。」

「おねーちゃん達、ありがとう…」

「いえ、私達では…ですが怪我はない様子で安心しました。」

頭を下げて去っていく女性と少年を見送る二人組。

「リュー…それで、コイツどうするニャ。」

「適当に縛って道端にで放置していれば、ガネーシャ・ファミリアが対処するでしょう。(それにしても…)」

エルフの女性はある光景を思い返す。

的確に顎先を撃ち抜く様に飛ばされた小石。

振り下ろす瞬間を的確に撃ち抜くと、拳を空振りさせた勢いのまま地面に倒れ伏す。

見る人が見なければ、空振りした勢いで頭を打ちつけ気絶する間抜けに見えたであろう。

威力こそ殺してはいたが男の意識を断つには十分な威力をもったそれを投げ込んだであろう極東風の衣装を纏う人物。体格的に男性だろう。

顔こそ噴水の水飛沫で確認できなかったが、綺麗にまとめられ腰まで伸ばされた美しい長髪の男は小石投げ込むと、まるでその結果が分かっているかの様に此方を一瞥する事もなく踵を返して静かに去って行った。

「彼は一体…」

「…?何か言ったかニャ?それにしても空振りした勢いのまま倒れて気絶するニャんてとんだ間抜けだニャー!」

「(アーニャ…)…そう、ですね。ハァ…」

エルフの女性リューは、マヌケは此処にもいたのかと小さく溜息をつくのであった。

 

 

広場から静かに立ち去った小次郎は、昼食時も過ぎていたのでそろそろ昼食を摂ろう…と馴染みの出店を訪れていた。

「おっ、小次郎君じゃないか!いらっしゃい!」

見慣れた愛らしい笑顔を浮かべ、小次郎に声をかける。

「…あぁ。女神ヘスティア、じゃが丸くんのプレーンを2つ頂こう」

薄い笑みを浮かべ、注文する小次郎。

「はーい!プレーンが2つ〜…っと、少々お待ちくださーい!」

笑顔を浮かべ、鼻歌交じりでじゃが丸くんを包むヘスティア。

今日の彼女はいつも以上にご機嫌らしい。

「随分と、機嫌良さそうに見える…眷属でもできたかな」

「アハハー…眷属が出来ると嬉しいんだけどね…でも今日はそういうのじゃないんだ〜!」

女神ヘスティア初の眷属かと思ったがどうやら違うらしい。

 

「ほう…少し気になるな。差し支えなければ聞いても」

「んっふっふ〜!それはね〜…これだー!」

目の前に突き出されるメニュー表。

確認すると見た事がない味が追加されている。

「新商品!じゃが丸くん炎のチーズ味!」

じゃが丸くんの生地にチーズと細かく刻んだ唐辛子を混ぜて揚げるだけなのだがコレが中々美味しいと、発売初日から売れ行きはかなり好調らしい。

「これはね、なんとボクが作ったんだー!」

えへんと胸を張り自慢げに語るヘスティア。女神のツインテールも何故かブンブンと動いている。

「…では、それも一つ頂こう」

「ありがとう!待っててね、すぐ準備するよー!」

楽しそうにじゃが丸くんを準備しつつ、ヘスティアが口を開く。

「そういえば小次郎君、今日は何をしてたの?」

「…近々道場を開くのでな、ギルドに門下生募集の件を依頼して来たところだ」

「へー道場…小次郎君はやっぱり強いんだね!道場はどこかのファミリアから借りるのかい?」

「強いかどうかは分からんが…そうだな、道場はタケミカヅチ神から借り受けた。」

「えっ…タケが道場を貸してくれたのかい…?」

「…そうだが」

途端ヘスティアの表情は信じられないモノを見た様な顔に変貌する。

(ア、アレ…?小次郎君ッテ、オンケイ、モラッテナイヨネ…)

「ソ、ソッカーー…ソンナニ強イナンテ、ボク思ワナカッタヨー…アッ!ジャガ丸クンデキタヨ!冷メナイウチニ食ベテネー!」

ヘスティアはまさか武神に道場を任せられるレベルとは思わず、急いで記憶を抹消する事にした。

恐らくヘスティアは今日の事を記憶しないだろう。きっと記憶し続ける事は胃に悪影響だと、本能で感じたからだ。

炉の女神よ、それは正しい。世の中知って得する事と、知らない方が幸せな事もあるのだ。

小次郎から何と言われたかも記憶する事を辞めたヘスティアは、小次郎去りし出店で燃え尽きた灰の様になっていた。

 

小次郎は暫く歩いた先のベンチに腰掛けると新商品のジャガ丸を食べる。

「おっ…これは中々」

唐辛子のピリッとした刺激とチーズのまろやかな風味。決してじゃが丸くん本来の味を邪魔する事なく見事な融合を果たして誕生した新商品。

小次郎も思わず唸るほどのソレは人気が出るのも頷ける、出店の新たな看板商品となる日も近いだろう。

じゃが丸くんを完食し終え、残りのじゃが丸くんは紙袋から出さず持ち帰る事にした。そしてゆったりと立ち上がると再びフラフラと迷宮都市散策に繰り出すのであった。

(それにしても、剣を振る機会にはとことん恵まれんな…ダンジョン、と言ったか。どの様な景色なのだろうか…)

考えながら小次郎は歩いていると金髪の少年とすれ違う。

瞬間その少年は手首辺りを押さえて蹲ってしまった。

「…当たり屋、か」

そういった事、必要ではないくらいにその身なりは良いが。少年は動かない、声をかけられるのを待っているのか…などと考えていると

「い、いや…気に、しないでくれ…たまに…あるんだ。発作みたいな…モノかな…」

額に脂汗を浮かべながら男はなんとかといった風に応える。

(…演技ではなさそうだな、このまま放っておいても良いが…仕方あるまい)

「そうか…では失礼」

そう言いながら小次郎は少年を抱えると近くのベンチまで運ぶ。

少年が何か言っていたが、そのまま放置はできんと返すと何も言わなくなった。

ベンチまで移動すると、発作は治ったのか幾分か楽になった様に見える。

「すまない、運んでくれて感謝するよ…君、見ない顔だね。最近オラリオに来たのかな?」

「…左様。つい最近オラリオに流れ着いてな、辺りを見歩いていた」

「へぇ…そうなんだね。失礼、挨拶がまだだったね。僕の名前はフィン。君の名前は?」

「…小次郎と」

「小次郎、ね。どこのファミリアに所属しているのかな?日を改めてお礼をしたい…」

「…別に礼は要らぬ。とあるファミリアに世話にはなっているが、ファミリアには所属しておらぬ。ただどうしても礼を、というのであれば近々道場を開く予定だ。その宣伝でもしれくれると有難い。……体調もマシになった様だ、私はもう行く。フィン殿、機会があればまた」

フィンが落ち着いたのを確認すると、返事を待たずに小次郎はスタスタと去ってしまった。

「行ってしまったか。小次郎、………また会おう」

フィンは、誰にも聞こえない声で呟くと立ち上がりどこかへ歩いていく。

(ここまで親指が疼いたのは初めてだ…ファミリアに所属していないという事は冒険者ですらない。それにあの長すぎる刀…何もかもが謎すぎる。……だが、情報は得られた。小次郎、近いうちに必ず)

小次郎は知らなかった。

この少年は「少年」ではない事に、それも大派閥の団長であるという事に…

 

 

 

「…という事があってね、介抱してもらった訳だ」

楽しそうに報告を受ける女神は溜息を吐く

「な〜にが、「という事があってね…フッ(イケボ)」や!…まぁ事情が事情や、そこはしゃーないな。で、強そうなんか?ソイツ」

「どうだろうね、戦った訳じゃないから…ただ。強いと思うよ、彼。」

「恩恵も貰ってない人間がフィンにそこまで言わせるか〜…あああぁ!ごっつ気になるわぁ〜!……しゃーけど道場開くってもなぁ、このオラリオがどんだけ広いと思ってんねん。ソイツ見つけるんにも手がかりが少ないんじゃなぁ…」

「アハハ…まぁね」

とあるファミリアのとある一室

フィンは先程出会った剣士風の男の話を己が主神に報告していた。

謎の多い極東風の剣士、自身の身長を優に超える長すぎる長刀、道場を開くらしいが…いかんせん手にした情報が少なすぎる。

まぁそのうち会えるだろうと思っていた時、

コンコンッと扉をノックする音

「ロキ、入っても良い?」

「ん?アイズたんか。フィン、手がかりも少ないしこの話はここまでやな。いつか会えた時本拠に誘えばええ、ウチも会ってみたいしな」

ニシシと悪戯っぽい笑みを浮かべる女神ロキ。

「そうだね、礼は良いと言われたけど僕が納得できないからね。」

「ええでー!入ってきいー」

扉を開けて部屋に入って来たのは金髪の剣士アイズ・ヴァレンシュタイン。

「…フィンもいたの?」

「あぁ、少し気になる人と出会ってね。アイズはどうして此処に?」

「ロキにお土産…新商品のじゃが丸くん炎のチーズ味」

アイズは手に持っていた紙袋からじゃが丸くんを二つ取り出す。

「フィンにも」

「あぁ…ありがとうアイズ」

「ひゃー!アイズたんは…ほんまええ子や〜ほらほら突っ立てないで隣座りぃグヘヘ」

「変なことしたら怒るよ」

「そんな変態女神ちゃうわ!ただそうやなぁその太腿…さわっグボァッ…」

女神は死んだ。

「おっこれ中々美味しいね、ガレス辺りも気に入りそうだ」

「うん、美味しい。フィンも気に入った?」

「そうだね、頻繁には食べないけど偶にはいいね。僕好みの味付けだ」

撃沈した女神を気にすることなく二人は会話を始める。

視界の端で女神が痙攣しているがいつもの事だ。学習しない主神に少々ゲンナリしながらも特に咎める事はしない。

「それでフィン、さっきの話。気になる人と会ったって。」

「あぁその話ね、僕の親指が疼いたんだ。今まで感じた事ない程にね…」

「…‼︎どこのファミリアの人?」

「どうやらファミリアには所属していないらしいよ。本当かわからないけどね」

「…どんな人だったの?」

「極東風の衣装を纏った剣士風の男だったよ。髪も腰まで…アイズどうかしたかい?」

「その人…すごく長い刀。持ってなかった?」

「…‼︎へぇ…アイズ、彼の事知ってるのかい?」

「ううん、名前だけ。でも居る場所は、知ってる」

とてつもない爆弾が投下された。

探す為の手がかりが欲しいところだったのに、目の前の剣士は例の人物が居る場所を知っているという。

「ッ!!どこだい!彼が居る場所って!」

「なんやてぇぇぇ!!」

思わぬところで情報が手に入り思わず前のめりで聞いてしまうフィンといつの間にか復活し話を聞いていたロキにアイズは

「じゃが丸くんの出店…そこで、働いてる」

「「は…?」」

「「じゃ、じゃが丸くんの…出店(やと)…?」」

「うん。最近オラリオに来て。今は此処で働かせて貰ってるってコジローさんが」

何か微妙に名前を間違えているアイズに突っ込む気力を失うフィンとロキ。

「思いがけないところで重要な情報が手に入ったね…(何でじゃが丸くんの出店なんだ…?)」

「せ、せやな…アイズたん有難うな…(何でじゃが丸くんの出店なんや…?)…フィン、明日時間あるか?」

「うん、大丈夫だよロキ。僕も同じ事を考えていた」

このチャンス逃す訳にはいかぬと彼の働く出店へ明日にでも行こうと決めるフィンとロキ。そんな二人を見てアイズは

(じゃが丸くん気に入ってくれたんだ。良かった。)

 

違う、そうじゃない。

そうじゃないんだ、金髪の剣士…

 




じゃが丸先輩「おっ!明日は後輩の小次郎君が一緒じゃないか!…でも何故だろう、ボク…すごく嫌な予感がするよ」

袖と襟ぐりの部分しか服を買えなかった女神「なんでや、なんでドチビが頭ン中にチラつくんや…?」

エルフの女性(ポンコツ)「同僚が明日じゃが丸くんを買いに行こうと誘って来たが、嫌な予感がするので明日はやめた方がいいと伝えた」

バイト剣士「いつの間にか、知らん道に入っていたらしい。何だこの扉は、頑丈そうに作ってあるが…調べるのはまた今度だな」
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