ドールズフロントライン ~テレコ・メンタル~   作:弱音御前

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少し暑さも落ち着いてきたでしょうか。やや涼しさも感じる今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか?
どうも、弱音御前です。

テレコ・メンタル、今回は5話になります。
お話も折り返しに差し掛かりましたが、事件が解決するまではもう少しかかりそうな様子。気長に読んでもらえたらと思います。
それでは、今週もどうぞごゆっくりと~


テレコ・メンタル 5話

 グリフィン基地A棟2階 連絡通路

 

 

「指揮官? ねえってば」

 

「んぇ? どうしたんだ?」

 

 並び歩く45の声で我に返る。

 エレベーターを降りてからここまでの数十メートルを、指揮官は本能だけで踏破していた次第である。

 

「間抜けな声出すくらいぼ~っとしちゃって、何なのよ」

 

「ちょっと考え事しててさ。寝不足もあって、気が抜けてたみたい」

 

 基本、作戦指揮以外でも問題が絶えないこのグリフィン基地にあって、指揮官には大なり小なり悩み事が付きまとう。

 目下、一番頭を悩ませているのは41の件に他ならない。

 

「寝不足になるくらい悩むなら、私にも相談しなさいよ。これじゃあ、私が副官でいる意味ないじゃん」

 

 つい先ほど、自室の前で合流してからどことなくピリピリしているなと思えば、お姫様は頼って貰えていないことが不満なご様子。

 戦闘だけでなく、最近はこういった雑務に対しても積極的に協力してくれるその姿勢は指揮官として本当に頼もしい限り。

 もっと言ってしまえば、想い人にそこまで心配してもらえるなんて、この上なく幸せなものである。

 

「平気だよ。もう、解決策は幾つかピックアップできたから。俺だけじゃあ本当にどうしようもなくなったら、その時はよろしく頼むね」

 

「ん・・・」

 

 麻色の髪を撫でてあげると、45は甘い声を漏らしながら体を寄せてくる。

 柔らかく艶やかな触り心地はさることながら、シャンプーの香りなのだろうか、彼女特有の甘い香りが指揮官の鼻をくすぐる。

 そんな、甘々なムードで歩く指揮官と45を、行き交う職員や戦術人形達は特に気に留めることはしない。もう、日常茶飯事だととっくに割り切っているのであった。

 

「ご主人さま~~」

 

 と、全く空気を読んでいない声が2人のフィールドに切り込んできたのは、執務室まであと少しというところ。

 声の出所は2人の背後だ。特に驚くような事ではない。

 朝のこの時間、41が挨拶がてら、こうして背後から飛びついてくるというのは普段通り。

 指揮官は地に根を張った大樹の如く、41の戯れを背中で受け止めてあげればいいのである。

 ・・・ただ、一つ失念していたのは、今の41はいつもの姿ではなく、指揮官よりもやや背丈の高いアルケミストの素体に変わっているという事実。

 まぁ、朝から45と惚気ていたせいでその事を忘れていたというのであれば、これは指揮官の

自業自得としても過言ではないだろうが。

 

「ああ、おはよう41ぃいぃいぃいっ!!?」

 

 ドスン! と、まるで巨大な土嚢が突撃してきたかのような、強烈な衝撃を背中に受ける。

 あまりに咄嗟の事であったが、反射的に足で踏ん張りを効かせ、転倒を免れる。

 しかし、その代償は大きい。特に、腰部へのダメージは相当なものだ。

 指揮官があと20ほど歳をとっていたら、間違いなくヤラれていたに違いない。

 

「ちょ、41!? アンタ、いつもの体じゃないんだから!」

 

「ふわぁ! ご、ごめんなさいご主人さま! いつもの調子でつい」

 

「い・・・いや、いいんだよ。次からは気を付けようね」

 

 45に注意され、飛び掛かってきた犯人はすぐに背中から離れてくれる。

 ダメージのリカバリーの為、指揮官はしばしそのままの状態で深呼吸を数度。

 

「もう、その素体になって何日も経つんだから少しは自覚を・・・・・・なんだか、やたらと41になったわね」

 

 やたらと41って何? 45の言葉に心の中でそうツッコミを入れつつ、指官もここでようやく背後を振り返ってみる。

 

「おお・・・確かに、なんか41っぽくなったなぁ」

 

 自然と出た感想は、45とあまり変わりやしないものであった。

 

「えへへ、これでいつも通りに馴染めるといいのですが。どうでしょうか?」

 

 その場でクルリと回ってみせる41の姿は、もう昨日までのアルケミストの雰囲気はすっかりと抜けきっていた。

 銀糸のようだった髪はブロンドに染め上げられ、41の元の髪型と同じローツインに纏まっている。

 カラコンで瞳の色まで合わせていて、41が大人になったらこんな感じ、というお手本のような装いだ。

 服装に関してもやはり、飾り気のない昨日までと違い、見た目相応の落ち着いた装いで見繕っている。

 それらは41自身で選んだものではない事は明白であり。

 

「お気に召していただいたようで何よりです、ご主人様」

 

 誰がコーディネートしたのか? は指揮官が良く知っている事だった。

 

「流石だね、G36。君達のおかげで41が見違えたよ」

 

 41の背後から続いて現れたのは、アサルト〝G36〟。朝だろうが夜だろうが戦場だろうが、その丁寧な佇まいは相変わらずのメイド長である。

 

「僭越ながら、私もお手伝いさせていただきました」

 

「おまけに私もね。僭越ながら」

 

 続いて現れたのは、36の妹分の〝G36c〟そして、2人にはほとんど縁の無いだろう人形〝DSR50〟である。

 

「へえ、流石はアンタ達姉妹ね、なかなか良い仕上がりになってるじゃない」

 

 言って、41の周りをクルリと見て回る45。

 41としては、大好きな45に褒めてもらっていい気分、な感じなのだろうが、当の45はそれとはちょっと違う心持ちなのは指揮官には分かる。

 あれは明らかに羨ましがっている時の彼女のそれである。

 自分の素体にコンプレックスを感じている故のものなのだが、それを言うとまたどんな痛い目に遭うか分かったものではないので、あえて黙しておく指揮官である。

 

「でも、なんでDSRまでいるの? そんなファッションセンスに自信あったのかしら?」

 

「ん~、ファッションにはあまり自信は無いかしらね。でも、少なくとも〝サメちゃん〟よりは

マシかもしれないわ」

 

「その呼び方やめろって何回も言ってんでしょ」

 

 大抵の人形に対しては優位に立つ45だが、こと、DSRに対してはそれほど効果を発揮できない様子。

 嫌がる45も無視して、DSRは話を続ける。

 

「我らが指揮官様が、36姉妹と協力して41を仕立ててくれって言うから。だからって、なんで私なのかよく分からないのだけれどね」

 

「ふ~ん? なんでDSRに声かけたの、指揮官?」

 

「なんでって・・・大人っぽい雰囲気だし、背丈とかも今の41に近いから。一緒にいてくれれば服装選びなんかも楽かなって思ってさ」

 

 今の指揮官の答えも真実の一つである。

 しかし、本当の思惑はそれとは違う点にもう一つあった。

 

「ご主人様の仰る通り、DSRが居てくれましたので、とてもコーディネートの参考になりました」

 

「私も、DSRさんと一緒にお洋服を選ぶの楽しかったです。普段あまり話すことがなかったですけど、色々なお話を聞けましたし。今度は、みんなでそれぞれのお洋服を買いに行きたいですね」

 

「ん・・・そうね。気が向いたらね」

 

 ややとっつきづらく、何を考えているのかよく分からないDSRは、グリフィン基地の中でも

孤立しがちな人形である。

 孤独を愛するというのであれば無理強いはしないが、この基地で出会い、戦場では背中を預け合う関係になるのだから、交流を深めるのも大事な事である。

 そんな、ちょっとしたお節介で今回、36姉妹との協力体制を組んでもらったのだが、見たところ、それなりに上手くいってくれたようである。

 

「何をニヤけているの? そんなに面白いモノでもあったのかしら」

 

「そうよ。何考えてるか分かんなくてキモイわよ?」

 

「キモくて結構。とにかく、G36、36c、DSRの3人共、41を仕立ててくれてありがとう。今日はまた別の任務になるけど、よろしくね」

 

 指揮官の言葉に揃って一礼し、3人は去っていく。

 36姉妹に絡まれるのを淡々といなしているDSRを見送り、指揮官は自然と笑みを零す。

 

「改めておはよう、41。執務室で準備して、それから一緒に訓練場に行こうか」

 

「はい、よろしくお願いしますご主人様・・・じゃなかった。指揮官さん」

 

 そう言いなおしたかと思うと、41は指揮官の腕に抱き着いてきた。

 大人の色気を帯びた妖しい笑顔を浮かべ、おまけに、指揮官の腕を自分の胸の間に押し付けるように抱えている。

 

「え、ちょ!? な、何やってんの、41?」

 

「こうするとご主人様が喜んでくれるとDSRさん教えてもらいました。どうでしょうか?」

 

「ど、どうって・・・それは」

 

 一転、いつもの無邪気な笑顔に戻った41にどう答えたらいいか迷っているその最中、いきなり反対側の腕を抱き寄せられた。

 

「いつまでも立ち話してないで。さっさと行きましょう」

 

 傍から見ても分かるくらい頬をぷく~っと膨らませ、45は指揮官の腕を強引に引いて歩きはじめる。

 

「えへへ、こうやって45お姉さんみたいにしたいなって思ってたんですぅ」

 

 明らかに不機嫌な45とそんな気持ちも知らずご機嫌な41を両手に、指揮官は何も言えず引き連れられるのだった。

 

 

 

 

 

 グリフィン基地 戦闘訓練場

 

 

 ピピ、と腕時計のアラームが軽快な電子音を鳴らす。

 そこで、HK416は傍らに控える仲間に合図を送る。

 正面、南側に向けてゆっくりと進行を始めたのは、ショット〝M590モスバーグ〟と

サブ〝MP5〟の2人組。実戦任務において頼れる切り込みコンビだ。

 416とコンビを組むのはハンド〝USPコンパクト〟。相変わらず不安げな面持ちの彼女を従え、416は西側から回り込むように南側へと進んでいく。

 グリフィンの戦闘訓練場は週毎にレイアウトテーマが変わる。

 今週のテーマは大型のコンベア、プレス機が迷路のように立ち並ぶ仄暗い工場だ。

 身を隠しつつ標的に近づくにはうってつけのフィールド。

 戦闘は極力スマートに、というのを信条に掲げる416には好みの環境である。

 

「41ちゃん、どのように仕掛けてくるでしょうか?」

 

「何も考えずに突っ込むような娘だから。アルケミストの素体になってもそれは変わりないでしょうね」

 

「ということは、モスバーグさんとMP5さんが真っ先に接敵しそうですね」

 

 此度の戦闘訓練は、単なる訓練というだけのものではなく、アルケミストの素体に入れ替わった41のスペック測定という目的も込められている。

 戦闘方式は〝プレデター〟。片方を捕食者と見立てた、一対多数のゲームだ。

 この方式を好む者は戦術人形の中にも多く、416もそのうちの一人。自分がプレデター側になるのが心地良くて仕方ないクチだ。

 今回のように多数側に回ってしまえば、それはそれで、いい気になっている相手側を叩きのめしてやるのも気味が良い。

 41相手にそこまで意地になるのも大人げなく思えなくもないが、アルケミストの素体に入り込んでいる41の実力は全くの未知数だ。全力でかかるに越したことはない。

 

「相手がどうであれ、万一にも負けは許さない。そのつもりでね、USP」

 

「は、ははははい~! 頑張りますぅ~~!」

 

 完璧を求める彼女が率いるTaros小隊に敗北の二文字は絶対に許されない。

 そんなガチ部隊に何の因果か配属されてしまったUSPの心労は、計り知れないものである。

 フィールドの4分の1を進んだ時点。そろそろ、どちらかの組が接敵する頃か、と416が考え始めた矢先、フィールドに銃声が鳴り響いた。

 

「ひぃい!? 始まっちゃいましたぁ!?」

 

「この程度でいちいち騒がない。フォローに入るわよ」

 

 接敵している2人が41を引き付けているうちに回り込めれば、十字砲火で優勢をとれる

チャンス。

 9ミリ弾と12ゲージ弾の炸裂音が連続する方角へと急ぐ416。

 ・・・と

 

『ご、ごめんなさい、隊長。ダウンしちゃいました』

 

 まずはMP5からの離脱報告。

 その報告に416が反応するよりも早く。

 

『私もダウンです。面目次第もありません』

 

 モスバーグからも離脱報告が入り、あれだけ騒がしかった銃声は残響を引いてあっという間にフェードアウトしてしまうのだった。

 

「・・・は? ちょっと待って。アンタ達が何言ってるのか分からない」

 

『ですから、テイクダウンです。MP5も私も41にやられました』

 

「2人共やられたって・・・交戦してからまだ10秒も経ってないわよね?」

 

 本来の戦闘訓練はビスケット弾と呼ばれる、砕けやすい弾丸を使い、人形達の安全を確保しての銃撃戦となる。

 しかし、アルケミストの素体は銃器を扱えないため、相手の身体に触れることでアウトの判定をとる、特別ルールを敷いている。

 

「モスバーグ、アンタは速攻でやられても不思議ではないわ」

 

『ぅ・・・隊長にそう言われると少し傷つきますね』

 

 416とて、モスバーグをイジメようとして言ったわけではない。

 モスバーグはブロック主体の戦闘スタイルである。最近は416の指導もあって、ステップ技術も上達してきたとはいえ、掴まれば即アウトという今回のルールは致命的なまでに相性が悪い。

 彼女が真っ先にダウンするのは、416にとって予測の範疇だった。

 

「けど、MP5。アンタのそのザマは何なのよ?」

 

 相手の接近を許さない、触らせないというのであれば、この部隊で一番なのは彼女、MP5の筈だった。

 小柄で俊敏、おまけに最近ではMOD3にランクアップして、すばしっこさに更に磨きがかかっていた。

 〝アンタッチャブル〟の異名を持つMP5までこんなに早くダウンさせられるとは微塵も考えていなかったのだった。

 

『決して、41ちゃんだからって甘く見ていたわけではないんですよ! 見つけたと思ったら一瞬で間合いを詰められて、呆気なく。予想以上の速さなので、そちらも気を付けて下さい』

 

 それを最後の言葉に、2人との通信が切れる。

 必要以上の情報共有を防ぐため、ダウン後、しばらくすると通信が遮断されるというルールなのである。

 

「無理無理無理! 絶対にムリですよ~! MP5さんとモスバーグさんがあっさりやられたのに、私なんかが太刀打ちできるわけないですって~!」

 

「黙りなさい、パニックになるな。私がいるから平気よ。アンタは自分のするべきことだけを考えてればいい」

 

 互いの背中をカバーし合い、フィールドを慎重に進んでいく。

 2人を反応する間もなくダウンさせるほどのスピードだ、すでに416達は射程に捉えられているに違いない。

 一歩、また一歩と進んでいるこの最中も、捕食者はどこからか2人の様子をじっくりと観察して攻撃のチャンスを

 

「ひゃあぁ!!?」

 

 絹を裂くような悲鳴を聞きつけ、咄嗟に振り返る。すぐ背後についてきていたはずのUSPの姿が無い。

 

「クソっ! 41のくせに容赦なしね!」

 

 USPが引き込まれたであろうプレス機の影に銃口を差し込む。

 まだ41がそこに居ればいいのだが

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ~! やられてしまいました~!」

 

 そこに居たのは、両手を挙げて降参ポーズのUSPだけ。

 その様子を見て、416は露骨に溜息をつく。

 

「で、41は?」

 

「背後から引きずり込まれたので、見えませんでしたぁ」

 

「そ。ご苦労様」

 

「つ、次は気を付けますので、お許しを~!」

 

 USPの懇願を無視して、416はすぐさま踵を返し戦闘モードへ切り替える。

 1人で全方位をカバーしなければならないのは骨の折れる事だが、USPがあのザマでは大して変わらないか。

 

(41は勢いにノッてる。すぐに仕掛けてくるはず)

 

 出身を同じくする戦術人形ということもあり、416は41の戦闘スタイルを良く知っている。

 普段は人間の子供のように天真爛漫な戦術人形だが、戦闘となれば別。狡猾で容赦のないハンターである。

 暗がりの中、微かな気配も見逃すまいと416は目を光らせる。

 頭上、背後、機械の影、目まぐるしく銃口を向けて回るその様子には、けれども、狩られる者の焦りは感じられない。

 研ぎ澄まされた集中力が、闇中の影を、微かな呼吸音を、背後で流れる風の動きを確実に捉えてみせた。

 

「っ!?」

 

 反射的に、崩れ落ちるようにしてその場に身を屈める。

 直後、416を捉えようと、大バサミのように両腕が頭上を空振った。

 コンマ秒の高速思考。41との距離が近すぎて銃口を向けられないと判断するが早いか、太腿に巻いたホルスターから拳銃をドロー。

 振り返りもせず、背後に向けて3発お見舞いする。

 

「ふゃあ!?」

 

 着弾音は1つ。プレデター側は1人だけの代わりに、胸部から頭部にかけての範囲に当たらなければダウンにはならない。

 あてずっぽに撃ったところで勝てないが、今はそれでいい。

 不意の反撃でプレデターがたたらを踏み、距離が開いた。それが狙いだ。

 前方に体を投げ出し、コンベアーの上を転がる。

 姿勢を整えつつ、まだ姿を現したままの41に向けて残りの4発を連射。

 腕で頭部周りをガードしていたのでダウン判定はもぎ取れなかったが、41は堪らず、機械の影に再び姿を潜めた。

 

「流石45口径。抜群の打撃力ね」

 

 空になったマガジンを落としながら、416が小さく呟く。

 彼女がサイドアームを45口径オートに変えたのは最近の事。コンパクトで装弾数を多くとれる9ミリ弾拳銃の方が戦場では有利、というのが416の考えなのだが、敬愛なる指揮官が45口径を使っている、という情報を耳にしては416も使わずにいられなかった。

 実際に使ってみれば、しかし、装弾数が少ないというストレスこそあれ、パワーはそれを補って余りあるということで、今やすっかり416のお気に入りである。

 密かに、指揮官と同じカスタムメイドにまでしているということは、知られたら恥ずかしいので内緒の話だ。

 

「MP5達をあっさり仕留めたのは褒めてあげる。でも、私まで簡単に取れるとは思わない事ね」

 

 ライフルを構え直し、どこかに潜む41に話しかける。

 せっかく416は41の姿を見失っているのだ。こんな時は普通、会話に付き合ってやる必要はない。

 

「あぅ~・・・上手くいくと思ったのですが。やっぱり、416さんは凄く強いですね」

 

「当然。いつも言っているでしょう? 私は完璧な人形なのだから」

 

 なのに、会話を返して自分の位置を教えてしまうのだから、41はまだ甘い。

 心の中で笑みを浮かべながら、416は声がする方向へ向き直る。

 

「でも、私がんばります! 憧れの416さんに勝てるチャンスなのですから!」

 

「そうね。その素体と、今まで学んできた戦術を駆使すれば・・・或いは」

 

 しゃがみ込み、地面スレスレまで視線を落としてみる。

 大型の工業機械は冷却効果の為、地面と隙間を設けて設置されることが多い。このフィールドのオブジェクトもその例に漏れず、地面から5センチほどの高さは全面で吹き抜けになっている。

 頭隠してなんとやら、という格言もほぼそのまま。ゆっくりと歩み進む2本の足が丸見えである。

 

(迂闊。まだまだお子様ね)

 

 体を横たえ、ライフルを構える。足をスコープのレティクルに捉えると、そこで一呼吸。タイミングを合わせてトリガーを引いた。

 

「いった~~!? わ、私ですよ~! 撃たないでください~!」

 

 41の態勢を崩してやれればいいくらいの考えで撃ってみれば、飛び出してきたのは予想外にもUSPの声。

 

「USP!? 紛らわしいわね! さっさと退場しなさいよ、このノロマ!」

 

「道に迷ってしまって退場できないんですぅ! 誰か助けて下さい~!」

 

 ケンカするのも仲の良い証拠。416とUSPのこんな漫才も、今ではすっかりとTaros小隊の名物みたいなものになっていた。

 

「・・・ふふ、あの2人は訓練でも相変わらずですね」

 

 そんな隊長と同僚のやり取りを、丸いスコープ内でずっと捉えていた少女がここで小さく笑みを零した。




これを作っている際に気づいたのですが、当方の歴代作品はHK416の登場回数が少ないですね。
ドルフロの登場キャラの中では人気がある方だと思いますし、苦手なキャラというわけでもないのですが・・・
まあ、普段あまり陽の目をみないキャラにスポットを当てたい、という思いもあるのでこれからも己の道を貫いていきたいと思っています。

次週の投稿もどうぞお楽しみに。
以上、弱音御前でした~
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