憧れの世界は牙を剥く   作:奈倉ゆう

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2人の雑談

「流石に少し食べすぎたな。」

 

部屋に戻り、体を洗い流したあとに着ていた服などを洗いながら呟く。

しかし、最後に食べたのは昼の黒パンと干し肉だけだし、あの後ヒューデットや、ほかの魔物との戦闘、アイオンとの練習試合で体を動かしたせいで、お腹が空いていた。

 

「ふぅ、やっと休めるな。」

 

洗い物を終わらせ、ベットに体を埋める。

 

今日消費した分の魔石とポーションはさっき冒険者ギルドで購入し、中級魔石5つ、初級ポーション3つ、中級ポーション2つ手元にある。

ヒューデットを倒した分の特別報酬で1体2万ギルとゴブリン討伐のクエスト15000ギルを貰った。

ヒューデットは、3体倒したがアイオン達の活躍もあるため、2体分のお金は譲ろうとしたが、お前たちが持っていけと言われ、リーフと分けることにした。

ポーションと魔石、いざとなった時の戦闘離脱用の衝撃を与えると強力な光を放つアイテム、閃光石を購入し、大体所持金は最初に持っていた分と報酬分を合わせると、10万ギルになった。

数万円の高い買い物だったが、これで安心して明日のヒューデット撃破のクエストに望める。

 

「あー、眠い。」

 

まだ8時くらいだが、かなり体を動かし、体力を消費したため、まぶたが重くなる。

 

「そういえば、魔力って結構回復するの早いよなー。」

 

ヒューデット達と戦ったあと、冒険者ギルドに報告に行った時には結構回復しており、大体1時間ほどで俺の魔力は8割近く回復していた。

 

「アニメや、ライトノベル知識だけど、魔力って1日かけてやっと全回復っていうイメージだったけど、こんなに早いとはな。」

 

魔力回復速度がEの俺ですらこれなのだ。もっと魔力回復速度を上昇させたら、数分で初級魔法程度の消費魔力量なら回復するのではないだろうか?

 

そんなことを考えていると、控えめのノック音が部屋に響く。

 

「もしかしてリーフかな。どうぞー。」

 

ベットに横になったまま、扉に向かって言う。

 

「失礼します……って、ユウキさん大丈夫ですか?」

 

ベットにぐたーっと横になっている俺を見て、リーフキョトンとしている。

 

「大丈夫だ、ただ少し疲れただけだよ。リーフは大丈夫か?あ、椅子使っていいぞ。」

 

流石に寝っ転がったまま話すのもあれなので、体を起こしベットの隅に座る。

 

「小さい頃から畑のお手伝いをしていたので、体力はそこそこあるんですよ。もし疲れているなら、戻りましょうか?」

 

「大丈夫大丈夫。それよりなにか用事があるんじゃないか?」

 

リーフに問うと、軽い笑みを浮かべ

 

「いやー、明日のことがちょっと不安で眠れなくて……。」

 

あははと頬を掻き、服の裾を親指と人差し指の先でいじっている。

 

「確かに今日は結構ヒューデット相手に苦戦したもんな。」

 

『マジックショット』も『ファイア』も効きづらく、半端な攻撃では止められなかったし、力は強いし、足は速いし。

 

「あれ、絶対Dランク下位じゃないですよね。」

 

キャサリンがヒューデットはDランク下位程のステータスだろうと、言っていたが、まだヒューデットの詳細が判明していないから冒険者ギルドがDランクと決めたのだろう。

今日渡したヒューデットの遺体を冒険者ギルドが調べるらしいから、そのうち正確なランクが決定されるだろう。

 

「でも、今日で結構ステータス上がったし、中級魔法を覚え、スキルの習得の仕方も教わった。戦い方も。

少なくとも今日よりも上手く戦えるさ。」

 

まだ中級魔法を俺もリーフも完璧に覚えられたわけじゃない。

というか、教えてもらっても中級魔法でもレベルの高い強力な魔法は2人とも覚えられなかった。

魔法制御力のステータスが関係し、自分の魔法制御力のステータスが、魔法の魔法制御力のステータスよりも高い、または同じでなくてはならないためだ。

しかし、少なくともこれを覚えればヒューデットを相手にしても戦える!とキャサリンが言っていたいくつかの魔法は覚えられたので大丈夫だろう。

 

「そうですね、明日頑張りましょう!ところで……。」

 

「ん?」

 

リーフが何かを聞きたそうに俺と目を合わせる。

 

「ユウキさんの出身地とか聞いてもいいですか?

そういえば私、ユウキさんのことあまり知らないなぁって思って。」

 

「あー。」

 

どうするか……素直に話すか、誤魔化すか。

べシールは、器の使徒であることは、信用できる人の前でのみならいいと言っていたが、転生したことについては何も言っていなかった。

だからと言って、素直に言ったとして

 

「日本から来たよ〜。」

 

「そうなんですね!」

 

とはならないだろうし、異世界から来たことがバレてしまう。

まぁ、異世界から来たのがバレてなんかあるという訳では無いだろうが、いろいろとややこしい。

 

「あ、別に言いたくなかったら言わないで結構ですからね!」

 

考えていると、胸の前で両手を振りながら、リーフが言った。

 

「いや、そういう訳じゃないんだ。まぁ、詳しくは言えないが、東の小さな島国から来たんだ。」

 

咄嗟にそう言って乗り切る。

 

「東の島国ですか……。村からあまり出たことないので遠くの地理に関しては分かりませんが、なにかその国の有名なものとかありますか?」

 

興味が湧いたようで、身を乗り出してリーフは聞いてくる。

ここまで食いつきがいいとは……。んー、日本の有名なものね。

 

「寿司……。」

 

「スシ?」

 

俺の日本というイメージで真っ先に出てきたのがそれだった。

 

「俺のいた国での代表的な食べ物だよ。米という穀物に酢を混ぜてこのくらいの大きさにするんだ。」

 

寿司のシャリの大きさを机の上にあった羊皮紙とペンで表現しながら説明する。

 

「んで、その上にこのくらいの大きさに切った生魚を上に乗っけて醤油というタレをつけて食べるんだ。」

 

「生魚って食べられるんですか。」

 

おそらく生魚を食べたことがないのであろう、リーフは少しありえないといった表情をしている。

 

「あぁ、うちの国では普通に食べてたな。」

 

「へ、へぇー。

あ、そうだ!ユウキさんって兄弟とかいますか?私は一人っ子なので、兄弟がいる人が羨ましくて。」

 

露骨に話題を変えたなこの娘。まぁいいや。

 

「俺も一人っ子だな。」

 

というか、一人っ子以前に親は死んでいるから1人な訳だが。

 

「……ユウキさん?」

 

「ん、どうした?」

 

「いえ、どこか寂しそうな表情をしていたので。」

 

どうやら親を失った時を思い出して、寂しそうな表情をしていたらしい。そんなつもりはなかったのだが。

 

「なんでもないさ。リーフは一人っ子ってことは、3人暮らしなのか?」

 

「そうですよ、お父さんもお母さんも畑仕事してます。親は畑仕事を継いで欲しかったみたいですけど、私が王都で魔法について勉強したいって言ったら、なんとか分かってくれました。」

 

「理解のある親御さんでよかったな。そういえば、魔法について勉強して、その後何かやりたいこととかあるのか?」

 

「私、孤児院を建てることが夢なんです。

最近、魔物達が強くなって、以前と比べて亡くなる人達が多くなっています。親が冒険者で路頭に迷う子供達も多くなっているという話を前にビギシティに来た時に聞いたんです。

だから、私は魔法を勉強して冒険者になって、お金を貯めて孤児院を建てようって思ったんです。」

 

お金の稼ぎ方は他にもあると思うが、本人が冒険者になりたいと言うなら俺は何も言わない。

 

「ユウキさんは、魔法を勉強した後何かやりたいことあるんですか?」

 

「やりたいことというか……なんというか……俺は強くならないといけないんだ。理由は言えないがな。

だから、強くなるために王都に行って勉強するんだ。」

 

流石に器の使徒なので魔王を倒します!だから強くならないといけないんです!とは言えない。

 

「お互い夢が叶うといいですね。

あっもうこんな時間、そろそろ戻りますね。」

 

時計を確認し、椅子から立ち上がって扉へと向かっていくリーフ。

 

「あぁ、また明日な。」

 

「はい、明日頑張りましょうね!」

 

笑顔でこっちを向いてそう言い、リーフは扉を開け、自分の部屋へと戻って行った。

 

「いつの間にか眠気覚めたな。」

 

リーフと会話しているうちにいつの間にか眠気が無くなったが、明日も大変だろうし、ベットに横になりとりあえず目をつむる。

 

「んー、眠れない。」

 

目を開き、天井をぼーっと見つめる。

眠れないのでこれからやるべき事を整理することにする。

 

「リーフは明後日にミラン村に帰っちゃうんだよな。その後はとりあえず、あれの検証しないと。」

 

器よ、出てこいと念じると、俺の体から2つの紫色の器が出てきて、俺の顔の上をくるくると回っている。

 

「忘れていた訳じゃないが、これをリーフに見られると器の使徒ってことがバレるだろうしな。」

 

別にリーフを信頼していない訳じゃない。もし知られたとしても誰にも言わないと思う。

だが、昨日あったばかりだし、それに、誰かに見られて情報が漏れるということもある。だから、誰にも見られないところで検証しないと。

 

「リーフが帰ったあと、1人でクエスト受けてその時に試そう。あとは……。」

 

器の欠片を再び体内に戻し、右手を見つめる。

 

「魔法創造……真・無属性をべシールから受け取った時に貰った1度のみ魔法を作り出すことが出来る力……か。」

 

自分の戦闘スタイルを見極めて、それにあった魔法を作るため、先延ばしにしていたが……。

 

「無属性は上位属性がないからなぁー。」

 

今日キャサリンから聞いた話を思い出し、どんな魔法を作るか大体決めた。

無属性は上位属性がない。ということは超級魔法を使えないということ。

だから、そこをカバー出来るような魔法を作ろうと思っている。

例えば、高威力の魔法や高防御の魔法。

リソースも結構あるとべシールが言っていたため、かなり高性能な魔法を作ることが出来るだろう。

 

「でも、とりあえずは中級魔法をマスターしないと。」

 

そのためには少なくとも魔法制御力を上げないといけない。しかし、リーフ曰く、Eランクからはステータスが上がりにくいらしい。

俺の魔法制御力はE+で、すでに上がりにくいラインに到達している。

 

「ステータス上げるの時間かかるだろうな。」

 

はは、と乾いた笑い声が喉の奥から漏れる。

しかし、これもヒューデットを倒すのに必要なことだ。

そして、将来魔王を倒すのにも。

 

「……眠くなってきたな。」

 

色々と整理していると、眠気が復活しまぶたが重くなる。

 

「寝よ。」

 

灯りを消して、明日のためにまぶたを閉じ、数秒後には意識が遠のいていった。

 

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