憧れの世界は牙を剥く   作:奈倉ゆう

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しばしの別れ

「ふう、ちょっと遅くなっちゃったな。」

 

チキンバードをギルドで解体してもらい、宿で調理しようと、お店で材料を買い、宿へと戻る。

 

昨日宿泊していた人が、500ギル払って宿のおじいさんに厨房を借りていたのを見た。調理が終わったあとであれば、500ギル払うことで貸してくれるみたいなので、今日チキンバードを捕らえた時から色々とお世話になったユウキさんに手料理を作ってあげたくなったのだ。

 

「喜んでくれるといいな。」

 

ユウキさんと出会った時を思い出す。

 

 

 

 

 

 

3日前

少しでもパーパン学園に行くためのお金を稼ぐために、ビギシティに荷物を運んだ後、前回初めてビギシティに来た時に冒険者ギルドに登録をしていた私は、冒険者ギルドでクエストを選んだ。

 

Fランクで戦闘が苦手な私は安全で、そこそこ報酬があるクエストはないかと探していると、ヒーリンソウの採取クエストが目にとまった。

ヒーリンソウはビギシティの近くに生えており、魔物達にもあまり出会うことがない。

これだっ!と思い、ヒーリンソウの採取クエストを受け、ヒーリンソウの採取を開始した。

 

「意外と早く見つけられたなー。」

 

1時間程度でクエストに必要な15本のヒーリンソウを手に入れ、ビギシティへと帰宅しようとすると、声が聞こえた。

 

「あれってグレイウルフ?誰か襲われてる……でも、3体もいるのに私が倒せるかな?」

 

追われている人を助けたいが、グレイウルフ3体が相手じゃ、私1人じゃ倒せない。

 

「あっ!」

 

どうやって助けるか、悩んでいたその時……追われていた人がグレイウルフの攻撃を受け、倒れ込む。

 

このままじゃ死んじゃう。私は自分もグレイウルフのターゲットになるのも構わずに、『ファイア』をグレイウルフに放った。

 

 

 

 

 

グレイウルフを倒し、追われていた人と一緒にビギシティへと向かう。

彼の名前はユウキ・ツキモトさんと言うらしい。身長は165cmくらいで、黒目黒髪というかなり珍しい色をしていた。

私は歳の近い人とほとんど話したことがない。1番歳が近いのは、アレンさんとリーパーさんだけど、5歳以上年の差がある。

 

理由は私が産まれた1年後、15年前に魔王が現れたから。

魔王の出現によって魔物達が強くなった。私達の村も以前は門番の人達でも対処出来た魔物達によって何度も襲撃され、たくさんの村人が命を落としたらしい。

 

魔物達の襲撃が落ち着いた時、生き残りはたったの数十人となり、その中には私や私の家族も含まれていた。

その時に私と同じ歳の子や、歳の近い子達はほとんど死んでしまい、魔物達に畑なども荒らされ、食糧難となりさらに人数は減っていった。

しかし、何年もかけて村の復興に向けて村人達が取り組んだ結果、今のミラン村が完成し、食糧難も乗り切り、その時から次第に子供達が産まれてきた。

 

全部親に聞いた話ではあるが、よく私は生き残ったなあと我ながら思ってしまった。

 

歳が近い人を見るのは、前回のビギシティに来た時に初めて見たけど、その時はアレンさんとリーパーさんに街を案内してもらったり、冒険者ギルドの登録をしたりして話したりする機会がほとんどなかった。

だから最初にユウキさんと話した時は、緊張したけど、いつの間にか一緒に話したり、クエストを受けたりするのが楽しくなっていた。

いままで友達がいなかったからなんじゃないかと自分で思っている。

しばらくの間お別れするのは寂しいけど、またすぐに会える。一緒の学園に行けるんだ。

そう思うと、寂しさが薄れ、口が少し緩んでしまった。

 

 

 

 

宿に着き、おじいさんにお金を払って厨房を借り、さっそく料理を作り始めた。

まず買ってきた人参を短冊型に、玉ねぎは5ミリほどにさくさくと切っていく。

そして、チキンバードは1口サイズに切って、人参と玉ねぎと一緒に炒め、その上に塩と胡椒を振ってお皿に盛りつける。その際に、細かく潰したヒーリンソウの葉の部分を上からパラパラとふりかけて完成。

ヒーリンソウの葉は、疲労回復の効果もあるため、たまに料理で使う。

 

流石に、チキンバードは1匹丸ごとは使わなかったため、おじいさんに相談したら買い取ってくれた。

 

「ユウキさんの口に合うかな?」

 

ミラン村ではあまり調味料を使わず、素材そのままの味を楽しむため、こういったシンプルな料理が多い。

少しドキドキしながらユウキさんを呼びに部屋に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

次の日の朝

昨日はユウキさんは美味しそうにチキンバードの野菜炒めを食べてくれた。ユウキさんが喜ぶ顔を見て、こっちも嬉しくなり、最高の時間だった。

 

「おーい、ブラウンホース連れてきたぞー」

 

アレンさんとリーパーさんがブラウンホースを連れてきて、荷物を乗せる。

ブラウンホースというのは、3m近い体と、茶色の毛を持つ主に運搬用として飼われている魔獣だ。

魔獣というのは、人を見るとすぐに襲ってくる魔物と違って、こちらから攻撃しない限り、大人しく、人の手でも飼育できる生物だ。ミラン村でも何頭か飼っていて、ビギシティにいるアレンさんとリーパーさんの友人がこっちにいる間預かってくれたみたい。

 

「それじゃ、気をつけてな。また明後日に会おう。」

 

「はい、ユウキさんもヒューデットに気をつけてくださいね。」

 

王都行きへの馬車があと5日後にビギシティに来るため、明後日にまたビギシティに戻ってくるとユウキさんと約束をし、ビギシティを後にする。

 

 

 

 

 

 

「なあ、リーフはユウキのこと気になっているのか?」

 

「えっ!?」

 

馬車でミラン村に戻る途中、隣でブラウンホースの手網を握っていたリーパーさんがニコニコしながら尋ねてきた。

 

「お、それは俺も気になるな。小さい頃によく遊んだリーフは俺たちにとって妹みたいなもんだからな。……で、どうなんだ?」

 

何故かさらに隣にいたアレンさんまでもが、顔を出し、尋ねる。

 

「い、いえいえ!!別に好きとかそういうのでは無いですよっ!」

 

「別に誰も好きな人とかは聞いてないんだけどなー」

 

「〜〜っ!」

 

の、のせられたっ!

 

「と、友達として好きです!それ以上でもそれ以下でもないんです!」

 

「はいはい、分かってるよ。」

 

この人達絶対分かってない……。

 

 

 

 

 

 

リーフ達がビギシティを発つ前日の夜

 

「あー眠っ……、今日はここまでで良しとするか。」

 

ミラン村の入口で欠伸をしながら、門の前に立つ青年がいた。

普段、門番はアレンとリーパーが行うが、今はビギシティに行っていて代わりにこの青年が門番をすることになっていた。

 

「ん?誰かいるのか?」

 

そろそろ家に帰ろうと、最後に周りを見渡そうとすると、暗い闇の中に人影を見つける。

それは、青年の声に反応してだろうか、ふらふらとしながら、青年に近づいていく。

 

「お、おい、なんか歩き方がおかしいけど大丈夫か?」

 

少し不安になった青年は、松明を片手にとり、そいつの肩を支えようと手を伸ばした。次の瞬間、

 

「がァァァ!!」

 

「――ひぃ!?」

 

ボロボロの顔が視界に映り、とんでもない力で青年を押し倒し、口を青年の首元へと向ける。

 

「なんなんだ一体!?やめっ……!」

 

必死に突き放そうとするが、あまりの力になすすべなく首を噛み切ら、青年の息はここで途絶えてしまった。

 

「ここがミランか……。この辺りの村では1番人間がいそうだ。ここではかなりの手下が増えそうだな。

一旦、別の力も試してみるとしようか。」

 

ヒューデットの後ろから、邪悪な魔力を纏った人型の影が映る。

そしてその後ろには大量のヒューデットの姿が……。

 

「神の欠片というのは本当に便利だな。」

 

口元に笑みを浮かべながら、それは手に持った2つの器の欠片と、緑色のハート型の物体を見ながら、静かに呟いた。

 

 

 

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