憧れの世界は牙を剥く   作:奈倉ゆう

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アイオン目覚める

「……眠い」

 

ぱちぱちと音を立てて燃える火を見ながらぽつりと呟く。

俺の呟きに反応するものはいない。

当然だ、現在時刻は夜中の3時ほど。

当たりを見渡すと、子供達とリーエン、そしてアイオンが眠っていた。

魔物に襲われないよう交代で見張りをすることになり、今は俺が見張りの番だ。

 

「眠くならない魔法とかないのかな」

 

さっきドリバーと見張りを交代したため、起きたばかりだ。

ヒューデットから守ってくれたから俺は見張りをしなくてもいいと皆から言われたが、先輩冒険者として子供達にだけ任せるのは躊躇いがあったため、俺も見張りをすることにした。

ちなみに怪我は魔力が充分に回復した時に、回復魔法で治してある。

元の世界だと、10日はベットの上で寝たきりだったであろう怪我をこんなに早く治せるなんて魔法ってやっぱ凄いな。

 

「そうだ、雷属性魔法を自分に撃ってみるか。」

 

自分でも頭がおかしいと思いながらも、眠くてどうにかなりそうなため、片手を構え、もう片方の手に魔法を撃ってみることにする。

雷属性なのは、なんかビリビリして眠気が飛びそうだからだ。

 

「〈弾けよ雷〉――ッゥゥ!?」

 

初級雷属性魔法の『スパークエッジ』を片手に放つ。

バチッと小さな雷が片手にぶつかり弾ける。

 

……想像していた痛みよりも遥かに強い痛みが全身を襲う。

例えるなら静電気を何倍も強くしたようなそんな痛みだ。

なんとか、みんなを起こさないように、手に口を当て声を殺すが、痛みで目に涙が滲んでくる。

 

「……まあ、おかげで目が覚めたからいいか。」

 

しばらくすると痛みも落ち着き、目が覚めた状態をキープしながら、見張りらしく辺りを警戒する。

 

「……ぅ?」

 

「アイオン?」

 

寝ていたアイオンが目を開く。

 

「ユウキ?……ここは……外か。くっ……」

 

アイオンは起き上がるが、痛みに顔をしかめ、座り込む。

 

「大丈夫か?〈照らせよ・癒しを授けたる・優しき光〉」

 

アイオンの元へ俺は行き、『ライトヒール』を使用し、治療する。

 

「助かった……俺は確かヒューデットにやられて」

 

「あぁ、指揮官がついていた多くのヒューデットにボコボコにやられたんだ。」

 

「そうだったな……子供達は無事か?……無事だな。」

 

周囲で眠っているリーエン達を見て、アイオンは安堵の表情を浮かべ、直後にその表情が曇る。

 

「情けないな俺は……。この前のクエストに続き、またミスをしてしまうとは。」

 

この表情……どこかで見たことがあるな。

ああ、昨日アイオンと出会った時に浮かべていた表情だ。

 

「…………」

 

なぜあの時、あんな表情をしていたのか、気にはなるが、昨日アイオンに断られたため、あえて何も聞かないことにする。

 

静寂がその場を支配する。聞こえるのは、焚き火が燃える音くらいだ。

 

少し気まずいなぁと思っていると、アイオンが口を開いた。

 

「俺にはやっぱり守れないのか?」

 

ポツリとアイオンが言う。

しかし、その言葉には多くの悲しみの感情が含まれていた。

 

「守れない?」

 

「あ……いや、気にしないでくれ。」

 

無意識に口に出ていたのか、口を塞いだアイオン。だが、その表情を見て放っておくことなんてできない。

 

「アイオン、昨日……いや、もう0時を過ぎたから一昨日か……、一昨日もそんな表情をしていたよな。

俺に出来る事は多くは無いが、話を聞くくらいはできる。なにがあったのか聞かせてくれないか?」

 

「……分かった。

一昨日、あの子達と同じくらいの冒険者パーティーとクエストに出たんだ。もちろん俺はヒューデットからそのパーティーを守る役でな。

だが、不意打ちでヒューデットから襲われ、1人大怪我を負ったんだ。俺がしっかりしていなかったから、あの子は大怪我をしてしまったんだ。」

 

大怪我をした……か。

 

「それは……災難だったな。」

 

「まあな……ポーションを持っていたからすぐに使ったおかげで、死ぬことは無かったからよかったが。」

 

アイオンは続けて、それが一昨日こんな表情をしていた理由だ……と言った。

 

「本当に?」

 

「え?」

 

本当にこれだけなんだろうか。その大怪我を負った冒険者には悪いが、ヒューデット位の攻撃なら、中級ポーションや、中級回復魔法でなんとかなる。

つまりその位じゃ、死ぬことは無いはずで、そこまで落ち込むことも無いはずだ。

 

「なにか理由があるんじゃないか?」

 

「ん?」

 

考える。アイオンがなぜあれほどまでに落ち込んでいたのか。

そういえばアイオンは、子供にはめっぽう優しい。

アイオンに初めて出会った時は、ヒューデットや魔物達から助けてもらった。

そして、アイオンはすすんで子供達とクエストに付き合っていた。

さらに、リーエンのことも心配し、冒険者としての仕事ができるよう、俺に間接的にではあるが、頼んできた。

 

「……アイオン、あんたは子供が好きなのか?」

 

「――っ!?」

 

俺の言葉に驚愕したかのようにアイオンの体がピクリと動く。

やっぱりか……とすると

 

「ヒューデットの攻撃は、中級ポーションや中級回復魔法で対処出来る。なのに、あんなに落ち込んでいた理由……アイオン、なにか過去にあったのか?」

 

「……ははっ、ユウキお前はすごいな。」

 

俺の質問に思わず吹き出してしまったアイオンはこくりと頷く。

 

「そこまで分かってしまったんなら話すとしよう。

俺の過去のトラウマを。」

 

 

 

 

 

スパークエッジ 初級雷属性魔法

魔法攻撃力 F--

魔法制御力 G-

消費魔力量 F

射程 F

魔法発動速度 F++

詠唱

一閃駆けよ・バチリと与える・小さき雷

効果

針のような細い一閃の雷を放つ。

 

スパークエッジ 真・無属性ver

魔法攻撃力 F-

魔法制御力 G

消費魔力量 F

射程 F

魔法発動速度 F++

詠唱

小さな雷よ・バチリと弾けよ

弾けよ雷(詠唱省略時)

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