憧れの世界は牙を剥く   作:奈倉ゆう

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ビギシティと冒険者ギルド

(魔法攻撃力、魔法制御力、魔力量が一段階ずつ上がってるな。)

 

リーフとともに歩きながらステータスを見てみる。

この世界でステータスを上げるには2つの方法がある。

自主練で魔法を撃ちまくるか実践で魔物や人間などの生物に向かって魔法を使用するか。

前者は的に向かって魔法を放ったりする。時間がかかるが安全にステータスをあげることが出来る。

後者はさっきからやっているように生き物に対して魔法を使用するという方法だ。

対象のランクが高いほどステータスは上がりやすくなる。

俺はさっきからほぼ攻撃魔法ばかり使っていたため魔法攻撃力が上がり、ついでに攻撃魔法を制御するために魔法制御力と魔法を使う際に使用した魔力量が鍛えられたため、3つのステータスが上昇したのだろう。魔力量も少しづつではあるが回復しているためいずれは魔力回復速度も上がるだろう。

問題なのは魔法防御力と魔法回復力だ。

魔法防御力は対象の攻撃に対して防御魔法を使用することで鍛えられるが、そもそもの俺の魔法防御力はF-と全ステータスの中で一番低い。防御魔法を使用したとしても防げないことが多いだろう。

そもそもそんなリスクのある行動より攻撃魔法で攻めた方が手っ取り早い。

そして魔法回復力は回復魔法を使用することで鍛えられるが、まず俺が怪我をするか、怪我している人に出くわして回復魔法を使用しないといけない。

じゃないと回復魔法は発動しないからだ。

 

「どうすれば上がるかな。」

 

「上がるって何がですか?」

 

おっと思わず声に出してしまったらしい。……せっかくだからリーフにも聞いてみるか。

 

「さっき、魔法攻撃力、魔法防御力、魔力量が上がったんだけど魔法防御力と魔法回復力ってどうやって上げるんだろうなって。」

 

「あぁ、確かに。どうしても実践だと攻撃魔法を多めに使いがちですもんね。魔法防御力は私低いですけど、魔法回復力なら村で怪我した人に回復魔法使ってるからそこそこありますよ。

私の村は魔法使いがあまりいなくて魔物に襲われた時に回復魔法を使ってくれってよく言われるんですよ。」

 

「やっぱり、怪我した人に使うのが効率いいよな。」

 

「そうですね、そして魔法防御力は……パーティーとか組んで前線で前を守る役をすると上がるんじゃないですかね。それだと、防御魔法が突破されても後ろから仲間が援護してくれると思いますし。なんなら私とパーティー組みますか?ビギシティにあと3日はいますから一緒にクエストとかしませんか?」

 

思ってもみなかった提案をリーフからされる。

確かにこんな可愛い子と一緒に入れるって言うのはめちゃくちゃ嬉しいんだがリーフは大丈夫なのだろうか?

 

「ありがたい申し出だけど、リーフは大丈夫なのか?」

 

「私の村、ミラン村で育てた野菜とかを何人かでたまにビギシティに売りに行くんですよ。その後ビギシティで村に必要な物とかを買って帰るんですけど毎回3日ほどビギシティに滞在するんです。

私は冒険者ギルドに登録してるのでお小遣い稼ぎで毎回依頼を受けてるんですけど私1人だけだからあまり無理できなくてこういう薬草を集める依頼くらいしかしてなくてあまり報酬が美味しくないんですよね。」

 

そう言ってリーフはさっきから手に持っていたちいさな麻袋の口を開いて見せてくる。

中には4枚の黄色の花びらをもつ可愛らしい花が15本ほど入っていた。

 

「それは?」

 

「ヒーリンソウ、初級体力回復ポーションの材料ですね。これが15本欲しいって依頼があったので受けてたんですよ。」

 

「へぇ、俺も冒険者ギルド登録しようかな。」

 

「手続き簡単ですから登録するのがいいと思いますよ。私ビギシティに着いたら冒険者ギルドに行くので色々教えてあげましょうか?」

 

「何から何まですまないな。」

 

リーフには頭が上がらないな。そのうち絶対に借りを返そう。

 

「好きでやっていることなので気にしないでください。

あ、ビギシティが見えてきましたよ。行きましょう!」

 

リーフの指差す方向を見ると大きな門が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、ミランの嬢ちゃんじゃねえか!クエストは達成出来たか?」

 

門には2人の鎧と槍を持った髭面のおじさんがおり、そのうちの1人がリーフに声をかけた。

 

「はい、ヒーリンソウは色んなところに生えてるから見つけやすかったですよ。」

 

「ハッハッハ、そりゃ良かったな!ところでそこの坊ちゃんは見かけねぇ顔だな?」

 

そりゃそうだろうな、なんせこの世界に来たばかりだし、ビギシティに来たことすらないし。

 

「どうも、ユウキ・ツキモトだ。ちょっとビギシティに用があってきたんだ。」

 

「ほう、ミランの嬢ちゃんに案内してもらったとおじさんみたぞ。」

 

「正解だ、リーフには道中色々と世話になったよ。」

 

グレイウルフとか魔石とか……な。

 

「ユウキさんは冒険者になるためにビギシティに来たみたいなんですよ。だからここは先輩として案内しようかなと。」

 

ちょっとドヤ顔をしながらリーフは胸を張る。

……おい、おっさんリーフの胸ガン見するなよ。っておい、もう1人のおっさんも見てるんだけど。

うん、まあそこそこに大きいけどって俺は一体何を……。

思考が逸れながらも俺がおっさんズを見ていることに気づいたのかこほんと咳をして

 

「ミランの嬢ちゃんの連れてきたもんなら心配はねぇと思うが一応検査だけさせてくれ。」

 

おっさんがスマホのようなものを取り出しボタンを押すとピッと音がなり緑色に光る。それを確認し、おっさんが満足気に頷く。

 

「OK、ツキモトの坊ちゃんは大丈夫だな。」

 

「なんだそれ?」

 

興味本位で聞いてみる。

 

「ん、ああこいつは対象の人物が犯罪者じゃないかを区別してくれる魔道具ってやつさ。もし犯罪者だった場合、赤く光るんだよ。」

 

「なるほど、これは門を通る時に毎回するのか?」

 

「いや、3日に1回でいい。そんな毎回しろと言われたら門も大混雑だしな。」

 

確かにさっきから門に並んでいる者はおらず、門兵の横をさっきからすーっと何人か通って行った。

 

「もし、4日目のやつが素通りしようとしたら門に搭載してある魔道具が反応して教えてくれるから坊ちゃんも気ぃつけなよ。ちゃんと検査してくださいイケメンさんって俺に言うんだぜ?」

 

「早く検査しろよ、髭面って言ってやるよ。」

 

ウインクしながら変なことを言うおっさんに、ちょっと笑みを浮かべながら言い返してやる。

リーフともう1人の門兵も笑っていた。

 

「ハッハッハ、おめぇおもしれえな!またここ通るんだろ?そんときはまた声掛けてくれよ!そうすりゃ退屈な門兵の仕事にちったぁ身が入るってもんだぜ!」

 

豪快に笑うおっさんに背中を叩かれる。ちょっと痛いがなぜか楽しいと思う俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじさんに気に入られてましたねユウキさん。」

 

あの後、ビギシティに入れられた俺たちは冒険者ギルドに向かうことにした。

まず宿を確保するべきなんだろうが、リーフ達、ミランの村の人達がとっている宿を案内するとリーフに言われ冒険者ギルドから行くことにした。

 

「なんかノリのいいおっさんだったな。」

 

髭面って言っても怒らなかったし、気さくで話しやすかった。

そんなことを言いながら俺達はビギシティを歩いていく。

食べ物などを路上販売していたり、装備などが売っていそうな店、それに宿などたくさんの建物が並んでいる。黒髪黒目、そして制服が珍しいのかちらちらと視線が向けられるのを感じる。

とりあえず、冒険者ギルドで登録したら制服以外の着るものを買わないとな。

 

「あのひときわ大きな建物見えますか?あれが冒険者ギルドです。」

 

ほかの建物よりも一回り大きな建物をリーフが指さす。なるほど、あれが冒険者ギルドか。

入口から何人か出てくる。すげぇ、大剣とか担いでるし、鎧とかも着てる。鎧は門兵のおっさんで見たけど。

 

「ユウキさん?行きますよー!」

 

軽く感動していると冒険者ギルドの入口まで歩いていたリーフが手を振る。

 

「あ、ああ今行く。」

 

慌ててリーフの後を追って冒険者ギルドに入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが冒険者ギルドか、すげぇ。」

 

中は奥の方にカウンター、右手側には道具を販売する店があり、左側には飲食店があり、食事をするための机と椅子が沢山ある。

飲食店は冒険者と思われる人達で賑わっており、今はカウンターは人が少ない。多分もうすぐ夕暮れ時で今からクエストを受注する人がいないからだろう。

リーフは人の迷わず真っ直ぐ人の空いているカウンターへと歩を進める。

俺も一緒に着いて行き、リーフはカウンターのお姉さんに声をかけた。

 

「すみません、クエストを達成したのでいいですか?」

 

「分かりました、ギルドカードの提示をお願いします。」

 

お姉さんに言われた通りギルドカードを取り出しお姉さんに渡す。そして、麻袋からヒーリンソウを全て取り出す。

 

「はい、ありがとうございます。ヒーリンソウ15本収集のクエストですね。ヒーリンソウが1、2、3……はい15本ありますね。これが報酬の3000ギルです。」

 

お姉さんが橙色の3枚のコインをリーフへと渡す。

この世界では1円=1ギルで日本みたいに硬貨と札ではなく全てコインを使用している。

1ギル硬貨が赤、10ギル硬貨が青色、100ギル硬貨が緑色、1000ギル硬貨が橙色、10000ギル硬貨が黄色、100000ギル硬貨が紫色とめちゃくちゃ色とりどりだ。大きさは大体100円玉と同じだ。

 

「ありがとうございます。それと、こっちのユウキ・ツキモトさんが冒険者ギルドに登録したいみたいなのですが……。」

 

「おぉ、新しい冒険者ギルド登録者ですか。ギルド登録には15000ギル必要ですが大丈夫ですか?」

 

ギルドの登録にはお金がいるみたいだ。そう言えばべシールから貰ってお金の確認をしてなかったな。

 

「そういえば、手荷物持ってなかったけどお金は大丈夫ですか?もしなかったら私が払いますよ。」

 

いや、リーフは過保護すぎじゃないだろうか。

まだ出会ったばかりの俺に15000ギルも払おうとするなんて。

 

「いや、大丈夫だ。ちゃんとお金はあ……る。」

 

ポケットからべシールに貰った麻袋を取り出し口を開いた俺はその中身に言葉を失う。

なかには紫色の硬貨が5枚入っていた。

いや、50万ギルって!?

学生だった俺にとってはちょっと言葉を失うレベルの大金が入っていた。

 

「こ、これでお願いします。」

 

1枚の10万ギル硬貨を取り出しお姉さんに渡す。

 

「はい、お釣りの8万5千ギルですね。

では、ギルドカードを作るので血を少し貰いますね。手を出してください。」

 

黄色の硬貨8枚と橙色の硬貨5枚を受け取り、手を出す。

お姉さんは真っ白のギルドカードを取り出し、呪文を唱える。

 

「〈新たな戦う者に・見る力与えたまえ〉」

 

カウンターに橙色の小さな魔法陣が出現しそこにギルドカードを置くお姉さん。

 

「では、針でちょっと血を出しますね。チクッとしますよー。」

 

鋭い針を取り出し俺の手を軽く刺す。少量の血が針につきそれをギルドカードに落とす。

するとギルドカードに落ちた血が波打ち徐々に文字が浮き出る。

 

「すご、どういう原理だこれ。」

 

「すごいですよね、これははるか昔に知識の神ノッジィ神が作り出し人々に与えた魔法なんですよ。」

 

お姉さんがギルドカードに文字が完全に浮き出るのを待ちながら話してくれる。

それにしても新しい神の名前が出てきたな。知識の神、ノッジィね……。

 

「はい、ギルドカードが完成しましたね。」

 

ギルドカードの左側には俺のステータスがのっていた。

しかし、器の権能はのっていなかった。これもべシールのお陰なのだろう。

右側は空白だ。

ちなみにギルドカードはクレジットカードを少し大きくしたような感じのカードだ。

 

「ギルドカードはクエストの受注、達成した時に必ず必要となります。クエストを受注した際に右上に現在受注しているクエストの名前が表示されます。このギルドカードはタッチすることができ、クエストの名前をタッチすると詳細が確認できます。そして、右下にはクエストの進捗状況が映し出されます。例えばゴブリンを5体倒すクエストで3体倒していれば3/5と表示されます。

さらにこの、ギルドカードは身分を証明するのにも使えます。もし、紛失した際には1万ギル払ってもらうことで新しくギルドカードを発行することが出来ます。」

 

「色々と便利だな。クエストの話になるけどどんな依頼でも受けることが出来るのか?」

 

「いえ、クエストにはG--からSSS++まであり、ソロの場合は現在のランクより2つ上まで、パーティーの場合ならパーティー全員のランクを人数で割ったランクから3つ上まで受注することが出来ます。ツキモト様はEランクなのでソロであればE++まですね。カウンターの右側にクエストの張り紙があるので受注する際はクエストの張り紙とギルドカードを持ってきてください。もし、途中でクエストを辞退したい場合、もしくは失敗した場合は1万ギル払ってもらいますのでご理解をお願いします。ほかになにか質問はありますでしょうか?」

 

「1つだけ質問があるんだが、もしかしたらステータスって唱えたりすると今のギルドカードに書いてあるステータスが分かったりするか?」

 

異世界物でのライトノベルでは、そういう設定があることが多かったので、もしかしたらと思って聞いてみる。

 

「はい、分かりますよ。直接唱えなくてもステータスと脳裏で思うだけでも確認が可能です。他に質問はありますか?

 

「いや、大丈夫だ。ありがとう。」

 

「ツキモト様のご活躍を願っております。よき冒険者生活を。」

 

ぺこりと礼をし、針などを片付けにお姉さんは奥へと行った。

 

「これでユウキさんも冒険者ですね!でも、今日はもうすぐ日が暮れるので一緒にクエスト受けるのは明日からにしましょうか。」

 

どこかワクワクしているリーフがそう言う。

俺もこの世界に来てからまだ全然休めてないためそれに従うことにする。

 

「ご飯にしたいけどまだそれには早いしなー、ユウキさんはなにかしたい事ありますか?」

 

「んー、道具とかちょっと見てみたいかも。」

 

入口近くの右側にある道具店を見ながら呟く。制服の代わりに着るものも買いたいが、どんなものを売っているのか純粋に興味がある。

 

「いいですけど、冒険者ギルドの道具店より装備などが売っているお店のほうがたくさんのバリエーションが売ってますよ。それに装備も売ってますし。宿の近くなのでそこに行きませんか?」

 

「リーフがおすすめしてくれるならそこに行こうかな。」

 

「案内は任せてください!ふふ、ちょっと冒険者としての先輩感ありませんか私。」

 

軽くドヤ顔をきめるリーフはそんなことを言ってくるが、頼れる先輩って感じよりも普通に褒められたいだけの人に見える。

まぁ、そんなこと言わないけど。

 

「わー、先輩頼りになるー。」

 

「ちょっと、完全に棒読みですよね!もう……そんな適当言う人は置いていきますよ。」

 

ぷくっと頬を膨らませ腕を組む。

 

「ごめんごめん、ほら先輩行きましょうぜ。」

 

「……本当に反省してるんですかね、この人は。

まぁいいですよ、行きましょう。」

 

最終的には許してくれたようだ。

俺の手を引き冒険者ギルドを出ようとするリーフ。

……周りからの暖かな視線がちょっと恥ずかしかったが、リーフは気づかなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回使用した魔法

ニューレジスター 無属性初級魔法

魔法制御力 G

消費魔力量 G

魔法発動速度 G+

詠唱

新たな戦う者に・見る力与えたまえ

効果

ギルドカードにステータス、クエストの名前や進捗状況を写し出すことが出来る。

冒険者ギルド職員になると教えて貰える魔法。

 

 

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