ソード・ダンジョン・ワールド2.5 作:魔剣(槍)ちゃん
遥か彼方、理想への旅路、闇に輝く星の下へ。
『現実』という大いなる壁はこちらの事情など知ったことかと理不尽にも立ち塞がる。
今日、それを目の当たりにした。
仲間の命が消えると分かっていながら逃げるしかなくて、虫の息の彼を助けることすら誰かに頼るしかなかった。
シャワーを浴びるのも忘れて病室に駆け込み叩き出された僕は、フロムさんが一命を取り留めたことに安堵の涙を流した後、魔石を換金して帰路につく。
少し早い帰り道、いつもと様子の違うオラリオの風景をぼんやり眺めて追想する。
彼と、彼の所属する【ニュクス・ファミリア】とはもう半月近くの付き合いだ。
エイナさんから紹介されて知り合った僕らは予定が会う時はできるだけパーティを組んで
初め、ガチガチに緊張していた僕をフロムさんは冗談や故郷の思い出話を交えて解きほぐしてくれた。その時の欲望にピッタリ当てはまる子──セレナーデさんを連れてきたときは正直ハンカチ噛みそうになったけど。
二人はどちらも今のところは攻撃力に難があるそうで、僕のような純粋な前衛がいるとありがたいと言っていた。
フロムさんはともかくとしてセレナーデさんの武器……武器?は『ギター』という楽器だ。似たような楽器を村にたまたま村に楽団がやってきた時見たことがあるけど、それよりも洗練された作りをしている気がする。
「今は場をかき乱すことしかできませんが、今後のアップデートをご期待ください」と言っていたので、その内聴ける曲も増えるのかもしれない。
そうして現実逃避をしている間に僕の足は止まっていた。
人気のない路地裏にひっそりと建った、寂れ廃れた教会の前で。
ここが僕の帰るべき
祭壇の奥にある小部屋の棚、その裏に続く階段をとぼとぼと降り、小窓のついたドアを開けた。
「神様、帰りました。ただいま」
声を張り上げる気にはならない。脳裏に繰り返し再生される絶望が、僕の心を突く。
本当に死にそうな目にあったのは彼の方なのに。
やぁやぁお帰りー、とソファに寝転がった神様が片手を振って僕を出迎える。
ひどい顔をしているのに気がついたのか、幼く見える顔を心配そうにして僕を覗き込む。
「いつもより元気がないね。今日は早かったようだけど、何かあったのかい?」
「死にかけたんです、ダンジョンで」
「大丈夫……ではなさそうだね。ま、座りなよ。何があったのか、僕に話してごらん」
神様の優しい心遣いが嬉しくて、苦しかった。
少し早い夕食となるじゃが丸君を二人でつまみながら、ぽつぽつと僕の口は今日を語っていく。
パーティを組んでいたフロムさんが僕を逃がすために死にかけたこと。
その窮地を、アイズ・ヴァレンシュタインさんに救われたこと。
神様は黙って聞いてくれていた。
何も言わず、僕の話を聞いてくれていた。
口を動かすのに夢中になって、おざなりになっていた手を動かし食事を運ぶ。
じゃが丸くんの味は、いつもよりしょっぱかった。
「神様」
「なんだい、ベル君」
「僕は、僕は……何もできなかった。庇われた時も、フロムさんの身体が転がってきた時も、逃げないって決めた時も、身体が震えて、怖くて仕方なかった」
俯いた顔からズボンにボツボツと雨が降る。
悔しくて、情けなくて、不甲斐なくて仕方がない。
何もできなかった自分が、最後の最後になるまで決意すらままならなかった自分が、堪らなく嫌だった。
心の中から苦いものがこみ上げ、思考を陰鬱で満たしていく。
僕から吐き出される言葉は鎖のように巻きついて、重しのようにのしかかった。
「ベル君」
「……はい」
ひとしきり懺悔を聞いてくれた神様は項垂れる僕の身体を起こし、無理やり向き合わせる。
ひどい顔を見せまいと顔を袖で拭うけど、熱い水が零れて止まらない。
「まずは君が無事に帰ってきてくれて、本当に良かった。フロム君が元気になったらお礼を言いに行こう。まだ僕は彼と顔を合わせてもいないからね」
それで、とこちらが本題だと言わんばかりに神様は真剣な表情をして、僕を視る。
「起こったことは変えられない。神にも時は戻せない。だから重要なのは、これからどうするかだ。ベル君、君はどうなりたい?どんなこれからを望むんだい?」
「僕、は」
その頃には涙は枯れていた。
泣き腫らしたからか、暗雲が漂っていた心は幾分すっきりとしていて、こんな自分が語るにはおこがましいとさえ思っていた望みを口にすることを、身体が拒むことはなかった。
「神様、僕──」
────強くなりたいです。
そう神に宣誓した。
もう何も、失いたくはないから。
⚫
「時間割いてもらってごめんなさいね。でももう僕は大丈夫ですよ。ほらこの通り、見てくださいよこの片手ダイスジャグリング。4d6で確実に24出してみせますから期待しててくださ──」
「病人は安静にしててください!」
「ハイ」
「全く、助かったから良かったけど、本当に心配したんだから」
フィンとの談話が終わった数時間後、フロムの病室にはエイナ・チュールの姿があった。
ミノタウロスに遭遇するまでに稼いでいた魔石の半分をベルから預かっていたらしく、それを保管している旨と今回の
「でも、あの時はそうするしかなかったんですよ。二人揃って死体で帰還なんてエイナさんも嫌でしょう?」
「それは……」
二人死ぬより一人生き残った方が良い。
理屈は分かる、理解もできる。だが、それにしたってこの冒険者は自分の命について粗末に考えすぎではないだろうかと、エイナはジト目を向けた。
「ねえ、フロム君。怖く、なかったの?」
「怖いですよ?滅茶苦茶怖かったですけど……誰かを失うより、よっぽどいいじゃないですか」
そうでしょ?と当然のように問うフロムにエイナは答えを返せず、一抹の嫌な予感を感じさせる。
そうならないためにもここで釘を刺しておく必要がありそうだと感じた彼女はケラケラ笑う男のほほを両手で挟んだ。
「むぎょ」
「あのね、君がいなくなっても、悲しむ人はいるんだよ。君の勘定の中に、君は入っていないの?」
「入ってますよ。入った上で、誰かを助けるんです」
命に無頓着なわけではないが、自分と他人を天秤にかける間もなく後者を優先してしまう。
だけど、と言葉を切って彼はエイナの顔を見上げた。
「そんな悲しい顔は、できればさせたくないですね」
「そうして。ベル君にもフロム君にも、私は生きていて欲しいんだから」
「善処します」
「善処じゃダメ!実行する!」
「イエッサー!マム!」
帳簿でフロムの頭にチョップを叩き込んだエイナはそのまま出て行ってしまった。
心配させちゃったなぁとフロムはぽりぽりと頭をかいてもっと強くなることを、胸に決意するのだった。
決意も新たに強化の時間じゃー!!
ドンドンパフパフ。
ベル・クラネル
Lv.1
力︰I77→I82
耐久︰I13
器用︰I93→I96
敏捷︰H148→H172
魔力︰I0
《信仰》
【炉と純潔の女神 ヘスティア】
《魔法》
【】
《
【
・逆境に対する因果律遡行権。
・再行使に二十四時間の
【
・早熟する。
・
・
フロム・ヘル
Lv.1
力︰I10→I18
耐久︰I12→I86
器用︰I8→I12
敏捷︰I4→I7
魔力︰I11→I19
死守︰I
《信仰》
【奈落の盾神 イーヴ】
【虚夜の女神 ニュクス】
《魔法》
【テオス・サクラメント】
・神聖魔法。
・効果中、基本/特殊神聖魔法を取得。
・取得魔法はLv、《信仰》に依存。
・
《
【
・行為、威力、素材決定に対する因果律遡行権。
・再行使に二十四時間の
【
・戦旗槍装備時、発展アビリティ『先制』の一時発現。効果値は『魔力』に依存。
・使用鼓咆に応じて味方の各能力に補正。陣気を獲得、または消費。
・使用陣率に応じて自身の各能力に補正。陣気を消費。
『習得鼓咆・陣率』
【怒涛の攻陣Ⅰ】
・味方の攻撃力に小補正。
・陣気を1獲得。
【
・力に高補正。
・命中力に補正。
・補正値はLv依存。
【
・自然的に発生した環境での行動、探索、観察に高補正。
・回復系のアイテム使用時、効果量に補正。
・補正値はLv依存。
【
・試練が到来する。
・試練踏破時、
・踏破する度に効果向上。