ソード・ダンジョン・ワールド2.5 作:魔剣(槍)ちゃん
やっとマトモなパーティ組めるんやなって。
愛ゆえに産まれ落ち、小さき命はこの世に芽吹く。
二親からは愛情を、人々からは微笑みを、神々からは祝福を。
子は彼らにとっての喜びとなり、苦しみとなり、いつか誇りとなるだろう。
健やかに育ち、多くを学び、やがて子供は巣を後に、大きな世界へ羽ばたくのだ。
分娩室に響く産声。そして断末魔。
母の中から子どもが一人、ずるりと。胎を掻き乱し、
産婆や医者は皆一様に口を噤む。本来祝福されるはずだった光景は赤の一色に彩られた。
静寂の中、赤子の声がおこがましく部屋に響いている。
己の立場さえ弁えぬ、煩わしい産声だった。
「図々しい」と、一人が粛然を破り、泣き叫ぶ肉塊の首に手を添えた。
この真っ赤な悪魔の首を捻るのに、一秒だってかからない。
泣きたいのは、嘆きたいのは、叫びたいのはこちらだ。
お前より長く彼女と時を過ごした。彼女は子の成長を見守ることをなにより楽しみに待っていた。
なのにお前は、母親の命を奪ってなお、のうのうと泣いているお前は────!
「やめろ」
憤怒に駆られた助産師の手は子を殺める前に取り上げられた。
助産師は顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
罪を咎めたものも、静かに泣いていた。
こうして赤子は──頭部に一対の穢れを生やした赤子は、生まれながらに母殺しの十字架を背負う。
業は消えず、
ただ“
⚫
また、バレてしまったか。
店の裏口から蹴落とされ、硬い石畳を結構な勢いで転がり、全身を強かに打ち付ける。向かいの家の扉に衝突したところで回転は終わった。
付着した土埃を払い、ボロボロになったフードを深く被り直す。
おもむろに立ち上がれば、腹に蹴りを入れた下手人は青ざめた顔をして扉を閉めた。
鈍痛に全身を侵されようと、頭はひどく冷めきっている。
この手の扱いには、もう慣れてしまった。この傷は私にとって必要経費であり、贖罪のようなものだと感じている。
産まれながらに母を殺して負った業を贖うためには仕方のない苦しみだと、自分を納得させている。
ここはダイダロス通り。迷宮都市オラリオ南東に位置する住宅街。
負け組集う敗者の迷宮、ならず者の見本市、掃き溜めの坩堝。
私はここで少量の稼ぎを得ては
額に生える一対の角は産まれる前から私に生えていたものだ。
父は──最愛の人を奪ったお前に私を“父”と呼ぶ権利はないと言われたが──これを“穢れ”と呼んでいた。
私もそう思う。こんなものさえなければ母を殺さず、父も嘆き悲しまずに済んだろう。
父は誰の目も届かない地下で私を育てた。
二度と他の人間をこんな目に合わせないために、私に燃やすべき憎悪を押し殺して研究に没頭した。
たまに被検体として関わっていたせいか、多少の魔術的知識に触れる機会があったことは、今も私の生存の一助となっている。
そんな涙ぐましい努力の結果判明したのは、この角は突然変異のようなものであり、角持ちが産まれることは避けようもなく、回避する方法もまた非常に困難であることだった。
母体が助かるかは余程の設備や資金がなければ運任せ。
私の場合は単に悪運に見舞われてしまったということだ。
研究資料は破り捨てられた。
全くの徒労だったと疲れ果てた顔で呟いて、父は私を殴った。
そこで初めて私は父の感情を理解した。
顰めっ面で覆い隠していた激情を、私は知らなかった。
娘を育てる気力を失くした彼は私にようやく勘当を言い渡す。
「もう二度と私の前に現れるな」酒を浴びながらそう言っていた。
忌み子とはいえ殺すのには躊躇いがあったのか、もしくは私と同じ人殺しになど落ちぶれたくないなどと思っていたのかもしれない。
そうして、私は迷宮都市を目指すことにした。
多くの種族が集うオラリオでなら、自分と同じ境遇の人間もいるかもしれないと、そんな淡い期待からだった。
オラリオに辿り着くまでの道中、何度もモンスターと勘違いされ、襲われた。
その度に助けてくれたのは皮肉なことに今日まで連れ添ってきた
これは私が魔法を使うことを補助するように機能してくれるし、魔力の流れも察知できる見た目を除けば優れものなのだ。
しかし、結局オラリオにも私と同じ人間はいなかった。
角を生やし、産まれながらに親を殺してしまった人間は、同じ十字架を背負った罪人はいやしない。
コレがある限り私を人として見てくれる人間はいない。
どうにか角を削っても、数日後には奮闘虚しく何故か生えてくるオマケ付き。
だから今日も私はここで暮らす。
モンスターを見つけても恐れ逃げ出すだけでギルドへ依頼すら出せない貧民の街ならば、幾分か安心して過ごすことができる。
「あぁ、また今日の寝床、確保しなきゃ」
ちょうど20軒目の追い出しを食らったおかげで食事もねぐらも0から再スタートだ。
次なる拠点を求めてあてどなくダイダロス通りをさ迷っていると寂れた扉に目が止まる。
幾星霜の月日を役目もなく過ごしていたのか、蔦や苔が辺りを覆いつくしていた。
ただそれだけなら、私が足を止める理由もなかった。
「……!」
ギィ、ギィ、と扉が音を立てる。
奥から何かがこの扉を開けようとしているのだ。
いつかの日に置き去りにしていた感情を取り戻した私はその動向を見守った。
ほどなくしてバコン、とそれは開かれた。
扉に生じた隙間から辺りを窺ったのは長い黒髪を揺らすワンピースの少女。
夜空みたいな藍色の瞳が私を捉え、驚いたように目を見開き、何事かを叫びながら施錠もしないで奥へと逃げていく。
「──待って!」
何故追おうとしたのかは分からない。
だが、
久方ぶりに抱いた興味を持って、忘れかけた興奮を胸に、私は扉の中へ飛び込んだ。
可愛い子は幾ら曇らせてもいい(諸説あり)
だが最後には幸せになれ。いいね?
というわけで壮絶な人生を謳歌中の戦技モリモリ(予定)紙装甲バトルダンサー“
キャラシの技能値は
大器晩成型なので優しく見守っていてください。
最終的には変幻自在両手魔力撃しますからよ……。
以下ナイトメアについての走り書きタイム。
そんなに重要じゃないのでSW経験者は見なくてもいいかも。
ナイトメアはSW2.5のPCとして選択できる種族の一つで、人族(ヒューマン、エルフ等)から生まれてくる突然変異種です。今回はエルフの母から生まれました。
どの種族産でも外見は【人族+角(1、2本)+色白+身体のどこかにでかい痣】です。とってもわかりやすいですね。
“穢れ”は蘇生などで復活することで魂に生じてしまう不純物のようなものですが、これを溜め込みすぎると肉が腐ってアンデッドになってしまうので人族はこれを忌避しています。
ナイトメアという種族はその唾棄すべき“穢れ”を母の胎にいるうちに生じてしまった存在と囁かれておりまして、今回のように角のせいで母体を殺害してしまうことが多いことも災いしてか、不吉な存在として扱われてしまうわけですね。
ちなみにドワーフ産だと母体の耐久がべらぼうに高いので高確率で親は生を勝ち取ります。
しかし“穢れ”の影響でしょうか、ナイトメアの多くは各種能力が優れていることがほとんどです。
特に魔法職に関しては種族全員が天賦の才を持っていると言っても過言ではないです。