ソード・ダンジョン・ワールド2.5   作:魔剣(槍)ちゃん

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助けてアスえも〜ん!



締結/顕現

虚空からぬるりと現れたアスフィ・アル・アンドロメダは自己紹介の後、ヘルメスが自分を伏せていたことを謝罪した。

 

もちろん彼女たちに【ニュクス・ファミリア】を闇討ちをする意図は一切ない。だがアスフィの眼鏡にフロムたちは異質に映ったのだ。

 

事の発端は興って一ヶ月も経過していない【ニュクス・ファミリア】がドロップアイテムを惜しげも無く差し出したことからだ。

 

それらを調べてみれば既存のものからは明らかに逸脱した性質を持っていた。しかも片方はドロップしたものではなく、現存の技術を超越した何らかの既製品の一部だった。

 

大いに探究心を刺激されたアスフィだったが、同時に疑念が持ち上がる。

果たして彼らは一体どこからそれを持ち帰ったのだろうかと。

 

応対したルルネは迷宮(ダンジョン)産と聞いたようだが、lv.1が下れる階層などたかが知れているし、その範囲に未踏破領域など存在しないことは自分たちの調査が裏打ちしていた。

 

概ねそれから一週間後辺りで【ロキ・ファミリア】の不手際により階層を遡ったミノタウロスによってフロムが生死の狭間をさまよった時は気が気でなかったが、問題はそれから数日後である。

 

『次の魔道具開発が上手くいったら開発資金とか資材とか寄越してやるのでよろしくね』

そんな連絡が【ロキ・ファミリア】から入ってきた。

渡りに船ではあるのだが、『フロム・ヘル』が関わっているとなれば話は別だ。

 

意図はスケスケ過ぎるから裏がないとおかしいと疑念を抱いたアスフィは最終的に主神を駆り出してまで【ニュクス・ファミリア】へ探りを入れることにした。

 

その後は嘘を見抜けるヘルメスの背後で透明になってワッと浴びせられた情報の洪水を傍聴し、今に至るのだった。

 

「さて」

 

概ねここまでの会話の文字起こしを終えたアスフィの視線はフロムに向いた。

 

「貴方の提案はとても魅力的です。それが可能だと思えるほどの見本もありますし、その手のものを扱ってきた私たちを信頼して多くの情報を開示してくれた誠意も評価したい」

 

ちらっと頭部を抑えて悶えている主神を一瞥し、ため息。

 

「で・す・が、今後はこういった回りくどいやり方をしないように!やって欲しいことがあるなら正面からお願いします。手順を踏んで意思疎通ができるなら、私も誠意を持って対応できますから……」

「アッハイ」

 

私の気苦労を増やさないでくださいと眉間を抑えるアスフィに、フロムはそれしか言葉を返すことができなかった。

 

 

 

 

業務委託契約書

 

【ニュクス・ファミリア】(以下、「甲」という)は、【ヘルメス・ファミリア】(以下、「乙」という)と次のように業務委託契約(以下、「本契約」という)を締結する。

 

第1条(目的)

 

甲は、甲の戦力増強及び迷宮都市オラリオ全体での生産性向上のため、乙に対して奈落の魔域(シャロウアビス)で獲得したアイテムを用いた技術開発業務を委託することとし、乙がこれを承諾したため、本契約を締結する。

 

第2条 (委託業務)

 

甲は、乙に対して、以下の業務(以下「本件業務」という)を委託し、 乙はこれを受託する。

 

⑴奈落の魔域より産出した物品及び生物に関する調査及び研究

⑵奈落の魔域より産出したものを用いた魔道具の製造及び一般化

⑶上記研究、製造の成果物納品

 

なお、本件業務によって得た情報や物品、成果物は贈与、売買、交換、使用貸借、賃貸借、寄託等を含め、乙が一切の制限なく扱えるものとする。

 

第3条(委託料等)

 

⑴本契約の委託料は、第2条⑴及び⑵に関連する情報の提供とする。

 

⑵本件業務の遂行に必要な諸経費は乙が負担し、その他本件業務の遂行に通常発生する実費も乙が負担するものとする。

 

第4条 (報告)

 

乙は、 本件業務の履行の状況に関して進展があった、もしくは甲が進捗を請求した場合は、その状況について直ちに報告しなければならない。

 

第5条(協議)

 

本契約に定めのない事項に関しては甲乙両者の協議の上、都度定めるものとする。

 

 

⚫年‪✕‬月□日

 

甲:

本拠(ホーム)ㅤクノッソス廃棄区画1-13-6

名称【ニュクス・ファミリア】

代表ㅤフロム・ヘル

 

乙:

本拠(ホーム)ㅤ旅人の宿

名称 【ヘルメス・ファミリア】

代表ㅤアスフィ・アル・アンドロメダ

 

 

「研究といってもサンプルがアレだけじゃ不足していると思うので、奈落の魔域が発生したらいの一番に【ヘルメス・ファミリア】に伝えようと思います。それと、一点お願いがありまして」

 

サインを終えたフロムはペンを置き、持ち直したヘルメスはどうぞと続きを催促した。

 

「奈落の魔域が発生した時は、緊急でなければできるだけ僕らに攻略を任して欲しいです」

「理由を聞きましょうか」

「そのようにしろと神命を────あっ」

「あっ?」

 

急に言葉を切ったフロムはひどく顔をしかめた。

 

「……間が良いのか悪いのか。恨みますよ神イーヴ!」

 

フロムの目は窓へ向いた。

視線の先は住宅街の通り、その中空。それは突如として現れた。

 

 

黒く、暗く、遍く光を意に介さない大いなる深淵。

 

生物的、魔法的、いずれにも当てはまらない、形なき暗闇が精巧に球を象る不可解現象。

 

悠然と浮遊する数十M程度の直径をした円球は、祭りに浮かれた住宅街に静寂を広げた。

 

それは、この世界においてはあまりに場違いで、奇っ怪な(ゲート)だった。

 

理を異とする者共の巣穴、奈落より産み落とされしウィルダネスダンジョン、異界尖兵の前線基地──それが奈落の魔域(シャロウアビス)

 

撃滅せよと神命を受けた悪しき存在の温床である。

 

 

「……あ、その、じゃあ、現れたことですし、行ってみましょうか?」

 

こういう時、どんな顔をすればいいのだろう。

フロムはあいまいに笑うしかなかった。

 




イーヴが無駄に気を利かせてくれました。多分初回限定サービスです。

次回からついにダンジョンアタック。そこでの開示に合わせてちまちま作ってたキャラシとかオリジナル秘伝とか公開していきたいですね。


「私は漆黒兜(ハデス・ヘッド)を被っていたはずなのに、貴方には見えていたんですか?」
「はっきりとは視認できませんでしたが。私の眼は赤外線──視覚が拾いきれない光を取得することで暗視ができますので、恐らくはその影響かと」
「赤外線……ちょっとそこのところもう少し詳しく……」
「多分セレナーデ以外でサーモグラフィーしてくる人はいないから対策は要らないと思いますよアスフィさん」
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