ソード・ダンジョン・ワールド2.5   作:魔剣(槍)ちゃん

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おまたせしました!




異界/異貌

主の祝福を失った大地はその果てを晒している。

人はなく、緑もない。曇天の天蓋に閉ざされた世界は砂色に染まっていた。

その中に残る僅かばかりの営みの欠片だけが、人の生活があったことを辛うじて想起させた。

 

文明の墓標の群れ、その中心に塔は悠然と存在している。

迷宮都市の中心にそびえるバベルを彷彿とさせる高さの超巨大構造物だ。

 

「今回は分かりやすい部類……だと思います」

 

まあ見覚えしかないんだけども。

などと思いながらフロムは雲にさえ届きそうな頂きで輝く紫紺の光に目を細めた。

 

一度至近距離で壊したものだから見間違うはずもない。

そこでふんぞり返って煌めくものこそ奈落核(アビスコア)──この領域を保つ要石である。

 

「アレをかち割ればここは消えますし、脱出もできます」

「へえ、なんだかゲームみたいだね?」

「ハハ……いやはい、確かに」

 

ヘルメスの表現に思わずフロムは苦笑い。

みたいというか、ゲーム(TRPG)そのものだった。

 

「──じゃなくて!神ヘルメス!ニュクス様!」

「んー?」

「どうしたんだい?」

「危ないから来ないでくださいねって僕言いましたよねぇ!?」

 

ここは迷宮(ダンジョン)。バベルの地下に根を下ろすそれと危険度は何ら変わりない環境だ。

恩恵のない人間と変わらない神々が気軽に訪れていい場所でもないのだ。

 

「アスフィさんも何とか言ってやってください」

「フロム君、諦めも肝心ですよ」

「アスフィさん!!?」

 

アスフィは偽物の空の彼方に細い目を向けている。

もう全てに諦観の念を抱き、疲れきってしまった中間管理職のようだった。

 

「セレナーデ」

「危険な場所へ戦闘に秀でていない方をお越しさせるのはいただけません」

「だ、だよな!」

「しかし、今回は我々よりも大幅にレベルが高いアスフィ氏が同行しています。フロムの予想を信じるのであれば──不安要素は少ないかと」

 

予想、というのは恐らくイーヴが適正レベル帯の奈落の魔域を寄越してくれたかもしれない、というものだ。

本来魔域は散発的に発生する上、脅威度はものによってまちまちである。

今回はイーヴが夢の中で事前予告をしてくれたため、そこで即死しかねない難易度の奈落の魔域が現れるのは考えにくいのである。

 

「……レイヴン」

「……?」

 

何が問題か分かっていないようだった。

それもそのはず、彼女にとってはここが初めての迷宮である。

 

きっとフロムは何ら間違っていないのだろうが、彼に明確に同意してくれる面子は残念ながら揃っていなかった。

そうして一人気落ちしたメンバーを抱えつつ、一行は鬱蒼と生い茂る塔の麓へと足を進めた。

 

 

 

 

魔動機術(マギテック)、ですか」

「そです。魔力を込めて効果を発揮する、古代の遺物を使う技術です」

 

塔の入口らしきものは一つしかなかった。

その錆びた両開きのドアを蹴り飛ばしてオープンセサミし、大部屋を探索中である。

 

神ヘルメスに伝えた『スロットを無視して魔法を習得できる技術』──それが魔動機術(マギテック)

〈マギスフィア〉という魔法使いの杖に相当するものがあれば、簡易的な明かりから武器や銃弾、電話の作成だってできてしまう便利な技能だ。

 

「ただ使うためには〈起動鍵(コマンドワード)〉、詠唱に相当する文言が必要で──おっと」

 

広間の奥、恐らく上階へ登る階段であろう場所から蠢く影が一つ。

 

「あれが、モンスター?」

「……んまあ、だいたい同じ類だ。僕らに害を為すという意味では」

 

レイヴンの疑問に短く答え、現れた二腕四脚の魔動機に対してフロムは槍を構える。

 

「フロム君、お手伝いはご入用かい?」

「瀕死になるか、よほどの敵が出るまでは借りませんよ神ヘルメス」

(と、啖呵を切ったはいいものの……あれ『カッティングトーチ*1』だよな)

 

あまり戦ったことはないため断定はできないが、赤熱する左右の刃を見るに、アテが外れたとしてもやってくる攻撃は変わらないだろう。

 

(確か攻撃のパッシブ効果は防護点半減。……いや、ゲームじゃ半減で済んだけどアレ溶断してくるやつだよな。当たったら確実に防具溶けるし最悪普通に死ぬんじゃないか?)

 

やはり、ヘルプを頼むべきだろうか。

屍を晒すよりは余程マシだろうと、恥を忍んで声をかけようとした口は仲間によって押さえられた。

 

も、もががが(レ、レイヴン)!?」

「フロム、やらせて欲しい」

「ぶはっ。やらせてって、アレを一人で?」

 

『カッティングトーチ』は部位数2*2だ。

レベル帯で見ても適正とは言い難く、何よりレイヴンは未だ戦いを経験していない。

だが、彼女は震えてなどいなかった。その眼に諦めなどなく、闘志を燃やしていた。

 

「……玉砕覚悟、ってわけじゃなさそうだね」

「うん、勝算ならある、けど」

 

フードをギュッと被り直して、レイヴンはヘルメスたちに目をやった。

 

「分かった。君がそうしたいと思ったなら、僕は僕のできることをする。なに、もうここまで来たら秘密の一つや二つじゃ変わらないさ」

 

コクリと頷くとレイヴンは道を阻むカッティングトーチへと歩を進め、フロムはヘルメスとアスフィに歩み寄った。

 

「御二方、一つ約束してくれますか」

「いいとも!」

「内容を聞く前に二つ返事しないでください」

「アスフィ、もう俺たちのファミリアはそれはもうベッタリ密着して気心通ずる仲なんだ!今更秘密の一つやふた、つ────」

 

詠唱はない。されど、静かに魔力が立ち上がる。

忌むべき気配を纏いながら、冒険者は外套を脱ぎ捨てた。

 

「今から起きたことの一切を、口外しないでいただけますか」

 

肌は蒼く染まり、額の双角は天を衝くように肥大化した。

彼女から溢れる力の奔流は、下層のモンスターのそれとよく似ていた。

 

レイヴンは腰から二刀を抜剣。カッティングトーチも両の刃に熱を通す。

それが戦の合図となった。

 

「──押し通らせてもらうよ、モンスター」

 

*1
魔動機文明時代に作られた掘削用魔動機。両手の溶断ナイフによって岩盤を溶かし断つ。

*2
平たく言えばキャラクター二人分のステータスを持っている




異貌レイヴンちゃん
作るだけ作った特殊神聖魔法ちゃん


新しいサプリでセッションするの楽し~~!!
そのせいでシンプルに更新頻度がカス……!!

ついに出ました蛮族PC用のサプリバルバロスレイジ。あと新規種族大量追加のアーケインレリック。
ワシはリルドラケン有毛種とアビスボーンに心底痺れたよ。あとドレイクとバジリスク。ゼノス作るときに使いたいけどなーワシもなー。

サプリをセッションだけでなくてこっち側にも還元したいところですが如何せん時間足りないでございますわね。
でもさすがに遅すぎるし書きたい展開がいい加減渋滞してきたので頑張りますわ~!!
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