ソード・ダンジョン・ワールド2.5 作:魔剣(槍)ちゃん
技能『ウォーリーダー』は鼓咆と陣率、二つの力を使い分けることができる。
前者は発声による味方へのバフ、後者は前者の使用に応じて溜まった陣気と呼ばれるコストを消費して自分を強化する。強力な効果の鼓咆は陣気を消費することもあるが、現時点では全く使えそうもないのでこれについては考えなくていい。
『ウォーリーダー』の弱点は、他の戦闘職技能と比較し、攻撃系のスキルが極端に少ないことにある。
それ故に身の振り方は二つ。他のバフを盛れる技能と合わせて後衛職になるか、攻撃系スキル持ちの技能と合わせて前衛と兼任するか。
「そぉい!」
味方がいることが前提となる技能ではあるが、この時点でも役に立つ効果がある。
それは先制判定──戦旗槍装備時に発現する発展アビリティ『先制』により、相手に先んじて行動を起こせることだ。
そのおかげで多少使い方を学んだとはいえ迷宮素人の僕がゴブリンの攻撃よりも一歩早く槍を突き出すことができている。
相手の接近に合わせて放った槍の払いが吸い込まれるように頭部に直撃。抵抗なく通過した穂先の後には魔石がカランと床に落ちた。
魔石を拾い上げ、背負った革製ナップザックの中に放り込む。受付嬢に聞いた目標金額にはまだまだ遠いけど、稼げない額ではなさそうだ。
武具の習熟や経験の蓄積を後回しにした僕は、今だけ通じる圧倒的イニシアチブをいいことに次なる魔物へと突貫した。
⚫
「おかえ──り?」
フロムが地下を出てから随分と時間が経過した。
さしものニュクスも少し、ほんとにほんのちょっとだけ心配になって、小さな部屋を意味もなくウロウロしていたところだった。
そんな折、ガコンゴトンと壁にぶつかる音が扉の外から聞こえてくる。
眷属帰還の合図に神は見た目年齢相応にぱっと目を輝かせると慌てて扉を開く。
外には両手いっぱいに荷物を抱えたフロムがぷるぷると震えていた。
恩恵を得て普通の人間を凌駕する力やら何やらを得たが、それでも重いものは重いのだ。
「失礼しますよ、っと」
どさっと置かれたのは袋に包まれた何かとクルクルに丸められたラグマット。
袋には『組み立て式ソファ』とか『組み立て式ローテーブル』などと印字がされている。中に入っているのは家具のパーツのようだ。
困惑するニュクスを他所にフロムは鼻歌まじりで荷解きをして中身を確認していく。
「どうしたの、これ?」
「どうしたもこうしたも、さすがにこんな殺風景な場所のまま、というのももったいないなと思いまして。こうしてお金を稼げるようになったならやらない手はありませんよ」
やりますか?と机の脚を差し出された彼女は眷属の隣にちょこんと座り、黙々と作業を始めた。
いくつかの家具が形を現すまで部屋には沈黙が流れていたが、ローテーブルが完成したところでニュクスは口を開いた。
「出かける前に言ってた話、してもいいかな」
フロムが頷くと、板にはめる木ダボを手中で弄びながらゆっくりと物語が紡がれる。
ニュクスは畏れられ、敬われた。
当の本人はそれを良しとしなかった。されど、解決するすべもその時はなく。
やっと見つけた降臨という名の光明さえ、
一年の時を──全知全能だった神にとって、あまりに長いその一瞬を──耐えた。
そして、運命を見つけた。
「これで全部、これが私の涙の理由。……お、おかしいよね!見られたから君じゃなきゃダメなんて──」
苦笑しながら眷属を見やる。
同時、ぽんと神の頭に眷属の手が乗った。
わしゃわしゃと、幼子を褒めるように掌が神の頭部を右往左往。
「へ?」
「あっ」
フロムは完全に意識の外の行動だったようで、慌てて離そうとするも、ガシッと神の手が逃げる眷属の手のひらをホールドする。
「……自分でやっててあれですけど、不敬じゃないんですか?」
「不敬だとも、断りもなく神の頭を撫でるなんて。当たり前じゃないか」
でも、と言ってニュクスは笑った。
「君なら構わないよ。存分に撫でてくれたまえ」
期待するような眼差しに根負けして、フロムは神の御髪をゆっくりと触れる。
「……ずっと、誰かにこうして欲しかったのかもしれない。私は」
「いくらでもやりますよ。僕の手でいいなら、いくらでも」
「うん、うん。ありがとう、フロム君。僕を見つけてくれたのが他でもない君で────本当に良かった」
⚫
家具が並べられ狭くなった部屋を横目に、ニュクスはフロムの腰に座ってステイタスの更新を執り行っている。
さしもの撫でられてご満悦の神も一日も経過してないんじゃ大した変化はないだろうと思っていたが、フロムが「一回だけでいいですから!」とごねるので、ブーたれながら
眷属曰く、『
一体彼は何を知っているのだろう?嘘をついていないことは分かるのだが……。
聞きかじった話だが、スキルはそう易々と発現するものではない。
半信半疑ながら
フロム・ヘル
Lv.1
力︰I0→I4
耐久︰I0→I1
器用︰I0→I7
敏捷︰I0→I2
魔力︰I0
死守︰I
《信仰》
【奈落の盾神】
【虚夜の女神 ニュクス】
《魔法》
【テオス・サクラメント】
・神聖魔法。
・効果中、基本/特殊神聖魔法を取得。
・取得魔法はLv、《信仰》に依存。
・
《
【
・行為、威力、素材決定に対する因果律遡行権。
・再行使に二十四時間の
【
・戦旗槍装備時、発展アビリティ『先制』の一時発現。効果値は『魔力』に依存。
・使用鼓咆に応じて味方の各能力に補正。陣気を獲得、または消費。
・使用陣率に応じて自身の各能力に補正。陣気を消費。
『習得鼓咆・陣率』
【怒涛の攻陣Ⅰ】
・味方の攻撃力に小補正。
・陣気を1獲得。
【
・力に高補正。
・命中力に補正。
・補正値はLv依存。
【
・自然的に発生した環境での行動、探索、観察に高補正。
・回復系のアイテム使用時、効果量に補正。
・補正値はLv依存。
(増えてる……)
そう、増えているのである。しかも魔法が生えている。
フロムが初眷属のニュクスでも分かる。この状況は異常だ。
しかも当の本人はこれらのスキルを会得するのが既知であったような口ぶりだった。
ニュクスがそう問い詰めると、フロムは羊皮紙に写されたステイタスの《信仰》を指し示した。
「ここ、《信仰》にありますよね。ニュクス様の他に、【奈落の盾神】って」
「……浮気?」
「滅相もない!……と言いたいところですが、一時期信仰していたのは確かです。何せ僕がオラリオにやってきたのはこの神が原因ですから」
そう言って聞かせたのは彼がこの迷宮都市に来るまでの事の顛末。
住んでいた村全体にこの神らしき存在から神託を伝えられた結果村から追い出された憐れな男子のお話。
「その時、っていうかそれ以前から予感めいたものはしてたんですが、神託が降りたことで『ああ、とうとう妄想が現実に……』ってところです」
「ふ〜〜〜ん。ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん?あの時出てきた大盾ってそういうこと……」
今だ眷属の腰に乗っているニュクスはベチッと背中を叩く。
薄く、ほんの薄くだが、彼女を窺うように大盾の紋様がフロムの背中に現れる。
「……フロムは、私のだから」
「なにか言いましたかニュクス様?」
「なにも言ってませ〜〜〜ん!!」
和気あいあいと話す二人の様子に満足したのか、はたまたまだ私の出番じゃないことを悟ったのか、いつの間にか大盾は溶けるように消えていった。
奈落がない世界のはずが盾神の御加護がある。
つまりはそういうことです。
【私的解説】
戦旗槍
→旗がついた槍。ジャンヌ・ダルクとかが持ってるやつを想像して欲しい。
フロムくんが持っている二本の槍のうち、一本はこの戦旗槍であり、『魔剣』である。
本来
組み立て式家具
→フロム君は前世でお値段以上系統の家具に大変お世話になっていたので、今生でもあるかなそれっぽいの、と冒険者登録の際にエイナさんに質問したところ似たようなものが売られていると教えてくれた。
【テオス・サクラメント】
→ソード・ワールド2.5における『プリースト』技能に相当する魔法。
体力回復、状態異常回復、ダメージ軽減の等の効果を持つ基本神聖魔法が一時的に使えるようになる他、信仰する神によって効果が違う特殊神聖魔法が扱えるようになる。
現在特殊神聖魔法は『ニュクス』と『奈落の盾神』のものを行使可。
【
→SW2.5における『ファイター』技能に相当するスキル。
近接・投擲武器の命中や武器を持つための筋力に補正がかかる。
【
→2.5における『レンジャー』技能に相当するスキル。
自然環境での探索や行動に有利な補正を受けられ、薬草やポーションを使用した時の効果が上がる。
(超)自然環境でも適用可。
【奈落の盾神】
→ソドワに登場する神様。
奈落と呼ばれる孔から這い出る魔神を鏖殺し、人々の守護を信条とするマジンスレイヤーである。
フロムの背中に何故か残滓が垣間見えることがあるが、今のところ実害はない。
奈落
→SW2.5世界、アルフレイム大陸にある大きな孔。
孔は異界へと繋がっており、そこから魔神と呼ばれる理を異とする者どもが現れ、大陸の平和を脅かしていた。
現在は封印を施され、孔そのものを覆うように巨大な壁が建造されたため、滅多なことでは奈落から直接魔神が外に流出することはなくなった。
これでキャラシ作成時に設定していた技能は取り終えたので、後はどうベル君の圧倒的成長速度に追いすがらせるかですね……。