ソード・ダンジョン・ワールド2.5   作:魔剣(槍)ちゃん

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ガチでご無沙汰なんだな……すまない。



白兎

「どうも、相変わらず忙しそうですね」

「ごめんね、時間割いてもらっちゃって。でも、相変わらずって言うほど顔を合わせたかな私たち?」

 

ギルドに設けられた面談用のボックスに入室したフロムは席に腰を下ろす。

対面に座るのは彼の当面の担当アドバイザーとなったエイナ・チュールだった。

 

「違いない。でも昼も夜も紙束に囲まれてれば誰だってそう思いますよ」

「あちゃあ……」

 

見られてたか、とエイナは額に手をやった。

うら恥しさに苛まれるが、時間を浪費している暇は彼女に与えられていない。

切り替えは早かった。机に広がる申請・報告書類を片付け、エイナは居住まいを正して切り出す。

 

「折り入ってフロム君に頼みたいことがあるの。私が担当してるもう一人の冒険者についてなんだけど……」

 

彼らが顔を合わせてから今日までの時間は短いが、それでもエイナが言わんとする冒険者のことをフロムは知っていた。

深紅の瞳に白髪の、ナイフを携えた冒険者。

ちょっと危なっかしい印象がある駆け出しの少年。

そこまで考えてから人のことは言えないなとフロムは心中苦笑した。

 

「ベル・クラネルさんでしたっけ?確か」

「そう、彼とフロム君でパーティを組んでみて欲しいんだ」

 

エイナが冒険者にできるのは迷宮の知識を叩き込むことだけ。立ち回りや戦場の肌感はさしものアドバイザーも専門外だ。

その点フロム・ヘルは適任に思えた。まだ出会って間もない彼だが、所作の節々から場数を踏んだ人間特有の慣れをエイナは感じ取っていた。

実際のところフロムは冒険に慣れ親しんでいるわけではないし、むしろ素人と言っていい。

多くの冒険者と接してきた受付嬢をしてそう思わせてしまうのは、昔取った杵柄(ロールプレイの賜物)のおかげか、恩恵にて発現した技能によるものか。

 

「どう、かな?」

 

提案はフロムにとっても渡りに船だった。

いつまでも【鼓陣軍師(ウォーリーダー)】を死蔵しておくのは非常に勿体ない。あれはパーティを組む前提で誂えられたものである。

それに、基本迷宮は一人で潜るものではない。ソード・ワールドでもトラップなどで分断されない限り複数人でぞろぞろ歩くのがセオリーだ。

このあたりでパーティに慣れておくべきだろう。

 

「もちろん。僕も僕で試したいことありますし」

 

深い安堵のため息とともにエイナはへにゃへにゃと机に突っ伏した。

これでベルの視野や知識の幅も広がるだろうかと安堵しながら。

 

「ありがとうフロム君。それじゃ早速なんだけど待ち合わせの場所は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『祈れ、さすれば救われん。願え、さすれば助からん。想え、さすれば鎮まらん』

 

集合場所となった二階層も一階層と変わらず辺り一面岩の壁だ。

さほど目新しい感覚もなく迷宮に潜った僕は戦旗槍を高く掲げて言葉を紡ぐ。

力ある言葉に宿った魔力が信仰を聖なる威力へと変えていく。

 

『褪せた虚空、奈落の天蓋。我、其の威光、光芒、神の御業を代行す』

 

本来プリーストは事前準備──現在詠唱中の魔法を使うための魔法──は必要ない。

盤上のゲームよりも手間はかかる。だからこそ強い効果があると信じたいところ。

 

『比類なき奇跡をここに。刻まれし(しるし)に誓う』

 

槍に括りつけられた古ぼけた旗がばさりとはためき、描かれた魔法の行使鍵(アクトキー)たる聖印が妖しく輝きを放つ。

 

『──テオス・サクラメント』

 

身体に薄黒いベールが纏わりつくと同時、自分の中の“何か”が持っていかれた。

これが精神力(マインド)──MPの消費なんだろう。

MPが尽きると精神疲弊(マインドダウン)という症状が出るらしいから乱発は厳禁。過信と使い過ぎは禁物だ。

 

「今は……『サニティ』、『バニッシュ』、『フィールド・プロテクション』、最初に使える三つだな」

 

どれを使おうかと悩んでいると、不意に天井を這う大蜥蜴が視界に映る。

二階層から現れる四足歩行の巨大な蜥蜴──ダンジョン・リザードだ。

ちょうどいい。君には実験台になってもらおうか。

 

恐らく精神抵抗(レジスト)はないと踏んだ僕は槍の穂先を対象に合わせる。

 

「【バニッシュ】」

 

──天罰。

槍の先端から現れた黒き雷は狙いを過たずダンジョン・リザードの頭部へ殺到し、その額へと吸い込まれるように命中した。

 

【バニッシュ】はLv1から使える基本神聖魔法の一つだ。

蛮族──モンスター及びアンデッドの魂に干渉し、理性喪失や恐慌、行動停止の悪影響を与える効果がある。

今回ターゲットとなった蜥蜴はビクリと大きく身体を震わせ、天井から床へと叩きつけられる。

腹丸出しでひっくり返った蜥蜴は近寄っても凍り付いたように動かない。

 

中々当たらない槍でも動かない相手であれば余裕のよっちゃんだ。

首を貫通した穂先が致命となり、ダンジョン・リザードは塵になって消失する。

 

魔石を拾い上げると同時、待ち合わせ相手の足音が遠くから聞こえてくる。

僕は槍を背に戻して彼の到着を待った。

 

「フロム・ヘルさん……ですよね?」

 

ほどなくして、白い髪を揺らた赤目の少年はやって来た。

 

「そういう君はベル・クラネルさん。エイナさんから聞いてるとは思うけど、改めて自己紹介を。ニュクス・ファミリア所属、フロム・ヘルだ。よろしく」

「へ、ヘスティア・ファミリア所属、ベル・クラネルです!ここ、こちらこそ、よろしくお願いします!!」

 

差し出した手を若干挙動不審ながら彼は握り、振る。

晴れてパーティとなった僕らは三階層に足を向けた。

 

「フロムさんは、どうしてオラリオに?」

「うーん……未知を探しに、なんて言えたらかっこよかったんだろうなぁ」

 

特に隠し立てする理由もなかったので、生まれ故郷で神らしき何かから神託を受けたことで村を出立せざるを得なくなってしまった経緯を話すと、彼は目を輝かせた。

 

「──すごい。まさに迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)そのものじゃないですか!!」

「いや、うん。そんな大層なものじゃないよ、多分」

 

まさか妄想で書いたことが現実に反映されたんだ、等と言えるわけもなく。

ベルの方は?と聞き返すと、「実は、迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)に出てくる運命の出会いってやつに憧れてて」と、頬をかいた。

 

「ほぉ……ちなみに、ベル君はどんな運命()がいいんだ?エルフ?ドワーフ?ルーンフォーク*1?」

「ルーンフォーク?って言うのは知らないですけど、そうですね、エルフで……」

「ほうほう」

「金髪で」

「うんうん」

「髪が長いと最高────あ」

「うんうん、いい夢じゃないの。その大志、忘れるんじゃないぞ。少年!」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!僕だけなんというかその、不公平じゃないですか!フロムさんの好みも話してくださいよ!!」

「赤目銀髪ロングヘア、黒縦セタに白タイツ、乳マシマシの表情カタメ、純真マシハイライトヌキのシスターで」

「僕よりストライクゾーン狭くないですか!!?」

 

 

欲望抱いたっていいじゃないか。

人間だもの。

 

フロム。

 

*1
ソード・ワールド2.5におけるプレイヤーが選択できる種族の一つ。

『ジェネレーター』と呼ばれる機械によって生み出される彼らは基本的に人間(ヒューマン)と同じ姿形をしているが、首元と身体の一部が硬質な素材に覆われている。

いわゆる人造人間やホムンクルスに相当する存在である。




守備範囲が狭すぎる……もっと食べろ()お前。

セッションに継ぐセッションで魔剣(槍)ちゃんのキャパシティはボドボドよ!
感想返信はちょっと待っててな……すまんな……。

エピックトレジャリー、モンストラスロア、アウトロープロファイル、バトルマスタリーが手元に入りました。
正直全部活かせる気はなさそうですが色々試行錯誤してみようと思います。
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