ソード・ダンジョン・ワールド2.5 作:魔剣(槍)ちゃん
「出生を考慮すれば、パパ/ハハと呼称するのに不都合など存在しないはずですが?」
「存在するからやめてくれ。後生だから」
「私もそのぅ、今はその呼びを背負う覚悟はないっていうか……」
ルーンフォークという種族を知っているだろうか?
人の役に立つことをコンセプトとして遥か古い時代に設計された人造人間である。
培養液で満たされた
「そこまで懇願されてはさしもの私も引かざるを得ませんが……ふむ、何とお呼びすれば?フルネームと愛称をお願いします」
「フロム・ヘル。フロムでいい」
「ニュクス。君の好きな呼び方でいいよ」
「フロム、ニュクス、と。承知しました」
ニュクス・ファミリアの
父親呼びはともかくとしてうら若き彼女を──それもできたてホヤホヤの──放置するわけにもいかず、パパもといフロム・ヘルは両脇に一人と一柱を抱え、わっせわっせとここまで運搬してきた。
「私は『セレナーデ』、産まれたばかりのルーンフォークです」
彼女の存在の成り立ち、そして有する特異性についてフロムはランダム名前決定表を残念そうに懐へしまいながら大方の検討をつけていた。
ルーンフォークはジェネレーター内に自分たちの身体の一部──皮膚や髪、血の一滴程度──を投入し、それらを培養することで
今回魔導機の中に入ってしまい、培養されてしまったのは
つまり、『パパ』『ハハ』呼びは遺伝情報提供者としての観点からすれば、あながち間違いではなかったりする。
「私は“奉仕するもの”と規定されて製造されました。私が出来上がるにあたってその基礎となった二人の役に立ちたいと思うことは、それほど不自然なことではないと思われます。よって、貴方がたに仕えさせて頂きたいのですが──」
ルーンフォークには従属欲求なるものが存在する。
元々人のためにあれかし、と古代人にデザインされた命であるため、誰かの役に立ちたい──とりわけ個人の力になりたい──という想いが製造時点で刷り込まれているのだ。
時折ジェネレーターの経年劣化やその他の要因で創造主が規定した枠から逸脱するルーンフォークも出るには出るが、概ねそのような傾向を抱いて彼らは産まれてくる。
彼女の場合、ジェネレーターが
「よろしいでしょうか?不許可の場合、フロム、ニュクスへの二人称代名詞を訂正せず、見捨てられたことを野外で喧伝することはご留意頂きましょう」
「選択肢ないよなそれ」
「ええ、ありません。お役に立つことはお約束します。それこそが私の存在意義ですので」
フロムとニュクスに残された道は一つしかなかった。
もとより放逐するつもりなど二人にはさらさらなかったのだが。
どのみちファミリアの人数を増やしていかなければ、生活もギリギリのままである。
かくして、ニュクス・ファミリアにルーンフォークの『セレナーデ』が加入したのだった。
⚫
早朝だというのにオラリオのメインストリートはいつものようにごった返している。
店が軒を連ねる道を抜け、冒険者たちは迷宮へと足を運ぶ。
朝から騒がしい喧騒の様子を不思議そうに目で追いかけながら、セレナーデはフロムと共に目的地へと向かっていた。
フロムは眠気を噛み殺しながら天を衝く塔をなぞるように上から下へ指で示す。
「これから僕らはあの
「私が使う得物を買いに行かなければ、そういうことですね」
「その通り」
広場を通り、バベルの門をくぐり抜ける。
地下のダンジョン入口へは赴かず、そのまま三階へと足を運ぶ。
「初めて来たけどほんとに昇降機があるんだな」
「あの高さの塔を足で登るのは冒険者でも現実的ではありません。まさかこのような仕組みとは思いませんでしたが」
二人は円形台座に飛び乗り、フロムが備え付けられた装置のスイッチを入れる。
台座は重力に逆らい、上層階へと移動を開始した。
指定の階層に到達するまで手持ち無沙汰になったのか、セレナーデはちょいちょいとフロムの肩を叩く。
「そういえば、私と同じ系統の冒険者がいないようですね」
「あー……ダンジョンで歌を聴かせるタイプのシスターは世界で君だけだろうなぁ」
バード。
奏者、吟遊詩人とも。
旋律を奏で、敵味方にバフデバフを振りまくことを得意とする技能だ。
こちらの世界では酒場や広場に神話を物語る吟遊詩人を見かける程度であり、己の歌を聴かせる戦場のギタリストは見る影もない。
セレナーデはニュクスより恩恵を刻まれた際にバードの
この技能を活かすには、まず楽器を入手しなければならない。
彼女の得物を見繕うために今日は二人でバベルにある楽器販売を生業とするテナント店へとやって来ていたのであった。
到着したフロアの入口には『ミューズの楽器店』と幕が吊るされている。
奥のカウンターでゲーミングカラーの髪をだらしなく広げて突っ伏していた店主らしき女神は、二人の客が入ってくると居住まいを正すでもなく、「わぉ珍しい」と頬杖をついて呟いた。
閑古鳥が鳴き過ぎて暇を持て余していたようだ。
「やぁやぁやぁごきげんよう冒険者にシスター諸君。ここに君らの求めるものなんてないからさ、はよう回れ右して戻りたまえ」
「楽器を買いに来たんだが」
「へへえ楽器を……楽器を!!!!!?冒険者が!!!!?」
当事者のセレナーデが楽器の試奏に行ってしまったため、フロムが経緯を説明する。
女神ミューズは話を聞き終えると、笑うでもなく怒るでもなく、言った。
「楽器って言ってたけど楽器なら何でもいいわけじゃない、そうだろう?」
「ドラムとか、ただリズムを刻むだけのものではダメですね。一定のメロディライン──旋律を奏でられるもので、かつ本人の歌唱を阻害しないものが望ましいです」
「しかも
ミューズの指を追えばセレナーデは妙に様になった体勢でギターを構えていた。
かき鳴らされる音はメロディにこそなっていないが、彼女は薄く笑っているような気がする。
「気に入ったみたいだね。私から見てもスジは悪くない。買ってく?武器を買うより余程安上がりだよ」
ピラと見せられた値札は二千ヴァリス。
フロムは少し考える素振りをしてからセレナーデを呼ぶ。
「これにします。難易度は高いかもしれませんが、一番質の良い演奏ができるかと」
「じゃ、買います」
「代金そこに置いといて。ケース持ってくるからちょっち待ってな」
程なくして台車に乗った黒い──鎧のように堅牢そうな──ギターケースが運ばれてくる。
「替えの弦とチューナー、ピック、ストラップはまけとくよ。ぶっ壊れてなきゃメンテはしてやれる。シスター、一通りは分かってるみたいだけどたまに顔出しな。ここの楽器は
「私はセレナーデ。作ったのは、貴方?」
「いんや、ソイツは今日外してる。伝言があるなら伝えておくよ」
「いい楽器をありがとう、と」
ミューズは目を丸くして、カカと笑った。
輝く髪のせいで二人にはよく見えなかったが。
「そうかい。確かに伝えとくよ」
⚫
「見つかったの?楽器」
「ええ。とびっきりのやつが」
セレナーデがベッドに倒れ込むようにして眠った後、フロムとニュクスは購入したギターを囲んでいた。
ニュクスが楽器のボディ裏、目立たない部分に指を這わせる。
「これ、合ってるの?」
「神自ら証を刻んだのであれば、何せよ『聖印』としては機能するかと。なんたって御神体直々の、
黒塗りの裏面に『Νύξ』の文字が星のように浮かび上がった。
「……ルーンフォークが神聖魔法を使うなんて、前代未聞ですけどね」
『天使にラブ・ソングを…』ビルドです。
実用性は良くないけどシスターが歌ってたら可愛いよね。
下の青文字の名前から飛べるキャラシの装備とか履歴とかはそのうち加えるんで気長に待っててください。
セレナーデ
Lv.1
力︰I0
耐久︰I0
器用︰I0
敏捷︰I0
魔力︰I0
器奏︰I
《信仰》
【虚夜の女神 ニュクス】
《魔法》
【テオス・サクラメント】
・神聖魔法。
・効果中、基本/特殊神聖魔法を取得。
・取得魔法はLv、《信仰》に依存。
・
《
【
・任意の体力を
・再行使に二十四時間の
【
・基本/特殊神聖魔法を習得。当該魔法に高補正。
・逆境時における神威代行権。
【
・楽器装備時のみ効果発動。
・使用呪歌に応じて全体の各能力に補正。楽素を獲得。効果値は『魔力』に依存。
・使用終律に応じて効果発動。楽素を消費。効果値は『魔力』に依存。
『習得呪歌・終律』
【
・命中力に小補正。
・楽素(高揚)を1獲得。