ソード・ダンジョン・ワールド2.5   作:魔剣(槍)ちゃん

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道は示そう。
切り開くのは、汝だ。



楽奏/盾神

戦いの音色が響く。

聴くもの全てを奮い立たせる、鬨の声が如きメロディライン。

奏でられる旋律がエリア全体に精神活性を促し、誰の心も熱く燃やす。

そんな命中力が加算される【士気高揚(モラル)】の状況下であれば、得物の命中が低く設定されているフロムも十全に槍を振るうことができる。

 

「ありゃ」

 

とはいえ、運が悪い(出目が低い)時は当たらない。

ぐるりと月輪を描いた槍が旗を巻き込みながら刃を突き出すが、ゴブリンの肌を掠めるに留まる。致命には程遠いかすり傷だ。

小鬼は隙を見逃さず爪で喉を掻き切ろうとするが、フロムは地を蹴ってそれをすんでのところで回避。

士気高揚(モラル)】はエリア内全ての敵味方に効果を付与する。先んじることができれば儲けものだが、それができなかった場合は手痛い反撃が襲ってくることを覚悟しなければならない。

 

「モラってもらっても当たんない時は当たんないか……セレナーデ、『バニッシュ』を頼む!」

 

演奏をストップしたシスターは片手を照準のようにゴブリンへ定め、「バニッシュ」と一言。

黒き稲妻がモンスターへと突き刺さり、不浄な魂に叩き込まれた祈りの魔法が動きを緩慢にさせる。

 

「今度こそっ!」

 

槍は失敗を拭うように閃き、ゴブリンの首元を貫通する。

ひゅうひゅうと鳴る喉元を叩き割るように地面へ刃をスライドさせ、両断。

モンスターは霞のように消え去った。

 

「魔石にヒビが入ってしまいましたね」

「すまない、次は気をつける。……どう?使い心地は」

「比較的良好かと。ですが私、役に立てているんでしょうか?」

「十分。一人でダンジョンに潜ってる時よりは安心する」

 

彼女の懸念も理解できる。

バードはバフデバフを撒く『呪歌』、そして強力なダメージと回復を叩き出す『終律』の二つを習得してこそその力を存分に振るえるのだ。

現在セレナーデは呪歌だけ。神聖魔法(プリースト)はあるものの、レベル1帯では扱えるものも限られてくる。

 

「“冒険”しないといけないのか、それとも別に何かがあるのか」

「していますが?」

 

「間違っていないけど、違うんだ」フロムは魔香草(精神力回復)の葉巻を二本、マッチで火をつける。

片方をシスターに渡し、傷をつけたダンジョンの壁を背もたれに、二人は薄い白煙に包まれる。

 

「セレナーデも僕もレベルは1。ランクを上げるためには基礎アビリティがDに達することと、冒険──偉業の達成が条件になる」

「偉業ですか。偉業の判定はどのような基準で?」

「身の程を超えた挑戦をした、死にかけた、劣悪な状況下で何とか目的を果たした……曰く、神が手を叩いて喜ぶようなブレイクスルーを果たすことだそうだ」

 

曖昧ですね、とセレナーデは吸殻を握り潰した。

手が鋼で覆われてるから火傷とかしないんだろうな、とフロムは葉巻の成れ果ての火を踏み消し、ごみ捨て用の袋に突っ込む。

 

「ランクアップはほとんど数年単位の時間をかけたりっていうのがほとんど。最速記録(レコード)も一年だ」

「超えたいのですか?」

「もちろん。新しい魔法とか鼓咆とか、自分で使ってみたいし。セレナーデも新しいことできるようになってみたいでしょ?」

「フロムとニュクスが望み、役に立つことであれば断る理由はありません」

 

 

 

 

「と、言ったはいいものの」

 

ニュクス・ファミリア、本拠地(ホーム)

帰りがけに購入したシガレットのような菓子を一つ咥えて椅子に腰をかける。

 

ソード・ワールド2.5(ラクシア)においてのレベルとこの世界においてのレベルの上昇難易度が乖離しすぎている。

ラクシアの基準が彼らに適用されているならば、他の技能(スキル)を習得したり、レベルが上昇していてもおかしくはない。

フロムは転生を自覚してからというもの、自動失敗*1による経験点を得るために『行為判定*2』に該当するものを毎日毎日朝から晩まで何度も何度も繰り返していたのだが、恩恵(ファルナ)を刻んでもレベルは1で、キャラクリエイト時の初期技能(スキル)が幾つか手に入ったに留まっている。

 

「冒険、冒険ね」

 

エイナからは「冒険者は冒険するな」と耳にタコができるくらいは聞かされている。

それは冒険者が無事明日を生きることができるようにという祈りから来るものだ。

 

賽を投げなければ、結果へ辿り着けない。

冒険をしなければ、次へとコマを運べない。

足踏みばかりでは、前へと進めない。

 

せっかくもっと高い景色を見れるかもしれないのに、こんなところで足を取られるのは、フロムの望むところではなかった。

 

ベッドで眠るニュクスとセレナーデを他所に、フロムは毛布を掛けて椅子に身体を埋め、目を閉じる。

 

一人で考えるのはこれくらいにして、朝に神と仲間に頼ろう。

そう思った彼の意識は闇に溶ける──はずだった。

 

 

『我が信者よ。息災か?』

 

 

夢の中で、目覚める。

奇妙な物言いになってしまうが、フロムにとってそれ以外にこの状況を言い表す言葉はない。

暗闇の中、光芒指す方へ目を向ければ、見覚えのあるシルエット。

 

二振りの剣とそれに裂かれる魔神の頭、そして大盾。

──奈落の盾神イーヴを示す紋章だ。

 

「お久しぶりです、神イーヴ。貴方の神託はこの世界にも届くのですね」

 

自分の《信仰》の存在、奈落の魔域(シャロウアビス)とくれば彼女が在ることも容易に想像はついた。

まさか今接触してくるとは彼の想像の埒外だったが。

 

『然り。こうして互いに言葉を交わすには奈落(アビス)の縁を辿る必要があったが。非常に、心苦しい(忌々しい)が』

 

彼女はラクシアに存在する神格であり、魔神を──そしてそれを世界に吐き出す門たる奈落(アビス)を唾棄すべき汚物の源泉として嫌悪している。

彼女の信者が掲げる教義も魔神たちから人々を護ることを旨とするものだ。

 

『地下に広がる奈落の魔域(シャロウアビス)を見ただろう。本来ラクシアにだけ留まるはずだったアレが、汝の世界にも出現している。次も、もうじきだ』

 

『ただ一人、降りた神と果てなき迷宮の世界にて我を信仰する者──フロム・ヘル。汝、光届かぬ奈落に抗する覚悟はあるか?』

 

信者は口を閉じ、黙考する。

理由が、足りなかったのかもしれない。

漠然と強くなり、新しいことができるようになりたくて。

だけど世界の壁は想像よりも遥かに高く、物語のようには、いつかのラクシアを旅した()のようには上手くいかなくて。

 

だが今、神を目の前にして()()()()()()と同じ思いを、生を受けてから15年にしてどこか他人事だったものを実感として抱くことができた。

 

 

 

────奈落(アビス)死すべし、慈悲はない。

 

 

 

「ある。それは、僕のやるべきことだ」

『その意気や良し。なれば、その手助けくらいはしてやろう』

 

 

*1
後述の行為判定でどちらのダイスも1、1を出してしまうと達成値の到達に関わらず、自動的に失敗の判定となること。

この後、即座に少量の経験点が獲得できる。

*2
小石を拾う、ちょっとした歌を歌うなどのごく当たり前にできる行為を除き、成功・失敗が起こりうる行為に対して6面ダイスを二個振る判定を指す。

指定された達成値以上であれば成功となる。





フロム・ヘル
Lv.1
力︰I4→I10
耐久︰I1→I12
器用︰I7→I8
敏捷︰I2→I4
魔力︰I0→I11

死守︰I

《信仰》
【奈落の盾神 イーヴ】
【虚夜の女神 ニュクス】

《魔法》
【テオス・サクラメント】
・神聖魔法。
・効果中、基本/特殊神聖魔法を取得。
・取得魔法はLv、《信仰》に依存。
行使鍵(アクトキー)︰【聖印】

技能(スキル)
剣創世界(ソード・ワールド)/運命変転(ファンブレイク)
・行為、威力、素材決定に対する因果律遡行権。
・再行使に二十四時間の間隔(インターバル)

鼓陣軍師(ウォーリーダー)
・戦旗槍装備時、発展アビリティ『先制』の一時発現。効果値は『魔力』に依存。
・使用鼓咆に応じて味方の各能力に補正。陣気を獲得、または消費。
・使用陣率に応じて自身の各能力に補正。陣気を消費。

『習得鼓咆・陣率』
【怒涛の攻陣Ⅰ】
・味方の攻撃力に小補正。
・陣気を1獲得。

闘剣練武(ファイター)
・力に高補正。
・命中力に補正。
・補正値はLv依存。

自然観測(レンジャー)
・自然的に発生した環境での行動、探索、観察に高補正。
・回復系のアイテム使用時、効果量に補正。
・補正値はLv依存。

神迷世界(ダンジョン・ワールド)/奈落誘引(アビスイーパー)】←New!!
・試練が到来する。
・試練踏破時、経験値(エクセリア)技能(スキル)向上。
・踏破する度に効果向上。


手助けするとは言ったけど、抗する力を与えるとは言ってない。お前今日からビーコンな?
頑張れフロム君。十二くらいの試練が君を待っているぞ。

ニュクス・ファミリア、次なる眷属は──

  • つるぎのまい系前衛
  • 魔導銃手
  • 錬金術師!?こんな序盤で?!
  • 爆走バイク
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