二つに増えたとある女が現実逃避し続ける話   作:オランジェット

2 / 3
第2話

 よぉーっす!

 

 今日も元気なルーちゃんだぜ!

 

 今日も今日とて小学校。

 

 いや、正確には小学校とは言わないかもしれないんだけど。

 なんとかかんとかって言うらしい。

 

 なんで知らないのかって?

 

 まだ言葉がわからないからでーす。

 

 え?小学生なのにわからないの?

 とか抜かしてくるやつがいるかもしれんが。

 

 率直に言うとな。

 

 無理に決まってんだろ。

 

 数年で言語を習得するとか、第一次成長期にある赤ん坊様だからできるんだよ。

 そしてなぜかそれが来なかった私には意味の分からない音の羅列を聞いただけで言語を解読するなど不可能。

 

 前世でも国語と英語苦手だったし。

 

 数学なら片手でできたんだけど(隙あらば自語り)。

 

 じゃあ、なんで私に第一次成長期がないのかって話なんだけど、ぶっちゃけよくわからん。

 でも、前世の知識が悪さをしているのでは?と考えている。

 

 前世の知識と考え方を持っているということは、脳みそが前世のものと同じ形になってるってことでしょ?

 いや厳密には違うのかもしれないけどさ。

 

 ンで、その形状まで不思議な力でもっていくのに私の大事な第一次成長期が消費されたってわけ。

 

 返せ!

 私のコミュニケーションツールを返せ!

 

 まあ、言葉がわかったところでコミュニケーションをとっていたかと言われればそれは……まあ、うん。

 でもないのとあるのとでは違うでしょ!

 

 だから私は今、精神障害を患っているということになってる、っぽい。

 

 というのも、いつも行く教室がみんなのところと違うんだよね。

 たぶん支援学級?みたいなところだと思う。人数めっちゃ少ないし。

 

 そこで言葉の勉強とかしてるわけだけど、正直全く頭に入らん。

 

 はぁ~、つっかえ。やめたら?授業。

 

 おもんなさすぎて、頭に来ますよ。(責任転嫁)

 

 ちゃんと勉強しろとか言ってくるやつもいるかもしれんがな、お前いっぺんヨーロッパの適当な国に突然ぽつんと置かれてみぃや。

 周り何言ってるかわからんやろ。

 

 ンで、何言ってるかわからんかったら、何回聞いても何言ってるかわからん。

 聞いてもわからんから聞こうとしなくなる。

 余計にわからなくなる。

 以下無限ループ。

 

 という具合ですね。

 

 だから、私は学校に行っても特に何もしていない。

 私の半身はそもそも学校にすら行っていない。

 

 ああ、そうそう。

 

 体増殖事件なんだけど。

 知らないうちに解決してた。

 

 なんかすっぽりはまったというか。

 なんでかわからないんだけど、これが正常だと思えるようになったというか。

 

 感覚的には、二重人格者の体が二つに分かれた感じ。

 それぞれ同じ人間のはずなのに、考え方は少しずつ違って、でもお互いの考えていることとか、知っていることとかは共有できるっていう感じ。

 

 疑問に思わなくなったことに疑問を抱こうとしたけど、アイデアロールは振るだけ損なので……。

 いつまたSANチェックが入るのかわからないし、仕方ないね。

 嫌なことからは目を全力でそむけるのが最適、はっきりわかんだね。

 

 っていうことで、実質脳みそを共有しているので、私が勉強しなくてもメ―が勉強したら私は勉強しなくてもいい。

 

 まあ、どっちも同一人物みたいなところあるからあっちも同じこと考えてるんだけどね。

 

 怠け者がっ!

 

(おまいう)

 

 はっ!脳内に直接!

 

(まめきちください)

 

 何柴犬欲しがってんだ。

 

(ダルメシアンだけど)

 

 何ダルメシアンに和の名前つけてんだ。

 

 という風に独り芝居をすることも可能。

 いや、一般的に見たら二人だから二人芝居だな。

 断じてさみしいやつではない。(ではない)

 

 こうして学校で時間をつぶしている私だが、その間メ―がなにをしているのかというと、

 

(パソコンでいろいろ調べてる)

 

 ということだ。

 

 私たちは肉体的には双子っぽいんだけど、メ―だけアルビノっていう遺伝子疾患を患っている。

 アルビノは、ただ白いだけではなく、日光に弱いのであまり外に出ない。

 うらやましい。

 いやどっちも私なんだけど。

 

 ということで、肌が弱いという免罪符があるメーは、齢7歳にして家でパソコンを扱う天才少女となっている!

 

(どやぁ)

 

 なお見ているものは、

 

(やめろ)

 

 ニコニk

 

(やめろ)

 

 こちらの言語を習得することをあきらめた(他人事)メーは、いつも日本語で検索して、日本語のページを見ている。

 

 この怠け者ぐぁあ!

 

(おまいう。っていうか私が何もしなくなったら本格的に暇になるけどいいの?)

 

 すいませんでした、許してください。何でもしますから。

 

(ん?今なんでもって)

 

 はい、何でもするので許してください。

 

(しゃーねーな~。今回だけだぞ)

 

 ありがとうございます!

 これで、私のおかげで私が救われます!

 

 ……ん?これ私の誤り損?

 まあ、いっか。

 

 というか、日本語が存在するということをパソコンを触り出してから知った。

 

 まあ、だからというか、そんなわけで、メ―にはパソコンで情報を集めている。

 もともと日本がないかもしれないと思っていたからね。

 

 そうなると、少なくともここは地球であろうことがわかる。

 グーグルアースで見ても地球は青かったし(即席ガガーリン)。

 

 ンで、だとしたら今の私の状況はどうなってんだ、ということになる。

 

 そうしてここ数年情報を私(メー)が集めた結果、大きく分けて二つの仮説を立てた!

 それが、これだぁ……。(ワントゥースリー)

 

 一つ目、私のような状況にいる人は少なくはないが、なぜか表には出てきていないだけ。

 二つ目、私だけ特別でいわゆる転生特典と呼ばれるものであるということ。

 

 はい。

 まあ、正直二つ目やろ()って感じはある。

 一つ目の、秘密結社みたいなのがあるなんて思えんくらい前世とおんなじ感じだし。

 

 そーんなことを信じるくらいなら、まだ転生という意味わからん現象にくっついてきたって考えるほうが現実的でしょ。(非現実だけどね)

 

 学園異能力ものとか好きだったんだけど、望み薄っぽいっすねぇ……。

 まあ、もし仮に異能力者が跋扈していたとしても、私たちそこまで強くないって言うね()。

 

 私たち二人で感覚を共有できるだけだし……。

 火を噴いたり、空を飛んだりできるわけじゃないし……。

 

 はぁ……。

 くれるんならもうちょっといい感じの能力をくださいよぉ……。

 

 まあ、私はこれに満足してるんだけどね!!

 

 というわけでぇ……!

 

(第一回!私たちの能力名を考えようの会~!)

 

 わーい、ドンドンパフパフ~。

 

(やっぱりここは当て字だと思うのよ)

 

 禿同。

 イメージとしては転スラとか、七つの大罪みたいな感じ。

 

(んでもって、その漢字でその読み方するのかよって感があるのがいいのよ)

 

 わかる。

 漢字だけ見たらストレートに感じるけど、読みを見たらそういう意味なのかっ!ってなる感じがいい。

 

(そうそう!ンで肝心の漢字だけど……)

 

 う~ん、ここはセンスの見せ所さんですねぇ……。

 

 ……。

 

(……)

 

 はいっ!

 

(はいルーさん速かった!)

 

 『TFT(Two For Two)』なんてどうでしょう!

 

(貴様……

 

 天才か?)

 

 ありがたき幸せ。

 

 


 

 

 

 私の娘たちは少し普通じゃなかった。

 一卵性の双子なのに片方だけ遺伝子疾患があるというだけでも驚きなのに、そのほかにも二人には不思議なことが多かった。

 

 例えば、二人はお互いに目を合わせたりしないし、何かコミュニケーションをとったりはしていない。でも、時々二人が通じ合っているんじゃないかと思うくらい以心伝心といった状況がある。

 二人が食事をするときは必ず同時に食べ終わるし、メーが怪我をしたらルーも涙目になるし、私が休日に出かけるときは、二人そろって玄関まで迎えに出てくれて同時に両足に抱き着いてくる。

 

 それから、メーもルーも言葉を発することがなかった。同年代の子が大方会話ができるころになっても、絵本すら読めなかったし、読み聞かせをしてもわかってはなさそうだった。でも、二人とも、自分たちの名前の愛称だけはわかったみたいで、何か私に伝えるときには自分の名前を言うようになった。かわいい。

 

 一応そういったこともあったから、精神科や脳外科などいろんな病院に行って、脳のCTRとかもとったりしたけど、結局原因はわからなかった。

 

 でも、それでも私は構わなかった。

 あの人が遺していったこの子たちは、どんなことがあっても私が愛情をこめて育てると決めてたから。

 

 それに、あの子たちは頭がいい。言葉はわかっていないかもしれないけど、何を言おうとしているのかは察している節がある。

 もし、このままこの子たちが言葉を覚えることなく成長するということになっても、私がどうにかする。

 幸い、私には学生の時に取りまくった資格と、あの人が遺していった財産がある。

 

 人間二人分の一生のお金を稼ぐのは容易ではないかもしれないけど、それでも私は。

 

 そう思っていたある日だった。

 

 もうすぐ小学校に入学といったある夏の日。

 最近二人が触り出したパソコンを眺めていた。現代では世界中のいろいろな映像が見れるから、二人にはそれを見るほうが楽しいだろうと思ってのことだ。

 最近は私がいないときもずっと触っている。動物の映像とかを見ているところを見たため、楽しそうで私は嬉しかった。

 

 だからこそ、一応何らかの不具合があってもいけないと思い、私のアカウントではなく子供たちのアカウントに入る。

 

 その時、私は思考が停止した。

 言語設定が変わっていたのだ。

 

 デスクトップの左上に鎮座している『ごみ箱』は私がいつも見慣れている文字ではなく、不思議な形をしていた。

 そして、その文字には見覚えがあった。今は亡きあの人の故郷の文字、そう、それは確か。

 

「に、ほんご……」

 

 私にはよくわからなかった。なぜ設定が変わっているのか。

 どうやって変えたのか。

 どうして変える必要があったのか。

 なぜ変えた言語が日本語だったのか。

 

 恐る恐る、私が教えたブラウザを開くと、それのホーム画面も日本語の設定になっていた。

 もうこれで、たまたまであるということはなくなった。

 

 パソコンの言語設定だけ変わっていたのなら、間違えて変えてしまったのだと思ったのだけれど、ご丁寧にブラウザの設定まで変えているとなると、偶然とは言えない。

 あの娘たちのどちらか、あるいは両方が意図的に言語設定を日本語に変えたのだ。

 

 わからなかった。

 あの娘たちが日本語を理解していると考えるのは難しい。私が数年にわたって教えてきて、語り掛けてきた言葉ですら覚えることができなかったのに、それを何の補助もなくあの難しい言語を習得するなど不可能だからだ。

 

 しかも彼女たちはあの人のことを知らない。

 生まれて一回もあったことはないだろうし、写真はリビングにかけてあるけど、それだけで日本語に到達することは、これもまた不可能だろう。

 

 わからなかった。

 これをあの娘たちに聞いてもいいのかどうかすらわからない。いや、聞いてもわからないかもしれないが。

 

 これは私が見つけた、あの娘たちの能動的な行動に含まれる不思議なことであった。

 

 だが、だがしかし、わたしがあの娘たちに向ける感情は変わらない。

 ここだけは変わることがないだろう。

 それこそ、あの娘たちが急におかしなことをし始めても、世界中の全員から非難の声を向けられることとなっても。

 

 私はただ、ルーリエとメーリエを愛し続ける。

 




外国で暮らしていたとしても、現地の言葉を習得できるとは限らない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。