二つに増えたとある女が現実逃避し続ける話   作:オランジェット

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第3話

(ゴフッ。

 ハァ、ハァ。

 

 や、やぁ。

 

 みんなのアイドル、メーちゃんだぞ……。カハッ。)

 バタンキュー。

 

 はい。

 

 今私は日本の空港にいます。

 

 え?なんで?と思った方も多いでしょうそうでしょう、私もそう思った。

 

 よくわからないうちに準備が済まされており、

よくわからないうちに電車に連れ込まれ、

よくわからないうちに飛行機に乗せられ、

よくわからないうちに日本についてた。

 

 何を言ってるのかわからねぇと思うが、私も何をされたかわからなかった。

 頭がどうにかなりそうだった。

 

 まあ、その道中で体よわよわ勢のメーさんは無事死亡したわけですが。

 

 ほぼずっと移動中は母上殿に抱っこされてたのに……。

 

 どっちも私なんでね。

 片方に押し付けたりなんてしちゃったりしたらもうぶちぎれる勢いでぶちぎれちゃうんですよ。

 

 だから事前に感覚を共有しておく必要があったんですね。

 

(貴様……も、道ずれだ……)

 

 ほら。執念がすごいアンデッドみたいなセリフはいてるし。

 

 ちな、私もしんどい。

 

 でも結局しんどいだけで、ルーの体はそこまでダメージを受けてるわけじゃないからギリセーフ。

 メーと同じくらいしんどいけどね、感覚だけなら。

 

(もう……無理……)

 

 あ~っとここでメー選手、体力が尽きてダウンしてしまった~!

 

 それに伴って感覚を共有していたルー選手はいささか楽になった様子だぁー!

 

 まあ、しんどいのは変わりないんだけど。

 

 それにしてもどうして日本に来たのか。これがわからない。

 私たちが日本語がわかることがばれた?だとしてもわざわざ日本に来ることなんて……。

 

 まあいっか。

 気づいてはいけないことに気づいたとき、真っ先に行うのは過去の行動への後悔。なら後悔しないためにもそれ相応の行動をしないとね。

 

 その結果が現実逃避なんだけど。

 かっこよくそれっぽいこと言ってるけど、つまるところ目を背けてるだけなんだけど。

 

 ま、気にしたら負けですよ。

 

 そんなことより、私もそろそろしんどい。

 

 そろそろどっか座ったりしない?

 

 しんどいって言ってもさっき飛行機から降りたばっかりなんだけどね。小2ボディは脆いんだよ~。

 ただでさえ公園とかではしゃぎまわったり遊んだりしてないせいで体力とか筋力がミジンコレベルなのに……。

 私の体力を1としたら同年代の子たちは10くらい。ちなみにメーは0.05。

 

 おっ、タクシーですかい。

 ありがたやー、ありがたやー。

 

 今思ったけど”ありがとう”って”有り難い”ってことで、つまり”珍しい”ってことでしょ?

 ならいっつも感謝するとき”珍しい!”って言ってるってことじゃん。

 

 ……。

 

 何言ってんだ私。

 

 タクシーのなかだし、寝よっかな。ママー、膝枕して―。

 

 

 


 

 

 

 

 なんなんだー、ここは?

 

(う、うーん)

 

 おっ、起きたっぽいっすね。おはよー。

 

(おはよー。ンでここどこ?)

 

 わからない、わからんらんらん、わからない。

 ルー、心の俳句

 

(季語はどこ……ここ?)

 

 季語は心の中にあるのでおけ。

 

(そういう意味での心の俳句ってわけね)

 

 説明させんなよっ///

 

(本当にどこだろう?寝てたからどこなのか全くわからないんだよねぇ)

 

 そうなんだよなぁ。

 っていうか、両腕に一人ずつ担ぐとかいかついな。

 

(パワー系ゴリラには見えなかったんだけど。どちらかというと眼鏡系ゴリラだと思ってたんだけど)

 

 どっちにしろゴリラなのかよ。

 なんかこの人なんでもできそうな感じするよね。

 

(わかる。あの~なんだっけ。あの、漫画のキャラ)

 

 あーえっと、あれでしょ。

 浅野先生。

 

(そう!それ!さすがにあんなチートだとは思わないけど、同じ穴のなんたらな気がする)

 

 まあ、わからんでもない。

 日本以外の国の情勢とか知らないけど、女手一つで娘二人養えるくらいお金持ってるってことは、って感じするしね。

 

(そうそう。急に「今月は50万くらいかな」とか言ってきてもおかしくなさ……やっぱおかしいわ)

 

 言えたじゃねぇか。

 

 っと、ホテルっすかね?ここは。

 

(ぽぽいのぽいですね、宿か、ホテルか。何らかの宿泊施設っぽし)

 

 っつーことはやっと終わりか!この長い旅路が!

 いやー長かった。

 

(本当に長かった)

 

 十数時間苦痛に耐え続けたやつだ。面構えが違う。

 

(よかった、本当に良かった)

 

 それは激しく同感。

 ガチで辛そうだった(かった)し。 

 

(オフトゥンだ!宴じゃーー!)

 

 祭りじゃーー!

 

 スヤァ。

 

 

 


 

 

 

  6月27日

 今日は何にもない、素晴らしい一日だった。

 

(ダウト。昨日は疲れをいやすために一日ごろごろしていたので動画を見ていただろう)

 

 動画見て、ご飯食べて、昼寝して、動画見て、寝て。

 これを日記帳に書くとしたら、起きても生きてたってとこから書かなきゃいけなくなる。

 

(どんだけなんだよ……。ちなみにどういう意味?)

 

 わからん。

 まあ、一昨日の墓参りがしんどすぎたという説はある。

 

(激しく同意する。あれは地獄だった。飛行機のつぎのプールのシャワーのつぎに地獄だった)

 

 プールのシャワー上位に食い込みすぎやろ。

 市営のプールとかだとあんまりなんだけど、学校のは特に強かったおもひで。

 

(あれホントに痛かった。今受けたら肌がはがれる自信がある)

 

 さすがにそれは草wwwwwww。

 って言えないくらい虚弱なんだよなぁ。

 ワンチャン出てきたら目玉片方なくなったりしてそうでこわい。

 

(十分あり得る)

 

 プールかぁ。別に行きたいとかは思わないな。

 プール行く時間あるなら部屋でゴロゴロしたい。

 

(多数決によりその案は採択されました。以後、アミューズメント施設への移動は禁止となります)

 

 同意の意が強すぎて法律を改定してしまいそうな勢いになってるじゃん……。

 まあ、(ルー)のほうは大丈夫だろうけど、(メー)がダメなんだよなぁ。

 

(禁止します)

 

 ……この人さてはこのまま公共交通機関のしようとかも制限して意地でも日本に住み続けるつもりなのでは?

 

(……黙秘します)

 

 図星だろ!

 まあ、私も日本から出たくないんだけど。

 いや、私も出たくないからわかったんだけど。

 

(多数決により(以下略))

 

 ………………。

 

(………………。)

 

 ………………。

 

(………………。)

 

 ………………。

 

(………………。)

 

 ッスー-----。

 

(あっ、ふーん)

 

 最近のAR技術ってすごいって話と、ちくわの中身がなんなのかって話、どっちしたい?

 

(コンクリートミキサー車あの回転量だったら絶対中のコンクリートの流動性を維持するの無理やろ)

 

 わかる。

 地球の自転も加味すると、もう少し必要だよね。

 具体的に言ったら、そばをすするときくらいの速度。

 

(やっぱりそうだよね。私もそう思ってた。そうめんではなくそばだよな。)

 

 コンクリートって時間に依存して硬度が変化するじゃん?

 

(確かにそうしたら固まらないかもしれないけど、タイムマシン必要になるよ?)

 

 のび太がいれば、最悪どうにかなる。

 つまり、万年0点をとり続けている小学生がいたらそいつがタイムマシンを作れるっちゅうことや。

 

(なるほど。しかし博士、そのような都合のいい人材が存在するのですか?)

 

 ふっふっふ。いるではないか、目の前に!

 それともその目そのものといったほうがいいかな?

 

(ま、まさか)

 

 そう、私だ!

 万年テストで0点をとり続けてきた。

 2点や3点なんてものもとったことのない正真正銘0点オンリー!

 

 私こそがタイムマシンなのだ……!

 

(そうだったのか!……!しかし待ってください博士!そうだとすれば、私は!)

 

 ふっ、優秀な助手を持つのも困りものだな。

 その懸念は正解だといっておこう。

 

 だが、私はやらねばならぬ!

 我が野望の前に一切の障害無し!

 

(映画タイムマシンになぞられて)

 

 公表上映中!

 

(ぜひ映画館まで、痛っ、ぐぉあ!)

 

 あ。

 

 え。

 

 お?

 

(へ?)

 

 ………………。

 

(………………。)

 

 ………………。

 

(………………。)

 

 あー--。

 

(は?え?)

 

 あーー、もう知ー--らね。

 

(とりあえず、円周率数えるか。円周率は超越数。私に無限をもたらしてくれる)

 

 3.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

.

.

 

 

 

 


 

 

 

 

 それは、悪夢だった。

 

 ちょうどその日は、こちらに来てしたかった夫の墓参りもできたということで、日本での働き口を探しに出ていた。

 

 貯金もあるにはあるが、それでも増やす手段を持っておかないのは心細い。

 そのため、とある塾の採用面接に来ていたのだが。

 

 それらは、突然現れた。

 それらは、いともたやすく日常を破り去った。

 それらは、あまたの悲鳴を調合した。

 

 目の前の光景を理解しようと頭を動かし始めたとき、いや、そんなタイムラグなどなしに私は走り出していた。

 

 娘たちが危ない。

 なぜこんな時に私は外に出ていたのだ。

 なぜ今日に限って娘たちのそばにいなかった。

 なぜ、なぜ。

 

 そう自分に意味のない問いかけをしながら、家の塀を飛び越え、息を潜ませ、最短で、しかし見つからずに自分たちの暮らしているアパートに向かった。

 

 急いだとしても見つかったら意味がない。

 見つからなかったとしても急がなかったら意味がない。

 

 頭の中の冷静な部分でそう考えて、最善を無意識の中でくみ上げる。

 

 学問を多数修めてきたが、やはりこのような時に冷静に行動できるという点でも勉強とはすばらしいものだと感じたが、それらに感謝するのは娘たちの安全を確認してからだ。

 

 白いロボットのようなものが空から降りてきてから10分くらいでアパートについた。

 

 息はそこまで上がっていない。

 この状態だったら、2人とも抱えて逃げ切ることも可能だ。

 

 そう考えながら階段を上がっていると、あのロボットの鳴き声のような音と壁が崩れる音が聞こえてきた。

 

 最悪の想定と、最善の希望とをごちゃまぜにして、脚をさらに早める。

 

 そうしてドアを開けて、土足で入り、いつも二人がいる寝室に行くと、メーを飲み込んでいる白いロボットと、互いを見つめあっている二人がいた。

 

 思考が停止した。

 

 喪失感が襲ってきた。

 

 後悔がにじみ出てきた。

 

 絶望が魂までを支配した。

 

 しかし、その白いロボットが、ルーを飲み込もうと動き出した時、思考を動かすことなく走り出した。

 

 ルーを抱えて、アパートの部屋から出る。

 

 そうして、向かってくるロボットから逃げた。

 

 逃げ出してすぐは、追いかけてきていた。その最中に飲み込まれたメーをどうにか救出する方法を考えていたが、いくつ目かの路地を曲がったところから追いかけてこなくなった。

 

 メーを助けられるかはわからないが、助けられるとしても、あのロボットに近づかないといけないことには変わらないため追いかけようとしたのだが、もうすでにどのロボットなのか見分けがつかなくなっていた。

 

 その後、逃げ回っていると、ある家の屋根の上で、ボーダーと名乗る団体の一人に出くわした。なんでもあのロボット兵たちを倒すために準備してきたのだという。その人にロボットを切り倒してもらいながら隣の市まで逃げ切った。

 

 準備をしていたならなんでメーを、と思ったが、それを彼一人にぶつけることは合理的ではない。感情が爆発してしまいそうになっているが、それに振り回されてルーを危険にさらすようなことがあったらそれこそ感情がなくなってしまう。

 

 避難所のようなところについて、ようやく一息ついたところで、ルーを見ると泣いていた。

 ルーをずっと抱えていたのに、気づけないほど静かに。

 

 私にはごめんねと謝りながら抱きしめることしかできなかった。

 

 




やっとワートリ要素出てきた。
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