音楽旅行譚   作:ウィリアム・セレス

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2話更新です!地の文の書き方、少しずつ慣れて来ました!


第2話:過去の断片

「それで、どこから入る?」

ーと彼が優しく語りかけて来た。彼の笑顔はまるで、乙女ゲームに出てくるような正統派なイケメンとチャラい系のイケメンを足して2で割ったような、安定感のあるイケメンだ。彼を静謐に彩るかのように、『エリーゼのために』が今も尚、流れ続けている。僕は彼の問いに答えた。

「職員室から入り込むのはどう?」と。すると彼は

「職員室で何すんだよ」

ーと、微笑みながら言って来た。そりゃそうだ。自分でもそう思ったもん。こんな突拍子もない発言でもノってくれる彼に、僕は兄のように感じた。そして彼は笑顔でこう言い放った。

「とにかく、どうにかして校舎内に入り込まないとな。夜の学校内での肝試し、ワクワクしそうだろ?」

「肝・・・試し?」

ー僕は狼狽した。僕はバイオやSIREN(サイレン)などのバケモノ系や心霊系は割と耐性あるし、恐怖や死を題材にした西洋画や音楽も大好きだ。けど実際に見るのは・・・割と怖い。中三にもなって、まるで子供みたいだなと、内心思った。そんな僕の気持ちを察してくれたのか、“彼”は

「大丈夫だって、俺が守ってやるから。ホントお前可愛い後輩だよな」

と言ってくれた。子守唄のように、さっきから流れっぱなしの『エリーゼのために』の音色に心身を委ねてしまうように、僕も“彼”に、甘えるように心身を委ねてみたい。そう思いつつ、僕は“彼”に

「ありがとう」と、優しく告げた。

「大丈夫だよ。それにしても、この学校広いなぁ」

「確かにね。体感で10分経っているのに、まだ半周しかしてないって感じ。まるで中高一貫校みたい」

ー首を傾げ、僕はそう言った。そう考えたのは、他校の友達との会話をふと想起したからだ。

 

 

 

ー僕は“埼玉中三模試”と呼ばれる、埼玉県民の中3なら、受験するべきであると言われている模試の2回目を受けた時の話だ。クラスでの嫌われ者である僕はその日、“リア友を作りたい”という願いがあった。そして、テストの全科目を終え、帰路に着くところで、勇気を振り絞って話しかけたのが、「和磨(カズマ)」という友人だった。

「ここって校庭広いよね」

「まぁ、ここは中高一貫校だし、その分広いんだろうな」

ーその男子は冷静に、驚いた様子を見せずに、学校のことを語った。僕は不思議に思った。何故なら、他校の、しかも初対面の生徒に突然話しかけられたら、普通は狼狽しながら答える物ではないのか?という考え・・・一種の固定概念を脳に宿していたからだ。僕は気になって聞いてみた。

「そういえばさ、君は僕に突然話しかけられても動じなかったよね」

「俺、誰かに話しかけられるの慣れてるからさ」

ーその子は、笑いが混ざった声でそう告げた。僕は内心驚いた。誰かに話しかけられることに慣れてるだなんて。友達に、なれそうだな。そう思った僕は、思い切って彼にこう言った。

「そうなんだ。・・・もし僕でよければ、友達になっていい?」

「いいよ。俺の名前は“和磨”。お前の名前は?」

「僕は“煌星”。よろしくね」

「よろしくな」

「次回の模試も、頑張ろ!」

「あぁ。がんばろうな」

ー僕らはそれぞれの帰路へと向かった。友達が一人出来て、嬉しくなった。

 

 

 

ーあの日のことは、鮮明に覚えてる。「他校の同学年の生徒と交流をリアルで持つ」。それは初めての経験だったし、とても楽しかった。今和磨が何をしているかは知る由もない。けど、また会える日を期待して、僕も頑張る。・・・と物思いに耽っている時だった。

「煌星くん、どうしたの?職員室の前に着いたよ」

ー“彼”は僕に首を傾げた。きっと僕は、知らず知らずのうちに黙って歩いてたんだ。僕は少し間を開けて言った。

「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」

「そっか。君の表情を見るに、楽しそうだったよ。どんなことなのか、俺に話してみてよ」

ー彼はまた、優しい笑顔で聞いて来た。僕は、家族に楽しかったことを語る小学校低学年の子みたいに、“彼”に語った。『エリーゼのために』が、ゆったりとした居間での時間を作り出すために流れているように感じる。

「他校の子と友達に・・・楽しかった?」

「うん!とても楽しかったよ!」

ーと僕は子供のように伝え、“彼”はそれを嬉々として聞いている。自分のことのようだ。まるで。“彼”の今の表情は、清廉潔白な“お兄ちゃん”という感じだ。・・・“彼”の為に、僕は・・・。

ーふと過去の忌々しく、葬ってしまいたいトラウマを思い出したのか、脳内で蠢く黒い霧が、濃度を上げてしまった。それ故か、僕は自然と俯き、頭を抱えてしまっていた。すると、僕を案じた“彼”が

「煌星くん、大丈夫?何か、あった?」

「・・・嫌なこと、思い出しちゃってさ。大丈夫だよ・・・」

「・・・そうなんだ。嫌なこと、また思い出したら言えよ。俺が、慰めてやるからさ」

ー“彼”は、僕の頭を優しく撫でながらそう言った。他者からのこんな優しさに触れたのは、いつぶりなのだろうか。あるいは、初めてなのだろうか。心なしか、黒い霧の濃度が少し元に戻った気がする。僕は、彼を安心させる為に

「さ、学校内に入り込んでみよ!ちょうど、職員室の扉も開いてることだし!」

と、元気よく告げた。『エリーゼのために』のような、静謐な曲には不相応な声であった。けど、曲と“彼”の優しさのおかげで、元気を取り戻せた。そのことを、示したかったのだ。安堵した“彼”は、一呼吸置いて

「元気になってよかった。さ、入っていくぞ」

ー“彼”は嬉々とした声で告げた。夜の学校内、何があるのかなぁ。二人きりでの肝試しが始まると思うと、すごく楽しみだ。

 




話がやっと進みました・・・初めてのことで、動きながらその人の心情描写を描くのってどうやればいいかまだわからないんですよね・・・(笑)
そこの部分は煌星くんの回想を挿入しておきました。慣れたら動きの部分を徐々に鮮明にしていきたいなぁとは思ってます!

今回も読んでいただき、ありがとうございました!次回もお楽しみに!


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