この邪神に一目惚れした愚か者に祝福を!   作:ウォルバク教徒

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bucky5148様
ヤッハーさん様
高評価ありがとうございます!

碧色って緑っぽいイメージ(個人的に)なんですが、青色のことなんですよね。具体的にはアクアマリンみたいな色です。
ちなみにその碧色の瞳を持つ主人公は今回まさかの出番なしです。お兄さん許して〜!


この紅の檻で追憶を!

 

 ──それは、いつもの何の変哲もない朝の光景。担任の教師が、名簿を片手に出席を取る。

 

「あるえ! かいかい! さきべりー!」

 

 担任に名前を呼ばれ、次々と生徒達が返事をしていく。

 

「めぐみん!」

 

「はい」

 

 生徒数が11人しかいない小さな教室では、すぐに私の順番が回ってくる。そこでふと、『名前で男女の区別つかなくね?』などと抜かした私の幼馴染がクラスの女子達にふくろだたきにされていたのを思い出す。

 

「ルド! ……ルド? めぐみん、アイツはどこだ!?」

 

「いつものですよ」

 

「全くアイツは……よし、ルド以外は揃っているな」

 

 私の幼馴染であるルドは、よく学校をサボってモンスターを狩りに行く。それでも担任が怒らないのは、忌々しいことに、テストの時だけは学校に来て高得点を取るからだ。

『普段は不良だけど実は成績優秀……イイネ!』といった具合に黙認されている。悔しいが、私も激しくそう思う。

 でも彼はハーフだからなのか、普通の紅魔族とは違う感性を持っており、これを聞かされた時は困惑していた。

 

「では……」

 

「せ、先生! 私の名前が呼ばれてません……」

 

 名簿を閉じて授業を始めようとする担任に、私の隣に座る子が、泣きそうな顔で手を挙げた。

 

「ん? おおっ、すまん! そういや、1人だけ次のページに掛かっていたんだったな。悪い悪い……では、ゆんゆん!」

 

「は、はい!」

 

 セミロングの髪をリボンで束ねている優等生といった感じの女の子。ゆんゆんが、少し赤い顔で返事をした。

 彼女は純血の紅魔族なのに感性がルド寄りなので、里では変人扱いされている。

 

 

 

 

 

✡⃝✡⃝✡⃝

 

 ──ここは『紅魔の里』と呼ばれる紅魔族の集落にある学校。その名を『紅の檻(レッドプリズン)』。これを初めて聞いたルドは、思わず顔を両手で覆い天を仰いだ。

 

 ある程度の年齢になると、里の子供はこの学校で(紅魔族にとって)一般的な知識を身に付け、12歳になると里で冒険者カードを発行して上級職の大魔術師(アークウィザード)となる。そして魔法の修行が始まるのだ。

 ここでは魔法を覚えることが即ち卒業。つまり、学校に通う生徒達はまだ誰も魔法が使えない。それはルドも(少なくとも表向きは)例外でなく、彼は鍛錬も兼ねて、主に戦闘民族ベルセルグ貴族の血統であるが故の高い身体能力でモンスターを撲殺してレベルを上げている。

 明らかに魔法と思わしき力を使えるのに、鍛錬と称して危険なモンスターと近接戦闘を行うルドの姿に、同級生もいくら紅魔族といえどドン引きした。

 

 そして、そんな(紅魔族にとって)一般的な知識を身に付けるための授業はどのようなものなのかと言えば……

・おかしな通り名(音速のソニック等)を防いだり、場の空気を熱くするための語彙力を養う国語

・眼帯などの(紅魔族にとって)カッコいいワンポイントアイテムを作る家庭科

・魔道具の作成

・戦闘で最も大切な格好良さと戦闘前の台詞

・不利な状況を覆すフラグの立て方や、絶対言ってはいけない死亡フラグ

・モンスターを教師が弱らせ生徒がトドメを指してパワーレベリングをする『養殖』

 と、こんな感じである。

 

 ルドは魔道具の作成とテストの時だけ出席している。前者はこのふざけた学校にしては珍しく将来役に立つから、後者は『スキルアップポーション』を貰えるからだ。

 スキルアップポーションは飲めばスキルポイントが1増えるポーションで、里では生徒たちにポンポン配られているが、里の外、つまり普通は数千万エリスもする。

 この学校では、普段の授業と定期的にあるテストで良い点を取ってスキルアップポーションを一定数集め、『上級魔法』のスキルを取得することで1人前と認められる。

 紅魔族のヤバさはここにもあり、普通はレベルを数十は上げて上級魔法を取得するところをレベル1で取得し、レベルを上げて得られる本来のスキルポイントは他のスキルに注ぎ込むのだ。これによって、そこらの魔法使いを遥かに凌ぐステータスを幼少の頃から持っている紅魔族は、さらにぶっとんだ強さになる。

 

 

 

 

 

✡⃝✡⃝✡⃝

 

「それではテストの結果を発表する。 3位以内の者にはいつも通りスキルアップポーションを渡すので取りに来るように。では、まず3位から……ゆんゆん! 」

 

「あ、は、はいっ!」

 

 また顔を赤くしているクラスメイトを横目でちらりと見て、私は窓の外に視線を戻す。

 

「流石は族長の娘、よくやったな。次も頑張る様に……あぁ、そうだ。ルドのところに持っていってやれ。それでは2位……めぐみん!」

 

「はい」

 

 よく毎度ゆんゆんは断らないなと、本当にそう思う。

 ルドには両親がいない。当の本人は全く気にしていないようだが、行方どころか生死も不明。そんな彼は族長の家、つまりゆんゆんの家で世話になっていた。だが今は違う。

 彼はモンスターを狩って自分で生活費を調達しながら、猫耳神社で邪神の眷属を集めている。

 今では彼の『怠惰と暴虐の邪神、その眷属が住まう隠れ里って……超イケてないか……?』という口車に乗せられて、里中の人間が邪神の眷属になっている。

 といっても邪神認定したのはあの悪名高きアクシズ教徒で、実際は普通に女神であるため恩恵はあれど害はないので問題はないのだが。

 

 そんなことを思いつつ隣を見ると、ゆんゆんが悔しそうな表情でこちらを見ていた。だが、そんな目で見られても困る。

 担任はゆんゆんに対し『ルドに持って行ってやれ』と言った。3位と2位が呼ばれた今、即ち1位は彼ということなのだから。

 それに、ここまであからさまに表情に出しはしないが、私だって悔しい。

 

 担任が他の生徒に激を飛ばす中、私はポケットから1枚のカードを取り出した。冒険者カードと呼ばれるそれには、職業の欄に『大魔術師(アークウィザード)』と書かれている。

 Lv1、SP45、そして習得可能スキルの欄には『上級魔法(SP30)』という文字が光っている。私はその下に暗く表示されている『爆裂魔法(SP50)』という文字に指で触れる。

 紅魔族は上級魔法を覚えることで1人前とされるが、私の覚えたい魔法はそれじゃない。

 フードを被っていた赤髪の女性。顔は朧げ、名前を聞いたのかすら覚えていないが、あの日見た究極の破壊魔法が脳裏に焼き付いて離れない。

 絶対に爆裂魔法を覚えたい。そしていつか、あの人に私の魔法を見てもらうのだ──

 

 




ウォルバク様をなるべく登場させたくはあるのですが……書きたいことは溜まる一方だし、他のキャラも活かしていきたいしで、どうなるかは微妙なところです。序盤は紅魔の里だし、主な活動拠点はアクセルだしで、王都にあるウォルバク教会の本山にいるウォルバク様と会えるのは後になりそうですね。
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