この邪神に一目惚れした愚か者に祝福を!   作:ウォルバク教徒

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高評価ありがとうございます!

誤字報告をして頂いた皆様も、ありがとうございます! 誤字報告の履歴をどう見ればいいか分からず、名前を挙げて感謝を伝えられないことに対しお詫び申し上げます。

今回の話は紅魔族組の日常兼関係紹介みたいなものです。次回もかな?


この紅魔の学生に日常を!

 

 1時間目の授業が終わり休み時間に入ると、バン! と勢いよくめぐみんの席に両手が置かれた。

 

「めぐみん! わかってるわね?」

 

 声を掛けたのは、族長の娘にして文武両道の優秀な学級委員、(紅魔族からすれば)変人のゆんゆんだ。

 

「いいですよ。ちなみに、今日の私の朝ご飯はなんですか? もうお腹がペコペコで……」

 

「そ、そうなの? 今日のおかずは私が腕によりをかけて作った……って違う! どうして私が負けることが前提なの!? きょ、今日こそは絶対に負けないから! 族長の娘として私が勝ってみせるから!」

 

 ゆんゆんはそう宣言してめぐみんの机の上に弁当箱を置いた。めぐみんは代わりに昨日手に入れたポーションを机の上に置く。

 

「希少なポーションと弁当なんて本来なら賭け金として釣り合いません。今日も私に勝負の内容を決めさせて貰います。」

 

「わ、分かってるわよ!」

 

(なんてちょろい)

 

めぐみんは心の中で悪どい笑みを浮かべながらそう呟いた。

 

「では、勝負の内容は次の発育測定で。どちらがよりコンパクトで環境に優しい女かを競うということで……」

 

「ズルいズルい!! そんなの私じゃ絶対めぐみんに勝てないじゃない!!」

 

「ぶふっ?!」

 

「そこの脳筋オッドアイ!! 私の体型に対して言いたいことがあるなら聞こうじゃないか!!」

 

 脳筋オッドアイ。本人は否定するだろうが、つまりルドだ。今日は健康診断があるから……というのは建前で、幼馴染2人が友達を作って仲良くやれているのか確認するために珍しく学校に来ていた。

 先のやり取りを見ればわかる通り、めぐみんの性格はかなりアレなのだ。長い付き合いのルドはその分だけ割を食わされているので真に理解している。だが、決して悪いやつではない。父がイカれた魔道具しか作らないせいで日々貧困に喘ぐ幼馴染が、自分が里を出たせいで野垂れ死にましたなどと聞かされては流石に困るので、養ってくれそうな人柱(ともだち)を探しているわけだ。ゆんゆんは紅魔族的には変人だが、一般的に見ればボッチを拗らせただけの少女だし、魔法も普通に習得しようとしているので、めぐみんと比べればそこまで心配していない。

 だが、めぐみんに関しても杞憂かもしれない。めぐみんはゆんゆんと親友を越えて百合百合しているとスパイ(あるえ)から聞いてるからだ。まあ、名乗りの口上で自らの発育を公言する上に、作品が妙にエロいムッツリスケベと化した小説家志望の妄言である可能性も否定できないが。

 

「お前、自分で言ってて悲しくならないのか? なぁ、コンパクトで環境に優しい女。」

 

「ルド、今すぐ私の背中に話しかけるのをやめてください。でないと本気でキレますよ?」

 

「すまん、どっちが正面なのか俺には判断がつかなくて。キレキレの毒舌をぶちかましたゆんゆん、教えてくれ。」

 

「えっ?! えっと、多分……今ルドの方を向いてるのが、正面……だと思うよ?」

 

「なんで自信なさげなんですか!? ルドと組んで報復とは、その胸とは違って器が小さい上に汚いですよ!! だからあなたはいつまでたってもボッチなんです!!」

 

「と、友達が少ないのは関係ないでしょ?!」

 

 ルドはめぐみんとゆんゆんが百合百合しているのを横目にしつつ、この不毛な争いを根元から消し飛ばすかのようなサイズを持つクラスメイトの元へと歩き出す。

 

「誰が百合ですか! 訂正を求めます!!」

 

 めぐみんをスルーしつつ、ルドはポーションをあるえに差し出す。2人はルドが百合`sの夫婦漫才で笑うか否かを賭けていたのだ。

 

「どうしたんだい? いきなりポーションなんて差し出して。あぁ、さては、2人がくんずほぐれつしているのを見て興奮してしまったのかな? それで随一の発育を持つ私の元へわざわざやって来て貴重品を差し出したと……なるほど、仕方ないね。ただ、ここでは人目があるから、流石に私と君の仲と言えど恥ずかしい。みんなが診断されている間に空き教室に……」

 

「わああああ!! わあああああああ!!!」

 

「あ、あなたたちは、一体ナニをおっぱじめるつもりなのですか?!」

 

 今日が健康診断の日であり、普段から2人のやり取りを観察しているあるえが一本取った形になる訳だが、あるえはわざとらしくしらばっくれてそう言った。2人は顔を真っ赤にして目を同色に輝かせ、ルドの背中に突撃し、ルドは面倒そうな顔で成されるがままになっている。

 これはルドの個人的異世界七不思議(7つだけとは言っていない)の1つだが、何故か紅魔族は感情が高ぶると瞳赤くが光る。謎である。

 

「オイむっつり共、その妄想はこの変態作家の1人遊びだ。興奮して目を光らせるのは勝手だが、俺を巻き込むな。」

 

 服が引っ張られているのを鬱陶しそうにしながら冷たく言い放つルドだが、これには飛び火したあるえも黙ってらいられない。

 

「誰が変態作家だって? 冗談はよしてくれ。我が名はあるえ、紅魔族随一の発育にしてやがて作家となる者。」

 

「でもお前ベッドの下とかいうテンプレすぎる場所にHなほn「それは参考資料だからああああああぁぁぁ!!!!!」うるせぇ!」

 

 全く、一体ナニを参考にするのか。ルドがそんなことを考えていると、またしても瞳を赤く光らせためぐみんが問いかける。

 

「あ、あなたは、なんであるえの部屋の詳細を知っているのですか? まさか本当に……」

 

「は? めぐみん、それどういうこと? もう1回言ってくれる? ねぇ、ねぇ、なんで後ずさるの? 私、そんなに難しいことを言ってるのかなぁ? ねぇ! どうなの!?」

 

 ガタッ! と大きな音を立てて座席から立ち上がるゆんゆんは、目を爛々と輝かせてめぐみんに迫る。

 

「ヒェッ……ルド! 可愛い幼馴染を助けてください! ゆんゆんの目からハイライトが消えています! 」

 

「ははっ、ワロス」

 

「貴様ァ!!」

 

「なんで私じゃなくてルドと話してるの?」

 

「あっ……」

 

 普段からエネルギーの節約と称して体育をサボるめぐみんでは、残念ながらゆんゆんに抵抗するのは不可能だ。墓穴を掘った自覚はあるが、だからと言って事実を発言しただけの自分が責められるのは納得がいかないめぐみんだがしかし、ヤンデレの気配を漂わせつつある親友に油を注ぐわけにもいかず、万事休すかと目をつむる。

 そんな時、まるで天から救いの手が差し伸べられたかのように、教室の扉が勢いよく開かれた。

 

「お前らは何をやっているんだコラ! 早く移動しろ!」

 

 誰も幸せにならないやり取りをしている上に不穏な空気を漂わせていると、どうやら健康診断は始まりそうになっていたらしい。担任が軽くキレてこの場は解散となった。

 

 

 

 

 

✡⃝✡⃝✡⃝

 

 場所は図書館。魔法使いを多く排出する(というか魔法使いしかいない)紅魔の里の学校だけあり、ここには相当な数の本がある。ルドも昔からかなり世話になっているくらいだ。まあ、大半は真偽不明の怪しい話や、なんの役に立つかも分からないハウツー本なのだが。

 ルドがここに来た理由だが、特に無い。幼馴染が珍しく1人で図書館に来ていたので、なんとなく寄っただけ。だが、それは結果的に正解だったらしい。

 

「うーん……」

 

 うなりながら熱心に本を読むゆんゆんの傍には、いくつかの本が積んであった。

 

『読むだけで友達ができる禁断の魔導書』

『タニシですら社交的になれる本』

『友達がいない? なら、悪魔を呼べばいい』

『植物にも心はある』

『魚類とでも友達になれる本』

『ゴブリンだって会話はできる』

 

 ルドは思わず両手で顔を覆い、天を仰ぐ。よく見ると、当の本人は目をキラキラさせてこれらの本を読んでいた。

 

(あぁ……駄目だコイツ……早くなんとかしないと……)

 

 ルドは、ゆんゆんに向かって歩き出した。

 

『せめて、哺乳類にしないか?』

 

 そう苦言を呈すために。

 

 

 

 

 

✡⃝✡⃝✡⃝

 

「おう、らっしゃい! 何が欲しい? お前さんには、そうだな……この巨大な大剣なんてどうだ? 大斧とか、ハンマーなんかもあるぜ?」

 

「か弱い乙女になぜそんなゴツイ武器を持たせようとするのですか? そもそも私達は魔法使いですし、そんな大きい武器なんて必要ないのですが。せめてナイフとかを……」

 

「華奢な女の子がデカイ武器を振り回すのがいいんじゃないか! ギャップだよ、ギャップ」

 

「どこの世界にそんな女の子がいるんですか……」

 

 そもそも、魔法使いの里に武器防具の専門店があること自体がおかしいのだ。せめて、杖でも作ればまだ需要はあるだろうに……

 

「ゆんゆん、一体なぜ私をこんなところに連れてきたのですか?」

 

「ここで小物を作り始めたって聞いたから……」

 

「小物なら、そこにあるじゃねぇか。異様に長い剣だとか、複雑な形をした武器しか好まない紅魔族には不評なんだけどな」

 

 鍛冶屋らしく大柄な店主が腕を組んだまま顎で店の隅を指す。確かにそこには、小物があった。

 

「……世間一般では、小さな武器ではなく、ファンシーなアイテムのことを小物と言うのですが」

 

「そんなこと言われてもよ。ウチは客が来ねぇから、こんな物でも扱わねぇと商売あがったりなんだ。」

 

 店を出す土地を間違っているのだと思う。

 

「まっ、俺だって大魔法使い(アークウィザード)の端くれだ。魔力をふんだんに使って特殊な炉を操り、上質な武具を作ってる。ファンは結構いるんだぜ? 名前は出せないが、大貴族のお嬢様ですらウチの鎧を愛用してる」

 

(どこのお嬢様が鎧を愛用するのか……)

 

「とはいえ、最近は小僧と魔法武器の開発に勤しんでるからそこまでじゃねぇが……お? よく見りゃ嬢ちゃん、まさに持ってるじゃねぇか」

 

「へっ?」

 

 声をかけられたゆんゆんが、店の品物である銀色の短剣を抱えながらキョロキョロと自分を確認し……そして最終的に、赤い宝石の埋め込まれた銀色の指輪に目が止まった。

 

「これ、ただの指輪じゃなかったの……?」

 

「ルドから指輪……まさか貴方たちがそこまで進んでいたなんて……」

 

「ち、違うから! ちょっとした効果のある魔導具の試作品だって言われてたのよ!」

 

 ゆんゆんは慌てて弁明するが、鍛冶屋の男は不思議そうな顔をしていた。

 

「ちょっとした…? 確かに試作品であるが、結構すげぇぜ、そいつは。効果も制作費もな。魔力を流して、指輪に短剣を刺してみな」

 

「刺す? 危ないんじゃ……えっ?!」

 

 恐る恐る短剣を近付けると、なんと短剣は指輪に吸い込まれてしまった。

 

「もっかい魔力を流すと魔法陣が目の前に出てくる。そこに手を突っ込んで引き抜くと……」

 

「おお!!」

 

 思わずめぐみんは声を荒らげる。だが、それもそのはず。魔法陣から引き抜いたゆんゆんの手には、先に吸い込まれた銀色の短剣が握られていたのだ。紅魔族の感性に突き刺さる、とてもカッコイイ演出である。

 

「モンスターには、打撃じゃないと倒せないとか、そういう厄介な奴等もいる。そんなのと遭遇した時に、これの出番ってわけだ。後は街中で敵に襲われた時とかな。咄嗟に起動して武器を取りだし応戦できる。ただし、さっきの引き抜く形でしか中に入れたモンを取り出せねぇからな。それに3個までしか物を認識しねぇ。そこんとこだけ気を付けろよ?」

 

 ちなみに、試作段階で打ち切られたのは費用対効果がよろしくないからだそうだ。

 

 

 

 

✡⃝✡⃝✡⃝

 

「らっしゃい! 紅魔族随一の我が喫茶店にようこそ! 何にするんだい?」

 

 ちなみに、ここは紅魔の里"唯一の"喫茶店である。

 

「カロリーが高くて腹持ちの良い物をお願いします」

 

「女の子の注文の仕方じゃないわよ!? あの、私は店主さんのおすすめのもので……」

 

「俺は……そうだな、闇に染まりしガトーショコラで」

 

「はいよ! 今日のおすすめは『魔人に捧げられし子羊肉のサンドイッチ』と『溶岩竜の吐息風カラシスパゲティ』だな!」

 

「か、カラシスパゲティで……」

 

 真っ赤になったゆんゆんの顔を見て、ルドは言う。

 

「あのなぁ、ゆんゆん。確かにここのメニューはイカレてるが、いい加減に慣れろよ。」

 

「絶対に無理! ……ところで、ルド。友達同士で喫茶店に集まったら、どういう話をするの?」

 

 ルドは困惑した。前世では、喫茶店なんて小洒落たところで友達と集まったことがない。そもそも自分以外は女子なんて状況にもなったことがない。

 

「さぁ? なんでもいいだろ。」

 

「それじゃあ……ねぇ、めぐみん。聞いてもいい?」

 

「なんですか? 奢ってくれた恩があるので、大抵の事なら答えますよ。私の弱点とかですか? 今の弱点は甘いものです。特に食後のデザートですね。」

 

「そんなこと聞いてないから! それに、どこが弱点なのよ。いつもモリモリ食べてるじゃない」

 

「甘い物は乙女の敵って言うじゃないですか」

 

「ふっ」

 

 思わず鼻で笑ったルドに対し、めぐみんは身を乗り出して問い詰める。

 

「……なんですか? 言いたい事があるならハッキリ口に出してください。」

 

「乙女心なんてとっくの昔に素手で絞め殺してるだろ? 今さら気にしてどうするよ」

 

「えぇ、えぇ、そういった失礼な事を口走る輩ごと絞め殺してきたので、気にしたこともはありませんね」

 

「運動能力クソザコで体育もサボってるくせに誰かを絞め殺せるのか? 後ろから不意打ちしても、ロリっ子がおんぶされてるようにしか見えないだろ」

 

「ぶっ殺してやる!!」

 

「ちょっと! こんなところで暴れないで!!」

 

 ──しばらくして。

 

「それで、なにが聞きたいんです?」

 

「めぐみんは、好きな人とかって、いる?」

 

「ゆんゆんが色気づいた!!」

 

 勢いよく立ち上がっためぐみんに、ゆんゆんは慌てて言った。

 

「ち、違うから! 本に書いてあったの! ほら、普通は友達と恋バナをするものなんでしょ!? そういうのに憧れてただけだから!」

 

 ルドは驚いた。あの地獄ですら生温いと思えるラインナップの中に、そんな普通な事が書いてあったのかと。とても信じられない。この世界で一部の野菜が飛行すると知った時以来の衝撃である。

 

「……本当にそれだけですか?」

 

「……うん」

 

「まぁ、いいです。それで、あなたはどんなタイプの男性が好みなんですか?」

 

「えぇ?! 」

 

「するんでしょう? 恋バナ。ちなみに私は、甲斐性があって借金なんてもっての外。気が多くなく浮気もしない。常に上を目指し日々の努力を怠らない。そんな誠実で真面目な人がいいです」

 

 ゆんゆんが目を白黒させている間に、めぐみんはアッサリと答えた。しかし、ゆんゆんはそれを(いぶか)しむ。

 

「めぐみんは、意外と優しかったり面倒見がいいところもあるから、その真逆でどうしようもなくダメな人に引っ掛かりそうな……痛い痛い! 冗談だから!」

 

 なんだか現実味のある指摘をしたゆんゆんに対し、めくみんは有無を言わさず襲いかかった。しかし、両親を見る限り、めぐみんも実際にそうなりそうな気がする。ルドはそう思ったが、今はガトーショコラを味わっていたので何も言わなかった。

 

「あなたはどうなんです?」

 

「俺よりゆんゆんに聞けよ。言い出しっぺだろ」

 

「どうせゆんゆんは黙って話を聞いてくれる人がいれば満足ですから、面白くもなんともないです。もしくはあなたがタイプでしょう?」

 

「ひ、酷い! っていうか違うから! ルドとはそんなんじゃ……」

 

(まあ、私がその日あったことを話すのを、傍で静かにうんうんって聞いてくれる優しい人がいいけど……けどルドが嫌いってわけじゃなくて、むしろその逆で……って違う!)

 

 ゆんゆんが頭を抱えて小声でうなっているのを横目にしつつ、ルドは少しだけ思考に耽ける。そして答えた。

 

「獣耳が似合うスタイルのいい女。ポニーテールとか黒タイツも好きだな」

 

「サラッととんでもない最低発言をしましたよこの男。外見の占める割合が100%じゃないですか。というか、この子はそういう好みを聞いている訳では無いと思いますよ?……なんですか」

 

 唐突に、フォークを静かに皿に置き、真面目な雰囲気を醸し出したルドに釣られて、思わずめぐみんは姿勢を正した。

 

「そうだな……強いて言うなら、一緒にいてあくびが出るような人、かな」

 

「なんですかそれは。つまらない人ですか?」

 

「違う。出会うまでより、出会ってから死ぬまでの方が圧倒的に長いんだ。人生、一緒にいてそれくらい気が抜けないと……ってことだ。その点、お前らといると溜息ばかり出て困る」

 

「わぁ……ロマンチック」

 

「……えぇ、最後の一言は余計でしたが、確かにいいことを言ったと認めざるを得ません」

 

 穏やかな昼さがり。その後3人は、取り留めのない会話をしながら家に帰った。

 

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