魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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stage.10『風紀活動開始!』

 

―――放課後。来て欲しくなかった時間がやってきたが、いい加減出なければなるまいということで、亀が甲羅から首を出すかのように、お気に入りの『ちっひー』の曲再生をやめて動き出す。

 

「行くか」

 

「別に連れションよろしく連れ添わなくてもよくない?」

 

「2科生が一人でいることに心細いんだ」

 

嘘くさいと想いながらも啓太も動き出すことにした。

別に抗弁することでもないと想いながら、先日に掃除をした風紀委員会本部へと赴く。

 

そして赴いた先で、『ちっひー』の『永遠の花』を再生しつつ、唯一のアニメ版封○演義のOPを聴こうと決意する。

 

「いや、覇穹も俺はアリだと思う。あれだけだぞ。当時に流行ったビジュアル系よろしくな楊戩の半妖態が見れるのは」

 

「うん。自分を自慢しているようにしか聞こえない」

 

そんな会話をしながら風紀委員会に着き、適当な席に着席……。

 

遠巻きに見ている先輩諸氏を感じながらも気に入りのプレイヤーを起動。司波達也は、何かを読むようだ。

 

ネクロノミコンではないだろうと想いながらも、自分の世界に没入。この時間だけが、啓太にとって安らぎだ。

 

太陽系世界最強の大魔法使いも―――。

 

『歌はいいね。リリンが生み出した文化の極みだよ』

 

―――などと、浜辺で『おいらはドラマー』を歌いながら言ったほどだ。

……選曲がおかしいが、あえてツッコまない。そして二度と会いたくない。しかし、会わざるを得ない。

 

何故ならば―――。

 

(ヤツは……俺に関わらざるを得ないからだ)

 

その一方で関わりたくない相手が、司波達也と自分に絡んできた。

 

あえて何も言わない。沈黙は金なりということである。

相手は司波達也だけがやっていればいい。

 

しかし、そんなこちらの無視した態度に業を煮やして、詰め寄ろうとした瞬間、委員長がやってきた。

 

どうやら音楽試聴の時間は終わりだ。

 

そして、渡辺風紀委員長から風紀活動の説明が為される。

 

要点をまとめれば―――。

 

・今日から一週間は部活勧誘期間。各部活は激しい勧誘を行う。

・その際に学内にいる間、教務部・備品部にあずけるCADは各人に返還。

・それを用いたデモンストレーション勧誘。

・しかし、それを良からぬことに使うことが多くある。

・その抑止の為に、風紀委員は実力行使も辞さない態度で混乱を終息させるべし。

 

「そして今年は新人の補充も間に合った。紹介する。1−A 森崎駿と1−E司波達也、同じく1−E 浦島啓太だ」

 

なにか言われたわけではないが立ち上がることで、己が何者であるかを示す。ちなみに言えば司波と浦島がどちらかは、『VRマーカー』で名前を表示することで区別を着けていた。

 

紹介を終えると、やはり実力に疑義を持たれるのは2科生の宿痾か。まぁ啓太としてはどうでもいい。

 

実力なんてのは、いちいち披露するものではない。

 

そう思いつつも、摩利の一喝で疑義の声は収まる。

少し前の校門前の騒動は、どうやら伝わっていないようだ。

 

ともあれアレコレとルールを知っている先輩方が散っていくと、一年は色々と準備や他の前説を受ける。

 

「これが録画機器だ。巡回中は音楽を聞くなよ浦島」

 

「了解しました」

 

聞くつもりは無かったが、それでも音楽プレイヤーは持っていく。録画用のレコーダーと干渉しないところに入れておく。

 

「そして、これが腕章―――風紀委員としての証明だ。無くすなよ」

 

少しだけくすんだそれは、代々様々な人間が着けてきたのだろう―――当然、紋なしの人間が着けるのは初だろうと、皮肉げな想いをしつつも準備は完了する。

 

司波達也は、委員会備品のCADを使う様子。その自慢げな『お宝鑑定団の鑑定士』のような文言を右から左に受け流しつつ、自分も『偽装』のために魔法発動体ぐらいは持っておくべきだったかと思いつつも、とりあえず自分の実力に関してはアレコレ言われないようだ。

 

と想っていた時に、個人端末に『連絡』が入った。確認を取ると確かに『本人』だ。

 

(まぁ数は幾つかある。いつまでも『保存』が効くものではないので、やってやるのも問題ないが)

 

委員長経由ではないところに、少しの悪だくみを感じるのであった。

 

そうして、委員長も少ししたらば取り締まりに出るという言葉を聞いてから外に出ることにしたかったのだが―――。

 

「おい」

 

別に自分に掛けられた言葉とは思えないので無視する。

司波は律儀に対応するようだが、面倒なので対応役を司波に任せて、『入り』と『抜き』が実にしずやかな『連続縮地』で外に出るのであった。

 

「やる気は無いが―――ご依頼とあれば、こなさないわけにはいかないか」

 

そんな独り言を言いながら『十文字克人』(実家のご贔屓さん)の依頼はこなすのであった。

 

 

そんな超速での移動をした啓太を見送った2人は……。

 

「お、お前たちは何なんだよ!? なんでこんなことをCADも無しに!!!」

 

「アレと同類にするな」

 

喚いて混乱する森崎にげんなりしつつも、あの縮地とかを軽々と使う浦島―――色々と頭を痛めつつも、達也もエリカとの合流へと急ぐのだった。

 

 

 

委員長の言葉通りに、確かに各部活がテントを出して、積極的に部員を誘致しようとしている。

 

当然だが、魔法競技と思しき名前の部活は紋がある生徒に積極的に声掛けをしている様子。ある意味ではこういう時に、これは意味を持つのかもしれない。

 

(まぁどうでもいいのだが)

 

この学校では唯一の外様である啓太は、そういうのに乗れない自分を認識しつつも、流れの中で『異様』を感知するべく動く。

 

魔法師と違いマギステルや気功使いなどはESP―――超感覚知覚を備えており、様々なことを『読む』ことに長けている。

唯一読めないのは、場の空気ぐらいだろうか。

 

落語のようなオチを着けつつも、近辺の人間の『気分』。『特定の魔力』を感じ取るべく、アンテナを伸ばす。

 

こういう場において、一番悪いのは火事と喧嘩は江戸の華よろしく、何かを焚き火に動き出すことだ。

 

見学者よろしく赤毛の子。麻呂眉が特徴的な女子に対して『意』が向けられる。どうやら『成績上位者』であり、イギリスとのハーフであることを知った上級生が動き出そうとしている。

 

付き添いの一人もいないので、組しやすいと想ったのか、スピードシューティング部や、何かの銃撃系統の魔法競技部活が、るんるん気分で歩いていた女子に殺到していく。

 

もみくちゃになるとまでは言わないが、少々強引な勧誘なので―――。

 

「風紀委員の巡回です。強引な勧誘行為は止してください。そちらの一年女子を部活に勧誘したければ、懇切丁寧に説明をすることで部の魅力をアピールしてください」

 

「ごめんなさい! わたし乗馬部に行きたいんです!!」

 

どうやら最初から目的地を決めた徒歩のようだった。しかし、そこであきらめないというか、せめて乗馬部の見学をした後によろしく、時間を取らせないからとでも言っておけば、まだ印象は良かったのだが―――。

 

「いいや! 明智さんには我が部に入ってもらう!!」

 

「いいえ!! 英美さんには私達の部の魅力を知ってもらうわ!!」

 

なんでだよ!? と言いたくなる文言のあとには―――。

 

「助けて風紀委員さん!!!」

 

明智英美(仮称)という女子が、啓太の後ろに隠れるのであった。

 

まぁこの調子では、簡単に乗馬部への道を譲ってくれないだろう―――そう想いつつも……。

 

「2科生で風紀委員だと!?」

 

「生意気な騎士気取りが!!!」

 

「えっ―――ちょっ、待って! その2科生は!!」

 

やる気満々で魔法の読み込みを開始する面々。そして啓太に気付いた人間とに分かれるも―――。

 

「攻撃行動及び攻性魔法の使用を確認。現行犯だな」

 

こちらを穿とうと放たれた魔法の殆どは、あっさり消失する。啓太の張った陣を破れずに、霧散する魔法の全て。

 

「――――!」

 

「魔法の射手・戒めの風矢!!」

 

驚いた連中。そして魔法を使用した相手に『拘束術』が放たれる。

 

「ウソっ! サギタ・マギカ!! 風紀委員さん、マギステルなの!?」

 

そんな啓太の術行使に、後ろの明智が疑問を呈する。

 

それはともかくとして、放たれた矢は拘束の布となりて、相手の身体の自由を奪った。

 

「これは!?」

 

「う、動けない!!」

 

地面に基点を打つことで張力を発揮した拘束の布は、相手を行動させない。

 

総勢8名もの魔法競技部活の連中の所業は、既に先方に送信済み。

 

あとは―――。

 

「まぁ白洲で裁きを受けてくださいな。発動」

 

瞬間、8名の1科生たちの中心に『札』を投げつけて、そして―――消え去った。その様子に誰もが驚いて、何をしたのかと聞こえる前に―――。

 

「おおっ! 映像受信魔法! レトロなもの使うね!!」

 

「褒められてる気がしないな」

 

映像端末でもいいのだが、とりあえず『転移魔法符』でどういう顛末になったかを周囲に見せつける。

 

指定した座標に送り込んだ八人の前には―――。

 

『貴様らのやったことは既に確認済みだ。身体を拘束してまでの強引な勧誘に風紀委員に対する攻撃魔法の発動。オールで罪状が満点だな。一週間の部活謹慎! 及び―――先生、封印措置を』

 

『そこまでやるか―――まぁいいがな。授業に支障が出なければいいわけだ。リク・ラク―――』

 

巌のような十文字会頭の閻魔さまよろしくな判決読み上げのあとに、秘書官か地獄の獄卒よろしく、幾重もの黒糸が虚空に浮かび上がり、雪姫が罪人に対する労役よろしく、『ギアス』を掛けたようだ。

 

どういう効果であるかは、いまだ分かるまい。だが教師クラスの女が掛けた術が、『普通』ではないことは全員に理解できたようだ。

 

「雪姫先生は、何をしたの?」

 

「あの違反者の手首に掛けられた三本の黒線から察するに、一定期間魔法使用を不可能にするギアス(拘束)を掛けたようだな」

 

その言葉にざわつきが生まれる。それが真実かどうかはまだ分からない。しかし、それでも―――。

 

「ほほう。そういや『誓約にして制約の3つの黒糸』ってのは、聞いたことがあるかな。 キミも出来るの?」

 

「―――やろうと思えばな」

 

右手を一回転させて雪姫よろしく黒糸を幾つか出すと、後ろにいた明智はともかくとして、周囲の一科生主体の魔法競技部が慄いた。

 

そのタイミングで『警告』を再び発する。

 

「まぁ俺にはそこまでする『権限』は無いですが―――権限を持ったヒトの元に違反者を『送る』ことは可能ですので―――、そういう風な悪いことしないで、『真っ当』に勧誘活動してくださいよ」

 

にっこりキラースマイルで、そんなことを言う。いわゆる演出であったが、効果は抜群である。

 

笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙を剥く行為が原点なのだから―――。

 

「わ、わかりました……」

 

2科生にしてやられたことよりも、『未知の術式』にやられる恐怖が勝ったのか、静寂を保ちつつも強引な勧誘は無くなり、真っ当になったようだ。

 

一応、監視用に群衆の真ん中に「一匹」つけておいてから―――。

 

「乗馬部の場所は分かっているな。それじゃ」

 

他に見回るようだからと赤毛の近くから去ろうとしたのだが―――。

 

「こういう時はそこまでエスコートするのがマナーじゃないかなー?」

 

「ぐえっ!! おい襟を引っ張るな!!」

 

「ふふふ! こんな珍しい魔法行使者!! ブリテン帰りの私は見逃さない!! とりあえず乗馬部まで案内してよ―――えーと……」

 

「田中太郎だ」

 

その自己紹介に周囲の何人かはズッコケたようだが―――。

 

「その名を語った輩は『浦島啓太』という男だと聞いているよ。この美少女探偵シャーロック・明智の目は誤魔化されない!!」

 

案外、鋭い女であるようだ。そして―――本名『明智英美』なる女子と乗馬部まで連れ立って行くことになるのであった。

 

 

 

「―――じゃあやっぱり浦島君は、古代カメ文明の著書で有名な『浦島景太郎』の後裔なんだ」

 

「一時はセンセーショナルな話題だったが、基本はマイナーな研究課題だからな。すぐに忘れ去られたよ」

 

「けど最近は注目の的だよね。ってことは、東京大学の浦島しのぶ先生も親戚?」

 

「その通り」

 

あんまりご親族のことはあれこれ言いたくない。どうせ自分の価値ではないのだから。

 

とはいえ、大した秘密でないなら、問われれば答えないなどという不義理は無い。

 

「それじゃマギステルの」

 

「明智さん。乗馬部見えたよ」

 

しかし、大した秘密であるならば、守らなければいけないこともあるのだ。

 

「ありゃホントだ。それじゃね浦島君! またあとで!!」

 

学科が違うという表現も変ではあるが、1科のクラスに行くことも無いというのに『またあとで』なんてのは来ないだろう。

 

そんな皮肉を想いつつ、赤毛の少女の快活な笑みでの手振に応えてから次の巡回に向かうのだった。

 

 

「バイアスロン部のOGだ!!」

 

「新入生をアブダクションするんじゃねー!!!」

 

どうやら―――すぐさま違う騒動が起きたようである。

 

仕方なく啓太は瞬動で、現場に急行する。

 

『事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ!!』

 

レトロな名言を届けてきた雪姫に苦笑しつつ、足取りはちょっとばかり早かったのだ。

 

 

そんな中、会議室で仕事をしていた金髪の少女が―――。

 

(浮気のニオイ! 『カト』は三高にいるとか聞いたけど!!!)

 

やはりマーキングが足りなかったか!! と人知れず戦慄している少女を敏に感じ取った同輩は、ちょっとばかり慄くのであった。

 

 

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