ボードを操る……明らかにJKではない体格の女2人を追跡する。
入りと掴みが静かに行える瞬動の連続。
『虚空』をも使ってのそれで追跡を行う。
よって―――。
「ちょいと、学外関係者はアポイントメント取ってから入校してくださいよ―――」
渡辺委員長だけに気を取られている間に、ボードの2人に並走するのであった。
「なぁああああ!? あ、あんた! 徒歩でボードに並走しているのか!?」
「ど、どういうこと!?」
「いいから止まってくださいよ。その2人、無理やり小脇に抱えているんでしょ? 今ならば罪状は軽く済みますけど」
「な、なんか浦島君、すごくやる気が無い!!」
「司波達也ならば、君らは喜び勇んでピ○チ姫やっていただろうけどさ、俺は君らの配管工じゃないんだ」
痛いところを突かれて呻く光井。如何に小柄な一年生女子とはいえ、小脇に抱えているところを見るに、何らかの加重制御をしていると見た啓太は。
「浦島!! 前を塞げ!! 挟み撃ちだ!!!」
委員長と共に安全策を取ることにするのであった。コースは概ね理解できている。
進路を塞いでしまえば、逃走も終わるか。
「そうはさせないわよ!!」
瞬間、前方からこちらに向かってくる気流が発生して、自分の進行を押し戻そうとするようだ。
(―――別に魔法を使うまでもないが)
あえて玄武陣で無視してもいいが、何かの『壁』を張っていると思われても面倒なので、それを消し去ることにした。
「
簡単な干渉ではあるが、水使いである啓太は、その『水の運動』という点で、風などの気体操作にも長けている。
というか単純な話、水を主とする術者は『風』にも長けていなければならないのだ。
よって―――。
霧散する気流。如何に物理法則の運動エネルギーでは上回っていようと、擬い物では、どうしても『術理』の骨格がなっていないのである。
「―――なっ!?」
「涼歌!!」
気流を無力化してから、正面に陣取る。距離は50mというところ。この距離ならば―――。
「
本来ならば『自分が操る飛行箒』に急ブレーキを掛ける呪文。しかし相手の動くボードに対して干渉をするならば、これは有効である。
「これは!! ボードに干渉ができない!」
「あなた一体何者なの!?」
完全に停止状態になったボード。どれだけホウキを弄っても動かない状態であることに混乱状態で、既に光井と北山を脇から落としていた。
2人を一応、空気の層で着地をサポートしてから名乗ることにした。
「――――――田中太郎です」
「それはもういいだろう!!」
後ろからツッコミを入れようとしていた委員長の襲撃を躱してから、 振り向く。
「どうします?」
「学外退去だ。外に連れ出すぞ」
「承知」
そのやり取りの最中に、ショートカットの少女――――渡辺委員長と同じような髪型だが、どちらかといえば童顔な人が、JDの乗るようなボードに乗ってやってきた。
申し訳無さそうに、委員長に謝罪しつつ何かを説明している。
「成程……光井と北山という成績優秀者の情報を知ったバカ2人。それを漏らした五十嵐が発端ということか……」
「ま、まさかこのようなことになるとは、思っておらず!!」
「ちょっと摩利、亜実は関係ないわよ」
「確かに、先走ったのは悪かったけど、バイアスロン部はテントの出店出来ないじゃない」
どちらにも言い分はあったりした。馬術部もそうだったが、基本的にこういうトラック競技系統の広いスペースを必要とする部活は、テントを出店出来なかったりする。
まぁ諸々の事情があったりするのだが……。
ともあれ、結局の所、学外連行となる前に―――。
「ところで君、田中くんだったか、ボード部に興味ない?」
「無いです。仮に入った所で練習についていけないと思うのでご勘弁を」
言葉の途中で自分が紋なしであることを示してから、ソレ以上の説得の言葉を断つ。
「そもそも田中ではないんだけどな。とりあえず、学外―――校門前まで連行するぞ」
「了解です」
特に抗弁することでもないので、それに従うのだが……その道中でウザいぐらいに、『勧誘の言葉』を掛けられるのだった。
ついでに言えば『ツバメ』欲しさらしき言葉もシャットアウトしつつ、もはやこれで終わりにしてほしいぐらいに、疲れた。
「すまんな。あの手のOGとOBには、こちらも手を焼いているんだ」
「さいですか」
特に興味もないことなので、特に深くツッコまずに、見回りに戻りたかったのだが……。
「あの委員長、自分は小体育館の方に行きますので、他を見たほうがいいですよ。その眼で睨みを利かせてきてくださいよ」
「お前は私をなんだと思っているんだ? まぁ確かに女番長だの姉御だのと呼ばれちゃいるが……そこまで、その怖いんだろうか?」
「―――それを講評するとセクハラに取られかねませんので、あえて言いません。ただ、そういうのが幅を利かす家に生まれたので、俺は特に何も感じません」
少しだけ不貞腐れるような調子の委員長に返す。その言葉の意味を問われているので、更に返事をする。
「浦島家は基本的には女系の家でして、当主継承は基本的には男子が先に生まれていても、後に生まれた女子の方に相続権がありまして、俺も下に妹がいるので、順当にいけば妹が当主になるでしょうね」
「そうだったのか……」
少しだけ深刻な顔になる委員長。少しシニカルな話題と思われたかと思って―――。
「まぁだからと、校門前でのアレみたいなセクハラを常態に受けているわけじゃないので、悪しからず」
そんな爆弾を投げつけることで、動揺を誘おうとしたのだが……。
「まったく、正直……彼氏もいない女子とはいえ、先輩に再三言うことじゃないぞ」
「? 先輩、彼氏いないんですか?」
その言葉に何故か不思議な気がした。何か掛け違いが起こっているとでもいえばいいのか、そんな感じがするのであった。
「そうだが、不思議か?」
「何だかE組の千葉さんが、自分の兄貴と付き合っている云々言っていたので」
「そりゃ誤解だよ。確かに修次さんは剣の道でのいい兄貴分だが、まぁ何か違っていれば付き合っていたかもしれないが……彼にも想い人がいることを知ってしまえばな」
失恋ではないが、少女時代の淡い思い出を刺激してしまったようで、まずった想いでいたところに―――。
「結城夏凛とかいう『好きな女の子』に似ていたからなんて言われてしまえば、仕方ないさ」
―――もろ知り合いの名前が出てきたのだった。
苦笑するように、自分が道場の師範代に構われている理由を言う委員長に、色んな感情を混ぜ合わせつつも……。
「まぁ……ナオツグさんとの間に脈はないわけじゃないと思うので、頑張ればよろしいかと」
「? 結城さんとやらのことを浦島は知っているのか?」
「まぁ知らないわけではありません。だからあえて助言させていただきました」
彼女の前途に幸あらんことを―――と想っていたのだが……。
「ほれ、そんなことよりも巡回行くぞ。第2小体育館辺りで何かありそうだな」
「引っ張んないでくださいよ」
居合い拳をやらせないためか、腕を取ってくる渡辺委員長に文句を言いながらも―――。
第2小体育館に赴いた際に、耳鳴りがするような音が響く。それが二度、三度……。
「なんだ、これ?―――もしや服部の時のような」
「でしょうね。リク・ラク・ディラック・アンラック―――」
簡易呪文で、一帯に撒かれたサイオン波のようなそれを『中和』してから、体育館に赴く。
「助かったが浦島、その―――お前の魔法って独特だな……今どき呪文詠唱だなんて……」
「古臭いBBAとかすっごい古い魔女BBAから習ったものなんで、時代遅れで結構ですよ」
「ううむ。聞き出したいのにはぐらかされるこの気持ち悪さ―――お前ってドSなんじゃないか?」
どうでもいいわと思いながら赴いた先では―――武場に倒れ伏す道着姿の連中とは違い、立っている男が一人。
「司波達也が無双でもしたんですかね?」
「そうとしか見えない図式だな……」
そうして捕物は終わっているのだと見ていた時に、一人の道着姿が立ち上がる。
ゆらりとでも表現すべき擬音が聞こえた気がした。
道着姿……男の手にはいつの間にか、竹刀が握られていた。それを手に駆け出す道着姿に対して、おそらくこれこそが手品のネタなのだろう、2つのCADを用いた共鳴破とでも言うべきものが放たれるが―――止まらずに駆け出す様子。
(ふぅん……そういう術式なわけか)
別にこのままやらせていてもいいかもしれないが、効果範囲がこちらにまで伸びかねない。
剣術部連中が、このまま『干からびて』も啓太は何も思わない。なんせ―――。
(師匠は悪の魔法使いなわけだしな)
「アデアット」
だが、だからといってこのまま見逃すのも何か違う気がして、啓太は『剣』を手にして、武場に『直滑降』も同然に降り落ちるのだった。
「はいはーい。選手交代! 代打 背番号12 浦島啓太!!
好球必打!! ピッチャーをマウンドに沈めさせてもらいます!! グラゼニ!!!」
「浦島……!?」
来ていたのには気付いていただろうに、わざとらしく驚く司波に苦笑しながらも、現れた存在に道着姿は慄く。
「ふぅん。『こいつ』が怖いか? つーことはそれなりの知能指数はあるようだな。悪いが、そこの道着男から出てもらおうかい!」
本当ならば、ここで逃走するのがあちらの選択のはずだが―――。
「シャアアアア!!!!!」
どうやら一戦交えることを選んだようなので、剣を一閃。
走り抜けながら放たれた剣閃で、道着姿の体から何かが出た。それを狙って封印を掛けようかと想ったが―――。
(なんだ。ただの霊媒かよ)
出たのは、霊体でも
「てぇいっ!!!」
スパーン! と先の剣閃よろしく軽快な音を響かせて、その術式を砕いておくのだった。
「―――雪姫、なんか妙なのがいたんだが。ああ―――いいなら何もしない。はいはい」
すぐさま連絡を取った相手から素気無い返事。あとに残るは、死屍累々の有様を見せている連中だった。
「浦島、色々と聞きたいことは多いんだが」
当然のごとく何かを聞きたがる男が一人。
「なんだい」
「―――その『ハリセン』は何なんだ?」
端的に最大の疑問に挑んできた
「それは秘密だ」
―――