魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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いやー吉田羊さんが、とんでもねぇ。

ゴルゴムも当て字がすごいし―――……というわけで新話です。


stage.16『色々な立場』

1科生の紋章を着けた男女がE組に向かっている様子を横目で見ながらも、たどり着いた風紀委員会本部には委員長だけであった。

 

「お疲れさまです」

 

「ああ、お疲れ」

 

開け放った扉から入って、委員長に挨拶してからデスクワークの開始となる。掛けた椅子に体重を預けながら色々な報告を書き連ねていく。

 

いくのだが……。

 

「なにか?」

 

「う、ううん!? なんでもないぞ!」

 

「いや、何かあるから視線を向けてきたんでしょ?」

 

「達也君もそうだが、お前も達者に報告書を書くものだから先達として、なんともな……」

 

先輩としての威厳を保ちたいのだろうか。そんな想像をしてから、少しだけ接待(・・)をすることに。

 

「委員長、ここなんですけど」

 

「わからないところがあるんだな!? よし教えてやろう!!」

 

喜び勇んでという表現が似合いそうな表情で、啓太の席に近づいてきた渡辺委員長だが……。

 

「―――で、ここはこうでいいんだ」

 

「どうもです」

 

成程と想いつつも、何だか……。

 

「近いです」

 

「何が近いんだ?」

 

「委員長の軟らかい肢体がですが」

 

「当てているんだよ。昨日の大立ち回りでは世話になったからな。流石に真由美にこういうことをさせるわけにもいかないだろ?」

 

「結構ですよ。いつぞやの時に堪能したんで、その感触を忘れられるわけがありません」

 

「日々魅力的になっていく年頃の乙女の身体は違うものだと想うぞ」

 

だからと、こういうあからさまなセクハラをしてくるとは―――。

 

「俺だからいいですけど、他の男子だったらヤラれちゃってもおかしくないですよ」

 

危機感を持ってくださいと嗜めるも、余計に密着をしてくる委員長である。

 

とはいえ、節度を弁えていたのかようやくのことで離れてくれた。

 

「で、俺に対して色仕掛けして何が聞きたかったんですか?」

 

「失礼だなお前は……まぁ聞きたいことがあったりしたのは間違いないな。シールズの持つパクティオーカードに関してだな」

 

やはりそれに関して聞かれるか。別に隠し立てするわけではないので、一応言っておくことにする。

 

「パクティオーカードは本契約の前の仮免みたいなものですが、それでも本契約と遜色ないんですね。先程、委員長が言った通り『年齢』によって、人というのは変化する。それを進化と呼ぶか、退化と呼ぶかは分かりませんが、まぁその変化に合わせてカードを作ってきたということです―――」

 

「つ、つまり……お前は、まだJSだろう時代からシールズと、キキキキス!をしてアレを作成していたのか!?」

 

「まぁアンジェリーナはそう言ってましたけど、別に仮契約の方法はキスだけじゃないですしね」

 

「けどそうしていたんだろ!?」

 

なんでこんな責められるように言われにゃならんのか。ちょっとだけ反感を覚えながらも、『その通りです』とだけ言っておく。

 

「……付き合っているのか?」

 

少しだけ呆然としたような表情で言う渡辺委員長に、何だろと思いつつも言っておく。

 

「いいえ、ただ……世話を焼いとかないとどこに行くか分かったもんじゃないので、まぁそういう関係です」

 

考えてみれば、色々とトラブルに巻き込まれても、アンジェリーナを嫌うことが出来ないのは……。

 

(俺も景太郎ジイさんの血筋ってことなのかね)

 

妙な納得をしてから、作業に集中する―――と、まだ委員長は言い足りなかったようで、口を開く。

 

「先の戦闘は私達―――全ての魔法師たちに無力感を覚えさせた。……出来ることならば、私達も仮契約を結んで、お前のバックアップを受けたいんだがな」

 

「ムリです。というかすぐさま出来るものではないですから、契約の魔法陣を用意しようにも、色々と手続きが必要です」

 

「そうなのか……」

 

そんな言葉で躱しつつも、だがこのまま、雪姫の言うような事態が進行した場合、委員長だけでなく多くの魔法師に被害が出ることは間違いあるまい。

 

とはいえ……どうせ戦力補充の当てはあるのだろう。

 

魔法協会もどうせ色々と動いているはず。というか昨日の内に『■葉』の『コーマ』から―――。

 

『ケータさん。どうか……■の守護をお願いします』

 

などと言われた。誰がそうであるのかは知らないのだが、まぁ別にやれることをやらないほど暇ではないのだ。

 

「委員長、終わりましたので帰っていいですか?」

 

「ああ……ただなぁ……むぅ……」

 

見回りを1人でやるのがデフォルトの風紀委員。今日は自分は事務仕事だけだったのだが……。

 

仕方無しに見回りしますか? と誘おうとする前に、風紀委員会本部の扉が開け放たれるのだった。

 

「君たちは誰だ?」

 

「失礼します! 1−B の相津郁夫と申します!!」

 

「私は同じクラスの斎藤弥生です」

 

堂に入った挨拶をする男子と、少しだけ軽い調子ながらも武人としての感覚を覚えさせる女子の登場。

 

1科生だなと感じつつも、何用なのかと想う。

 

「なにか用かね?」

 

「誠に勝手ながら、本日は、こちらにいる浦島啓太君と剣で一手仕合たいと思い参上しました!!」

 

「だそうだが、どうする?」

 

他を当たってくれ(やなこった)

 

にべもない返答に誰もが苦笑せざるをえない。だが、それでも相津郁夫としてもここで引き下がるわけにはいかない。

 

「君の魔法剣術……神鳴流といったか、それと一手仕合たい……ダメだろうか?」

 

「俺は2科だ。そんな俺がだ。君の魔法剣術とやらとレベルの合った試合が出来ると思うか? 君の腕に合う相手と戦えや、同じレベルの相手と」

 

「それは」

 

啓太が放った言葉。それは相津郁夫を呻かせたが、同時に何故か渡辺摩利も呻かせていた。

 

「そもそもあれが俺の地力だと想うのか? もしかしたらばアンジェリーナが、何かの補助を行ってあれだけの戦闘行動が出来ているに違いないとか、もう少し考えと思考を進めてみろよ」

 

それはあまりにも人を穿ちすぎた眼で見た際の感想だ。だが、啓太には『2科』であるというランクが押されているのだ。

 

これを覆すだけのことを『出来る』という確証を、相津は言わなければならないのだ。

 

……格上で自分が延びるためにも、敗色濃厚な相手に挑戦したのに『素気なく返される』。その様子に、もしかしたら……『あの子』も傷ついたのかもしれないと感じる。

 

理屈ではなく、情熱をそのように躱されて嫌な想いをしたのかもしれない―――今更ながらあの子の頑なな態度は……ここに起因していると気づけた。

 

「何でそんなにまでも……自分のチカラを隠すんだ?」

 

「さて、どうしてだろうね。まぁ余人には分からない何かがあると思っておいてくれ。仮面ライダーBLACK SUNの怪人とて、静かに暮らしたい思いでいる怪人(ヒト)もいるんだ」

 

そういうヒトを煙に巻いた言動はどうかと思う。だが、人それぞれ事情がある以上、そんなことは出来ないのであった。

 

 

翌日、生徒会室に再びお呼ばれした啓太は、はなはだ不本意ながら司波達也と一緒になって、そこに行かざるを得なかった。

 

「弁当箱はコレからヒトツでいいんじゃないかしら? お重に持ってくれば」

 

「冗談ヨシオくんだよ。お前だって、クラスメイトと食う時あるだろう。その際のことを考えているんだよ」

 

どうせ自動食器洗い機は備え付けてあるのだ。洗う手間なけれど、入れる手間は特にない。

 

アンジェリーナの言葉に返しながら、食事は続行していく。特に生徒会の会話にはハマらずに、問われれば応えるぐらいをしながらではあるが……。

 

ただ司波達也が壬生とかいう女子2年―――2科生を言葉責めにしたとかいう話の際に、氷結しつつある空間が形成されて、それを――――『蒼』は吸収した。

 

「え?」

 

「ケータ!!」

 

「大丈夫だ。どうやら自動反応して『吸収』したようだな」

 

「ホントウに? なんかミユキの性悪な魔力とかでお腹下したりしていない?」

 

心底心配なのはそっちかと思いつつ、『大丈夫』だと言っておくことで安堵させるのだった。

 

「リーナ……それどういう意味ですか?」

 

そのまんまの意味だと言ってやりたいことこの上ないのだが、今の現象の事情説明を求められる。

 

「簡単に言えば、指向性は無いが無差別の悪意的な『チカラ』を吸収しちゃう性質があるんですよ。俺の体質です」

 

「それだけで納得しろと?」

 

司波達也の険相が向けられるが、全くもって怖くない。

 

同時に、コイツを地のアーウェルンクスが狙った理由も理解できた。

 

「出来ない? けど他人の魔法を探ることは出来ないだろ」

 

「そりゃそうだが……」

 

「ヒトを探ろうとするのは構わないが、不機嫌を露わにして、教えてくれないことに毛を逆立てるなよ」

 

一瞬ではあるが、バチッ!と火花が散ったように思う二人の境界―――。

 

それに飽きたのか、啓太は話を他に移すことに。

 

「ところで……先程から話を外野(そと)から聞かされていましたが、中条先輩は何も思わないんですね?」

 

「えっ!? な、なにをですか!?」

 

「いや、如何に2科生とはいえ、同級生である女子が下級生の男子にやり込められたってのに、義憤の一つも沸かないのかと思いまして」

 

「うっ……」

 

ナメたガキが。という風な感情を持てとは言わないが、この場にいる2年生の生徒会役員として少々嗜めるぐらいはやってもいいんじゃないかというのが、啓太の率直な所だった。

 

(別に仲良しでもなければ、同じ2年でも名も顔も知らぬ相手を辱められたからと、そういう感情を抱くとは限らんのだが)

 

けれど、マギステルは『そういう存在』なのだ。

 

「まぁ別に、男女の正常なやり取りだったのかもしれないし、そこは野暮天なツッコミかな」

 

「え、えーと……ううっ……」

 

後輩に気を遣われたことで、少しだけ呻く中条先輩だが、すぐに持ち直すだろうと思う。

あそこまで言ってのけたヒトなのだから……。

 

そうして話は壬生先輩の語ったことに移る。

 

それは風紀委員の悪評に関してであった。

監視目的で所属させられている啓太からすれば、どうでもいい話であった。

 

「浦島はどう思う?」

 

「実態がどうかとか関係ないでしょ。どうやったって、取り締まる側ってのは好かれないもんですよ。町中にいるお巡りさんが、平時には好かれないのと同じですよ」

 

有事が起きたとしても、民事だと強弁を張り動かない不良警官がいるからには、そいつらは『税金泥棒』だと思われても仕方ない。

 

「む、むぅ……」

 

「生憎、学生のイキった連中にそういう公僕としての義務感の一片でも持たせられない以上、どうしようもないでしょ。官憲が不正を行うこともあるのに、学生の治安維持者が、不正や不公平な裁きをしていないとでも?」

 

非常に冷めた意見ばかり言う浦島啓太に、アンジェリーナを除き、全員がなんとも言えぬ表情をする。

 

だが、そんな中でも達也は少しだけ踏み込んだ意見を言う。

 

「確かにお前の意見ももっともだ。だが、そうだとしても、森崎のようなクソ野郎がいたとしても、だ。俺はこれは印象操作をした結果だと思っている」

 

そうしてブランシュなる反魔法政治団体なるものの話をする司波達也の話に―――。

 

「ところでケイタ、今夜のディナーは何にしようかしら?」

 

「作るの主に俺じゃないか、まぁいいけど」

 

―――何一つ聞く態度を取らない2人がいるのだった。

 

「………俺は結構、重要なことを話しているんだがな」

 

「けど国際政治団体なんだろ? 不義があるならば、即座に取り潰されているはずだろうが」

 

「まぁそうだな……」

 

「別に有り難くもないご利益もない石や教典を、高値で入会者に売り捌いているわけじゃないならば、別に存続を許してもいいんじゃないの?」

 

危機意識がないとしか思えぬ発言。これがマギステルの意識なのかとも思ってしまう。

 

「 もしくは魔法師も政治団体でも作って『黙っていれば差別は続き徹底的に叩き潰される! だからお前たちはもっと怒ってもいい!! お前がキングストーンを奪ってこい!! by Sheep』とか言えば良いのでは?」

 

「Shakeしすぎネ。シャドームーンと羊の発言が混ざりすぎよ」

 

どこの仮面ライダーブラックサンだと言わんばかりの言動ではある。だが、一定程度……分かることはある。

 

「まぁ……意見としては取り入れるけど、現実性が無さすぎるような……」

 

「別にやれと言っているわけじゃないんですがね」

 

ただ現実的に難しい話ではあろう。

 

「浦島君、一つ聞いてもいいですか?」

 

「何でしょう市原先輩」

 

「マギステルは……そういった差別とは戦わなかったんですか?」

 

「戦う・戦わない以前の話としてそもそもマギステルは、人類社会に『ひっそり』と溶け込んでいたんですよ」

 

マギクスのように遺伝子弄ってまで人間兵器として在り方を規定されていたわけじゃない。

 

という言葉を呑み込みながらマギステルの本義を告げる。

 

「つまりマギステルの本義とは、人助けであり困っている人を助ける……そこにあったんですか?」

 

「全員が全員じゃないですよ。マギステルとてそのチカラを『良きこと』だけに向けていたわけじゃない。当然、国家のエージェントとしてそのチカラを役立てた人間もいますし」

 

言葉を呑み込んだとはいえ、マギステルの『存在意義』は、魔法師にとっては、少々カルチャー・ショックが過ぎるようだ。

 

「けれど、だからといってマギステルが明け透けにやっていたわけでもない。彼らも組織として『魔法バレ』が為されないように、色々な情報操作をやっていたんですけどね」

 

だが国家に寄らない本当のNGOたるマギステルたちからすれば、魔法をバラさないことで行動に制約を受けていたのも間違いないからだ。

 

歯がゆい想いをしている人間は『いま』も多い……。

 

「まぁマギクスとは『誕生』の経緯が違いますしね。別に気にしなくてもよいかと」

 

その突き放すような言い方に、何とも言えぬ表情をする面子。

 

「しかし、まぁ……ブランシュ―――『白』ねぇ」

 

皮肉な話だ。

 

かつて世界を救うために尽力をした人々と同じ色を模る団体。

その団体の意義は『現代魔法師』とは滅すべき害悪であると考えていることだ。

 

果たして彼らに『白き翼』はあるのだろうか。

 

何者にも因われぬ自由な心こそが、世界を広げる第一歩。

 

わずかな勇気こそが本当の魔法なのだから―――。

 

 

 

「無私の精神で世界の嘆きと悲しみを取り除くために働く―――マギステル……全くもって、俺たちマギクスは俗物なんだな」

 

無理やり作った笑いは、どうしても乾いたものにしかなりえない。

 

「お兄様……」

 

そんな兄を心配してか、妹は声を掛ける。

 

家に帰ってからの夜のリビングでの会話。ブランシュに対して、説明をして、聞いていた兄妹は色んな意味で疲れるのであった。

 

「ですが、彼らマギステルとて、努力をしてそれだけのチカラを得たのならば、それは」

 

「ああ、『努力』をすれば、な……あえてあの場で浦島に聞かなかったが、与えられた情報のピースから推測出来ることが一つある」

 

深雪は、自分たちの努力は決して侮られるものではないと言い募る。

 

その言葉は、確かに強いものだ。克己心を保ったものだ。

 

しかし、これを聞かなかった理由はあの場で全ての魔法師たちを色んな意味で『どん底』に突き落としたくなかったからだ。

 

だが、いまこれを言えば達也は自分の愛妹を突き落とすことになるだろう。

 

それでも言わなければならなかった。

 

「マギステルの魔法及びそれらに関する技術・技法とは細かな、あるいは特別な才能を必要とするものを除けば」

 

 

―――どんな『人間』でも『努力』次第で習得・実践することが可能なものであるはずだ。―――

 

それを言われた時の深雪の表情はとても見ていられないものであり、思わず抱きついて支えなければならないものであった。

 

そして判断出来る最終的な材料などないまま日は過ぎていく。

 

 

 

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