ですが、話を進める上ではどうしても必要だったり必要じゃなかったり――――――
ショートカットすべき所はカットしても良かったかな? と想いつつ新話お送りします。
あれだけのことが起きた後でも実技授業は、滞りなく行われ、結果としてではあるが……雪姫先生の授業は2科生たちに確かな成果を残していった。
「よし! 以上だな。今回の授業で疑問を覚えたことは、今のうちに聞いておけよ?」
「じゃあ質問ですけど、何で私とレ―――西城君とが、上手く行かない理由を分かったんですか?」
「長年の勘だ―――などと言ってもよいが、簡単に言えばそいつの性質を教えただけだ。『内向き』か『外向き』かの違いでしか無い。まぁ今はお前さんが向ける魔法の方向性を自覚させただけだ」
それは質問に答えているようで答えていなかったのだが、それでも予鈴は鳴り響き、授業は終わりを迎えるのだった。
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実技授業において雪姫のやったことを理解しているものは多くないだろう。結局の所、魔法師の使う『サイオン』とてマギステルの『魔力』と『気』のような種別の違いがあるのだ。
それが
一見して、そんなものは分からないのだが、流石は年の功ということか。そんな風に考えてから、腹すかしのエンジェルの為に三段お重を持っていこうと思ったのだが……。
「浦島、俺達と少し昼食を一緒しないか?」
「結構だ。すでに先約がある」
「そう言わず。お前の武勇伝を聞きたいんだが」
「生憎、俺ってばケンカなんてしたことないんだ。和菓子屋は手の繊細さが必要だからな」
言いながらも和菓子・浦島は繊細な京菓子とは違い、どちらかといえば『忍者』的な茶店でもあったりする。
よって言い訳でありウソなのだった。そもそも今日にいたるまでの大立ち回りを見ていた人間からすれば、こいつは何を言っているんだという気持ちにもなる。
だからこそ―――。
「ケータぁあああ……ミユキが、ワタシを縛り付けて、ここまで連れてきたわぁあああ」
いきなり現れた親戚の姿に、何とも言えぬ心地を覚える。
「人聞きの悪い事言わないでください! 私は、ちょっとお話したいことがあるから一緒に食事したかったのに、浦島君と二人っきりで食事をすると聞かなくて……」
「んじゃ俺は学食で食うから、これは皆で食えアンジェリーナ。だから総合主席―――その手を離しやがれ」
「―――」
息を呑んだ。としか言いようがない司波深雪。その言葉に従いて、リーナから深雪の手は離れて、その後に去ろうとしたのだが――――。
「待って待って!! 浦島君!! 私も聞きたいことがあるから!!! 話しながら食べよう!!」
「ぐべっ!!」
そんな啓太に突っ込む一人の少女。(>ω<) な表情をしながら腹に突っ込んだ赤毛は、明智英美という少女で―――。
何処で知り合ったのやらと思いつつも、何故か昼食は大人数でやることになったのだった。
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「何で浦島君ってあんなに秘密主義なんですか?」
「そりゃ魔法使いは尋常の人から隠れて生きるのが普通だからだろ。むしろお前さん方の方が変なんだよ」
雪姫先生の言葉に真由美としては何も言えなくなる。確かに人間能力の一端として、認知された『魔法』だが、その歴史は『現代物理学に迎合させた技術』の範疇でしかない。
本当にして『本物の魔法使い』は、自分たちの魔法など児戯だとして軽く一蹴してくる。
「ただ、啓太は少々……特殊だ。まぁあんまり探るな」
「けど、また襲いかかってくれば、アナタや啓太くんたちでしか対抗できない……」
その絶望感が、真由美に伸し掛かる。
対処する方法が自分たちでは用立てられないのだから、当然だ。
だが、そこは甘えるなと雪姫は言う。
「努力しろよ。私なんて大量に出現させた光の刃による同時切断なんて技を食らった後に、なんとかそれに対処する術を努力して身につけたんだ」
ミラ・ジョヴォヴィッチもビックリのレーザー焼きサイコロステーキを『どうにかした』という雪姫先生の言葉に―――
「………本当ですか?」
「さぁな。だが、そういうことが足りんのだよお前たちは、非常識のセカイに身を置きながら
その言葉のあとには―――。
「だが、このままではマズイのも一つか。ただ全てのマギステルがアーウェルンクスレベルなわけじゃないんだ。あまり深刻になるな。ヤツに気を取られて足元を掬われる可能性とてあるのだからな」
そう言ってから、『白』に関する資料を投げて寄越した雪姫は生徒会室に来ていた面子……特に十文字を驚かせた。
「何故、反魔法師を掲げる団体が―――マギステルと、まぁ分からなくもないですが……」
「あとのことはお前たちで考えろ。それと七草、少し前に啓太が、司波深雪の無意識のサイオンを吸い取ったと言ったな?」
「ええ……体質だとか言っていましたけど、本当なんでしょうか?」
「まぁ事実ではある」
マギアの一端。太陰のそれは、啓太のチカラの一つだ。
そして……。
(彼女の残したもの……)
受け継がれたものが、世界の命運を変える。それだけだ。
放課後、いつもどおりに帰ろうとした矢先、風紀委員が非番であることも相まって帰ろうとした時であるが―――。
「浦島君!!! 頼む!!! 僕と剣で立ち会ってくれ!!」
またかい。と思うような人間がやってきた。
「相津君だったか生憎、俺の剣ではお前を相手に出来るとは思えないから他を当たってくれ」
「そんなことはない!!」
「そんなことあっちゃうんだなぁ。これが」
言いながら、何も描かれていない制服部分。校章があるべきところを桜吹雪を見せつけるかのごとく見せる。
それを見せることで黙らせる。
黙らせようとしたのだが……。
「浦島君、何度も相津君とやらに来られても困りものですから、一試合やってあげたらどうですか?」
柴田美月から思わぬ提案。ぶっちゃけ五月蝿いから、黙らせろという風にも聞こえる言葉だ。
だが、このまま押し問答をしていても面倒な限りだ。
一理あるか。という気持ちで。
「一回だけだ。勝敗がどうであれ納得しろや」
「――――――ありがとう」
結局の所、いつぞや訪れた武場にまで行くのだった。
剣術部の異物を見るような視線を見ながらも、部長らしきヒトから試合の申し出をする相津を見ながら……。
「なんでここまで着いてきちゃうかな?」
「一応、私が焚き付けちゃったわけですから、責任を持って見届けさせてもらおうかと」
柴田美月に言うと、そんな風に返された。別にそんなことを感じなくてもいいのが……。
まぁ可愛い女の子が見ていれば、少しは気合いが入りもする。
そうしていると、相津郁夫がこちらにやって来た。
「すまない。時間を取らせた―――だが、その格好でいいのかい?」
「君の方に道着はあんだろ。とっとと着てこいや。その間に竹刀の調子を見せてもらうさ」
「う、うん……」
渡された竹刀を握りながら気穴の調子を上げる。この間の不調は既に無い。
京都神鳴流の極意とは、端的に申せば体内燃料たる『気』を如何に効率よく運用するかということだ。
そこから気を『放出』する『術剣技』というものに派生されていったのは、ヒトの剣術では滅しきれぬ『魔』が跳梁跋扈した京都ゆえだからだろう。
裏火星にある■■神鳴流は少しばかり事情は違うが、まぁ対象とする敵。斬るべきものが違うからこそ術理が違うのだ。
「――――」
「――――」
気穴の調子と同時に振るっていた竹刀の素振りを終えて、息を吐く。
何を求めているのかは知らないが―――。
(少しは保たせてくれよ)
などと上から目線で思いっていた啓太に対して。
(やばい、相津君負けちゃうかも……)
(すごいオーラ……なんだか全てを包み込むようでいながらも、切り裂くようなものを感じる)
女子二人からの感想が内心でのみ吐かれる。
そして、胴着を着込んだ相津がやって来て―――。
「始めようか」
「はいはい」
正調の剣士ではない啓太は、剣道における礼節などは殆ど知らない。
魔法剣士同士の立ち会いのそれも知らない。だから指定された位置に移動したあとに―――。
「はじめっ!!!」
厳つい男の言葉と同時に―――。
斬空閃が飛ぶ―――離れた位置から振り抜いた剣は気の衝撃波を飛ばした。
相津郁夫も予想していたのか、驚きながらも横っ飛びに躱した。だが、剣の術理は―――運動の術理。
振り抜いた剣を返す要領で、斬鉄閃を飛ばす。
浅く切り裂かれる胴着の腹。
「ぐっ!!!」
痛みに耐えながらも手首に装着されたCADを操り、術式の展開。しかし、それが与える効果は……。
「―――ッ!!」
「足を溜めていたのは見えていたからな」
自己加速魔法だったか。高速のセカイに自分を置く術式だが……直立不動の状態からも出来るならば、瞬動術よりも易いかもしれないが、生憎だった。移動した相津の背後に既に回っていた啓太は―――。
「ひなたの土地にサクラサク! 秘剣・百花繚乱!!!」
気で出来た桜吹雪を舞い上がらせるほどの気剣が、相津を直撃。
歌舞伎役者よろしく芝居がかった斬撃の威力は、武場の天井近くまで跳ね上がった相津の姿でお察しであった。
誰もがポカーン。としか出来ない現実離れした現実。
完全に意識を飛ばした相津だが、救護活動はすぐさま行われた。
「相津!!!」
杉田だか桐原だかが叫ぶが、その前に温泉カメの『使い魔』を出して救助。
硬くはない、軟らかい甲羅に乗せられて帰還をした相津は――――。
「サイオンが……放出出来ない……!」
起き上がると同時に、自分の身体の不調に気付く。完全に放出出来ないわけじゃない。
しかし、重いモノを背負ったかのように、どうにもキツく感じる。
「気で出来た『花弁』が付着しているからな。しばらくは泥まみれになって動きづらいと考えてくれ。まぁどうしても、すぐさま魔法を使いたいならば―――」
ハリセンを出して一発行こうかと思ったが……。
「いや、いい―――参りました。この敗北の味をしばらくは……味わっておくさ」
武士道なのか何なのかは知らないが、そういう風に言ってから『タマゴ』から降りる相津を見てから―――。
「それじゃ」
ここでの用事は無くなるのだった。様々な視線を背中に浴びながらも、自分の腕がどうしようもなく疼く。
共鳴しているのだ。
彼女と―――――――。
(近いのだろうな……)
この学校を覆う闇の御手は―――。
(誰かを狙っている……)
その予感を胸に秘めながらも、何故か柴田さんの頭の上を気に入ったタマゴを戻すべく苦心する。その様子が、アンジェリーナには、非情に不埒なものに映ったらしい。
遠くからでもこちらを見るとか、なんでだよ。
そして―――。
「お前のそれは合理性だけを突き詰めた邪悪でしかない。お前はただの卑怯者だ。司波達也」
「……俺は俺のやり方をしただけです」
「そうか。ならば貴様は、誰かにとっての合理で排除された時にそれを受け入れるのだな? 魔法世界人たちが生きる権利を行使するために、貴様らに『生贄』になれと言われてそれを従容と受け入れるのか?
誰かに毒刃を振るうものは、いずれその誰かに親しい者から毒刃を見舞われるだけだ。貴様の道理で合理など、自分の安寧だけを守ろうとする小物の理屈だ!!!!」
「――――――」
魔法使いたちから『魔王』と呼ばれた悲しき村娘の言葉が、俗物の頂点たる偽性の魔王を貫くのだった。
そして―――。
最悪の人類否定者の御手が魔法師を刈り取る時は近かった。