地球側が差別されているとは、SEEDも経済的にはGDPとかはプラント側の方が高いんだけども、人種的な差別だったからなー……。
果たしてこれからどうなるか……期待大である。
この戦いは宿命だったのかもしれない。
だが、それでも片方に期するところはない。
平穏に生きたかっただけだ。
別に、約束の女の子とトーダイに行く上で、スラップスティックな日常などいらなかった。
景太郎じいさんは、そんな日常も楽しめる人だったそうだが、啓太は違う。
魔法や道術・呪術なんてのは、自分に備わっていたものでしかない。
英雄になりたいわけでもなく、何かを成し遂げて一旗揚げたいわけでもない。
日常を平穏に生きていたかっただけだ。
大きな喜びも悲しみもいらない。ただ、『普通』になりたかっただけなのに……。
それなのに――――――。
「お前がいるからあああああぁああああ!!!!」
完全な八つ当たりを敢行するのであった。
「いくら叫ぼうが今さら!!!」
極大の魔力を互いに込めた拳の激突。それだけで一高の校舎のガレキが浮き上がり、大地が鳴動する。
その激突を境にして戦いが始まる。
それは、人知を超えた魔法能力と超速度と超破壊能力との―――極限の衝突であった。
「亀甲極限砲!!!」
「雷の暴風!!!」
とてつもないエネルギー同士の衝突が、細かな石礫を弾丸のような速度で周囲に飛ばす。
「――――!!!」
「――――!!!」
エネルギーを吐き出しあったあとには超速のセカイに入り込み、拳を叩きつけ合う2人の超人の姿が、全く見えない。
だが何かがぶつかり合いながら、何かを砕こうとしているのは辛うじて分かる。
「死に晒せぇええええ!!!!!」
時折聞こえる叫びと同時に、黒ローブ姿の壬生紗耶香に拳の連打を食らわせる姿が見えたりもするのだが。
「……性格、変わりすぎじゃないか?」
「アレが浦島君の地なんでしょうか?」
答えるものは誰一人いない。本当ならば、答えるべきアンジェリーナも十文字も苦衷の表情を浮かべて、それを見ている。
即ち……アレは『異常なチカラの発露』なのだと気づく。
浦島の手に描かれた黒と青の紋様。アレが見える度に達也は吐き気を覚える。おぞましき魔道の最極。
それがアレなのだと気付かされる。
紋様は蝶の羽根のように複雑な模様を描きながら、徐々に広がっていく。
そしてそれが広がりきった瞬間、多量のマジックアローが虚空の一点に向って飛んでいく。
詠唱も魔法名すら無く、身振り手振りもなくサギタマギカという矢は驟雨のごとく向かう。
そこに壬生紗耶香はいた。
「ぬうう!!!」
防御障壁(?)で耐え忍ぶ壬生紗耶香だが、ダメージは相応にあるようだ。
「マギクスなんてこまっしゃくれた連中を倒すにゃ十分だろうが、俺やエヴァンジェリンを相手にするには不十分な憑坐だな!!!」
盛大なまでの魔法師に対するディスりに若干苛立つが、マジックアローで足を止められた壬生紗耶香に対して拳を叩き込まんと浦島は飛んでいく。
(今さらながら普通に『飛行』をアイツ行っているな……)
螺旋を描く水の槍の嵐を伴いながらの突撃は―――。
「ならば、こいつらをだ!!!!」
瞬間、壬生紗耶香の纏っているローブが意思持つ蛇のように動いて、地上に伸びた。
そして―――。
「浦島っ!!!」
怪我を負っていた生徒たちを放り投げることだった。人間砲弾の如き様を前にして浦島の拳は―――。
「邪魔だぁああああ!!!!」
止まらずに正面に居た森崎を殴り飛ばすのだった。もはやどっちが悪役なのか分からないぐらいにとんでもない所業。
その威力はメガトン級すぎて、地上に急速に送り返された森崎砲弾が、粉塵を散らす。
「貴様っ!!!!」
―――紗耶香の様子が少々気になる。それは、外道の所業を行った浦島を非難している……様子。
変だと思った瞬間には―――。
『浦島流柔術 山彦返し・極』
浦島は身体全てを使って、飛び来る人間砲弾を叩き落としていく。
受け止めるべく、魔法を展開しようとするもそれを受け付けない。
「―――どういうことなんでしょうか?」
「シールズ―――」
一応は救護活動をと思った瞬間に、アンジェリーナ・クドウ・シールズは飛んでいき、その戦いに介入する。
そして……。
「ううん……な、なにが……」
意識不明の状態から『完全回復』をした一科生たちが起き出した。
そして―――。
「水星のチカラか!? それとも海王星のチカラか!? どちらでもいい!! サヤカ=ヨルダ!! アナタの願いを私は叶える!!!!」
その様子を見ていた羽音有子が、回復をした一科生たちを襲おうとチカラを溜め込む。
「来たれ風精 闇の精 闇を纏いて迸れ 魂食らう覇王の咆哮」
詠唱が朗々と響く。そして
闇が強烈な波動と渦を巻いてこちらにやってくる。
はっきり言おう。達也にはこの魔法を分解する式を組めない。この暗黒物質とでもいうべきものを分解しようとすれば、それはその暗黒物質の根源を理解しなければならないのだが―――。
それが分からないのだ。
そして直撃しようとした瞬間に―――。
「―――闇の吹雪!!」
「意志なる石蛇よ!!」
それを押しつぶすように、発生した蛇に闇の螺旋が纏わりつき、文字通りの『闇竜』へとなりて、羽音の攻撃を押しつぶした。
「ちぃっ!!!!」
阻止された羽音だが、苛立つようにしながらも、立ち塞がった存在に魔法をたたき込む。
「まさかレブナントまで使徒とするとはな。お前の元主人は、よほど寂しかったらしいな」
「部下が退職することに耐えられない方だったかな……だが、リストラされた身としては少々悲しいね」
現れたのは雪姫先生と―――あの白フード……今日は、洒脱な白いスーツに身を包んだ男……フェイト・アーウェルンクスとやらだった。
「ここは私とこの若作り白髪が受け持つ。お前たちは逃げろ」
「若作りって、アナタのような女性が言うか」
言い合いながらも、マギクスでは理解が追いつかない魔法の連続で有子を追い詰めていく。
「しかし雪姫先生!」
「ああ、この男が信用出来ないというのはわかるがな。だが、この場ではコイツだけが信用できるんだよ」
「ヨルダ=バォト=アルコーンとその使徒が現れた以上、魔法師を捕らえる計画は暫く凍結だ。まぁどちらにせよ、君たち『シバ』は、巻き込まれるだろうけどね」
そのシバという言葉を放つ際に、4枚の若葉を吹き上がらせて深雪と達也に見せてくるあたりに、この男はやはり……。
「とはいえ、私達だけでも抑えきれないほどにスケルトンやデュラハンが襲いかかるかもしれないから、とにかく気をつけて避難しろよ」
鬼かっ!? だが、浮かび上がった羽音有子の下知を受けたらしき、そういうものが大地から出現してくる。
それに注意を払いながらも、空中で戦闘を行う浦島とシールズ……それを受けるヨルダ=サヤカを見るのであった。
・
・
・
・
「「魔法の射手 光の77矢!!!」」
きゅどどどどど!!! という音と共に光の矢が、計154も飛んでくる。
その攻撃を後手で受けるサヤカのチカラは、正しくヨルダの憑坐としての特徴を有している。
しかし……。
その手に魔剣―――そこいらに転がるガレキを基材にして生成した剣で近接戦闘を挑む辺り、ナギ=ヨルダ、ネギ=ヨルダと同じ特徴を持っている。
憑坐の特性や性格を完全に潰しきれていないようだ。
「アデアット!!!」
ならば、そこに突け込む。手にしたのは棒である。飾り気の無い朱色の棒を手に―――。
「終わりだっ!!! ヨルダ・バオト・アルコーン!!!」
「決着には速いのではないかな!!!」
だが、虚空をしかと踏みしめながら放つ棒による打撃の数々は、確実にヒットしている。
何より……。
「むっ!!!」
「攻性魔法のチャージはワタシの担当よ!!!」
「阿吽の呼吸か!!」
啓太がチャージをする魔法の数々は、アンジェリーナが放ってくれるのだ。
「リーナがチカラをかき集めて、俺が切り裂く!」
「ヒトの
そんなものあっただろうかと疑問を覚えながらも、如意金箍棒と啓太がチャージをする魔法の数々から放たれる攻撃がヨルダを追い詰めていく。
「愛!? 愛だと!? 愛など粘膜が創り出す幻想に過ぎん!!」
その言葉に啓太は少しだけキレながらヨルダに突っかかる。
「だったら―――――――なんでアンタは!!! オレの■■■様と―――」
「―――!!!」
明らかに動揺したらしきヨルダ。
「アンタが乙姫になっちまったから!!! 俺は―――」
「私は―――」
その動揺で出来た隙を狙って一気呵成に攻め立てる。如意金箍棒のレプリカによる打撃。そして―――。
「神格纏繞・神珍鉄自在棍!!!」
巨大化した棒。直径も長さもちょっとした柱も同然になったそれが、サヤカ=ヨルダを直撃。
その様子は遠くからでも見えていて、救護活動をしつつブランシュを牽制していた残存部隊などは見た。
遅れて強烈な圧がインパルスとなって自分たちにまで響く。間違いなく必殺が決まった音だ。
「十文字くん……」
「わからん。ライフメイカー……はじまりの魔法使いは強敵だ。如何に浦島やエヴァンジェリン殿たちが、強烈なチカラを発揮したとしても……」
どうなるかは分からない
ともあれ、安全圏に着くと肌の色が黒く、それと同じく黒い髪を長く伸ばした美女がいた。
「ここにいるのは全て一高生でしょうか小野教諭?」
「は、はい! 間違いなく!! 龍宮学園長!!」
目つきはどことなく鋭い。美女であることは溢れ出そうな胸元とか漂う色香から理解できる。だがそれ以上に、どうしても抜き身の刃もとい、銃口を向けられたかのような殺気を彼女からは真由美は感じるのであった。
「マナさん……来られたんですか?」
「アレ程の存在が降臨するとわかっていれば、もう少し前もって準備出来ていたんだがね。エヴァンジェリンから連絡を受けて泡食って飛び出してきたんだ」
嘆息気味に言いながら自動式拳銃で遠く―――600mは離れたところにいるブランシュメンバーを昏倒させる彼女の正体は何なんだと想う?
「アナタは?」
克人が紹介してくれなさそうなので、真由美が疑問符を呈することに。
「龍宮真名という。埼玉県麻帆良市にある巨大学園都市の総責任者だよ。まぁ代理なんだがね―――以後よろしく」
役職なんて肩書程度にしか使えないとでも言わんばかりの女の言葉を聞きながらも、状況は落ち着いたのかと想うが……。すぐさま地鳴りというか鳴動が響く。
「まだ戦うか……ヨルダ!」
その言葉の後に部下らしき人たちに指示を出してから、龍宮学園長とかいう美女は走り去っていく。
浦島が使う瞬動を連続で行っての退場に、誰もが驚く。
しかし、ソレ以上に響く鳴動が、全てを悟らせる。
「俺も向かうぞ。このまま傍観者ではいられん」
舞台は終結へと向かう……。
その時、十文字克人と七草真由美が自己加速魔法を発動した時。
避難した人間たちから見て遠くの方……未だに残り直立していた校舎の尖塔部分……一高の六枚花弁を模ったモニュメントが埋め込まれたものが崩れ落ちた。
それを見た誰もが、不吉なものを覚えるのだった。