世代ではないんですが、時折立ち読みで読んでいた作品。長寿作品だなとか思いつつも、詳しく知ろうとは思わなかった俺はバカか。
超人ロックとは――――――改めてそういうことだったんだな。と思いつつ、この作品が与えた影響を今更ながら思い知らされる。
魔法科高校とて期末テストはある。あるわけで、結局の所、勉強が必要になる。なるわけで―――。
「勉強かぁ、やる気が出ない」
「モンク言わずにヤルのよ!」
同居相手である親戚から言われて仕方なく端末を操る。そもそも理論を学んだところで意味は無いような気がする。
だが、一応はやらなければならないのだ。などと考えるも、近づきつつある夏の予定を聞いておくことにする。場合によっては、この家に何日もヒトが入らない可能性もあるのだから。
「夏休みはアメリカに帰省するのか?」
「ウーン、ケイタはどうするの?」
「俺の予定なんてどうでもいいだろ。いつも通り『夏期講習』入れつつ、しのぶおばさんの『手伝い』するさ」
「アルバイトするの? モルモルかパララケルスに行って」
「同時に現地の褐色肌が眩しい女の子とひと夏のアヴァンチュール………を望むぐらいは許されても良くない?」
啓太の密かな野望の暴露は、対面にて勉強している美少女の機嫌をかなり悪くして、机の下にてケリを入れられる始末。
「まぁアンジェリーナの場合は、九校戦に出場してからだろ。予定は合わせられないはずだぞ」
大したことを知っているわけではないのだが、魔法を使った『競技大会』というものが、この日本では例年夏に行われている。
甲子園やインターハイに比べれば小規模というか、競技人口もそこまでいるんだか分からないものだが、それでも魔法科高校が『学校単位』で戦う魔法競技大会というものがあるのだが―――。
「ソレだけど、ワタシは出ないワ。仮に
「なんでまた?」
目立ちたがりというわけではないが、司波深雪とか一科生の優秀生と日頃争っている彼女にしては珍しい態度である。
少しだけ拗ねたような態度を取るアンジェリーナは、端末を弄って何かを画面表示した状態で、こちらに向けてきた。端末そのものではなく画面だけを回転させて、見えた画像と注釈に。
「そういうことか」
と納得するも、それで生徒会やら重役たちが納得するだろうか? と思うが―――。
「イイじゃない。ニホンの悪習、忘年会や飲み会への参加を強要するような態度ってヨクないと思うワ。個々人で事情があるんダカラ」
「そしてアンジェリーナとしては……どうしても許せない、と」
「コレばかりは生理的なモノよ」
憤慨するアンジェリーナのココロは分からなくもない。世の中に出れば、『お前個人に恨みは無いが、お前の『親族』には苦労させられたから、お前とはやりたくない』などと『生理的嫌悪感』から言われることもある。
特にその親族―――関係性の深さ次第でもあるが、似通うないし関係ある『勤め先』を選べば、そういう風なこともあるのだ。
そして、今回の大会ないし例年の大会で金主となっているジジイは、リーナにとってどうしても受け入れられない相手だ。
(まぁ放逐した弟の孫が、とんでもないチカラで暴れまわったらば、内心穏やかじゃないだろうからな)
色々と理由は付けられるだろうが……。ともあれ今は、勉強に勤しむのだった。
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結局の所、どれだけ頑張ったところで生来の能力値というのは越えられないのだから、この結果は当然であった。
返ってきたテスト結果及び
(この成績を見ても悔しいとも何とも考えられない俺は、やはり魔法師じゃないな)
期末テスト結果 1学年200人中150位。
完全にして紛うことなき『魔法科高校の劣等生』であると自嘲で心のなかで自称してから、岡崎律子の『はじまりはここから』をイヤホンを掛けながら聞くのだった。
そんな啓太の成績に対して、疑義を抱くものは当然ながら存在していた。特に2科生でありながら、理論・記述で一位を取った司波達也は、極秘に入手した啓太の成績表から『手抜きした』のではないかと邪推するように思ったのだが……。
そんな達也に『職員室』からメールが来て、それに応じて職員室に行くと―――。
達也こそが『手抜きした』のではないかと、教師一同(一部不参加)から問い詰められるのであった。
「人を呪わば穴二つ、ではないが……お前のことだ。先程の先生方のように、特定の生徒に嫌疑でも向けていたんだろうな」
不参加であった雪姫先生から最後の方で見抜かれたことを言われて、心臓を掴まれた気分になった達也は恥を覚えながら、職員室を辞するのであった。
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期末テストを終えて、はやくも九校戦ムードに浮かれつつある校内の状況。そんな中、七草真由美など生徒会役員一同などは、頭を悩ませることになった。
九校戦参加が出来るかどうか―――要するに大会当日にスケジュールが空いているかどうかを確認する作業。『候補者全員』にその旨のメールを送信した
―――だが、予想外というか予想通りというか、2人ほど『不参加』という回答が届くのであった。
「……達也君がエンジニアとして登録しようとした矢先に、これだもの……どうしたらいいのかしら?」
参加を諦めるという選択肢を持たない会長の言葉に、同輩である会頭―――十文字克人は、同情してしまうのだった。
「クドウと浦島が最近、生徒会での昼食に来なかったのは、この為だったんだな。まぁクドウは帰省する必要があるのかもしれないが……浦島も何かあるのか?」
「聞くところによると、親戚で叔母に当たる浦島しのぶという考古学の先生の手伝いで、『赤道』の王国とかに発掘調査に行くらしいな」
前々から聞いていた……十文字が知りうる浦島のルーティーンに変わりなければ、そうなるはずだ。
当然、アンジェリーナ・クドウ・シールズもついていく可能性があることは、あえて渡辺に知らせないが……。
「魔法師として登録されていないのか?」
海外に行ける立場というところに着目したのか、渡辺がそういう所を耳ざとく聞いてくる。
「浦島家は知られていないだけで、政府筋とも色々と繋がりが深い。むしろ俺たち魔法師よりも影響力が強いんだ」
それは十師族である自分たちよりもという、言外の言葉もあったりしたのだが……。
「とりあえず、部活連本部で開かれる九校戦メンバー選定会議に呼び出そう。せめて不参加の理由ぐらいは聞かせてほしいとでも言えば、流石に無下にはならんだろうからな」
「―――そうね」
そうして結論付けたのだが、その選定会議は予想外の紛糾を見せるのであった。
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―――喧々囂々の様を見せる会議に呼ばれた啓太は、分厚い『本』を開きながら、その様を外様として見ていた。
2科生がいることに云々だのうざいことを言う先輩方に、『来たくて来たわけじゃない』と内心で愚痴りながら、さっさと終わらないかなーと思うのだった。
会議の方向性は、先ずは司波達也のエンジニア登録の疑義に関してだったりした。
まぁそこはどうでもいい。自慢しいの『お坊ちゃん』であることは彼の従弟殿から既に聞いていたので、もういいからジマングなパワーを見せて黙らせろやと思う。
(何を冷静に、好意的な意見が多いことに喜んでやがるんだか、しかも自分主体の物言いばかり着けているんだか)
そうしていると十文字会頭も、同じようにウザく想っていたらしく、司波達也のジマングな技術力を自分で証明してみせるとするのだった。
(最初っからそうしておけよ)
ページを捲って思考の方向性を探りながらも、結局―――桐原武明が証明役になると言って、喧々囂々のそれは技術的なことを含むものになるから―――。
「司波の技術力の証明に関しては、実験棟に行かなければ証明できない。故に先に、こちらを終わらせときたい―――浦島、クドウ……何故、選手として選出したのに、不参加なんだ?」
その言葉に、先程の
「特にシールズさんは、今回の一年の期末テストで総合2位なのだから出てほしいのだけど……」
「申し訳ありませんが、コレばかりは『ゼッタイに出たくない』ということで納得してクダサイ」
その言葉に誰もが静まり返る。啓太のページを捲る音だけが室内に響く。
「アンジェリーナが不参加の
啓太が本に眼を落としながら言った言葉に、2人は『ドキリ』としたように身を引くつかせる。咳払いしてから、言葉を紡ぐ。
「ああ……まぁ察していた。確かに家の関係上、そうだということは、な。だが……浦島、お前ぐらいは説得してくれてもいいじゃないか」
「言いましたよ。けども、本人が金主の一人である九島烈に生理的嫌悪感を覚える以上、どうしようもないじゃないですか、形としては姪孫を座敷芸者も同然に送り込むことですから、イヤでしょ」
「だが、九島閣下にとっても弟さんの孫を見たい想いが無いわけじゃないんじゃ……」
「家族・親族としての情を重んじているような人間だったらば、政府筋に働きかけて弟を戻すぐらいはしていそうなもんですけどね。そういう行動を全く起こしていないじゃないですか、そして現に九島健はいまだに、この国に帰郷することが出来ていない」
沈黙。その言葉は痛烈なカウンターであった。全員が黙るしかなくなる。
「ケイタにワタシの言いたいことは全て言い尽くされましたので―――後は蛇足でしょ」
眼を合わせて、以心伝心をしておく。本にも出てきたアンジェリーナの言葉に『ダウト』と心中で言っておきながら、これで終わりだと思い、退室しようと思ったのだが……。
「待て、浦島。お前も同じ心なのか? だから出場しないのか?」
十文字の言葉に、この為に俺を選手に含めようとしたのかと呆れ果てる。
「俺が、いる・いないでアンジェリーナの意見が変節するわけじゃないですよ。そんなことで貴重な選手枠を潰すこともないでしょ」
「?―――ああ……分かったぞ。お前は、自分が選手に選ばれるわけがないと思っていたんだな?」
「ええ、当然でしょ。アナタ方ならば今回の期末成績の写しぐらい手に入れているでしょうが、俺は、期末成績150位の、紛うことなく、完全無欠に、正真正銘の――――」
一度だけ溜めてから、啓太は言葉を吐き出す。
「―――魔法科高校の劣等生。ゆえに俺はそちらの理論主席サマよりも、この場に似つかわしくない人間ですよ」
その己を証明する言葉に司波達也が苦い顔をする。とてつもなく苦い顔をしたので、人疑いをしたこと(雪姫伝聞)に対して溜飲を下げるのだった。
「……だが、その魔法科高校の劣等生がいなければ、いま俺達はこの場にいなかったのかもしれない―――」
「大丈夫ですよ。あの時、後詰めというかいざとなれば、ニキティスさんやジンベェさんも駆けつける手はずになっていましたから」
死体が100は出来ていても相応の犠牲だろうなどと内心で考えながら、十文字の言葉を待っていたが。
「大体、150位の俺を選んでしょっぱい結果になったならば、アンタらの眼が節穴だったとせっつかれて、更に言えば―――例え、仮に俺が勝ち進んだとしてもアンタと会長は内心、穏やかじゃなくなるはずですが」
「む」
「番付を落とすわけにいかない横綱連中ばかりである以上、何か北陸から出てくる十師族が勝ち上がんなきゃマズくないですか?」
「それは……」
「そして何より、俺はCADを使うことに達者じゃない。かといって公然とマギステルの術式触媒なんて使えば、どんなアヤを付けられるか分かったもんじゃない。そうなった場合、アンタらは矢面に立たされるわけだ。ここまで懸念があるというのに、乗れん話だわ」
その怒涛の反論の意図は殆どの人間には理解不能であったが、会長と会頭が青ざめたことで、急所を突かれたことが、なんとなく理解出来た。
「ど、どういう意味なんでしょうか? 浦島君の言いたいことというのは?」
「つまり選手として登録する以上、会長も会頭も勝利を目指しているべきです。ところが、浦島君が想定の結果を出せない可能性もあるということ、そうなれば首脳部に様々なせっつきがあるでしょう。そして仮に勝ち抜いたとしても問題があります」
「え?」
中条が疑問を呈して解説していた市原だったが、これはデリケートな問題だとする。
「七草さんと十文字君は、どうやら浦島君に、アイスピラーズブレイクの新人戦に出ることを要請したようです。そして、この分野に出ることが確実視されている三高のスーパールーキーがいますから」
「一条将輝」
「仮に彼と戦うことになったとして、もしも勝ってしまったならば、『同じ十師族』であるお二人は内心穏やかではないし、同類・同属から何かを言われるかもしれない。そして勝ち方―――すなわちマギステル・マジックを用いて戦ったとしても、それにケチが着いて没収試合になるかもしれない……想定が深すぎますね。そして何より、浦島君はお二人に詰め寄っている―――『あなた達はどちらの立場でモノを言っているんだ?』とね」
市原の解説は中条以外の耳にも届いており、そういうことかと全員が納得するも……。
そうまでして、彼ら、特に浦島を入れる理由が希薄であると思う。
「大体、競技特性と俺の魔法は相性が悪い」
「けれど、あの時に見せた紋章の魔法は」
「あれが尋常な技だと思っているならば、認識を改めた方がいい。アレは天魔の御業、救世とは真逆の、世界の破滅を加速させるものでしかない」
女顔の先輩だろう相手にピシャリと告げる。名前は知らないが、恋人であろう小豆色の髪の相手が睨んでくるがどうでもいい。
「それでは―――もうよろしいですね」
「……どうしてもダメなの?」
「態度をハッキリさせない相手を大将に担いで戦うなんてことも―――己の出自も明らかにしないで自慢をする卑怯者とも戦えない」
真由美の言葉に答えた後には、そう言って2人の男子を見る。
「―――だからお前は」
「田中太郎なのか―――」
その言葉を受けて啓太は……。
「俺は誰でもないし誰かになりたいわけでもない。誰かを探しているだけなのさ」
その深すぎる態度を前にして、もはや引き下がろうとした時に……。
『何だよ。少し見ない間に、随分と逃げ腰な男になっちまったなケータ。少しガッカリだがよ―――
部活連に設置されている大型モニターが突如の起動。そしてモニターに出た人物。
金色の髪を伸ばして褐色の肌をしたエキゾチックさを持った美少女の登場に、誰もが度肝を抜かれた。
画面いっぱいに出てきたその少女は―――。
「カトラ!?」
名前を言い当てられた少女は、感極まったような顔を一度だけしてから告げてきた。
『九校戦に出ろケータ。そしてアタシと戦え』
その言葉が、どうしようもなく挑戦であると気付くまで数秒はかかったのは、当然の話で―――。
その時を以て