いや最近で言えば幽遊白書OVAにて魔界大統領(煙鬼)をやってくれたのは嬉しかった。
悪役だけじゃなくて、ああいう優しいおじさんを感じさせるのも飯塚さんの役なんだよなぁ。しみじみと雷禅を語る辺りにそれを感じさせた。
黒崎真音さんも、ちょっと前に新曲出したばかりなんだけど……持病ばかりは、どうしてもなぁ……。どうにもならない病というものには気をつけようが無いということか。
いまはただ…冥福というよりも、あちらでの安らぎ、苦しくないことを祈るしかないです。
部活連でのことが終わり、少しだけ教室待機していた達也に質問が飛び込んでくる。
「それで浦島くんは深雪さんと戦うことになっちゃったんですか?」
「なんでそんな風にけんか腰でモノを言うのかね?」
「けど、アイツが深雪さんに勝てる確率なんてあるのか?」
三者三様の言葉を受けながら、最後のレオの言葉に対して聞かれた達也は答える。
「普通に考えればゼロ%だ。テスト成績150位が1位に勝つなんてことは先ず不可能に決まっている―――」
そんな風に言いながらも、達也は……もしも、それを覆せるだけの魔法能力を見せられれば、どうしたものかと想ってしまう。
「―――だが……浦島は『現代魔法』が不得意なだけであって、
「なんつーか達也も本当にけんか腰というか、人をナメた物言いするよな……」
古典的というところを強調して言ったからか、レオからそんな風に言われてしまう。本質を見抜ける友人、というよりも達也が皮肉すぎたというところか。
(だが……あのフェイトとかいうトップクラスのマギステルと互角以上に渡り合う浦島の『本当の実力』というものに深雪が対抗できるのだろうか?)
どうなのか分からない。詠唱というものの隙を突いて戦えるのか―――などと考えているとアナウンスが鳴り響く。
中条あずさが読み上げた内容は予想通りすぎた。
アイスピラーズの形式での戦い。その準備がようやく整ったことを告げるものであったのだ。
「観戦しに行くのか?」
「ああ」
実妹の勝利を疑わず、そして……それが覆されることもあり得ないとしているから。達也は何の気負いもなく中条がアナウンスで案内した場所へと向かうのであった。
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既に会場内は満員御礼であった。一高の中でもトップクラスの魔法能力と美貌を備えた少女が。
ワケワカメすぎるが現代魔法の術理を超えたもので自分たちを圧してくる異端者を黙らせようとしている。
そういう構図である。
それに気持ちを高揚させるわけではないが、それでも深雪はこの戦いに一つの意図を持っていた。
自分の兄を名前で呼ぶこともなく『理論主席サマ』などと揶揄するような言いようをしてくる浦島啓太を這いつくばらせて泣いて許しを請うまでにしたいのだ。
(お兄様を馬鹿にするアナタを私は倒す)
……などと言う深雪の
マギステル・ネギの従者にしていちばん大切な存在でもあった能登まみ―――ではなく宮崎のどかのアーティファクトからとっくにご存知だったのだ。
(戦いに期するものが多くて大変よろしいね。俺はそういうのとは縁遠いからな)
魔法なんてものと縁がない只人としての生き方が欲しかった。自分の周りには確かに魔法使いや気功剣士と呼ぶべき存在は多かった。
だが、ソレ以上に普通に『魔力』も『気』も知らない人々が多かった。
結局の所……そういう人たちを知っているからこそ、
ただ一人の普通の人間として世界の全てを見れていたならば違った道・違った景色があったかもしれないのに……。
だからこそ、そういう風に『特別であることを嫌った』』ケンじいちゃんを日本に戻すためにも、自分は異端のチカラで以て学年主席をぶっ飛ばさなければならないのだ。
矛盾の限りであってもやらなければならない。
ルールは読み込んだ。どうやら色々と勘違いをしていたようだが、そういうことならばやりようはある。
雪姫から渡された短剣、彼女の弟子であった『少年』のものを渡された。
『アーティファクトは規格外すぎるからな。神鳴流の技を使うならば、コレで十分だろう』
などと言って、カードデッキを没収する闇の福音様なのだった。ご丁寧にも『幻術』の胸の谷間に入れるというお約束までやる人に半ば呆れつつも、まぁこれならばと思う。
そんな雪姫先生が作り上げた九本の氷柱が互いのコートにある状況。
かなり広いといえば広いし狭いといえば狭い。
要は―――『使える術式』を選ぶことが重要になりそうだ。
ルールの再確認と勝利条件の云々……アナウンスで言われたことは事前確認と間違いは無さそうだ。
七草会長の言葉を聞いて、全てに了承を端末で返すと―――どうやらあちらも不服は無いようですぐさま承認が互いに出て、スタートまでのカウントが始まる。
司波深雪がどれだけ出来るかなんてのは分からないし、興味もない。
よって、CADを読み込みすぐさま術式を投射できる状況を作り出している司波深雪を見ながら、こちらも魔力を溜め込み、左腕を握り込む。
そして、スタートブザーが鳴り響き放たれる術式―――。
司波深雪は、なんか氷で自陣を強化している。
啓太もまた『玄武陣・玉』と一言唱えて、自陣を絶対防壁に取り込むのであった。
その際に何かを押しつぶした感覚を覚えた。熱を感じるところから察するに―――。
(はぁ、どうやらそういう術式らしいな。『赤犬と青キジ』とか名付けたいね)
本来の名前は何かあるのだろうが、まぁともあれ……。
(攻撃させてもらおうかい)
光の矢―――99本が啓太の目の前に現出すると同時に司波深雪の陣に跳んでいく。
当然、それを迎撃しようと何か……物理障壁的なものが形成されるが。
その99本の矢が、33本ずつで一かたまり。収束された光弾3つを形成。
前面3つの氷柱を直撃しようとした瞬間、湾曲。直滑降。蛇行―――様々な変化をして物理障壁をすり抜けて中二本と奥一本を直撃。
砕け散る氷柱。思ったよりも少しばかり
凍結による物理的な変化などは意味がない。
「リク・ラク・ディラック・アンラック! 来たれ氷精 爆ぜよ風精 弾けよ凍れる息吹!!
だがあえて皮肉を込めて、凍気を用いた爆発攻撃を、司波深雪の陣で発動。触媒はあちらがありったけ用意してくれたので、容易に発動がした。
一挙に弾ける凍気の破裂が広がり、司波深雪が顔を隠すのを見た。どうやら圧倒的なまでの気圧の変化で、術者自身に影響を及ぼしてしまったようだ。
反省をしつつも発動した魔法で前面2本が砕け散る。残るは4本―――。
そうなった時に啓太は鞘からマチェットナイフのような短剣を抜くのであった。
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この結果を予想できていた人間がこの会場にどれだけいただろうか。
もしも試合前にこんなことを言うやつがいれば、ソイツを鼻で笑うぐらいはしていただろう。
だが、現実にこうなってしまった以上、これが
(浦島が放った『防御術』……それが、深雪に防戦を強要しているんだな……)
将棋で言えば
玉を囲われた以上、深雪はこの『穴熊』を突破しつつ、自分の玉を守らなければならない。
「なんかタマちゃんみたいなカメさんが浦島君の氷柱を守っているんですね」
『みゅう♪』
美月の頭を気に入った温泉カメなる珍種の生き物が、美月の言葉に同意を示したかのようだ。
達也の『眼』でもはっきり見えないが確かに甲羅を持った化成体のようなものが、浦島の氷柱を防御していた。それが完全に深雪のインフェルノの炎を封殺していたとなると、現代魔法でヤツを害することは不可能なのだろう。
と達也が考えていたら、そのカメが消え去った。
(展開の限界か? 違うな―――)
あえて、それを消した。要するにワザと、だ。
あからさまな手心を加えられたことに気付けるものは、そこまでいない。だが気付いた一人である深雪は、淑女としてはあるまじき歯ぎしりをしてから、最大級の魔法を発動させようとCADを読み込む。
(深雪っ―――)
読み込んでいる術が何であるかを理解した達也は、それはあまりにも無謀だ。そして、こんな相手に出すべき魔法ではない。
無言での諌めなど効かない。だが、それでも言わなければならない。
そして―――氷の霧が具現化しようとした時に。
浦島の剣が遠くから一閃。心得の無いものが見たならば、素振りをしたようにしか見えないそれが……深雪の魔法式を切り裂いた。
切り裂くだけではない……病葉に砕いたのだ。
驚く深雪。何をされたかは分からない。だが、それでもいつぞやの校門での蝙蝠崎……森崎と浦島のソレを知っているから、疑問を呈する前に魔法式を再発動。まさしくコンマ秒の展開を可能とするそれが、
(ニヴルヘイムの魔法式を切り裂くだと!?)
その事実が導く現実を再認識した達也は急いで端末を開き、―――浦島のテスト結果を再読する。
「―――なんなんだ……この干渉力と発動規模は!?」
「ご覧の通りさ」
驚愕した達也の側には、いつの間にか美人女教師が立っていた。
驚きの言葉に対して、さらなる言葉が放たれる。
「しかし、いまさら気づくとはお前も存外鈍いな」
「……この計測不能を示す数値は―――」
一回目のテスト結果でUNKNOWNを示すものに対して雪姫先生は答える。
「ご覧の通り、啓太の本来的な数値はここでは計測しきれない。だから、『抑えに抑えろ』と私が指示をして、この劣等生らしい数値に抑えさせたんだよ」
その言葉に周囲にいた誰もが絶句する。
「もっとも、その後の術式実践での数値はご覧のとおりだ。本来的な浦島啓太という少年の持つ素のポテンシャルは、この学校で追随を許すものではない」
「えーと……つまり浦島君は、現代魔法を使用するとなると、そのポテンシャルを発揮出来なくて、古式魔法でならば、それを十二分に発揮できると?」
「細かく言っていけば違うが、おおまかそういう理解で構わないさ。あと現代魔法は機械式の触媒たるCADを使って術式展開を『素早く』するのが定石だからな……No.XXXというAIと『使い魔契約』をしているアイツは、その関係でどうしてもテンポが悪くなる。これは啓太というよりもAIの問題だが、当人が、『別に構わない』なんて調子だからな」
エリカの戸惑うような言葉に、多弁に説明をする雪姫先生。その理屈は全て見切れていないが……。
学年一位の魔法を切り裂くほどの干渉力を持たせられる翔ぶ斬撃。それだけでももはや恐ろしい。
展開する度に、素早く展開されるべき魔法式が切り裂かれる現実、歯噛みしている深雪の心情を慮る。
ニヴルヘイムではなく他の魔法を展開するも―――。あっさり斬撃はそれを迎撃する。
(エアブリットを飛ばしたところで、それが通じる相手ではないか)
もはや疲労困憊と言うぐらいに肩で息をする深雪。対する浦島は欠伸をしている。
こんなワンサイドゲーム。誰が予想できただろうか。予想できたやつは……数名程度なのだろう。
「なぁもう終わりにしない? これはただの実力検分だろ? アンタはしかと俺のチカラの程を見ただろ? ならいいじゃん―――これ以上はただの『弱い者いじめ』だろ?」
その相手を気遣っているようで相手の気を逆撫でする言動。その言葉に深雪は完全にキレた。
ただの2科生が。ただの古臭い術者が。ただの男子が。
努力など何もしていないような奴の魔法が。
あれだけ必死に磨いてきた
「認めない! 認められるものかぁあああああ!!!!」
言葉と同時に生き残っていた氷柱が天高く打ち上げられる。視認できるような高さではないが、何かを掲げるかのような深雪のポーズ通りになったといえばいいのか。
「これはルール違反じゃないのかね?」
キッパリとルール違反ではあるが、その生き残っていた氷柱は天空にて巨大化をしていく。
フェイト・アーウェルンクスが放った石柱にも似たものが出来上がる。
「ほんぎゃらあっぱぱぱしにさらしゃんせ―――!!!!」
……実妹のあまりにあまりな醜態に達也は眼を覆いながら天を仰ぐ。
ヒトは己の認識したことの異常さ。自分の想像以上の現実を前にした時に、こんなことにもなってしまう。
だが、自由落下の法則以上に速度を上げた氷柱。
それに対して啓太のやったことは―――。
カッコつけのようなポーズ、というかカッコつけでしかない動作の連続の果てに。
「エターナル―――ネギフィーバー!!!!」
全身から光線(?)を放出するのであった。
全身で『X』を表現したとしか言えず胸を張りながら放出された破壊光線は、上へ上と上昇していき、落下してきた深雪の氷柱を全て溶かし尽くした上で、巨大な光の玉を生み出す。
破壊力を全て放出しつくしたあとには、そういった風な現象となるようだが。
……もはや何を言っていいのか分からない。ほとんどの魔法科高校生徒たちが、絶望しかねない。というか全員が頭を抱えて頭痛を堪えているような感じである。
浦島のやったこと全てを自分たちが行おうとすれば、どれだけ煩雑な作業と労力がいるのか……それを身体一つの資本でやり遂げる浦島啓太は……。
(魔法師全ての現実や努力を覆す存在だ)
達也ですら、母親に改造されてまで会得した魔法技能とはなんの為だったのか。
しかも、その母親は、浦島の母親と知り合いだとかなんとか……。
もはや意味が分からなさすぎて、天を仰いでいた眼を今度は下の地面に落とすしかなかった。
たとえ深雪が達也以上に落ち込んで今にも死にそうな顔をしていても、だ。
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「あー肩凝った……。本番ではもうちょっと抑え気味に戦おう……」
「「「「「………」」」」」
戦い終わってまたもや部活連の一室。誰もが何も言えないぐらいに圧倒的な勝利を収めたのに、当人がこの調子なのだ。
「―――見事な勝利だったな浦島」
「言葉だけの称賛を受け取っておきますよ。本音は、違うでしょうけど」
渡辺摩利の言葉にそう気もなく言いながら、本を開いていた啓太。
どうやら不機嫌にさせたようで、少しだけ言葉を重ねる。
「そんなことはない……と言ってやりたいが、お前の術式があまりにもとんでもなくて、私達では理解が出来ないからな……」
「じゃあ選手登録やめます?」
「そんなことはさせん。我々には不明な術式であれ、我々が理解できなくても、お前が―――今年度の新入生総代にして期末テスト1位を倒したのは事実だ……この事実一つだけでも、お前を登録する意味はある」
十文字会頭の言葉が最後の決め手になったのか、それ以上の疑問など異議は出てこなかった。
あれほどの立ち会いを見せられて、それでも何かを言おうものならば……この学校の意義……校是たる実力主義を否定しかねない。
さっさと帰りたい想いを抱いて啓太は帰宅を願い出ると、あっさりと許可が下りた。
「最後に……聞きたくないけど、聞かなきゃならないのだけど、浦島くんはこの学校に来て―――どう思っているの?」
「そんなの―――――」
―――クソつまんないに決まってるじゃないですか。
平淡な顔。何の感情も見せない人形のようなフェイスで言う浦島を前に三巨頭は何も言えなくなった。
―――そんな風なことがありつつも、過ぎ去る日々光陰矢の如しで、遂に九校戦出発の日。
……八月一日を迎えるのであった。