魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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stage.27『誤魔化しきれない事実』

 

 

九校戦会場に辿り着いて―――啓太がまっさきにやったことは、自分が宿泊する宿はどこかと思って探し出すことであった。

 

キョロキョロとしている啓太を見た十文字が、少しだけ嘆息しつつその問いに答える。

 

「ここに決まっているだろう。他に指定されているのか?」

 

「俺だけこんな立派なホテルではなく、隣りにある明日には金策的にも建物的にも潰れそうな旅館『つづれ屋』とかで寝泊まりすることになると思っていたもんで」

 

んなわけあるかという想いを全員が抱くも、浦島自身は、本気でそう想っていたようだ。

 

(どこまではぐれものなんだよ)

 

古めかしい大型のボクサーバックの締められた紐を持ちながら肩がけにしている浦島の姿は、平成初期のヤンキーのようであった。とはいえ、ソレ以上に思うことは彼の荷物はその程度のようだ。

 

「むっ、浦島。お前の荷物はその程度でいいのか?」

 

「日用品とか衣類は完備していますよ。制服はこの通りですし」

 

「ケータはいつも、このバック1つでアチコチに出向いているんですヨ」

 

よくよく考えてみれば、この男にCADの類はいらない。というか必要ないことを今更ながら認識させられたのだが……。

 

「その突き出ている刀はどうにかならんか?」

 

「銃刀法違反ではないはずですが」

 

言いながらも特に抗弁することではないと想ったのか、『沈め』と言っただけでそのボクサーバックから突き出ている刀が消え去る。

 

そんな訳でかなり荷物少なめな啓太は必然的に荷物役となり―――。

 

「家で見ていたが、こんなに必要なのかよ?」

「レディーには色々と必要なものが多いノ!」

「ちゃんと化粧室を使えよ。一昔前みたいにトイレでやるとかは止すように」

 

などとアンジェリーナの荷物持ちになっているのだった。

 

そんな様子を見ながら達也は同じく荷物を運びながら、深雪に色々と話しかけた。

 

「それじゃ浦島の警告で『何事もなかったのか』?」

 

「ええ……あのホログラフAI、№.Xという方が先んじて警告を発したわけですが……」

 

「まぁ無事だったならば何も言うことはないんだが……」

 

どうにも『出番』を奪われた感が拭えないのは、想定する状況で達也が魔法を発動することもあり得たのではないかと思えたからだ。

 

だが、現実にはテロ事件のような工作活動は交通事故として表向きは処理されて、事実の一端は闇に葬られた。

 

「今さらながら、あんな高精度なホログラフのAIを投影する―――その器材が、ただの音楽プレーヤーだなんて少々変だな……」

 

今の今まであまり気にしてこなかったことだが、この時代の工学技術で言えば、あんな自立型の、己の意思を持ったアーティフィシャル・インテリジェンス―――『人工知能』(AI)が存在しているなど、結構衝撃的なことだ。

 

そして、その人工知能はとんでもない美少女の造形で、現実の人間と殆ど『質感』が変わらない、バーチャルな存在とはとても思えないのだ。

 

(聞いたところで、そんな簡単に教えてくれないだろうが………そもそも―――)

 

「私はそれよりも、エターナルネギフィーバー……の方がなんじゃらほいという感じです」

 

あの一件以降、深雪は何とも暗い調子である。当然、練習では当たり前に結果を出しているし、他を寄せ付けない魔法能力に減じているところはない。

 

だが、終始あの魔法だか技だかを気にしているようなのだった。

 

別に使おうとか、やってみたいという訳ではないが、あまりにもアレが理不尽すぎて深雪は、色んな感情が湧き上がって少しだけ落ち込むのだった。

ならば、浦島ではなくシールズに聞けばいいと思うのだが……。

 

『ケータの全てを知っているワタシが、アンタに『チンコロ』すると想っているノ?』

 

などと西の方の言いようで怒るように言われて、問答は出来なかったようだ。

浦島とその関係者の語りから察するに、ヨルダという太陽系全てを掌握する魔法使いの災厄が来訪すると分かっていたから、魔法科高校にやってきた。

 

だが、それは別に魔法師の身体・生命を守ろうとか、別に国家的な依頼からそうしているわけではないとも取れる発言。ただそれでも、ヨルダを何とかしなければいけないということは理解している。

 

(公私それぞれの目的が交わりすぎて、シッチャカメッチャカだな)

 

自分を棚に上げて、同級生のスタンスに対して内心でのみ物申す達也……。

 

なんにせよ……浦島と自分はとことん合わない人間なのだった。

 

だが、そいつだけがそういう危機事態に対処出来るとなれば、話は別になり、そして達也としても苛立ちは募るのである。

 

そういう気持ちでいながらも荷物の搬入は滞りなく行われていき、一高の準備は全て終わるのであった。

 

 

一人部屋を充てがわれた啓太は、ふかふかのベッドに横たわりながら、この後の予定を端末で読み込む。

 

見た限り、懇親会とかいうレセプションパーティーがあるらしく、食事もそこで取ることになりそうだ。一人で食事を取ることをしたかった啓太としては厭な限りだ。

 

そんな訳で手持ち無沙汰な啓太は、少しばかり外に出て動きたい気分になる……。

特に目的のある散策ではない。ただ単に、暇つぶしをしたいだけだ。

よって誰かに見咎められるのは、少しばかり嫌だったので、『仮面』を着けてから外に出るのだった。

 

悪いことをしているわけではないのだが、気分は蛇の名前を持つ、伝説の工作員にして隠れ身が得意な兵士の気分であった。

 

そんなわけでホテルの外に出た啓太。広い場所、特に誰の目も無いところ―――草摺れを起こすだろうところにて何となく剣を振るいたくなった。

 

「出ろ、『ひな』」

『沈めと言ったり、出ろと言ったり気ままなマスターですねぇ』

「歴代の主人の中では、一番相性がいいんだろう俺は」

『ひぃっ! DV男の思考だぁ! とはいえ啓太の気は私を最大強化しますからねぇ。ただ前回のヨルダ(クソBBA)との戦いで使われなかったのは甚だ不愉快だっちゃ!!』

 

微妙にキャラが定まっていない『喋る妖刀』を地中から取り出した啓太は、その刃を抜くこと無く鞘込めのままに素振りをする。

本来ならば、日本刀などの刀剣類は、鞘のまま振るうと刃こぼれなどを頻発させるのだが、この喋る妖刀は、そのようなことは殆ど無い。

 

流石は妖刀らしく、自動で修復されてしまうのだ。こわっ。

 

『あふんっ! 啓太が私を鞘に込めたまま振るい続けるぅ。気分は着衣☓☓☓! マニアックな趣味をしているご主人だことっ!!』

 

やっぱコイツを持ってきたのは間違いかなぁとか思いつつも、振るい続ける一刀に間違いはなく……。

全ての工程を終えると、どこからともなく拍手が聞こえる。

 

「いや、見事な限りだね。思わずその剣に見惚れてしまったよ……」

 

女顔、そうとしか表現出来ないのだが、男物の魔法科高校の制服をまとっているからには、コイツは男なのだろう。

 

明確な違いとして制服の色味が違うし、校章も違うが啓太はそこまで知らない。詳しくないので、とりあえず魔法科高校の男子A。

 

サイドで髪を纏めて垂らしている男子に―――。

 

「キミは?」

 

名を聞いておくことにするのだった。

 

「僕は時()九郎丸―――故あって現在は京都の『宗家』に預けられている身だ。お会いできて光栄だよ。ひなた神鳴流の剣士『浦島啓太』くん」

 

どうやらとっくに素性はバレていたようだ。そして京都という地理的な面から『二高』の出身者だと気づく。

 

「ふぅむ。まさか青山宗家の剣客がやって来るとはね―――で、何か御用かい?」

「剣を交えてもらいたい。キミが正調の剣客ではないことはよく知っている。けれど木乃香様がーーー。

『くろーまるくんは啓太くんと一度手合わせしたほうがええな。まぁ九校戦であったらいちどしばいとき』と言っていたからね」

 

茶を、牛を『しばく』ならば分かるが、その言葉の意味を九郎丸という剣士はそっちで捉えたようだ。

 

それにしても……。

 

「時逆くん。キミ本当に男か?」

「よく言われるよ。けれど僕は男なんだ! 男同士の戦い!! 受けてもらえるよね!?」

「宗家の剣士サマに挑まれたならば、門下の一人としては受けざるをえないわな」

 

しちめんどくさい思惑を抜きにして、ただの力試しをするという予感を前にして―――。

 

『フッフッフッ! 私の御主人様の魔剣・昼の月がアナタを打ち負かしますよ!!』

「すごいな浦島君! そんな独自の技法まで体得しているだなんて!」

 

んなもんはねぇ! と言ってやりたいが、期待しきった時逆君の心を裏切るのは、どうなんだと思いつつも、戦いは始まるのだが……とりあえず人避けの結界を張ることで、この戦いを人目に着けることだけは避けるだけの思慮は互いにあったりした。

とはいえ……そんな2人の気功剣士のぶつかり合いは激しいものとなりて、カンのいいものたちの耳目を集めるも……どこでそれが行われているかをハッキリと認識できずに、やきもきするのは司波達也なのであった。

 

 

 

「フーン、それじゃそのクローマルとかいうセイバーと戦っていたワケね。ワタシを一度も誘わずに」

「悪かったよ。けれど別に俺に四六時中引っ付かなくてもいいだろ。他の連中と交流することも大切だろアンジェリーナ」

「ソレをケイタが言っちゃうとか、ホンマツテントウすぎるワ」

 

別に俺は退学しろ(出ていけ)と言われたならば、それに素直に従う人間だもの。とは言わずに、アンジェリーナの相手をしていたのだが……。

 

「浦島君……何でその制服なの?」

 

そんな自分の格好に疑問を持つのは会長であった。

 

「は? 普通に俺の制服じゃないっすか? 何か文句でもあるんで?」

「あ、あるわよ! 何でちゃんと『校章』が刻まれた制服を着ていないのよ!?」

「別にいらないでしょ。制服のカラーリングでどこそこの学校であると気づけるでしょ」

 

その言葉に真由美は、そういうことではないと言いたくなる。いざ懇親会の会場へと向かおうとした矢先に、このようなことをするなんて……。

 

「十文字くんは制服を貸して―――」

「いや、いいんじゃないか七草。そんな『おためごかし』のような真似をしなくても」

 

その言葉に真由美はどういう意味だと詰問したくもなる。

 

「つまりだ。浦島が2科生であることは事実だろう。だとすれば、さもこういう場に立たせる時だけ、如何にも『自分たちと同じ』みたいな衣装を着せなくてもいいんじゃないか?」

「達也くんには貸したのに!?」

「お前が『達也君もちゃんと一高の一人であることを認識させるためにも、1科生の校章付きの制服を着せるべきよね』とか言っていたから、サイズがそれなりに合うものを貸しただけだ」

 

何も言われなければ、十文字も特に何もしなかったであろう。

 

「こういう場でだけ取り繕うような真似をしたところで意味はないと思うが、それとも俺たちが2科生を連れてきたことは、他に対して恥じるようなことなのか? 七草」

「ち、違うけど……そうじゃないけど……」

 

まるで自分がその場しのぎの言い訳の為に、制服の偽装を図ったような心地にもなる。というか見方を変えれば、『真正面』から取ればそうでしかない。

 

「だったらばいいじゃないか。司波は違うようだったが、浦島はそういったことの『真意』を見抜いて『いらない』としてきたんだ」

「……何で、どうしてそんなにまでも……はぐれようとするの? 私は別にそこまで意地の悪い考えではなかった。ただ単に……」

 

次の言葉が真由美から出てくることは無かった。

よくよく考えてみれば、そういう風な各校に対する対外的な、単純に言えば『汚点』を隠そうとしたのだ……。

確かに達也も浦島も2科生としては両名あり得ざるものを持っているが、それでも2科生を連れてきたという事実。『校章』を着けることを許していない人間がいるという、内側の問題を隠蔽しようとしたのが発端であったのだ。

 

「だから俺は別にこのままでいいんですよ。一高の2科生として堂々としていればいいんだ。別に俺が縮こまる必要もないし、何でキミの制服には校章が無いのか?って聞かれたらば、それを正直に話せばいいじゃないですか?」

「―――――――」

 

それを恐れていた真由美としては、浦島の言い分は世間的には『正々堂々』としていても、どうしても……飲み込めきれない。

 

「あなたの行動一つ一つが……わ、一高の看板を潰していくわ……」

「潰れて困る看板なら、元から首に下げないで懐に仕舞っときゃ良いんだ。不備を認めたくらいで泥かぶるような看板なんざ、元々ねぇも同じだ」

 

痛烈な言葉だ。何でここまで付和雷同せずに、不和雷動ばかりを巻き起こすのか……。

 

コイツを連れてきたのは間違いだったんじゃないか? そう思う面子が多くも、懇親会会場への扉は開け放たれ、そして……九校戦の前哨戦は始まるのだった。

 

 

 

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