魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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水星の魔女よ――――――ありがとう!!

スレミオエンドでいいんだよ……尊いよぉ。

というわけで新話お送りします


stage.31『始まる九校戦』

 

「さて、どうしたものかな」

 

別に司波達也と仲良しこよしではない啓太は、一緒に行動することはしないようにしておいた。

 

昨日の一件であちらは気まずいだろうから、開会式を終えた後には別行動をすることにした。ちなみに言えばアンジェリーナも、そちらに同行するようだが、啓太としては別にいい。

 

(俺みたいなつまんない奴に構っていてもしょうがないだろうさ)

 

だから―――。

 

「け、啓太くん……、お、おはよぉおお」

 

「―――ああ、お早う。開会式にいないみたいだったからよほどの状況だと思っていたんだが」

 

何気なく目線を向けた方を見ると……昨日、司波達也と一緒に色々あった男子が、かなり奇態な格好でそこにいた。

 

(麻帆良女子中学の夏制服……)

 

JCにしちゃスカート丈が短すぎる学校の制服を着た男子がいたのである。

 

「ダーナのコーディネートは、しばらくは続くからな。雪姫なんて幻術に干渉させられて、土偶のような格好を数日間させられていたから」

 

近づきながらフォローするも……。

 

「それ何の慰めにもならないよ!」

 

ダメだったようだ。泣きそうな顔で、こちらに縋り付く九郎丸だが、いちおう啓太には解決する手(姫御子の剣)はあるのだが……。

 

(あえて、そこまですることもあるまい)

 

何より大師匠(ダーナ)のペナルティなのだ。下手に解除すればどんなしっぺ返しがあるか分からない。

 

「ほれ。とりあえず先輩方の競技の様子でも見に行こうぜ」

 

「―――うん」

 

手を差し出して、どうしても恥ずかしがる九郎丸を木陰から出すことに成功するのだった。

 

 

試合自体は滞りなく進んでいく。その様子は、予定調和すぎるぐらいに、下馬評通りすぎた。

波乱の一つでもあるかと思えば、そんなものはなく過ぎ去るがままに勝利をしていく一高の先輩方である。

 

結局の所、懇親会で浦島が言ったとおりに「ウチの先輩方はめっちゃ強い」ということだ。

 

(だが、それ以上にこの場で一番に問題なのは不機嫌を隠せないでいるシールズだ……)

 

最初は、生徒会役員として自分たち―――俗称・司波組と観戦することを了承したが、本人は浦島啓太と観戦したかったのだろう。

 

そんな浦島は……自分たちと離れてはいるが観客席にいたのだが……その隣には女子とみまごうばかりの男子がいたのであった。

 

時逆九郎丸。昨夜色々とあった達也も知らぬわけではない少年と談笑する浦島の姿は色々と目立たないわけではなかった。

 

そこに紺野カオラと偽名を名乗っているモルモル王国の王族たるカトラ王女もやってきた上に更に四十九院沓子という女もやってきたりする。

 

「あまり他校の選手と馴れ馴れしくするのは、どうかと思うがな……」

 

だが所詮は二科生として侮ってくれている方がいいと思うし、何より浦島は達也の立てた作戦など知らないのだから……。

 

つまり「はぐれもの」らしいやり方ということだ。

 

(しかし、眼が使えないというのは不便だ……)

 

狭間の魔女……魔法師など浅すぎる存在として「先」に至っていた超人の前では、達也など子供どころか赤子扱いだった。

 

(本来ならば深雪の安否が分からないことで取り乱すかもしれないのだが……ソレがないということは、俺の精神に対する処置も何かしていたのかもしれない)

 

母が、専門的な外科手術装置のようなものを使って自分の脳改造をしたというのに、あのウィッチ・デラックスは頭を一叩きしただけで、達也を改造したのだから。

 

考えながらも、本当に試合は滞りなく進み、先輩方の使う魔法に対して同級生に説明を行いながら、時間は過ぎていくのであった。

 

 

昼時―――。

 

九校戦の会場が軍の関係だけに、呼びつけられるだろうと踏んでいた達也は、予想通りに軍人としての身分である自分が呼びつけられたことに驚きはしなかった。

 

「来たか。まあ、掛けろ」

 

警備の兵士に案内されて来た達也は、風間という国防軍の少佐からざっくばらんな口調で椅子を勧められたが、居並ぶ幹部連に躊躇いを見せた。

 

だが、それでも「顔見知り」である人間たちからアレコレ言われて結局の所、おとなしく着席するのであった。

 

様々な近況報告や直近での軍での活動などを言い合っていると、話は昨日のことに移る。

 

「実を言うと、京都新名(・・)流なる流派の剣士……二高の生徒、時逆九郎丸と戦いまして」

 

「一方的にやられたのね」

 

「―――仰るとおりです。響子さんは知っているんですか?」

 

時逆と京都新名流に関して。言外に含んだ達也の疑問に対して、藤林響子という妙齢の女性は少しだけ苦い顔をしながら話す。

 

「京都神鳴流というのは、簡単に言ってしまえば「御霊調伏」(ごりょうちょうぷく)の為の剣術流派―――京都・奈良・大阪など俗に「上方」にて発達したものなのよ」

 

「その歴史は古式魔法師と同じくするぐらいには長いものだ。彼らの主敵は、「魔」「鬼」と呼ばれる存在だった……それゆえ、その流派の奥義には必然的にそれらを滅ぼすほどのエネルギー量や「意味づけ」が成されていった」

 

「魔と鬼ですか……」

 

響子と風間の言葉に達也は少し戸惑う。

 

現代魔法師の感覚ではなんともファンタジックなものだが―――いや、確か沖縄で俺は―――。

 

「君の同輩 千葉エリカ君の実家たる千葉流とは術理が違いすぎる。彼らの剣技や術理の全てが「対魔法師」ないし「対軍人」を想定しているとすれば、彼らは己たちの常識が及ばぬものを想定していた―――」

 

「中でも魔法界―――ムンドゥス・マギクスにおける桃源神鳴流は、「不死殺し」というものに長けたものだ」

 

真田と柳の言葉が続けて言われる―――どうやら、この隊の中でそれらの世界の裏側に関して知らなかったのは、達也だけであったようだ。

 

「年若い、というか外国に「遠征」することが出来ないお前のような軍人としては非公式な人間には分からないだろうが、立派な魔法使い=マギステル・マギと軍は時に衝突し合うこともある」

 

その言葉に達也はどういうことだと思う。

 

「彼らも別に国と国、あるいは反政府軍と政府軍とが戦うこと自体は特別干渉はしない。彼らが、NGOとして気にかけるのは、その戦いに巻き込まれる形で出る民間人の被害、襲われる民間の共同体だ」

 

それは有史以来無くせない戦争というものの宿痾であり病気である。兵隊・警察など「強さ」が常駐していない「弱い群れ」を見つけた兵隊たちがやることなどいつでも同じである。

 

「だが、現代においてはそういった弱い共同体の民衆が反政府軍に迎合することもありうる。そもそも戦をする道義が貧困・飢餓によるものならば、尚更だ」

 

「そして、反政府軍と敵対する政府軍の作戦を邪魔する形で、マギステルは政府軍と事を構える、と」

 

「……ああ、正義や道義なんてものは、簡単に定義出来るものではないが……それでも彼らマギステルは、そういう『手の届かないところ』にある嘆きを解消することを己の魔法の存在意義としているからな。全くもってクラーク・ケント(スーパーマン)な存在だ」

 

「………」

 

達也は、風間の自嘲気味の言葉に応える言葉を持ち得ない。

それは、達也が狭量すぎる人物であり、それ以上に自分たちの『魔法』がそういう公徳心とか公共精神とかの元に使われるものではないとしてきたからだ。

 

―――その内……キミみたいな魔法師(まほうし)まほうし(魔法師)している凝り固まった思考の人間がヨルダみたいな『イッちゃった人間』になるんだろうな。ヨルダと同じく魔法師だけの国家でも作るか?―――

 

いつぞやあざ笑うように浦島から言われた言葉が頭を過る。

 

そういった風な国ではきっと、魔法師にしか『人権』は与えられず、魔法師どうしでの婚姻しか認めず、その果てに生まれた子供に魔法能力が無ければ、その子供は捨てられる……。

 

かといって自分のような改造をして人間として難を発生させてまでも、自由意志や自我が薄弱な子供が、それを選ぶだろうか? 選ぶ余地の無い選択肢を突きつけることを良しとするのだろうか?

 

答えは尽きないし、出ない……。

 

自分がもしかしたらば、『最終的な考え』として作ろうとしているユートピアならぬパラダピアは、デストピアでありディストピアでしかないのか―――。

 

「どうやらよっぽど浦島啓太にやり込められたようだな」

 

「少佐……」

 

自分の苦悩を見透かした風間の言葉に、気付かされた達也だが、その後の会話は何事もなく進み『魔女』のことを話そうとしても、話せないままに食事会は終わる。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

一日目の競技、スピード・シューティングは、大方の予想どおり、女子部門で真由美が圧勝、男子部門も一高が優勝した。

 

「会長、おめでとうございます」

あずさの祝福に、真由美が笑顔で頷く。

 

「ありがとう。摩利も無事、準決勝進出ね」

「まずは予定どおりだな」

視線の先で、摩利が頷きを返した。ここまではあくまで予定調和。下馬評通りというか波乱もなく終わった感がある。

 

既に夜も更け、食事も入浴も終わって、あとは眠って英気を養うばかりの時間、真由美の部屋に女子生徒会役員マイナス1プラス風紀委員長=差し引き問題なしが集まっていた。

 

そんな訳で話題はいろいろなものに飛び火する。

 

その中でも一番は……。

 

「私も『眼』でそれとなく見ていたけど、確かに麻帆良女子中学の制服を着た『女の子』といたわね……」

 

「私達が戦っている時にアイツはナンパでもしていたのか!? 全く不謹慎な限りだな!!」

 

魔法科高校の生徒としては、不真面目な生徒に向くのだった。

特に渡辺摩利の憤慨は大きすぎるもので深雪としては、なんで私がフォローしなきゃいけないんだという気持ちでいながらも真実を話すことに。

 

「いえ、兄によるとその子は二高の生徒で、しかも『男子』なのだそうです」

 

『――――』

 

室内にいる深雪を除く全員が、なんとも言えぬ表情をする。そして端末に示した相手の顔を見た真由美会長が。

 

「そうそう! この子だわ……時逆 九郎丸……本当に男の子なのね」

 

「あるいは『男の娘』という可能性もあるが……とはいえ、他校の生徒と勝負の場で親しくしているというのは、あまり間尺が良くないだろうしな」

 

会長と風紀委員長の言葉。それを聞きながらも何で浦島啓太は、ここまで『はぐれている』のだろうと考える……。

 

はぐれものすぎて、別の意味で腫れ物に触るような扱いを受けていることに、何も感じないのだろうかと思うも……。

 

「とりあえず浦島君のことは私に任せてくれない?腹案があるから」

 

思案の顔から少しだけ、魅惑の笑顔を見せた真由美に対して何をする気なのかと一同は、少しだけ不安を覚えるのであった。

 

 

翌日―――。

 

「なんでここにいるんだ?」

「知るか。俺だって来たくて来たわけじゃないんだ」

 

なぜだか知らないが、真由美会長の登録競技の第二種目……クラウド・ボールのベンチ要員として、啓太はフィールドに寄越されたのであった。

 

 

 

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