魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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stage.32『九校戦2日・3日』

九校戦二日目。

 

今日もまた女装せざるをえない状況に陥っている九郎丸君とともに観戦をしようとした時に、真由美会長からお達しが来た。

 

ちなみに言えば伝達役は中条先輩だったのだが……。

曰く『他校の生徒と観戦をするということは対戦形式の今大会においてあまり良くはない」

 

『当然、作戦漏洩の可能性なども含めてあまり適切ではないので、今日においては七草真由美のベンチサポーターとしての随伴を命じる』

 

堅苦しい文言をそのままに伝達する中条先輩は、本当に『子供のお使い』よろしく三国志演義における『魯粛』も同然だった。

 

拒否権を発動するというよりも、そんなことに付き合うつもりはないのだが。

 

『いざとなれば出場選手登録を抹消する』と、そこまで言われて、流石に啓太も焦り……そうしたのだ。

 

(とはいえ、やることなど無いな)

 

CADの調整は司波達也がやるし、相手の情報もアレコレ手に入れているらしい。

 

よって啓太はオーラ(気配・生気)を限りなく薄くする『絶』の応用『絶る』ことで、存在感を無くすことにするのだった。

 

当然、嘘である。だが、そういうことは出来なくもない。

 

そんな会長と司波の様子を後ろから見ていたわけだが……三年のCAD担当者が、イチャコラしていた会長と司波に突っかかっていた。

 

どうやらこのヒトは2科生が九校戦にいることが、許せないようだ。

 

「いどのえにっき」の『インスタント』版を開きながら、そういう思考盗聴を行う。

 

このアーティファクトの初代使用者は相手の名前を呼ぶことで、離れたところからでも(限度はある)その相手の思考を読めた。そして何も言わなければ、本人の深層意識を読み取くものだ。

 

だが、ランクアップしたのか啓太が使うとこうなるのかは分からないが、啓太が使っているこの本は、何気なく意識を向けただけでも相手の思考を読み取る。

 

前の持ち主(能力者)の心の闇に想いを馳せながら、能力を自分のものにしていく……。

 

”偉大なる魔法使いの愛戦乙女”(マギステル・ネギ・アデアット)の醍醐味である―――当然、アンジェリーナには『悪趣味』と言われたのだが。

 

和泉とかいう先輩も啓太に一家言あるらしき心持ちだったので、気配を限りなく殺すことで、存在を認識させなかった。

 

四葉の改造魔法師だと白状してしまえば、このようなことを言われなくて良かろうに、良くわからん男だ。

 

だが、はっきりしていることがある。

 

コイツは分かりやすすぎるぐらいに、価値観がはっきりしている。

 

そんな訳で限りなく意識を逸らさせることで、啓太は領域外の妹(メアリー・世良)ならぬ認識外の(GUY)になるのであった。

 

などという啓太の企みは、実に準決勝まで成功していた。

 

「いやいや、お二人してイチャイチャコラコラのイチャイチャパラダイスしている様子でしたので、監視するためだけに置いたというのならば、俺は出来るだけ身を隠して日陰者としていただけですよ」

 

「「――――――」」

 

準決勝に挑もうとしていた時に、『絶()時間』が切れた後には、そんな言い訳で凌ぐのであった。

 

「相手の意識外及び認識外に身を置く……そんなこと出来るの?」

 

「まぁやろうと思えば。兎に角俺のことなど構わずに、イチャイチャパラダイスしながら、チャンピオンロード進んでくださいな」

 

ブラボーの拍手ぐらいは、するつもりなのだから。

 

「とりあえずそのイチャイチャパラダイスだのイチャコラだのいう表現はやめてくれ。露悪的すぎる」

 

「己を客観視できないというのは、不幸なことだよ」

 

そんなやり取りをしながらも、啓太は何もすることなく終わり、結果は優勝するのだった。

 

(この大会の『本義』ってのは、勝つことだけにあるのか?)

 

表彰台に上がる優勝した七草会長とその他の選手の様子を見比べながら、冷めた思いを持つ。

 

(どうでもいいな)

 

啓太にとっても、勝つことだけが本義だ。九島健という翁の推奨した教育プログラムの有用性を突きつける。

 

そういう意味では同じ穴のムジナということだ。

 

 

2日目を終えて、今日までの結果は大体は予想通りというところのようだ。

 

特に思うところもなく手持ち無沙汰で、夕飯を食べたあとに暇をしていた啓太はお気に入りのサウンドを再生させておく。

 

エックスというAIは啓太のバイタルやメンタルバランスというか脳波の波長などを読み取って、最適な音楽を提供してくれるのだ……。

 

その選曲が何故か『全力☆Summer』(アホガール)からの『Shangri-La』(蒼穹のファフナー)という半世紀以上前のネットミームなどをやっちゃってくれたのだが……。

 

一人部屋で、まぁそれなりによろしくやっていた所に来訪者がやってきた。居留守を使ってやり過ごそうかと思ったが―――。

 

「なんか用ですか?」

「いや、まぁちょっと話したいと思ってな。部屋に入っていいか?」

「ダメです。カフェで話しましょう」

 

夜中にやってきた渡辺摩利の言葉に即答。話があるとしても、男子の部屋に女子が気軽に入るべきではないだろう。

 

俗に『男女七歳にして席を同じゅうせず』というヤツである。

 

おっかない『お袋』から躾けられてきた啓太からすれば、そういうものなのだ。

例外は『親戚』の女の子たちばかりである。

 

よって……。

 

「委員長の言いたいことってどーせ、協調性を持てとか、もう少し会長に優しくしろとかそんなところでしょ」

 

「そ、その通りだ―――って待て待て! その香車を進めるな!!!」

 

「いい加減、サポートAIを使って『指し手』のアドバイス受けた方がいいですよ」

 

パーカータイプの寝間着を着た美少女と、将棋を指しながら話をすることにするのだった。

 

立体投影型の将棋盤という、罰当たりなんだか進化したのか分からぬものを打ちながら推察したことは当たりであった。

 

その辺りは観念したらしく口を開いてきた。

 

「お前が九校戦に賭ける想いがみんなと違うのは分かる。別に、そこは置いておくとしても……あまり、こう……誰かの神経を逆撫でするなよ。まぁ、他校の生徒と交流することすら妨害したことは悪かったが」

 

「そもそも、会長及び生徒会役員たちが俺を入れた理由が分からないんですよ。あの司波深雪なんか絶対に強硬に反対したと思いますが、ね」

 

その言葉で押し黙る辺り、まだまだ委員長も甘ちゃんである。

 

「確かに真由美がお前と達也君を入れた理由は、2科との軋轢を何とかしたかったからだ……。このままいけば、ヨルダという存在が災厄を齎すと分かっているからな」

 

「そうですか。どの道そういうのって、雪姫が言っていた通り意味がないと思いますよ」

 

「……どういうことだ?」

 

「根本的に意味がないからです。何故ならばヨルダは人々の心の闇……劣等感につけ込む。それは別に2科生だけではないからです」

 

「そうなのかもしれないが……けれど―――」

 

「雪姫は違う意見かもしれないですけどね。俺は別にこのまま軋轢が続いてもいいと思うんですよ。その分、ヨルダの憑依体の候補が増える。

そして、憑依体を潰していけば、ヨルダの力は削られていく。それだけです」

 

その考えの奥底にあるものは、即ち……来臨したヨルダによって、一高ないし、魔法師がどれだけの被害を被っても構わないということだ。

 

そして生贄として魔法師は最適だという考えであると気付けた。

 

「―――そういう考えなのかっ? 浦島、それがお前の考えなのか……?」

 

驚き、何より信じたくないのか声が上擦っている委員長に、更に冷たく言い放つ。

 

「冷酷非道でしょうね。けど別に俺は一高という場所に思い入れもない。特別な魔法師になりたいわけでもない。一部を除けば親しい魔法師なんていない。だから、いざという時にどんな『行動』も取れる」

 

一昨日の夜の九郎丸の行動は、最終的には啓太が取るべきものでしかない。

 

行動の全てから感情を切り離せるマインドセット。

それは『はぐれもの』にしか出来ないことだからだ。

 

「何者でもない誰かを『成らせる』こともしてこなかったツケを、支払う時が来たってだけです」

 

言葉と同時に摩利の陣に進めた『歩』が『と金』として『王将』()を追い詰める一手になった。

 

「飛車角・金銀だけで全てが決せられるならば、面倒はないでしょう。だが、残念ながらそれは無理。何故ならば、ヒトの資質なんてものは、『磨かなければ』()のまま」

 

そして磨くことが『出来る』人間……『努力をする機会』すら限られているならば、そこまでだ。

 

次には『成桂』が、摩利の玉を追い詰める。必死で逃げたりしていたのだが、最後には『歩』で詰みとなるのだった。

 

「―――――」

 

盤面の全てが皮肉でありながらも、それで投了させるほどの棋力……。魔法師的な価値観としては意味がないが……それでも少しだけ、魔法師としての価値だけに拘泥している自分が『浅い』と思えた瞬間だった。

 

「明日は委員長、準決なんでしょ。頑張ってくださいよ」

 

「成り歩や成り桂で負けないようにするべきかな……」

 

成り歩(と金)は『自分に追随しようと成長してきたヒト』

成桂(成り桂)は『ユニークな方法で戦ってくる相手』

 

そういうことなのではないかと思ってしまう。

 

「明日、勝負を決するというのに、ここで勝負運を使わせるわけにはいかないでしょ。何か『良くないもの』も見えていますし」

 

「お前、卜占とかも出来るのか?」

 

「亀卜、亀甲占いとかは親戚……南の方の『乙姫家』から何となく教えられましたし」

 

『みゅっ?』

 

肩の上にいつの間にか乗っかっていたタマを構いながら、訂正しておきたいこともある。

 

みんなして勘違いしていることだが、厳密な『浦島太郎』の話……諸説あるが原典たる『浦島子伝説』における最後―――太郎が玉手箱みたいなもので変じるものは『鶴』(ツル)なのだ。

 

反対に乙姫こそが、海神の眷属とも蓬莱の女性の化身である『亀』なのだ。

 

鶴は千年亀は万年などはこの辺りからも来ている……。

 

(などという講釈はどうでもいいか)

 

ともあれ、摩利の『不運』を払うためなのか、柴田美月と同じく気に入った頭なのかは分からないが、タマは摩利の頭の上にて虚空を見つめている。

 

『みゅ〜〜〜〜』

 

「ど、どうしたんだタマは? 別に悪い気分ではないが、何かアレだぞ!?」

 

「意味不明です」

 

混乱している委員長の様子を見ながら茶を一服。

唄うような調子でいるタマはワンコーラス歌いきったあとには、摩利の頭から飛び立ち、ヒレを使って『Good Luck!』とでも言わんばかりにサインをするのだった。

 

「ああ、ありがとう……しかし、タマは本当にただのカメなのか?」

 

「それは我が家でも長年考えてきた、答えの出ない難問です」

 

そんな言葉でお茶を濁すのであった。

 

 

翌朝。昨日のことがあったので、とりあえず今日はベンチ要員ですらないと言われて万歳三唱をココロの中で叫びながら、観戦席へと九郎丸と共に向かおうとしたのだが―――。

 

今日(TODAY)こそは、ワタシとイッショにいてもらうワ!!」

 

立ちはだかるは金髪のイナズマ女であった。解せぬ。

とはいえ、九郎丸も同行することは了承してもらったのであるから、良しとしておく。

 

「浦島、俺たちもいいか?」

 

「ダメだ。俺のハーレムを邪魔すんな」

 

司波達也の言葉に返したセリフは、他の面子を色々と吹き出させたが、啓太としては至極真面目である。ちなみに言えば、アンジェリーナは『キャー(≧▽≦)』という感じになりながら、啓太の腕に抱きついていたりした。

 

九郎丸は桃源神鳴流よりの四葉への刺客。そうだというのに接触を図るなど、こやつは何を考えているやらである。

 

「お前だけが他校の生徒と交流しているってのは、何ていうか色々と負けている気がして……な」

 

「別に良くない? みんなして氷炎将軍みたいに『勝つこと』だけに執心しているんだし、俺だけは別口で九校戦を見ておくのさ。君も勝つことだけが楽しみなんだろ? 司波達也クン」

 

「………」

 

だから従弟から好かれないんだよ。そう言外に含めつつ、押し黙った司波達也を置き去りに、浦島啓太は観客席に向かうのだった。

 

 

 

「なんと! それでは、渡辺選手は水難に遭うかもしれんのか!?」

「分からんよ。ただタマが警告を発して俺の目にも『良くない』ものが見えたからな」

 

沓子の言葉に応えつつ、余計な手出しにならなきゃいいなーと思いつつ、今から始まろうとしているレースには沓子の先輩……水尾という三高の人間もいる。

 

敵失につけこむというのも勝負ではありだろう。

プロボクシングという真剣勝負の世界では、出来上がった傷を狙うのは常套手段なのだから。

 

などと考えつつも、自分とアンジェリーナ以外の面子にふと聞きたくなることもあったりする。

 

それは、こうして他校の生徒と観戦していることに関してである……。

 

「ワシの方は、カトラの案内役として他校の生徒と交流するという名目を得ておる」

「一高の『田中太郎』なんてのと一緒にいることに、怪訝な顔をされちゃいるがな」

 

沓子とカトラの言葉にそういうもんか、と思っておく。

 

「僕の方は、近衛さまの取り計らいで特に無いよ。気遣いありがとう啓太君」

 

「なんの」

 

「タダ、クローマルのソレはドーニかならないの?」

 

「ぼ、僕も何とかしようとはしているんだよ!!ただ、流石は狭間の魔女、ダーナ・アナンガ・ジャガンナータゆえか……まだ解呪にはいたらないんだよ……」

 

ジト目で九郎丸の『強制女装』というアホな術に対する感想を言うアンジェリーナ。 焦る九郎丸だが……そんなことを言っている内に、状況は始まる。

 

一応は、啓太もこの競技に出る以上は何か三高にすべきものでもないかと思う。

 

まぁ通り一遍のことは、練習時点で覚えたのだが……。

 

順調なレース、どうやら杞憂だったかな。などと安堵しようとした時に、変化が起こる。

 

「遅延魔法? いや、ウイルスAIか」

「探れエックス」

 

明らかに妙な動きを見せた七高の選手の動き。制御が効かない原因は、どうやらCADの不調にあった。

 

高度電子技術の結晶に身を委ねすぎた結果といえるだろう。

 

だが、そんな人物を助ける様子の渡辺摩利。だが、そんな摩利も不調になる。

水面が陥没する―――としか言えない原因不明の現象で魔法が不安定になる……。

 

 

 

―――なるかに見えたが……。その前に、水面は『通常通り』になり、摩利の意図したとおりに七高選手は助けられたが……。

 

「リーナ」

「YES」

 

ことの全てを見終えずに瞬間、2人の男女が観客席から突如居なくなった。早業すぎる『瞬間移動』

 

それを見ていた周りの人間たちは驚く。当然、2人の近くにいた人間たちは、更に驚くことに。

 

「ふ、ふたりはどこに!?」

「下手人を捕らえにいったようじゃ……時逆、お主。破魔の術法は使えるか?」

「あ、ある程度ならば……四十九院さん。どういう―――」

「いいから来い!! あの七高の先輩(パイセン)はよろしくないものに取り憑かれているんだよ!!」

「ぐええええ!! ちょっと王女サマ―――!!!」

 

戸惑う九郎丸の襟を掴んで直行するのは、2人の乙女と―――1匹の亀であった。

 

そして―――。

 

「別に大して大きい義憤を覚えているわけじゃないんだけどな。ただ、お前の野望はとりあえず阻止しておくよ」

 

「ムダダ。ワレワレはドコニデモ存在デキル。今回ノ依頼主(クライアント)は中華の結社『幇会』ノヒトツダッタ。ソノ意味ハワカルカ?」

 

「妨害等々は今後も続くということか、お前たちビリーナンバーズっていうのは、時に不合理というか……訳わからん行動するよなー……」

 

創造サレタ存在(クリエイター)の意に反スル被造物(クリエイション)―――アナタニハトックニゴゾンジダロウ」

 

成程、皮肉を言うぐらいの知性(プログラム)は残っているようだ。

アンジェリーナと『イクス』による戒めで動けず、何より身体を半欠け……8割欠けているというのに……。

 

「なにはともあれ落とし前だけは着けておくのが筋か! さらばだっ!!」

「サーt――」

 

妖刀による斬撃一閃で『実体化したプログラム生命体』は遂に消滅を果たした。

 

一瞬ではあるが、『エックス』に縋るような視線を向けたが、それだけだ。

 

そして―――……。

 

「何か買い食いしてから戻るか」

 

――迷惑掛けてしまった礼というほどではないが、気分転換のためにアンジェリーナと少しだけ遊ぶことにするのだった。

 

「OH! ちょっとしたデート!ワタシは嬉しいけどカトラ、トーコに怒られないカシラ?」

「お土産を買っていけばいいだろうさ。それぐらいは許容してくれるはずさ」

 

そんな風な会話をする男女が、数分前にはとんでもない殺劇を繰り広げていたことを知るものはいない。

 

 

そして夜……。

 

「色々あるが……お前たちは、渡辺を襲ったアクシデントに関して何か知っているんじゃないか?」

 

呼び出された啓太とアンジェリーナは、強面の十文字の質問に関してどう答えようかと思い悩むことになるのだった……。

 

 

 

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