魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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stage.35『新人戦一日目・夜』

 

 

夕食を終えて、何気なく夜に歩き出した啓太は、伸びをしつつ、夕食会でのことを考えるに『面倒くさい想い』を覚えるのだった。

 

(どうせそんなことだろうとは思っていたさ)

 

選ばれた一年連中の多くは腑抜けているとでも言えばいいのか、どうにも勝負事に弱い連中であるとは理解していた。

 

よって、『1科生と理論主席サマだけを称賛しといたほうがいい』とは言っておいた。要するに啓太が予選突破したことなど無視しておけと言ったのだ。

 

聞かされた七草会長は、それだと自分にヘイトが集まるんじゃないかとスゴく嫌な顔をしてきたが……。

 

『俺は同級生から好かれてませんし、皆さんは勝つことが好きなんでしょう。ならば主要な連中を『ヨイショ』しとかないと、取り返しのつかないことになりますよ』

 

と……さも真理かのようには言っておいた。当然、これはある種のギャンブルである。一応は1と2の和解だか融和だかを求めている七草会長からすれば嫌な提案ではあったろう。

気に入らない気分は当然、感じていた。

まぁそれが本心かどうかは啓太にはどうでもよくて、ただこの大会で一高が総合優勝することだけが目的であるならば、主要な連中を奮起させるべきなのだ。

 

一応、アンジェリーナには事前に事情を説明しておいた。でなければどうなるか分からなかったからだ。

 

そんな訳で、夕食後にアンジェリーナが『夜食で祝勝会しよう! 部屋に入れて(ルームイン)♪』などと言ってきたのだが、その時に明智さんやら名前も知れない同級生女子たちがアンジェリーナを捕まえに来たようだ。

 

『浦島くんもどうだい?』

『本気かどうかは知らんが、どっちにしてもパスだ。女子会に男子が混ざるとかありえねー』

 

眼鏡を掛けている柴田ではない女に返しつつも、一番に誘われたアンジェリーナ(不機嫌MAX)は『NO!』と言うのだった。

 

『ダッテ着いて行ったらば、フルヌードの男子がいてワタシを手篭めにしようと、筆舌に尽くしがたい行為をシテ来て―――ソンナノ『NO!』よ!』

 

『『『『『『どんな鬼畜な想像してるのよ―――!!!』』』』』』

 

R−18な昔なつかしのファンジン(同人誌)なものを思わせるシチュエーションではあったようで、顔を覆って頭を振ってから啓太に抱きつくアンジェリーナに一年女子は本当に涙目。

 

だが啓太も『一応は』『念の為』程度に『えにっき』を展開してから呼んできた女子全員の思考を盗聴―――……問題はないようだが。

 

『エックス、しばらくの間アンジェリーナを護衛しろ。いざとなればOPと『モジュール』をばんばか使って構わん。俺からありったけ持っていけ』

『承知しました。ではアンジェリーナのガードを務めます』

 

言ってから『小っちゃいって事は便利だねっ』な状態になったAIがアンジェリーナの肩に乗るのだった。

 

『とりあえずせっかくの同級生からのお誘いなんだ。行って来い。何かあれば呼べよ。すぐにでも駆けつけるからさ』

『ウン……分かったワ……』

 

髪を撫でてから落ち着いたアンジェリーナを明智たちに預けて見送ってから……。

 

―――なんだか腹が減った……。

 

井之頭な輸入雑貨商の如くなってしまったので、夜食を買いに行くことにするのだった。

 

 

そんなことがあって、この時代でも24時間営業で稼働しているコンビニエンスストア……店員は無機質なアンドロイド…そんな場所に入る……。

 

その中に何だか見知った顔がいたが、特に声も掛けずに商品選びをしていく。なんせスゴく暗い顔をしているのだから。

 

脳内大槻(ハンチョウ)ならぬ脳内啓太の警告も無視して、深夜のどか食いに備えて食料を買い込む。そんなわけで会計を済まそうかと思った時に、随分とガラの悪い連中が入り込んできた。

 

5人ほどのグループのそんな連中の目的は……どうやら……。

 

―――三高の沓子の友人だったな。知り合いのフリをするから、合わせろ―――

 

いきなりな念話(テレパティア)に驚いた三高の女子だが、やってきた連中の視線から啓太の念話の意図を察したのか……。

 

「浦島君、これ忘れてるよ」

「おう。サンキュー」

 

アドリブに合わせてくれたことに感謝してから店員のアンドロイドに電子決済を頼む。

まるで仲の良いカップルとまではいかずとも、それなりに親しい同級生を装うことは出来ていた。

 

(思い出した。今日のシューティングで『三位』に滑り込んだカノウ・シオリとかいう女の子だ)

 

そうして思い出すと懇親会でのことも思い出す。

会計を終えて荷物を2人分持つことで、何とかヤンキー連中……東京卍リベンジャーズみたいな連中を躱すことに成功するのだった。

 

コンビニを出て、それなりの距離……もはや目視出来る場所に、ホテルが見えるところまできたので……。

 

「ありがとう。助けてもらっちゃったね」

「お構いなく。義を見てせざるは勇なきなりというやつなので」

 

森林公園とでも言うべき場所まで来たことで口が動く。普通ならば、ここでお別れでもいいのだが……。

 

「言っちゃなんだが、夕食は済んだはずだろ? そんなに食って大丈夫なのか?」

「……実を言うと夕食を食べ損ねちゃって―――」

 

セクハラと取られかねない発言だったが、予想外な反応(両手の人差し指を突き合わせる)に啓太としては呆気にとられる。

 

本人曰く、スピードシューティングで1位を取れるはずだったのに、結局3位で終わったこと。それが三高以上に、一色愛梨という友人以上の存在である女子の期待を裏切ってしまったこと……。

 

色んなものが渦巻き……自省・反省・猛省をしている内に、夕飯の時間を過ぎてしまっていたということらしい。

 

とりあえず三位決定戦に出た一高の選手……名前は覚えていない何とかというのは怒ってもいいんじゃないかと思いつつ、ベンチに座る十七夜の話を聞いていた。

 

「……で、君の中で整理は着いたのか?」

「―――浦島君はどうなの? アナタにはそういうものってある?」

 

質問に質問で返すなよと考えつつも、自分の中にあるものを吐き出すことに。

 

「特にはないな。俺には確かに『目的』はあれども、それは何か大きなモノに対する動機付けではないし、何より俺は君が言うような『特別な存在』にはなりたくない」

「―――それはアナタが……大地主で資産家の息子で、古式の名家だから言えることじゃ」

「もしかして君は、そういった風な目をしながら北山さんとの戦いに挑んだんじゃないのか?」

 

急所を突くような一言で遮ったが、ソレ以上の言葉は十七夜からは出てこなかった。

 

「君の相談相手としては俺は不適格だ。今、俺が九校戦に出場しているのは、北米に追放された知り合いの爺ちゃんを帰国させること。それだけさ――――」

 

夜空に瞬く星を見ながら啓太は考える。

あの輝きの向こうにいるのだ。俺が異常(トクベツ)にならざるを得ない元凶が……。

 

「俺は『普通』(フツー)になりたかった。魔法にも気功にも関わらず、只人として己の身体一つで何かを成し遂げる人生……その人生の途上で、そういったもの(魔力・気功)に目覚めたのならば、それはそれで受け入れた。けれど俺は違う……『こうならなければ』、俺はどうしようもなかったから……」

 

その抽象的な言いようは、栞を混乱させたが、それでも、啓太にとって深刻な悩みなのだとは気付かされた。

真逆の人生とまではいかずとも……それを感じさせるぐらいには啓太は―――真剣だと気付けたと思った瞬間、立ち上がる。

 

「ごめん十七夜さん。―――これ持ってホテルまで行ってくれないかな?」

「えっ? 浦島君―――」

「さっきの連中がちょっとしつこいからさ。OHANASIしてこようとは思う。『アデアット』―――『これ』着けておいて」

 

マギステル・ネギ・アデアットの番外とも言える『マスク』……というよりも眼鏡の類を掛けさせてから行かせることに。

 

「……大丈夫なの?」

「まぁ有り体に言ってさ、こういう状況で君を残して俺が逃げるってのは、常識的にありえないでしょ」

 

眼鏡を掛けさせたことで啓太にも存在は認識できなくなっているが、声だけは響いており、どうやら『使用者』ないし『貸与者』以外では、そういう効果であることを理解した。

 

そんなわけで―――状況は動こうとしていた。

 

「待ってて! 軍の人を呼んでくるから!!」

(それはあまり期待できないな)

 

栞が駆け出す気配を感じながら、愚痴るようにしてから構わずに己の影から一振りの業物を取り出す啓太。

 

そうしてから現れる全ての連中に声を掛ける。

 

「稚拙な変装だな。そんな風に擬態するならば、もう少しマシなものになっておけよ」

「――――どうやら無意味だったカ」

 

声を掛けると、20世紀から21世紀前半のヤンキー的なスタイルを解いて、人間ではあり得ないほどの容姿をした美麗の少年が5人ほど現れる。

 

「わざわざエックスと離れた瞬間を狙ってきたということは、狙いは『アレ』か。俺1人ならば取り込めると見たな……」

 

言いながら「ひな」の鯉口に手を掛けておき尋ねるも、どうでも良かった。こんなやり取りは、今に始まったことではない。

 

『ヒャッハー! 七面鳥撃ちならぬ二次元存在乱斬りだぜ―――!!! さぁマスター啓太!! 今こそ、魔剣・鍔眼返しでLet'sズンバラリン!!!』

 

妖刀の奔放な思念を受けながらも、ヤンキーの偽装を剥いで、完全な戦闘形態に入ったビリーナンバーズの実体化存在に対して斬りかかるのだった。

 

―――戦闘自体は、5分もかからずに終わりを迎えた。

 

「しかし下手だね。どうにも」

 

『ふふん! 啓太をやりたければ、この三倍の数を連れてこいってもんです!!』

 

「はいはい。ヨイショありがとよ。戻っていてくれ」

 

『ぶっはー!! こういう生身ではない存在を斬り食べるってのも乙なもんですからねー。また呼んでチョーダイ!!』

 

妖刀本人(?)的には、実体化した2次元存在はかなりの珍味というか味の濃いものらしく、以前京都を火の海にした時の陰陽師の使役する後鬼・前鬼などよりもイイものらしい。

 

ホントかよ。とか思いつつも「ひな」を影に沈めてからホテルに対して歩き出した―――誰かに見られている感覚を覚えつつも、今はエックスがいないので隠蔽は出来ないのだと感じて―――。

 

「お待たせ」

「―――ど、どうして!?」

「軍人さんたちは、俺を探りたいようだったからね。君のコールには応えなかったんだよ」

 

この辺の軍事基地に対する連絡端末のスイッチを切りながら受話器を耳にしたまま驚く栞に、そう告げる。

 

近づく顔と顔。どうでもいいが近いなと思いつつ、預けておいたコンビニの買い込み品を……間違えないように確認してから、部屋に戻ろうと提案するのだった。

 

「……浦島君って結構、極悪人だよね…」

 

それは偽名を名乗ったことか、それとも自分の必死なコールを無為にしたことか。

両方だな。と思いつつ、少しだけ膨れている十七夜栞に答える。

 

「俺の師匠の1人は、とあるところではとんでもない賞金首の『わるいまほうつかい』なもんで、無用なトラブルを避けたいんだよ」

 

言いながら、まぁ心配してくれていたのに申し訳ないとしてから、ホテルに入る。

 

妙な噂を立てられるのもあれなので、『絶』を展開しようかと思ったが、面倒なので止めといた。

フロントのチェックを終えて、ロビーのエレベーターで戻ることに。

男子と女子の部屋区分及び学校区分は別れており、ここまでだろうということで、5機はあるエレベーターをそれぞれで稼働させる。

 

「それじゃお休み」

「ええ、お休み」

 

お互いに上りのエレベーターが、やってきたことでそれに入る。

一緒だと妙なことになりかねないという妙な気遣いをしつつ、一高男子の割り当てられた階層へと向かうことに……。

 

(そういや、こんな妙ちきりんなトラブルばっかなのに雪姫が出張らないな)

 

魔女、はたまた集まっている魔法師の名士とやらの中には知り合いもいるのかもしれない。様々な憶測はあれども、姿を中々見ないことに少しだけ怪訝に思いながらも、廊下を通って割り当てられた部屋へと啓太は入る。

そして、栞も入る―――。

 

いやいや待て待て、ちょっとおかしい。

 

地の文にあり得ざる人物が入っていた。などとメタなことを考えつつも……。

 

「十七夜さん。なんでここに?」

「このベネチアンマスクみたいなものを返しそびれて、……それと一緒に食べない?」

「それだけで男の部屋に不法侵入とか、どうなんだよ」

 

少し前に風紀委員長を追い返した身としては、何とも間尺が『悪い』のだが、彼女も不良に襲われそうになったことで不安を覚えているのかもしれない。

 

まぁ不良ではなくて実体化した二次元存在なのだが……真実を教えずにやり過ごすには、それぐらいしかないかと思いつつ、アーティファクトを返してもらってから正式に部屋へと招き入れるのだった。

 

そんな場面―――正確には誰がいるかは分からないが、それでも『復元しつつある眼』で『誰か』を招き入れた啓太の姿を見た司波達也(作戦会議帰り)は―――その後、同じく何故か部屋の中に入っていた実妹を慰めたりなんだりして、すっかりそのことを忘却するのであった。

 

 

それぞれで、それぞれの夜を越えて大会五日目を迎えることになる……もっとも件の栞は、親友であり色々と啓太に夜遅くまで語っていた少女に少しだけ問い詰められるのだが……ともあれ、試合は進んでいく……。

 

色んな思惑を持つ者たちを置き去りにしながらでも……。

 

 

 

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