魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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色々とタグを追加しようかと思うこの頃。


stage.3『始動の時』

 

 

 

 

翌朝。様々なトラブルありつつも、何とか夕飯を食べて、就寝して一夜を明けた。

 

「朝飯は……適当でいいな」

 

「ワタシの分もよろしく〜〜〜」

 

寝ぼけ眼で起き出してきたアンジェリーナ。その格好は、とてもではないが直視出来るものではなかった。

 

とはいえ、それであからさまに動揺することはない。

 

どこぞのBBAが裸ワイシャツしているのをちょくちょく見てきた、啓太の無駄な経験が生きたわけだが、ハニーミルクをカップに淹れながら、どうしたものかと想う。

 

「昼食はそれぞれで摂ろうか。どうせ君は、クラスの人間から誘われるだろうし、俺もそうだろうし」

 

「ボッチ気質で親戚以外には線を引いているケイタに、そんなリア充なイベントが発生するとはオモエマセン!」

 

「ならば、ぼっち飯だな」

 

「エー、ワタシとランチを摂らないのー?」

 

「今日明日程度は我慢してくれ。初日から劣等生の男子と昼食を摂るだなんてこと、君のクラスメイトからいい眼で見られないんだから」

 

その言葉に、昨日と同じくの膨れっ面を見せるリーナ。説得の言葉を放つ。

 

「君の故郷こそスクールカーストの『本場』だろ。弁えてくれよ。数日くらいは」

 

その数日の間に、自分と同居を解消するような素敵なダーリンでも見つけてくれると、本当に幸いだ。

 

そんな説得を不承不承な態度で受け取ったリーナは、昼食()『別々』でいいとしてきた。

 

「ケレド! 帰宅! GOHOMEだけは一緒に帰るんだからネ!! これだけは守ってヨ!!」

 

「はいはい。君が居ない間に私物を荒らされたりする心配は無くさなきゃな」

 

「ソーイウコトジャナイんだけど!」

 

啓太のそういうことでの信頼はしている。信頼はされていることは理解している。

 

けれど、それに甘えるわけにもいかないのだ。

結局の所―――朝に出る時は、かしましいやり取りがコミューターで成されるのであった。

 

……明日からは弁当になりそうだった。

 

 

改めて観察するに、普通の男であった。

 

背は特別高いわけではない。今時の15歳の身長としては、こんなもんだろう。

髪型は少年らしいといえばらしい髪型だ。メンズのウルフカット―――ショートタイプと言えるか。

純日本人らしく黒髪だ。そんな男は今日もお気に入りのポップソングを聞いているようだ。

 

特別―――何かを感じるものがあるわけではない。

警戒すべきものがあるわけではない。

 

まぁ……今年の次席に思いっきりぶん殴られても、ケロリと起き上がった回復力にはビックリしたが。

 

成績の方も『凡庸な2科生レベル』である。だが少し気になる項目があった。

 

(有名和菓子屋の跡取り候補……か……)

 

その手のことに疎い達也も、名前を挙げられれば『あの店か』と思い出せる店だった。

 

(そして―――九島家の親戚を持つ……)

 

しかし、その九島の親戚はアメリカに追放された男が発端だ。男に九島の血は無い。

だからと九島の魔法を知らないわけがないのだが……。

どうにも……掴めない男だ。

 

(どうでもいい、か)

 

正直……達也とて、ここまでで相手に悪印象を持たれているし、こっちもあまりいい印象を持ててない。

確かに、自慢屋根性を出したいわけではないが、何一つ関心を持たれないことに、若干ムカついたのだ。

だが、それは達也の自尊心が傷ついた程度のことなのだが、少年ハートは色々と複雑なのである。

 

そんな訳で、自分のキーボードタッチの速さに興味を示した前の席の男子―――西城レオンハルトと少しの会話をしておくのだった。

 

何が契機かは知らぬが、レオとエリカが喧嘩というほどではないが、少しの口喧嘩をして……それだけだった。

その間に浦島啓太はスリープモードに入った様子である。

 

そして予鈴が鳴り、思い思いの場所に散っていたE組生徒たちが自分の席に戻る。そして同時に教室前面のスクリーンにメッセージが表示される。

 

そのメッセージは授業履修登録に関してであり、達也にとっては、既に終わったことなのでなにか別の項目でも……と思った時に、金色の美女が現れた。

 

「朝の挨拶―――即ち! おはようということだ!!」

 

教室の前部ドアが開け放たれて入ってきた女……女教師は、そんな風な挨拶をして退けた。

 

長い金髪をあたかも一つの装飾品かのように身にまとう美女は規格外すぎた。

雪のように白い肌とか、黄金比の身体を惜しげもなく強調する衣装。

ブラウスのボタンをいくつか外して胸元を晒した女は、教壇に手を着けると若干前に乗り出しながら―――衝撃的なことを言ったのだ。

 

「ようこそ! このどうしようもなく、差別と偏見だけが蔓延る現代のゲヘナに!! 貴様らはアレだな―――バカでアホでマヌケと言わざるを得ない。

こんな学校来てどうしようと言うのだ。成人後も魔法師としてやっていける連中は多くない。将来的には潰しが利かない進路選択だ。合格時点で2科生なんて通知を貰ったならば、辞退して専科高校か普通高校に行けばよかったぐらいだ」

 

なんだ。この(アマ)。全員に不満が溜まる。数秒掛けて噛み砕くに、とてつもなくヒドイことを言われているのを理解する。

 

「まぁこれは、私が仮に1科の担任になっても後半の文言を改良したとして、おんなじようなことを言っていただろうな。全く、魔法なんてチカラに夢みたところでロクなことがない―――」

 

「け、けれど! それでも……!!」

 

明確ではないが、抗議しようとした生徒を冷たく一瞥しながら女は口を開く。

 

「魔法師として大成するのは並々ならぬ才能があるか、その才能を元に富を得て、その富を子供の教育に当ててるような連中ばかりだ」

 

それは、美人の肌のイメージと同じく冷たい現実であった。知らぬわけではなかった。

人の世が平等ではなく、富めるものはその富を持続させるべく、子供にそうであることを求める。

 

そうでなくても、権力の生臭さは多くの週刊誌でスクープされている。魔法師がそうでない理由など何処にあろうか。

 

「十師族など有力な数字持ちの家を見たことがあるか? 連中の大半は、家の敷地内・地下やはたまたどっかに―――広大な私有地を持って、そこで大金積んで有力魔法師に家庭教師をやらせたり、街中では出来ない魔法訓練をたっぷり積んでいるんだ。つまり……差は開く一方だ」

 

幼い頃からの訓練をしていない人間でもとなると、よほど地頭(じあたま)がいい……例えば医者や官僚を目指す有名な大学に行くような人間か、どんなスポーツでも達者にこなせる運動神経の塊とかだろうか。

 

そういう『特別』でなければ、いけないのだ。

 

「それを理解して、それでも……お前たちは高度な技能を習得した魔法師になれると想って、やってきたのか? 一旗揚げられると思っていたのか?」

 

「それは……」

 

声を挙げた生徒が少しだけ呻く。それに対して寂しそうな眼を一度だけした教師を達也は見た。

 

そして―――。

 

「可能性に怯えて、それで殻に籠もっていれば安全でしょう。それは確かに(かしこ)い選択であり、(さか)しくも、波風を立たせない人生だ」

 

一人の男が、女教師に『きっぱり』と言ってのけた。

 

「そうだ。私は、そういう『夢』に挑んで破れてきた多くの人間たちを見た」

 

それを受けて、少しだけ寂寥感を増した視線を向ける女教師の姿が、印象的だ。

 

「けれど―――そいつら全員は『不幸』だったんですかね? 俺はそういう気概を持てないから、羨ましいぐらいだ。例え……破れたとしても、成功しなかったからといって、そいつの人生の価値を秤ることなんて出来ないはずだ」

 

その言葉を受けた金髪美人は、薄い笑みを浮かべながら口を開く。

 

「―――実にその通りだ。では、浦島啓太クン、この話の教訓は何なのか言ってみたまえ」

 

「―――恐れていては、何も出来ない。想定しうるあらゆる局面で重要なのは、不安定な勝算に賭け、不確定な未来へと自らを投げ込める―――自己への信頼・一足の内面的跳躍――――すなわち『わずかな勇気』を持てるかどうか」

 

その言葉を受けて、金髪女教師……どう見てもモンゴロイドの顔つきではない人は、笑みを見せてから先程から出ていた達者すぎる日本語を放つ。

 

「正しく、その通りだ。ここにいる者たちは、巷間で言われている魔法師教育の『闇』を知っていても、此処に来た『勇気あるものたち』だ。その心に担任教師として―――私は応えよう」

 

空気が変わるのを感じる。心が変わるのを見た。

 

「改めて自己紹介させてもらおう。

私の名前は『松岡 雪姫』、どう考えても日本人じゃないなんて偏見は持つなよ。帰化したとか想像力は働かせろよ。そして―――キミたちE組及び他の2科生たちの教導を担当させてもらうものだ。

『闇』に怯えず飛び込んだものたちよ―――キミたちが、どういう魔法師を目指すかは分からない。だが、それでも『やりたいこと』と『やらなければならないこと』は別だ。後者のために前者を諦めるなんてことは絶対に許さない。選ぶのは自分自身だ。悔いのない選択なんて無理だとしても―――自分自身の選んだ道に、胸を張って生きろよ。俯くな。前を見て、そして自分の目指すもののために―――」

 

―――進み続けろ。

 

それは、進みつづけることに、どうしても疲れ果てた人間の悔恨の念を伴っていたのだから……。

 

「では小野先生、交代しますよ」

 

「は、はい。雪姫先生のあとで、なんともやり辛いですが、カウンセラーの小野遥です。みなさんの―――」

 

教壇を後ろに控えていた養護教諭に譲った雪姫先生は、後ろに行く前に少しだけ意味ありげな視線を浦島に寄越して、寄越された方は―――不満げな顔で溜息を吐いてから窓の方に視線を向ける。

 

あいうえお順で、窓の方の席を手に入れた浦島を少しだけ羨ましく想うのであった。

 

 

雪姫先生の演説という名の『アジテーション』は、このクラスには効果覿面であったようで、随分と活気づいているのを感じる。

 

やってやろう。なにかを見出そう。そんなものが渦巻いているのであった。

 

「スゴかったな雪姫先生」

 

「ああ、そもそも2科に教官が就くということ自体異例なんだが、しかもそれが美人の外国人とはな」

 

「達也君、雪姫先生みたいなのがタイプなの?」

 

「それに関してはノーコメントだ」

 

レオの感嘆の言葉に返した達也の発言に食いつくエリカ。確かに美人ではあるし、生徒と教師という立場でなければ―――なんてことを考えるほど、達也は色恋に溺れていない。

 

ただ……少しだけ想うところがあるとすれば―――

 

(何となくお袋を感じさせたな……)

 

あるいは……祖母という感じの―――。

 

正体というか、何かを突き止めるべく、今の今まで意識から外していた浦島に眼を向けると―――。

 

「いない……?」

 

雪姫先生の演説が効果的だったのは、浦島が合いの手として『言ったこと』が原因だ。餅つきの阿吽の呼吸よろしく。

誰もが雪姫先生の演説だけに集中していて、舞台袖の黒子よろしく適切なことをした人間を理解していないようだ。

 

そんなこんなありつつも、工房めぐりに行こうという友人の誘いに応じて、達也は不可解な想いを持ちながら行くのだった。

 

 

 

そんな達也たちと違って闘技場にやってきた啓太は、早速も選択を誤ったな。と思った。

 

押し相撲よろしく、障壁を展開して所定のターゲットにぶつけている。番付力士よろしくな御仁がいたのであった。

 

実家の関係で知らないわけではない―――しかし、今……存在を知られるのは、イヤだなと思うヒトがいた。

 

(まぁどうせこちらに気付くことはあるまい)

 

悪目立ちを避けるために後ろにいたことも幸いしたが―――存外、啓太は自分を隠せていないのだった。

 

 

 

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