魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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stage.45『新人戦四日目・再起』

 

 

幹比古の見舞いを終えた啓太とアンジェリーナだったが、その間にも競技は進行していったらしい。あれだけのアクシデントがあったというのに、続ける根性は如何なモノかと思うが協賛企業の意向なのかも知れない。

 

ビリーナンバーズ……もはや半世紀以上前の稀代の電脳犯罪者(サイバークリミナル)の放った残滓を探してアレコレやっていたのだが、そんなものは早々に見つかるわけもなく―――カトラが決勝進出を決めたミラージバット新人戦を見ながら、探るもそれすらなく、それが終わると同時に何故か一高のミーティングルームに呼び出されるのだった。

 

呼び出された先にいた面子から歓迎の意を受けていないのは分かっていたので端っこの方の壁にいることにした啓太。

 

アンジェリーナもそこにいようとしたので、『生徒会書記』として総合主席の隣が適当と言って移動させた。渋々従ってはくれた。

 

名前を知らない面子が多いが、それでも一高の主要メンバー……ぶっちゃけ十文字の舎弟たちだろう相手などを見ながら、啓太は『えにっき』を開いてアンジェリーナを除いた全員の思考を『見る』のであった。

 

(ふぅん。理論主席サマをリーダーにして予備のモノリスチームを編成ねぇ。どうやら『それ』にだけ今は注意を払っているが、俺にも何かの話があるらしいな)

 

『えにっき』に表示されないモノを何となく察しつつも、『(ぜつ)る』ことで存在感を消していた啓太に一切の注意を払わず、あるいは興奮しているのか件の理論主席の司波達也君が部屋にやってくるのだった。

 

話の内容は概ね、啓太が『見た』通りだが、当然ながら司波達也はそれに傲然と抗議をする。

 

司波達也の『心の内』に分け入っていく。(CV松重 豊)

 

実家(四葉)だけでなく軍からもアレコレ言われているわけね。だから最初から出自も何もかも明かしときゃよかったんだよ)

 

自慢屋のクセに、隠そうとする努力もしていないのに、自分の能力を披露する場が与えられたならばそういう自制心など、どこへやらで動き出す。

 

そして、そこで見せた『異常なもの』が不特定多数の人間に疑念を持たせることを理解していないようだ。

全くもって隠れられない、忍び堪えられない男である。

 

だが結局の所、十文字会頭の一喝でとりあえずは了承したようだ。

 

「分かりました……三高のカトラ・スゥだか紺野カオラだかに『光井』も『里美』も負けましたので、その失点を取り戻すつもりで戦います」

 

「別にお前だけの責任でもないと思うがな……それに光井も3位なんだから立派な成績だぞ」

 

「それでも、俺は2人に勝ちきらせられなかった」

 

「―――分かった。その辺りは好きにしろ」

 

この担当選手に対する無駄な責任感ならぬ、そうではなく『自分の組んだ術式ならば優勝できたはず』という無駄なプライドというか傲慢さを垣間見た十文字は話を打ち切った。

 

戦う動機が何であれ戦ってくれるならば、それでいい。

そして、浦島啓太が司波達也を嫌う理由を理解できたのだった。

 

そして話は別に移る。

 

「お前が指揮するモノリスチームだが、選べる枠は一名のみだ。一名は既に委員会側から指名されている」

 

「浦島、なんですね?」

 

(嫌そうな声で言ってくれるねぇ)

 

「そうだ。委員会側というよりも他の学校の人間の中には、田中太郎という名前で自分たちを混乱させて、更にはアレだけの高度な術を行使しておきながら2科、普通科という生徒であるヤツを叩きのめしたいという想いを抱いているようだ」

 

そういう他校からのヘイトが、自分を再び戦いの場に召喚していったようだ。

 

ある意味、僥倖というものだと感じながらも疑問が司波達也から出てくる。

 

「それで浦島は、『この部屋』にはいないようですが、この話は伝わっているんでしょうか?」

 

「―――いま、聞かされたが、別にかまやしない」

 

「!!」

 

「表情筋が動いていないくせに、驚きが分かりやすすぎる。キモいな」

 

啓太がいることを認識できなかった司波達也の顔の評価は、当人と当人の妹を不愉快にさせたが、とりあえずそれを無視して啓太は『いどのえにっき』を閉じながら十文字に告げる。

 

「俺が出なきゃ始まらない話ならば、別に一も二もなく出ますよ。それとも抗弁して『出さない』という話に持っていけます?」

 

「無理だな……お前という賞金首を倒したい思いで誰もが居るのだからな」

 

「欺瞞はやめといた方がいい。十師族の沽券を守るために、一条将輝の前に俺の首を差し出したいんでしょ」

 

「「………」」

 

その言葉に2人の十師族は表情を硬くしながら啓太を見てくる。あのピラーズでの戦いは色んな意味で衝撃的だったのだ。

 

マギステルを古式魔法師の『上位種』ぐらいに考えていた真由美などは、あそこまで現代魔法師を圧倒するなど想定外。

 

そして……全ての人類が『努力』次第でマギステルと同じく超常能力を発揮できる。

マギクスとは違い、遺伝的素質などに左右されないなんて信じたくなかったのだ。

 

「実戦の場で一条将輝を下せるのか?」

 

「あくびが出るほどに容易いことですな。彼には俺の障壁を越えて、術の一つすら及ぼすことは出来ない」

 

渡辺委員長の言葉にそう返した後に―――招かれざる客がミーティングルームに入ってきた。

 

「だからこそ制約を掛けようという意見が大半なのだよ。お前が一条将輝の前で這いつくばるようにするためにな」

 

その人物は老人だった。本当に老人にしか見えない存在だったわけで。

 

「九島閣下!?」

 

驚いて腰を抜かしそうになった十文字克人だったが……ともあれ、周りに走った動揺など何のそので『九島烈』は、入口付近に立ちながら全員の動揺を手で制してから、モノリスにおける啓太に掛けられた制約を『ペラペラ』と話す。

 

全てを語り終えた段であろうときに……啓太は動き出した。

 

「言いたいことは、それだけかよ。偽物野郎が」

 

五指を差し向けて『九島烈』の頭に爆炎の術を掛けるのだった。

 

いきなりな行動。この室内で魔法を使ったこととか、仮にも魔法師の世界での偉人、ソレ以前にあのような御老体に、ここまでのことをやるとは……そこまで九島健に対する慈愛ばかりで、こちらには何もないのかなど色々と問いただすべきことはあったのだが……。

 

「ちょ―――っ!!!??? う、浦島君、あなた! 何やってるのよ!! いきなり老師の頭を燃やして!!!」

 

混乱しきった頭での言葉しか浮かばない真由美がいの一番に口を開くのだった。

 

「アンタ、マルチスコープとかいう目ン玉だか術を持っているのに鈍いな。よく見るべきですね。そこにいるのは九島烈なんかじゃない」

 

そのげんなりとした言葉の後に、どこからか笑い声が聞こえる。笑い声は未だに火勢を振るう『九島烈』の燃え盛るところから聞こえていた。

 

「およそ120年ぶりといってもいいかな。僕の正体を見破って、あげく火炎術をいきなり放つバカモノは……キミで2人目だよ。浦島啓太クン」

 

火炎を全て吹き飛ばし、その上で全ての『痕跡』を消し去ったのは火炎の中心にいた『最強の魔法使い』である。

 

「ひぃっ!!!!」

 

中条あずさの悲鳴が聞こえる。それは当然。

そこにいたのは、洒脱なスーツを身に着けた白髪の男……その正体(なまえ)は―――。

 

「やぁ、およそ4ヶ月ぶりだね。第一高校の皆さん」

「フェイト・アーウェルンクス」

 

誰かが怯えを含んだ声で彼の名前を発し同時に、服部副会長が戦闘態勢に―――。

 

「やめといた方がいい副会長。瞬きする一瞬の間にアンタを物言わぬ石像にするぐらい、こいつには朝飯前だぞ」

 

服部を見ずに、フェイトを見たままに言う。

 

「だ、だが……」

 

戸惑う服部(ダリル)。どちらかといえば、啓太が気配だけで行動を察せられたことに怯えているようだ。

 

「こうして態々、老人の姿になってでもここまでご足労願ったわけだから、ここでCEOもやるつもりはないんだろう?」

 

「当然さ。それに僕はこの大会の大口スポンサーでもある。別に姿を模していたレツ坊やのように人前に出ようとは思わないけどね」

 

公的な立場としては、この男は大会の出資者である。その事実に誰もが驚くが―――確かにアマテルの名前はあるわけで、フェイトの公的な立場とも合致はする。

 

というか、その事実に今更ながら気付いた面々に少しだけ呆れも覚えてしまう。

 

「先程、僕が話したことを40分後ぐらいあとに、九島烈は『十師族』であるミスサエグサとミスタージュウモンジに画面通信で伝えるだろう。この決定は運営委員会というよりも十師族経由でのものだからね」

 

「「くさってんなー(GRAFT)」」

 

「いや、全くその通り」

 

啓太とアンジェリーナの直截すぎる感想に十師族である『四人』が、少しだけ表情を固くするが、何はともあれ啓太の推測は当たっていたのだった。

 

「んで、アンタはそれを伝えるためだけに二度目の老人変装をしたのか?」

 

「まさか。『頼み事』があるだけさ。浦島啓太くん、キミに対するアマテル・インダストリーからの正式な依頼―――もう分かっていると思うが、よろしくない『山村貞子』(リングウイルス)が、この九校戦で暴れまわっている。彼らは中華系の犯罪シンジケートの連中からの依頼で、ある『ディール』を完成させようとしている」

 

「一高の優勝の阻止」

 

こちらが掴んでいた情報を晒すことであちらのペースにはさせない。そういうつもりだが、頷くフェイトに攻め込まれていることをことさら意識する。

 

「その犯罪シンジケートの闇賭博……賭けのレートは随分と『杜撰なもの』だったようだが、依頼してきた連中の命令は実行しているようだ」

 

「―――かつてのアンタみたいにか?」

 

「僕の『かつて』を知らない若造がナマイキに囀るもんだ。だが、このコーヒーの味に免じて、受け入れておこう」

 

会話の合間にコーヒーメーカーを起動させておいたことが功を奏したのか勝手知ったる様子で椅子を引いてそこでコーヒーカップを持ち優雅に飲むようだ。

 

大航海時代に各国が争って求め続けたものを飲む最強の魔法使い。誰もが毒気を抜かれそうになる……。

 

「話を戻すが、奴らのやりようはあまり好かない上に、厄介なことに僕の死んだ『友人』が進めてきた計画の最終的な欠片は奴らが持っているという皮肉……しかし、『山村貞子』を滅することが出来るのは、浦島君。君だけだ」

 

そこで再びコーヒーを飲むフェイト。

 

「君は特別な存在になりたくはない、異常(とくべつ)の世界から足を洗いたいと思っている人間だ。となれば、これは君にとってもチャンスだから―――」

 

「別に焚き付けなくてもいいよフェイトさん。ネギ爺さんは、俺も知らない人間じゃない。アンタに言われなくても、奴らは倒すさ。その後に出てくるもの、『お宝』だって四の五の言わずに提出してやるさ」

 

その言葉に面倒くさい『宇蟲王』様は微笑を零してから、饒舌な演説を終えて出ていくようだ。

 

その際に手元の携帯端末を通じて、啓太の端末に『かなりの額』の電子マネー(キャッシュ)が振り込まれているのだった。

 

「別に金はいらんのだが」

 

「君に恩を売りたいのさ。それに前回のヨルダ様の降臨でのことも含めて―――まぁ東京に帰ったらば、そこのアンジェリーナ君と高めのディナーに行く際の資金にしたまえ。それでは健闘を祈る」

 

その言葉と同時に転移魔法符を発動させて、どこかへと行くフェイト・アーウェルンクス。

 

見事な退場のタイミングだと感心してしまう。

 

魔力の残滓と空になったコーヒーカップだけが一高会議室に残り、先ほどから言いようのない圧迫感を覚えていた全員は……。

 

「で、何の話でしたっけ?」

 

などと先ほどまでの会話など無かったように会議室での話を戻そうとしたことで、全員がズッこけるのであった―――。

 

 

 

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