魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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stage.48『新人戦五日目・two』

 

 

「なんや九校戦って、けったいなことばっかりやるんやね。けーた兄ちゃんの『水通拳』を禁止するなんて」

 

「まぁ兄さんのアレは、少々不意打ちがすぎますからね。とはいえ、対応しようと思えば対応出来るでしょうから、ただの嫌がらせなのでしょう」

 

アンジェリーナが試合前に知らされた啓太へのルールバインドは、2人に嫌悪を持たせた。

 

ゴメンネ(ソーリー)、カナコ、ヒナ。ワタシのグランパ関連でケータに迷惑を掛けて」

 

「別にアンジェリーナ姉ちゃんが謝ること無いやら」

 

「魔法師とは己の権力を守りたいだけの俗物ばかりですからね」

 

今さらな話である。この流れに至った理由は知っている。だが、自分たちが知らない、既知ではないこと、理屈・理論を『当てはめられない』ことを認められない連中ばかりでは―――『わずかな勇気』という最後の魔法は得られないのだ。

 

それこそが最大級の俗物……。

 

観客席からそんなふうに考えていた可奈子と陽菜の横に―――。

 

「すみません。ここの席いいでしょうか?」

 

―――最大級の俗物が現れるのだった。

 

「「そうそう。こんな風(こない)な俗物が、最大級なんですよ(なんやよね)」」

 

表れた雪女に対して振り向きざま言っておくのだった。

 

「誰が最大級の俗物だ―――!!!!」

 

「「己のことじゃ()―――!!!!」」

 

大声で罵り合うJC2人とJK1人に、言われたJKである司波深雪も、まさかいきなり罵倒を浴びるとは思っていなかったのだ。

 

応対もそんな風になる。

 

「ミユキ、ココは一高の応援席からかなり離れてるわヨ。ナンで(Why)来たの(Comeing)?」

 

「リーナや可奈子さん、それと……」

 

「高山陽菜 いいます」

 

「高山さんと応援したかったんですよ」

 

その言葉を受けて―――。

 

「生憎、ここは『浦島啓太』(兄さん)の応援席であって別に魔法大学付属第一高校の応援席ではないのです。兄を貶める、兄を認められない人間たちは去ってください」

 

応えたのは浦島可奈子である。深雪の後ろにはそれなりの人数の女子がいて、その態度に少しだけ呻く。

 

「別に私たちは浦島君を―――」

 

「それはないわ。だってウチら九郎丸さんがけーた兄ちゃんと戦っていた氷柱の試合で、あんたらの近くで観戦していたけども、全然嬉しそうにしていなかったのを見とるもん」

 

呆れたような顔で深雪を見ずに言う高山陽菜の態度は、少々辛すぎた。

 

「だから私たちで祝勝会をしたんですけど」

 

そんな裏側のことまで見透かされていることに、一高一年女子は戦慄する。同時に、浦島可奈子と高山陽菜は嫌悪を示しているのだ。

 

「……私たちは確かに傲慢であって、何も理解していないのかもしれません。自分たちが知らない技法で浦島君が勝つことを認められない小物でしかない―――だからそれを知るためにも、ダメでしょうか?」

 

そんな風な司波深雪の必死の訴えかけに対して浦島可奈子の返答は……。

 

「その仰りようこそ自分ほどの者が(へりくだ)って見せれば……という傲慢さを感じさせることを、アナタは気付いていないのでしょうね。所詮、『ただの専科高校の学生』でしかないのに、アナタは何様のつもりですか?」

 

「――――――」

 

冷たい視線での返答は深雪の奥底、腹ワタすらも透かすかのような言葉であった。

 

そして……無意識の内に四葉の魔法師であることをひけらかしている。と警告された気分だ。

 

「おい、ケータの妹やその友達を、徒党を組んでイジメてんじゃねーよ。1高の雪女」

 

「可奈子、陽菜。久しぶりじゃな〜♪」

 

三高の生徒2人と―――。

 

「まさか、このようなことをするだなんてね。君、うざいよ」

 

鬼太郎のような片目隠しの魔法剣士からも嫌悪も顕に言われたことで、深雪たち一高1年女子組は、退散せざるをえなかったのだ。

 

 

「―――成程、それで深雪さんは、涙目になりながらやって来たということなのね」

 

「確かに他者の魔法を探らないってのはマナーですけど、かといって本人は、本当に何も言いませんからね」

 

浦島啓太の関係者たちは、それを遵守している。そして啓太もそんな感じでいるのだ。

 

秘密主義すぎて、不気味なまでにチカラを持っている存在。当然、現代魔法師の誕生の前にマギステルというのがいたのだから……。

 

その定形に沿っているのかもしれないが……真由美もあずさも少しだけ嘆くのだ。

 

「―――こうなれば摩利に色仕掛けをやってもらって聞き出すしかないかしら?」

 

「何でお前自身でやろうとしないんだよ……まぁ吝かではないが」

 

その言葉に一高観客席がざわつくが、それとは別に試合が始まる。

 

5高との戦い。平面での力押しだけが勝敗を決める戦い。

 

(この戦いでは、達也君の体術任せの奇襲も効果は薄い。更に言えば西城君も少しばかり難儀するでしょうよ)

 

つまり、この戦いのキーパーソンは浦島啓太ということだ。

 

だが、その啓太は自陣10mから出られない。八高との戦い……終盤で使ったようなものを使うのだろうか。

 

(あるいは………)

 

他の隠し玉を出すのだろうか。

 

そんな予感を感じながらも、眼下に映る一高モノリスチームは少しだけ険悪であった。

 

(深雪が悲しんでいる。どうやら浦島の妹に接触をして―――おのれ……秘密主義と孤立主義が過ぎるんだよ。このハーレム野郎が)

 

(可奈子は全てを見透かす。お前たち兄妹が自分の出自を明かさず一般的な人間を装うなんて卑怯な真似をやめない限りは、こっちだって相応の態度だ)

 

などと無言で思考の中で罵り合う2人の男子を察して……。

 

(何か険悪な限りだな……)

 

レオは、どことなく2人の間にギスギスした空気が流れているのを感じつつも、戦いはすぐにでも始まりそうなので、その辺を言わずにおくのだった。

 

お互いの気持ちはどうあれ、『勝利』という目的は変わらないのだから。

 

(平原か。少々難儀なステージだが……)

 

そんな西城の気遣いを感じながらも、啓太は検査委員に登録しておいたホウキともアシスタンツとも言えぬ『音楽プレーヤー』を手にしながら呟く。

 

「Ready?」

『A-OK』

 

その音声の言葉に満足してから取り決め通りというか、委員会の指示通りに啓太はキーパーとしてモノリス防衛の為に、ここに居座るのだ。

 

「んじゃ行ってくるぜ!」

「いってらー」

 

西城の言葉に気楽に返してから、支援砲撃の用意をしておく。彼我の距離云々以前にここまでお互いの位置が見えると、司波達也の奇襲も意味はないだろう。

 

ゆえに―――。

 

10人のエクストラアタッカーは素通りさせろ。

 

―――とだけ言っておいた。相手も八高との戦いのことは見ていただけに慎重になっているが……。

 

「リク・ラク・ディラック・アンラック―――闇の精霊 集い来たりて敵を射て!!!」

 

―――魔法の射手 連弾・闇の53矢―――

 

放たれたのは闇の矢弾であり、それは山なりの弾道……いわゆる曲射弾道で放たれたのだ。

 

下にばかり気を払っていて、上から落ちてくるものに完全に気を払っていなかったはず。

 

五高生たちは驚愕をする。これだけのマジックアローを放ったこととか、まさかこんな原始的な魔法で自分たちを破ろうとしているのかとか。

 

様々な考えが走るも、それらを中断せざるをえないほどに、魔法の矢は頭上に雨あられと降り注ぎ、対処をしなくてはならなくなる。

 

「くそっ!! 浦島の野郎!!!」

「これだけのあべっ!! おぶっ!! いたっ!!」

 

古来より戦の序章とは投擲兵器による攻撃が主流であった。だが現代においてはそれら『遠距離兵器』が『決戦兵器』となっていった。

 

日本では有名な織田・徳川連合軍による長篠・設楽原合戦のように何千もの銃弾で武田軍を塩漬けにすることも出来たように……。

 

魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾 闇の57矢(セリエス・オブスクーリー)!」

 

きゅどどどどどっ!!!!

 

今度は直線弾道で矢弾が飛んでくるのだった。

 

「くそっ!!! 障壁か身体硬化を張りながらなんとか進むんだ!! モノリス本陣へとすすむべっか!!!」

 

口頭での指示。例えそれが聞かれていても、噛んでしまってもそれぐらいしか出来ないわけで、結局のところ尽きることがないぐらいにマジックアローは飛んでくる。

 

長篠・設楽原合戦、鳥羽・伏見の戦いで多量の銃火を浴びていた昔の武士たちの心を理解してしまう。

 

上方から飛んでくる矢と直線に飛んでくる矢を前に前進することを諦めてしまいそうになる。

 

もうもうと立ち込める煙で、視界は開けない。だが聞こえる悲鳴と痛みで上がる悲鳴とが、まだ無事を示していたが……。

 

それでも、雄叫びを上げるように前進をし続け、土煙を超えた先に出れたのは僅か5人。それでも進み続けた先で―――。

 

「史料では織田・徳川連合軍が築いた馬防柵……つまり防御壁であり射窓というのは三重に築かれていたそうだ」

 

『『『『『――――』』』』』

 

「さて、キーパーとしての役目を始めさせてもらうか」

 

翼を生やした天使のような半裸の美女から首に巻き付かれている浦島の姿があった。その浦島を中心にして……とてつもない馬防柵が築かれていた。

 

亀甲のような幾つもの魔法陣という名の壁を展開して、城塞のようになった一高モノリス前を覆っていた。

 

これを攻略する? これの先にあるモノリスを砕いてコードを打ち込む? 不可能だ……現代魔法師らしい計算が働くも……。

 

「だからと進むことを―――あばばっ!!!!」

 

礫のようにその向こう側からマジックアローが飛んでくる。

 

このままでは浦島一人のために全体が『カメ』になってしまう。

 

卵から孵り、砂の中から這い出たというのに鳥に啄まれて食われる子亀のような末路が来てしまう。

 

だが無情にも現実は子亀のごとく襲いかかる。

 

「エックスやるぞ!!! 第八の術『ガンレイズ・ザケル』!!!」

『要は、雷撃の術を放つんですね』

 

魔物の子にして、のちの魔界の王様よろしく言われたが、全く嬉しくないAIエックスは、アプリからそれらをすぐさま選択して、啓太に『入力』―――。

 

同時に放たれる雷撃の槍は目の前の連中を倒すだけでなく、向こうの方……正規のモノリスメンバーの方にまで飛んでいき、あちこちで着弾。

 

五高のメンバーだけでなく、達也も被害を被る。

 

「あいつは見境なしか!!!」

 

「だが直撃弾は出してないぜ。多分誘導されてるんじゃねぇかな?」

 

達也が若干の被害を被ったのは相手との距離が近すぎたからだろう。

レオの言葉で少しだけ冷静になったのか、達也は行動を開始する。

 

「―――五高は壊乱している。モノリスを割るぞ」

 

「さ、させるものかあばばばば!!!」

 

どうやって固定されているのかは分からぬが、雷の槍(半実体)は五高生が何かをしようとすると電撃を放つようで、完全に縫い付けられているのだった。

 

そして……八高戦の時と同じく、勝利を掴むのであった。

 

 

「色々と言いたいことはあるけれども、まずは勝利してくれてありがとう」

 

「それが俺の『仕事』ですし」

 

仕事……なんて事務的な言葉であり、この男子がこの九校戦を特に何の感情もなくこなしているのだと理解できる言葉だ。

 

外人部隊のような言いように真由美も挫けそうになる。けれども問わなければならないのだ。

 

ここ……一高テントに浦島啓太1人だけを呼び寄せたのは、この為なのだ。

 

「浦島、俺達はお前の能力判定を尽く見誤っていた……己の浅さを実感している。だからこそ問いたい。お前はどれだけの実力を隠しているのか」

 

「それは何のために? まさかヨルダに対抗するためだとか、夢物語を描いているわけじゃないでしょうね?」

 

「そちらに関しては……不可能だと思っている。だが、せめて火星人たちに関してはどうにかしたいんだがな……」

 

世の中には魔法師など路傍の野良犬以下にしか思っていない『超人』がいることは、とっくに存じている。

 

だが、それでも少しは何かが出来ないかと思う。

 

何もせずに誰かの救済を待っているのは、それは良くないことなのだと。その心を込めて十文字克人は、浦島啓太に言ったのだ。

 

それに対する返答は……。

 

「いいでしょう。とはいえ、まだ試合は残っているから多少のことしか話せませんよ。俺の能力とAIエックスに関してぐらいだったらば話しましょう」

 

その言葉が、地獄の入口、一丁目行きであることなど誰が分かろうか……。

 

 

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