魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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久々の更新。少し短めですが、読んでいただければ幸いです。


stage.51『新人戦五日目・five』

 

 

 

示されたさらなる特別ルールに対して、一高側は色々と紛糾したり憤慨したり激怒したり色々ではあるが、結構どうでもいいと思っていたりするのが、一人いる。

 

よって一高テントから出た啓太は、いつもどおりとんでもない格好をした一高教師と話すことになるのだった。

 

「雪姫、誰が出てくると思う?」

「カトラ以外に誰がいるというんだ。まぁトウコと争うかもしれんか……」

 

追加されたルールは、有り体に言えば『女子の刃物持ち戦士』……姫騎士を選手として出しても構わないとするものだった。

 

「今大会はお前みたいな異色を除けば女子選手ばかりが特筆されたものを見せつけている。だからこそだろう」

 

「本当の所は?」

 

「お前の対抗馬を出したいんだろうよ」

 

「息子が勝てないからと、南国の姫君に俺の成敗を頼むか」

 

情けないとまでは言わんが、これ以上 自分の嫡子が負ける所は見せたくないということなのかもしれない。どうでもいいが。

 

「まぁ北陸地方といえば『柴田勝家』と『お市の方』の最後の地でもあるからな。賤ヶ岳の戦いみたいに諸共に沈めてやるのも一興か」

 

「むっ、プリンセスナイトが発表されたな―――えっ?」

 

雪姫にしてはやや達者に機械端末を操り、三高の出場選手を見る。そこにカトラ・スゥの名前は無く、代わりに登録されたプリンセスナイトは……。

 

 

一色 愛梨

 

その名前が表示されていた。

 

 

 

「一応、言っておくがな。お前じゃケータには勝てないよエクレール」

 

「……分かっています」

 

「分かっておらん。無謀と蛮勇を奮った所で啓太は容赦なく切り捨てる。お主のそれはただの自殺行為じゃ!!!」

 

「――――――」

 

混乱を招いていたのは三高側も同じであった。最初こそカトラ・スゥならぬ紺野カオラという『偽名』で登録されていたお忍び留学プリンセスを出すという方向でいたというのに、そこに割り込みを掛けてきたのが、一色愛梨であったのだ。

 

前田校長もまさか、こんなことになるとは予想外の極みだった。

 

しかしながら最後にそれを良しとしたのが一条将輝であったのだ。

 

『俺と同じく浦島に土を着けられてきた女子は一色だな。偽名で名乗ってヒトを小馬鹿にしてきたり……ならば、一緒に戦おうじゃないか』

 

そんなチームリーダーの言葉で是となってしまうのだった。

 

「だが無策で掛かれば、確実に負けるぞ? それは分かっているのか?」

 

「それは……」

 

カトラの言葉に愛梨も苦しい。結局、『本気で勝てる』とは愛梨も思っていない。マギステルの術云々以前に啓太の戦闘勘は凄まじい。

 

それに対して―――……。

 

「しばらく考えさせてください」

 

考えて妙案が浮かぶのか? と思いながらも、テント外に出る彼女を追うことなど誰も出来なかった。

 

 

 

「一色愛梨を倒す方法だが、あまり痛めつけるなよ。彼女はか弱い女子だ」

 

「女が弱いだなんて常識は我が家にはありませんし、それを教えられてきたのでそんなことには従えません」

 

「むぅ。女系家族の闇だな」

 

「そもそもあっちは刃引きされているとはいえ、刃物持ってやってくるんですが、俺は串刺しになっても構わないとかアンタ、正気か?」

 

「そ、そこは上手くやってよ……。カトラ王女だったらばアナタは違ったの?」

 

「この大会内部で九郎丸に次いで全力で殴っても構わず全力で殴り返してくれる数少ない相手だったんだ。はー……まぁクソつまんない相手と戦うとか、苦行をこなすつもりでやりますよ……」

 

クソつまんない相手……浦島にとって数字持ちの魔法師など十師族だろうと師補の家だろうと同じくなのだ。

 

その言葉に大半の相手の表情が歪む。

 

「ケレド、『B』が全然出てこない状況では、その方がイイんじゃない?」

 

「まぁそうとも言えるか」

 

あの四高の惨劇以来、奴らは一向に姿を表さない。

下手に出てくれば好餌になると理解しているのかなんなのか……。

 

「おい浦島、クドウ……『B』ってなんだよ?」

 

流石にアンジェリーナの発言は耳目を引いたようだが。

 

「気にしなくていいです。こちらの事情なので。お構いなく」

 

名前は覚えていないが、多分『杉田』という先輩に返しておく。恐らくあのヨルダ関連だと思って気を逆立たせているのだろう。

 

あのままならば、死んでいた一人だし。

 

「……この後に及んで関係のないことなどあるのか?」

 

「俺は思うんですよ。別に見たくもないものを見て、知りたくはなかったものを知ったところで、別に何も意味はないならば、ただの野次馬根性だから、態々知らないままに人生を謳歌すればいいんです」

 

関わらなくてもいいものには関わらないでおけば人生は楽だ。

そういう後ろ向きな方での決意は、余計な自負心を持っている若年魔法師にとって受け入れづらいものだった。

 

「いま見るべきなのは一色さんでしょ? 雪姫、なんかいい作戦ある?」

 

「教師に対してお前はフランクすぎるな」

 

「雪姫先生も昔は先公(センコー)をナメてサボりの常習犯だったとか聞いていますが?」

 

「まあ世間的にはそういうことになってるな。言っとくが私は真面目な優等生だったんだからな。関西呪術協会の一派のお坊ちゃんだって惚れてしまうほど―――一高で言えば七草と司波を足したような存在だったんだ」

 

幻術の豊満な胸を張って自慢気に言う雪姫に『事情』を知っている面子―――2人だけだが呆れてしまう。

 

「ソレ(ペアレンツ)が必ず子どもにつくウソじゃないですか」

 

当たり前のごとくツッコミが入るのだった。

 

「逆に、ちょっと荒れてたもんだぜパターンもあるけどな」

 

特攻服(トップク)を着て単車を学園都市で乗り回す吸血鬼なんぞ聞いたことがない。

 

「んな東京卍リベンジャーズか疾風伝説 特攻の拓みたいなエヴァいなかったんじゃない? マナさんにあとで聞くぞ」

 

「まぁ、私の過去はともかくとして……まさか魔法であの子を叩きのめすわけにもいかんからな。だから女子を無力化する上で私がよく知っている女ったらしの弟子の奥義を伝授しよう」

 

滑った感覚を覚えたのか赤い顔をしながら話を変えるエヴァンジェリン。しかし、その内容に啓太はどうしてもイヤな予感を覚える。

 

「あっ、もう嫌な予感しかしない」

「作戦名は『〜はるかぜとともにネギを。〜』だ」

デデデ大王でも倒しにいきかねない作戦名とその意味を正確に知ったのが2人。

 

「EYES not OPEN♪」

 

「戦闘最中にんなこと出来るかよ。まぁ伝説の魔法使い ネギ・スプリングフィールドの戦い方なんて俺が出来るわけないしな」

 

何よりネギ爺さんのようなモテ男でもない自分がやっていいことではないから、戦闘不能に陥らせる手はまぁ考えておこう。

 

「なんだやらんのか?」

 

「やんない。それをやっていい人間とやっちゃいけない人間とに社会は2分されている。そっちの理論主席様がやるならば、別だったかもしれないけど」

 

どうしようもないならば、なんとかするしか無い。訳知りだけが通じている会話にテント内の全員が呆然とするが、余計なツッコミを入れている時間は無いのでスルーしてくれたことには感謝だが、一家言がある人間はいるわけだ。

 

「浦島、お前は一色さんだけを相手取るつもりでいるようだが、他にも一条や吉祥寺が―――」

 

「そっちは君が何とかしろよ。こちとら一度はあのイケメン王子様に勝っているんだ。つまんない相手とは戦いたくないんでな。譲るよ」

 

「いらんものをくれるな……」

 

「勝つ自信が無いのかよ?」

 

言い合いの果ての挑発。それに対して司波達也の表情筋が動く。

マウント取ることは多かれども、取られたことは殆ど無いコウモリ野郎のプライドを刺激することに成功した。

 

「だったら別にいいよ。ありったけの魔法の射手(サギタ・マギカ)をかき集めて、あのイケメンプリンスにぶち当てにいくだけだから」

 

「―――……いや、分かった。俺が一条を無力化する」

 

その諦めたような言葉にざわつきが最大級になるが、数名が『まぁ出来るんだろうな』と納得している面子が居る。

 

のだが……会長と会頭は驚いていた方が良かったと思える。

 

「それでこちらからもプリンセスを出すんだけど、誰を出すべきかしら?」

 

「―――浦島、お前の一存で決まるんだ。お前が選べ」

 

「俺が決めたらば遺恨が残るんで、そっちの2人に任せます」

 

「もうっ!なんでそんなに全てが投げやりなのよ!!」

 

「つまんないからです」

 

会頭と会長に言われて率直な所を言う。啓太にとってそこに尽きるのだから。

 

しょせん魔法師など、魔法使い、道術師、気功拳士からみれば『鳥なき島の蝙蝠』でしかないのだ。

 

『鳳』(おおとり)『大鵬』(たいほう)が全力でぶつかれば、簡単に啄まれるだけのコウモリなのに、まるで自分たちならば何か出来ると思っているのだから始末に負えない。

 

「それじゃ深雪、頼めるか?」

「―――はい。お兄様」

 

定石を打つ司波達也に特に思う所も無い。

 

「アーア、ワタシだって出たかったんだけど」

「既に2種目出ているならば、これ以上はいいだろ」

 

アンジェリーナの不満は分からないでもないが、万が一ということもある。自分か彼女だけがあの『実体化したウイルスバグ』を消滅させられるのだから、啓太にもしもが合ったときの保険は必要なのだ。

 

色々とわだかまることがありながらも、戦いの準備は進み。

 

そして……事態は急転する。

 

カフェラウンジで少しだけ物憂げなものを見せていた一色愛梨。そんな中、一人の女性が話しかけてきた。

本来ならば怪しく感じるはずのいきなりの登場だが、女性は悩んでいた一色愛梨の前に『魔法の如く』現れて、その悩みを解きほぐすかのような話術で以て心に侵入していたのだ。

 

そうして……決定的な変化がもたらされる。

 

『我が主は求めているのです。『ハリー・ポッターのいない世界』(A World without Harry Potter)を―――協力してくれますね?』

 

古臭すぎる……いつの時代のものだかすら定かでない骨董品の……フロッピーディスクというものを愛梨に渡す女性。

 

嫋やかな手にあるはずの骨董品がまるでメフィストフェレスの契約書に見えていても、それを認識させない悪魔の誘いが少女を破滅へと向かわせようとしていた……。

 

 

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