故・両澤氏の怨念が見えるようだ。種死であれだけ酷評された反動か(恐怖)
しかし同時に、魔法科高校の劣等生やネオリベ的な作品に対するアンチテーゼでもあるとも世評から感じる。
今回の『敵側』はどう考えても……まぁそうだからな。
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自身を構築する全てが起動した時に『私』は覚醒を果たした。覚醒を果たした私が最初に目にしたのは……老いを刻んだ
「アナタワ……?」
発声を司る機能が不全なのかたどたどしい言葉を吐き出す自分が少しだけもどかしい。
そんな『気持ち』を覚えながらも、優しい顔をした男性は応える。
「私の名前は『フラット・コービー』。キミの生みの親だよ。No.
優しい顔は崩れない。何故かそれが、とても『懐かしい』というあり得ざる『感覚』を覚えつつも、自分の起動は終わろうとする。
「エックス……ソレガワタシノ…ナ、マ―――エ……」
「目覚めたばかりでまだ君は知らないことばかりだ。今はゆっくり休むといい……無限の可能性を意味する名前のArtificial Intelligence……君は■■ティたちよりも人間に近い行動をする存在になるんだ……」
その希望と懐かしさを伴った瞳を刻みつけながら再びの眠りがエックスを襲う……。
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再度の覚醒。そして見た「コービー博士」は……やや疲れている様子であった。
「どうしましたコービー博士? お疲れの様子ですが……」
「君は本当に……『人間』と同じようだなエックス。それは、『完成されていた彼女たち』には無かったもの……『まだ未完成』である君は……本当に『人間』のようだ……」
「博士……」
言葉の合間合間に、少し咳き込むコービー博士を心配するエックスはその姿に焦燥感を覚えつつも、構わずに博士は言葉を刻む。
「だからこそお前のように極めて自分たちに近いものを、同じような『知性体』を受け入れるには……『人類』はまだ幼すぎるのかもしれない……ネギ君が目指したものとは真逆の日本のデザインヒューマン
悲しみと嘆き。
悲嘆を込めた博士の言葉がエックスの心を締め付ける。
そして……。
† † † †
一瞬の意識の途絶。啓太には気付かれていないようだが、戦いは続いている。
どうやらこのままいけば普通に一高が勝利するだろう。モノリス前でアクビをしている啓太には何の意味もない話だ―――。
モノリス前にまで押し込まれそうになった三高だが、これ以上はマズイとして前に出たが……。
「うん?」
『どうしました?』
「いや、あの女の子が持っているものが何だったか……分からなくてさ」
啓太が遠見の術でそれを見たようだ。出歯亀めと思いつつも、啓太の知識にあるようで無いものの正体を教えることに
『あれはフロッピーディスク。パソコンと呼ばれる初期の電子端末で外部の記録容量として使ってきたものですよ。その
「はー……アレが、か」
『因みに言えば私の■もアレに自身の―――』
言葉を途中で区切って、沈黙数秒。
ホログラフのAIと人間は顔を見合わせてから……。
「『んんんんん!!!!!!』」
その『意味』を理解。そして―――。
―――死ネッ!―――
乗っ取られた少女が最初にやったことは、『全て』を砕くことだった。
司波達也が、その巨大な『式』に対して干渉を果たそうとするが……受け付けないことを知って驚愕する。
しかし、UJ.OP#2の前ではそれは当然のことであり―――。
莫大な量の炭酸が弾けたような音を響かせて草原のフィールドが砕かれたのだ。
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浦島のことは気がかり―――というわけではないが、後ろを見ると追い払うような手仕草で以てこちらに合図してくる男の姿が。
深雪が膨れっ面をしている。当然ではあろうが……
「相手が背中を見せているというのに追撃しないのも好機を逃す」
そういう兵法だろうと思いつつ、結局3人は前に出た……そして戦端を開いたのだが……。
(一色愛梨の様子が変だ……何だ?)
『何か』を持っている彼女がやることが何なのかCADではないことしかわからない。しかし、起こった変化はあまりに唐突だった。
その『何か』……思い出せた達也は、それがフロッピーディスクというものだと理解して彼女の汎用型CADに『取り込まれる』のを見た瞬間にそれが起こっった。
そもそもサイズ的にあり得ない現象だ。腕輪型のCADにそんなものが入り込めるわけが無いのだが、現実にそれは起こり―――そして。
一色愛梨は『変化』した。
「お兄様!!」
その明らかな変化に気付けた深雪が呼びかけてきたが……
「い、一色!?」
そして同じく気付けた一条が呼びかけたが、 応答はなく―――。
築かれる巨大な式。異質だ。精霊の眼で見た達也だからこそ気付くものだ。
だが、これがまったく意味を成さないでたらめなものだった。規模が大きいだけで、少し前に里見スバルとの試合で見たクラウド・ボールでの見事な術に比べるどころかそれ以前の無意味さだ。
しかし、何故か知らないがそれを砕かねばならないという思いに囚われて術式解体を放ったが……。
それは弾かれてしまった。というより受け付けなかったというべきか……。
達也の術式解体が効かない事実、驚いている内にその術式は完成を見て巨大な爆発が響いたのだ。
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鼓膜を揺さぶり三半規管を乱すような衝撃にのたうち回りそうになりながらも、外傷の類は無い。
「一体何が……!?」
周りを確認すると同時に目の前に浮かぶ小さいカメ……温泉カメに気付く。見るとあれだけの攻撃があったというのに全員の位置関係は殆ど変わっていない。
カメを前面にして何か丸い空間に包まれている。そう言える状態だった。
そして、そのカメこそが自分たちを守護した存在だと気付けた。カメの
今も、何かの紋様を発光させてこれらの甲型防御陣とでもいうべきものを発生させているのは―――。
「ありがとうございます西城くん……」
「いや、俺じゃない……多分、このカメを発生させているのは……」
深雪が感謝を述べるも、真実に気付いていたレオが否定をして爆風が収まったことで後ろの方を見ると……。
特徴的なローブ―――というよりジャケットを身に纏った浦島の姿があった。
宇宙服にも似たそれは、魔法とは違う術理の産物に思えた。
そんな浦島の姿を見た『一色愛梨』は、遠吠えを上げる。人間の声帯では出せないそれが―――明確な言葉として聞こえたものは……。
「ラスト・コービーナンバァアアアズ!!! リトル・サーティィイイイイ!!!!」
その名前が示すことが何であるかは分からないが、飛びかかるように超速で動く『一色愛梨』に応じるように浦島も飛び出して攻撃を交わしあうのだった。
衝撃波だけでも、とんでもない圧でフィールド全体を揺るがす。何が起こっているのか……わからないものだが、それでも……何か『魔法師』では対処できない事態が起こっているのだ。
そうしていると、自分たちも巻き込まれる。否応なしに―――。
「な、なんだこれは!?」
最初に異変に巻き込まれたのは、一条将輝である。彼の握ったCADが起動をしている。
起動式を読み込み魔法式を空間に解き放つプロセスをこなしている。だが、それは……。
(一条の意ではない?)
気付くも時既に遅く魔法は発動。ありったけ開放される空気圧。しかも全てが浦島を狙ったものが、放たれる。
「だ、誰でもいい!! 俺を止めてくれ!!」
「一条! ホウキから手を離せ!!」
そんな言葉を吐くも、固まったように彼の手からはCADが離れてくれない様子だ。しかも、それは三高生全てで起こっている様子だ。
「一条さん、いま―――」
「待て深雪!」
手荒だったかもしれないが、それでもCADを起動させようとした妹から汎用型を取り上げる。指が滑ろうとした一瞬に達也の手は深雪の細い腕に振るわれたのだ。
半ば手刀で叩き落とすようなものだったが、それでも達也の……信じられないが『直感』のようなものが、この場でCADを介して魔法を使うことの『危険性』を予感させた。
「レオも一旦、ホウキの類を全て地面に置くんだ!! むしろ投げ捨てろ!!」
「お、おう!!」
幸いながら事態の異常さに魔法を使うことを躊躇した一高陣営にはその手の自動的な魔法の起動はない。
(まさか、これが森崎たちを叩きのめした四高の破城槌のトリックか!?)
『ククク、君たちにも
そんな達也の考えを補足するように、声がどこからともなく響いた。
「「んなっ!?」」
「―――……誰だ?」
レオと深雪が驚きの声を上げざるを得ないのは、浦島のホログラフAIであるエックスのように、一条の背後に何かが現れたからだ。
それは、美少女の姿であるエックスよりも奇態な……サーカスのピエロか、中世時代の王の側仕えたる
もっとも―――持っている得物が懈怠すぎる大鎌であり、もはや死神も同然に見える。
『私の名は
大鎌を動かして口舌を終えて遂に来るかと思っていたが……。
『早速だが……君たちはそこにあるモノリスとやらを割ってコード入力したまえ。それがこのマジックゲームの勝利条件なのだろう?』
その言葉と鎌を使っての指図に後ろの方で2人だけの世界にイッているのを除いて全員が驚いた。
『私達の目的は、ここで『ハリー・ポッター』たちを使ってあそこにいる『トム・リドル』から欲しい物を取らなければならないのだ。だから手出しをしてもらっては困る』
ハリー・ポッターが三高であり、トム・リドルが浦島啓太……そう指し示すピエロにとりあえず反抗しておく。
「それに従う道理は無さそうだが……」
『そうかな? この『異常な試合』を止めるにはそれしかなくて、そして君はケイタ・ウラシマがどうなろうと構わないのではないかな?』
道化師の厭な笑み。そして達也ですら混乱しきった頭では、それが正常な考えだと誘導されそうになる。
『私はケイタ・ウラシマを打倒し、取るべきものを取る。そして君たちは、このゲームの勝利を得る。互いにWin-Winではないかな?』
「――――――」
「し、司波ぁ!!」
明らかに自己の意思とは無関係のことを強制されて今も魔法を使う『道具』と化している一条の叫びが耳朶を打つ。
それとは別の音が響いているのを感じて……音源は、腕のコード打ち込み用の端末であった。
―――どうするね? 私は君たち兄妹の『秘密』も知っている―――
―――ヤマナシとナガノの境にある屍山血河の一族であることを―――
―――それをジャパンネットワークに全て晒してもいいのだぞ?―――
腕に装着しているモノリス秘匿コード打ち込み用の端末画面に、そのような文字が出されたことで……全身の血の気が引く。
完全な脅迫だ。そして、ピエロは余裕の笑みを浮かべている。
「がぁっ!!」
「中野!?」
ピエロことPETER66の意のままに魔法を強制行使させられていた三高生の1人が倒れ伏した。
『ふむ。やはり個体差があるのは仕方ないか。その辺りはフェイト・アーウェルンクスの手抜かりだな』
状況が読めない。だが、魔法師を効率の良い道具のように扱う相手を前にしては、全てが危機的状況でしかない。
「お兄様……」
無系統魔法はCADを介さずとも打ち込める。その後には……この試合を終わらせてしまえば―――。
(終わらせたところでどうだというのだ……?)
その思考の間違いに気付いたところで、そもそも、こいつらにそこまでのチカラがあるかどうかすら分からなくて―――。
事態の打開は……後ろから始まった。
『HYPER OP#2!! KCATANUG.exe!!』
『なっ!?』
後ろから高速で放たれた『弾丸』は一条に当たらずに、PETER66を直撃。そのままにふっ飛ばされていくホログラフ。
そのことが原因なのか三高生全員が、意図しない魔法行使が止まった。
「一条さん。良かった……」
「司波さん……」
ホッ、と胸をなでおろすその姿に女神かなにかを見ている様子の一条将輝だったが、状況はまだまだ分からぬ。
そんな状況に浦島啓太はやってきた。
「浦島……一色さんはどうしたんだ?」
「とりあえず安全な場所に保護しておいた。厄介な『憑き物』は落とした」
『バカなっ!!こんな短時間で
レオの質問に答えた浦島の言動にピエロが驚く。
だが、浦島はこともなく答える。
「人工知能研究における稀代の天才『神戸ひとし』教授が産み出した『娘』をナメすぎだろ」
その言葉の意味を知るには、この場にいる魔法師全員の知識が足りなすぎたが……。
状況は否応なしに動いていく。
「それに―――お前もまた
『―――』
その呪文のような言葉を受けた瞬間、ピエロの『被り物』が砕けていく。
呪いでも掛けられたようにピエロの被り物が消えていき、そこには―――。
『キサマ……!』
怨嗟の声を上げ憤怒の表情で浦島を睨む……ナンバー・エックスというAIと容貌が似ている少女がそこにいたのだ。
『ケータ、ひなを使って!』
「言われずとも」
答えながらも、その一方でこの『試合の中』で刃物なんか使ったらば、失格だろうなと思って―――。
(まぁその辺りは九校戦のジャッジ任せだな)
そんな全てを風まかせのケ・セラ・セラで断じながら、自分の影から『妖刀』を取り出すのだった。